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帰還

 サーシャの父親であるザクスと、幼馴染のカール達を見つけ出すことが出来たマルス達。


「それにしても、ハイリザードマン達を難なく倒すとは、凄いですね。」

 ザクスは、マルス達の実力に驚いていた。


 カール達も、自分達と殆ど年齢の変わらないマルス達の戦闘を目の当たりにして、尊敬の眼差しを向けていた。


「それでは、村まで戻りましょう。」


「はい。……ところで、ここは何階なのでしょうか?」


「地下三階の罠で移動して来たので、ここが何階なのかは、俺達も分かりません。」


「そ、そうなんですか!?」


「心配しなくても大丈夫ですよ。」

 イリスがザクス達を安心させるようと、口を開く。


「だ、大丈夫とは?」


「俺の転移魔法で、一気に村まで戻ります。」


「そ、そんなことが出来るのですか!?」


 ダンジョンの奥に行けば行く程、最寄りの村までの転移魔法にかかるMPは多くなり、それだけの距離を転移する魔法には、相当な魔力が必要となるのだが、マルスにはそれが可能だった。



「【支援魔法大天使の頭脳(ウリエル)】。皆さん、手を繋いでもらえますか?」

 マルスは、自身の魔力を強化し、転移魔法に使用する魔力を高めた。


「それじゃ、行きますよ。【転移魔法空間跳躍(ワープ)】。」

 ダンジョン内からマルス達の姿が消え、辺りには静寂が訪れる。




 しばらくして、マルス達が転移した場所に、一つの集団が現れた。


「おや? ハイリザードマンが倒されている?」

 マルス達が戦闘した場所へ、村の食堂で出会った中年パーティーが通り掛かる。


「この階層まで降りて来たのって、俺らが最初じゃないのか?」


「その筈なんだが。」


「もしかして、サーシャちゃんのお父さんが、この階層にいるとか?」


「可能性はあるな。ここ地下9階まで来ているのは、俺達ぐらいだろうからな。」


「てか、サーシャちゃんのお父さんって、ハイリザードマンを倒しちゃうなんて、相当な腕前ね。」

 中年パーティーは、地下9階で、既に村へと戻っている者達をしばらく探し回ることになったのだった。



  ▽


「お父さん!?」

「サーシャ!」

 ザクスは、娘に出会えた感動から娘の下に走り出す。


 そして、両手を広げてサーシャを抱きしめると言うところで、サーシャの右ストレートが、ザクスの左頬にヒットする。


「ぐほぉ!? な、何するんだいサーシャ!?」

 ザクスは、まさか殴り飛ばされるとは思ってもいなかった為、殴られた頬を手で押さえながら抗議する。


「うるさい! 心配したんだからね!」

 サーシャは、涙を流しながら倒れる父親に抱き着いた。


「ああ。悪かった。」

 ザクスは、サーシャの頭を優しく撫でる。


 父親の無事を肌で感じたサーシャは、ザクスから離れて立ち上がり、幼馴染のカールと向かい合う。


「……カール。無事で良かった。」

「心配掛けて悪かった。」

 サーシャとカールは、ゆっくりとお互いに歩み寄ると、抱きしめ合う。


「あれ!? 父さんは殴ったのに!」

 ザクスが、そんな二人の行動に文句を垂れるが、二人の耳には届いていなかった。


「マルス。それに皆んなも。お父さんとカール達を助けてくれてありがとう。」

 サーシャは、マルス達に深々と頭を下げる。


「無事に助け出せて良かった。」


「君達は、命の恩人だからな。うちでご馳走作るから食べてってくれよ!」

 マルス達は、ザクスの申し出を受けることにする。


「なら、カール達もうちに来てよ。みんなお腹空いてるでしょ?」

「ありがとう。」

 サーシャは、ダンジョンで碌にご飯を食べられていなかったカール達も誘う。


「うちの娘はやらんぞ。」

「え? でも、『……俺は、もう助からねぇ。サーシャのことはお前に託す。』って言いましたよね?」

 ザクスの言葉に、カールはダンジョン内でザクスが口にした文言を口にする。


「……そんなこと言った覚えはない。絶対に、いってぇ!?」

「……お、父、さ、ん。」

 ザクスの態度に、サーシャが笑っているのに、怖いと感じる笑みを浮べる。


 その笑みに、ザクスは萎縮し、『そ、そんなことも、言ったようなーー気もしないようなーー、お父さん、歳かなーー。』と誤魔化していた。




 その日の夕飯は、豪華なものだった。


 ザクスとカール達が、無事に戻って来れたことを祝いながら、みんなで食事を始める。


「うちの主人をありがとね。」

 サーシャの母も、マルス達に感謝を述べて、大量の料理を運んで来る。


 会話しながら食事を進めていると、中年パーティーも食堂に姿を現わす。


「随分賑やかだな。……あれザクスさん? 戻って来ていたんですね。」

 中年パーティーのリーダーが、ザクスの姿を見つけて声を掛ける。


「ベイカーさん、久し振りです。娘から聞きました。私達のことを捜してくれていたそうで、ありがとうございます。」

 ザクスは、握手を交わしながら頭を下げる。


「まさか、自力で戻って来られるとは、流石ですね。地下9階でハイリザードマンを倒したのは、ザクスさんでしたか。」


「え? いえいえ、違いますよ。ハイリザードマンを倒したのは、ここにいるマルス君達です。」

 ザクスがマルス達を紹介すると、中年パーティーのリーダーであるベイカーは、目を大きく見開く。


「それは凄い。大したものだ。」

「ありがとうございます。」

(ザクスさん達を助けたのは、地下9階だったのか。)

 マルスは、先程の会話のやり取りから、ザクス達を救出した階層を知ることが出来た。


「ところで、地下9階までは、かなりの道のりなんだが、良く辿り着けたな。」

 ベイカーの質問に、マルスはダンジョンの罠の話や、ダンジョンで人攫いをしていた連中を捕まえたことを説明した。


「胡散臭い奴らだとは思っていたが、奴らが人攫いの一味だったとは。だが、君達のお陰で、気にしないでダンジョンに挑めるようになったよ。ありがとう。」

「いえ。捕まった人達を助け出せて良かったです。」


 人攫い達は、ベイカー達のような強さのあるパーティーにちょっかいを出して、人攫いをしていることが露呈するのを恐れていた為、ベイカー達には気取られないように行動していたのだ。


「ベイカーさん達も、食べて行って下さい。今夜は店の奢りです。」

「そうですか? それではお言葉に甘えて。」

 こうして、ザクス達の救出祝いは夜遅くまで行われたのだった。

7月末までで、235,091PVとなりました( ^ω^ )!


7月中のPVは、119,911となり、目標の月間100,000PV突破となりました(°▽°)!


読んでくださっている方、ありがとうございますm(_ _)m

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