罠
マルス達は、一階を隈なく捜索したが、サーシャの父親達を発見することは出来なかった。
「一階には、いないみたいだな。下に降りてみよう。」
マルスの意見に反対する者はおらず、マルス達は先に見つけていた、階段の場所へと戻り、地下一階へと降りて行く。
地下一、二階も、同様に隈なく探すが、サーシャの父親達や、罠を発見することは出来なかった。
「次は、地下三階だな。」
マルス達が、地下三階に降りて捜索を開始する。
この階層になると、少しモンスターの強さも上がってくるが、まだまだマルス達には余裕のある相手だった。
マルス達は、一階層毎に、漏れのないように隈なく探している為、モンスターとの戦闘は一瞬だが、捜索にかなりの時間が掛かっていた。
「この階層を全て確認し終えたら、一度休憩を取ろう。」
マルスは、自身を含めて、仲間全員に定期的に回復魔法を施し、疲れを取って来たが、身体の疲れは取れても、精神的な疲れや、喉の渇きまでは癒せないことから、一度休息を取ることを提案する。
「そうね。少し休みましょうか。」
「賛成だ。」
イリスやクレイ達も、マルスの意見に同意し、地下三階の捜索を続けるのだった。
そして、地下三階の捜索をしていたマルス達だが、地下三階でも何も見つけることは出来ず、下の階に降りる前に、休息を取っていた。
「そろそろ罠があっても良さそうだと思わないか?」
マルスとしては、地下三階辺りに罠があったのではないかと考えていた。
「そうね。この階が怪しいと思ったのに。」
「どっか、見落としていたのかも知れないな。」
イリスもマルスと同意見であり、クレイは壁に寄りかかり、そう口にした。
ガコン!
「うわっ!?」
クレイが寄りかかっていた壁がクルッと回転し、クレイの姿が消えてしまう。
「「「「クレイ!?」」」」
マルスは、クレイが寄りかかった壁に駆け寄る。
「!? この壁、回転する。……下が見えないな。」
マルスは、壁を手で押して反対側を見ると、床が無くなっていた。
「行くしか無いか。」
マルス達は、クレイを追い掛けて壁の反対へと向かうのだった。
▽
ザクス達は、なるべく物音を立てないように、忍び足で移動していた。
モンスターの姿を見かけては、引き返し、別の道に進むことを繰り返している。
移動中は、この階層の作りを把握するために、地図を描いていた。
「……やるしかないのか。」
そして、ザクス達は、行ける範囲内の全ての状況を確認した。
どのルートを選択しても、モンスターと遭遇してしまうのだ。
そして、どのルートが上への階層に上がる階段があるのか分からない状況だった。
「どのルートに行けば。」
カールは、仲間が描き記した地図を見て、頭を悩ませる。
「敵が多いルートは、避けるしかないだろうな。」
ザクスは、敵が多い場所に挑む勇気は無かった。
自分の力では、相手全てを倒すことが難しいばかりでなく、カール達を守りきれる自信が無いからだ。
「そうなると、ここでしょうか?」
カールが指差したのは、モンスターが一体だった場所である。
「そこしか無いだろうな。」
ザクスも地図を見て、そのルート以外は、無理だと判断する。
「ここが当たりだと、信じて行くしか無いですね。」
カールの言葉に、カールのパーティーメンバーが頷く。
ザクス達は、モンスターが一体だった場所へと再び向かう。
「いたぞ。」
ザクスは壁に身を隠し、頭だけを少し出して、モンスターの様子を窺う。
そこに居たのは、硬い甲羅を背負った大型の亀、ガメラだ。
高い防御力と、鋭い牙を持ち、一度噛み付かれたら、中々離さないことで有名なモンスターである。
「ザクスさん。亀なら甲羅が重いだろうから、戦わずに突破出来ませんか?」
「いや、ガメラは甲羅に身を隠して高速回転して移動する手段があるらしいから、おそらく逃げ切るのは不可能だろう。」
ザクスも、実際にガメラと戦闘した経験は無いが、ガメラについては、冒険者時代に耳にしたことがあるのだ。
「そ、そうなんですね。」
カールは、逃げられないと知り、物怖じしてしまう。
「この前のように、俺が前衛をやるから、カールは後ろから遠距離攻撃を頼むよ。前衛の二人は、あまり近付き過ぎ無いように。」
「分かりました。」
カールのパーティーは、カールが黒魔道士、前衛は、剣士と槍術士、後衛の白魔道士で構成されている。
「行くぞ!」
ザクスがガメラの前に飛び出すと、ガメラもザクスの存在に気が付き、戦闘態勢に移行する。
ガメラが突進して来たことから、ザクスは盾を構えて攻撃に備える。
「ぐっ!? 重い!」
ザクスの装備は、片手剣と盾であり、片手で持つ盾だけでは、ガメラの攻撃に耐え切れず、盾が弾かれてしまう。
「ザクスさん!? この野郎! 【火魔法:炎】!」
カールが杖の先端をガメラへと向け、炎を飛ばす。
「ガ?」
カールの炎は、ガメラへと着弾したのだが、ガメラには大したダメージを与えることは出来なかった。
カールの攻撃を受けたガメラは、ザクスから標的をカールへと変え、突進する。
「「カール!」」
前衛の二人が、カールとガメラの間に入り、攻撃を繰り出すが、ガメラの硬い甲羅に阻まれてしまう。
「【騎士技:騎士一閃】!」
ザクスが、ガメラの甲羅に覆われていない首目掛けて、剣を振り、ガメラにダメージを与えて、カールへの攻撃を阻止した。
「カール。甲羅に覆われていない場所を狙うんだ。」
ザクスは、ガメラの攻撃を盾でいなしながら、カールへと指示を出す。
「甲羅で覆われていない場所を? それって一体。」
カールは、ガメラの甲羅に覆われていない場所を探し、攻撃が通りそうな場所を見つけた。
カールは、自分の魔力だけでは、ガメラに大したダメージを負わせることは出来ない為、仲間の白魔道士に支援魔法を掛けてもらい、自身の魔力を強化した。
「喰らえ! 【氷魔法:氷柱】!」
地面から天井へと伸びる氷の柱は、ガメラの甲羅に覆われていない腹部を直撃する。
「ガァーー!?」
ガメラは、突然の地面からの攻撃でバランスを崩してしまい、ひっくり返ってしまう。
その為、甲羅が地面に来てしまい、柔らかい腹部が上を向く形となってしまった。
「今だ! 【騎士技:騎士一閃】!」
ガメラの腹部目掛けてはなられたザクスの騎士技により、ガメラを討伐することに成功する。
「やったぞ!」
カール達の方を振り向いて笑顔を向けるザクス。
「がはっ!?」
しかし、そんなザクスの腹部を剣が貫き、ザクスは吐血すると共に、腹部から大量の血が流れた。
「「「「ザクスさん!?」」」」
カール達は、突然の出来事に、何が起きたのか理解出来なかった。
ザクスが倒れたことで、ザクスの背後にいたものの姿が明らかになる。
カール達の目が捉えたのは、ハイリザードマン3匹だった。




