冒険者登録〜手渡された用紙にご注意を〜
マルスが冒険者登録するお話です!
今日は冒険者学校が休日の為、俺はいつもの日課を終えて、王都の街中を歩いていた。
マルスの目的地は、冒険者ギルドである。
入学金は、ヘラとゼウスが用立ててくれたお金を使用したが、学費については自分で稼ぐとマルスはヘラ達に断ったのだ。
寧ろ、ここまで育ててくれたのだから、いっぱい稼いで恩返しがしたいと、マルスは考えていたのである。
「えっと、確かここを右に曲がると、これかな?」
マルスは、学校の門番に描いてもらった地図を頼りに、冒険者ギルドへ辿り着く。
冒険者学校に在学中でも、冒険者登録をしてギルドの依頼をこなすのは、問題無い。
流石に、学校の授業をすっぽかして依頼をこなしていたら、最悪退学させられることもあるが、休日に何をしようと自由だ。
マルスはギルドの扉を開けて、ギルド内に足を踏み入れる。
ギルド内は、早朝だと言うのに多くの人で賑わっていた。
それは、ここが王都にあるギルド本部だからに他ならない。
これが辺境にあるギルドであれば、数えられる程度の人数しかいなかったことだろう。
マルスは、そのままカウンターを目指して足を進めた。
「すみません。」
「はーーい! 冒険者ギルドへようこそーー! 美人受付嬢のベルでーーす!」
「ど、どうも。」
(確かに、美人な人だけど、朝から声が大きいですね。)
「お兄さん美形だねぇ。ベル姉さんと結婚しちゃう!」
マルスは身の危険を感じて、一歩後ずさる。
ず、随分積極的な女性だなぁ。
「今日は、冒険者登録をしに来たんですけど。」
「あら? 冒険者希望なのね。それじゃ、この用紙に名前と指印してくれる。」
ベルから手渡された用紙に目を落とすマルス。
「あの……ベルさんの名前が横に書いてあるんですけど?」
「気にしない気にしない。早く名前書いちゃってよ。」
(んーー、凄い気になるんだけどな。)
何より、ベルが上の部分を隠しているのが、更に不安にさせる要因である。
「早くしないと、登録してあげないぞ!」
「えっ!? わ、分かりました。」
マルスが自身の名前である、マを書いた時点で救世主が現れる。
ベシッ!
「いったーーい!?」
「ベルさん。何変な用紙に名前書かせようとしてるんですか!」
「変なとは何よ! 婚姻届は変な紙じゃないわよ! あっ!?」
(え? 婚姻届を書かせようとしてたんですか!? 危なく、名前を書くところだった。)
「ベルさん、ギルマスに言いつけますよ。」
「そ、それだけは。」
「あのーー。」
「すいませんでした。ここからは、私リナが担当しますね。」
リナに突き飛ばされたベルは、仕方なくトボトボと奥へ下がって行った。
「はぁ、お見苦しいところをお見せしました。最近受付嬢の人が次々と婚姻してしまったので焦っているみたいでして。」
「そ、そうですか。大変なんですね。」
(見た目が綺麗なんだから、直ぐに結婚出来そうなんだけどな。)
「えっと、冒険者登録でしたね。」
「はい。」
リナからちゃんとした用紙を手渡されたマルスは、必要事項を記載して、リナに用紙を返した。
「マルスさんですね。それでは、水晶玉に手をかざして下さい。」
マルスはリナに言われた通り、水晶玉へと手をかざす。
【名前:マルス、年齢:16才、レベル:13、職業:白魔道士】
【ステータス:HP224、MP179、攻撃力179、防御力144、速力164、魔力193、命中力146、運力182】
「白魔道士ですね。ん? え? 何ですかこのステータスは!?」
リナは、マルスが帯剣していた為、剣士などの職業だと思っていたが、表示されたのが白魔道士と知り、需要が無いかなと感じたが、次にステータスを目にして、その数値に混乱してしまう。
「白魔道士ですよ。えっと、接近戦も出来ます。」
「そ、そうなんですね。」
(白魔道士で接近戦って、訳が分からないんですけど!?)
リナは、混乱しながらも受付としての仕事を思い出す。
マルス専用のギルドカードを作成し、それを手渡す。
「これは、マルス様専用のギルドカードになります。最初はGクラスからのスタートです。」
冒険者のクラスは、SSSからSS、S、A、B、C、D、E、F、Gと定められている。
冒険者学校を卒業した者が冒険者登録をすると、Dクラスからスタートとなるのだが、まだ入学したてのマルスは底辺のクラスからスタートとなる。
「分かりました。えっと、Gクラスはどんな依頼が受けられますか?」
「現在のGクラスで受けられる依頼は、スライムの討伐、買い物の手伝い、引越しの手伝い、草むしり、害虫駆除、……腰のマッサージですね。」
スライム討伐以外は、完全に雑用である。
それでも、冒険者ギルドとしては、大事な収入源なので何でも受け入れる体制を取っている。
また、市民の些細な依頼を受けることで、ギルドに対する地域の住民の信頼を得ることにも繋がるのである。
「この依頼って、時間指定とかありますか?」
「買い物は昼前ですね。引越しはお昼過ぎが開始予定です。それ以外は、いつでもいいそうです。」
買い物や引越しも、受け手がいなければいないで、問題は無いのか。
リナによると、手伝ってくれたらラッキー程度の依頼なんだそうだ。
「なら、全部受けていいですか?」
「……全部ですか? 構いませんが、達成出来なかった場合は、達成率が下がってしまいますが、よろしいのでしょうか?」
リナの言うように、ギルドカードには達成率も表示されるため、達成率が低い冒険者には、依頼を回してもらえないこともあるのだ。
「問題ありません。」
「分かりました。それでは、依頼の詳細を書いた紙をお渡ししますね。」
リナから手渡された紙には、依頼主や依頼内容、報酬が記載されていた。
Gクラスの依頼なので、報酬が安いのは仕方のないことだろう。
「さて、働きますかね。」
俺は、ギルドの扉を開けて依頼に向かうのだった。
次回は、Gのクエストに挑戦です!
ゴキブリじゃないんですよ!笑