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混乱の王都

 王都のあちこちで黒煙が上がっていた。



 そんな王都の一角での出来事。



「た、助けてくれーー!?」

 男性は尻を床に着けて、両方の掌を自分に向かって武器を構えている男達へと向けている。



 男性の周りには、既にいくつもの人が横たわっており、その付近の地面は赤く染まっていた。



「助けてやってもいいぜ。」

 武器を持った男は、下卑た笑みを浮かべる。



「シュミット? どう言うつもりだ?」

 武器を持った男の仲間が、助けると言い出したシュミットに真意を尋ねる。



「まぁいいじゃねぇか。」

 シュミットは、そんな仲間を無視して話を進める。



「た、助けてくれるなら、なんだってする!」

 男性は、シュミットの言葉に希望を見出し、恐怖に震える身体を無理やり動かして立ち上がる。



「おっ!? いいねぇ! なんだってするか!」

 男性の言葉に気を良くしたのか、シュミットは、武器を下げて笑みを浮かべる。



「あ、ああ! 勿論だとも!」

 男性は、逆らわなければ自分の命が助かると、安堵していた。



「なら、そこに転がっている奴にトドメを刺せ。」

 シュミットが指差したのは、男性のすぐ横に倒れている人である。







「え?」

 男性は、シュミットの言葉に戸惑ってしまう。



 それは、横たわっている自分の親友がまだ生きていたことに対する驚き。



 人を殺せと言われたことに対する動揺。



 親友をこの手で殺さなければ、自分が殺されることへの恐怖。



 これらが合わさり、男性は即座に行動することが出来なかった。



「あ? やりたくねぇなら、別に構わないぞ。」

 シュミットは、あからさまに不機嫌そうな表情でらそう呟く。



「い、いや。」



「あーー、武器が欲しいか。なら、これを使えよ。」

 シュミットは、自分の懐から短剣を取り出して、男の前に投げ落とす。



 ごくりと、男性の喉が唾を飲み込む。



 ゆっくりの身体を屈め、投げられた短剣を拾い上げ、虫の息の親友の下へ向かう。



「や、止めて、くれ!?」

 その時、死にかけの男は、自分を見下ろす親友の表情を目にして、必死に声を掛けた。



「す、すまない。許してくれ! 俺は、まだ死にたくないんだ!」

 男性は、そのまま短剣を振り上げて、親友の身体を突き刺す。



「うっ!?」

 心臓を一突きされたことで、完全に目から生気が失われた。



「おーー。本当に刺しやがったぜ! お前も俺達と同じ殺人者だな!」

 男性が、本当に親友を刺し殺したことに、シュミットは拍手をしながら近付いて行く。



「こ、これで俺は助かるんだよな!?」

 男性は、親友にトドメを刺した罪悪感よりも、これで助かると期待の目をしていた。



「ああ。俺は約束を守る男だからな。」



「良かった。……お前の死は無駄にしないぞ。」

 男性は、自分がトドメを刺した親友に視線を向ける。



 ドスッ!



「え?」

 男性は、恐る恐る目線を自分のお腹へと向けた。



 そこには、剣が深々と突き刺さっていた。



 シュミットが突き刺した剣を引き抜くと、血が止めどなく噴き出してくる。



「や、約束が、違うじゃ、ない、か!?」

 男性は、腹を抑えながら、自分の腹を突き刺したシュミットを睨み付ける。



「何を言っているんだ? 約束は守ったぞ。」



「?」

 男性は、シュミットが何を言っているのか理解出来なかった。



「お前を恐怖から救ってやっただろ? 別に命を助けるとは言ってないんだぜ? これで恐怖を感じることも無くなるだろ。」

 シュミットは、最初から男性を生かしておくつもりは無かったのである。



「……ち、くしょ。」

 親友を手に掛けた男性は、溢れ出る血が止まらず、そのまま息を引き取る。



「シュミット。相変わらず、お前は趣味が悪い。」

 仲間は溜息を吐きながら、苦笑いしていた。



「あ? 最高じゃねぇかよ?」

 シュミットは、笑みを浮かべながら、次の獲物(オモチャ)を捜し求めて歩き出す。





 現在、王都のあちこちでシュミットの様な者達が暴れており、王都中で死体が増えていた。



 いきなりの襲撃の為、軍が事態に気が付くのが遅れたのが死者を増やした原因である。



 しかし、王都の中でも殺戮集団に対抗している者達も多数いた。



 腕の立つ冒険者や、偶々休みだった軍の人間達である。



 そんな、偶々休みだった白魔道士部隊のブラストとルベルも、この騒動に巻き込まれていた。



「ルベル! そっちの人の容態はどうだ!?」



「何とかなりそうですブラスト隊長!」

 ルベルとブラストは、休日も訓練に当てており、この日は王都の外で訓練し、丁度王都に戻って来たところであった。



 王都に入って直ぐ、倒れている複数の都民を発見したのである。



 回復魔法が使える二人は、直ぐに救護を始めるが手遅れな者が大半だった。



「……向こうにも多くの人が倒れている。俺達だけじゃどうにもならないな。ルベル! 転移魔法で緊急事態の連絡と応援を連れて来てくれ!」



「了解!」

 ブラストとルベルは、直ぐに行動を開始する。



 ブラスト達は、マルスから受けた訓練と自分達の弛む努力の成果で、回復量が大幅に増加していた。



 また、転移魔法もある程度使いこなせる様にもなっていた。



「アイツが戻って来るまで、一人でも多く助けなければ!」

 ブラストは、一人でも多くの命を救う為に走り回るのだった。






 そんな中、グラシャラボスは遂に目的の場所へと辿り着く。



「ここか。」



「何者だ!」

 フレイヤの家を守るゲイドは、明らかに異様な雰囲気を放つグラシャラボスを警戒する。



「俺か? 俺は、グラシャラボス。()()()だ。」

 名乗ったグラシャラボスは、不敵に笑うのだった。

次回は、グラシャラボスとマルス達の戦い

になる予定です(^◇^;)

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