冒険者学校〜班分け〜
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学校生活は、基本的に制服を着用することになっている。
男性は黒を基調とした制服で、女性は白を基調とした制服となっている。
マルスも手早く制服に着替え、クレイ、イリス、フレイヤと共に、教室へと向かった。
エイル先生が教室に来て早々、口にしたのは、今後の活動で班行動を取ることが多くなるので、5人1組で班を作って欲しいとのことだった。
その為、一人一人簡単な自己紹介が行われた。
そこで一番の衝撃だったのが、クレイの職業だ。
まさかクレイの職業が、最上級職業のパラディンだったなんて。
パラディンは攻守に優れ、少しだが攻撃魔法と回復魔法が使えるという、何でも屋な職業だ。
クレイ、イリス、フレイヤ、ミネルヴァと、最上級職業が多くいたのだが、それらを抑えて人気だったのがマルスである。
白魔道士でありながら、接近戦もこなせるマルスは優良物件なのだ。
しかし、アザゼルの様に、白魔道士自体を下に見ている者もおり、その者達はマルスに近付こうとはしなかった。
マルス以外に人が集まったのは、クレイ、イリス、フレイヤ、ミネルヴァのところだ。
この四人は最上級職業であり、同じ班になりたいと思う者が多い。
しかし、四人はクラスメイト達からの誘いを、既に組みたい人は決まっていると答えて、断っていた。
それでも、班に入りたがる者がいたが、候補が決まっていると言われてしまい諦めざるを得ない。
「俺と組みたい?」
最上級職業の四人が組みたいと言ったのは、他でも無い、マルスである。
「俺と組もうぜ。」
「マルスなら回復と戦闘が出来ますからね。」
「お願い出来ますか?」
「私と組んで。」
(こんな美女達と親友にお願いされて、断れる男はいないだろう。 断る理由が見当たらない。)
「勿論。」
こうして、マルスは最上級職業のクレイ、イリス、フレイヤ、ミネルヴァと組むことになった。
「いくらなんでも、その班だけ強過ぎるだろ? 最上級職業はバラけるべきじゃないか?」
しかし、上位人同士で組むことを良しと思わない者が声を上げる。
アザゼルである。
クラスメイト達も、出来ることならマルスやイリス達と組みたいので、アザゼルに乗っかるように騒ぎ出す。
「実力ある者同士が組むことは、おかしい事ではありませんよ。最上級職業のイリスさん達を班に入れても、自分が強くなる訳ではありません。人に頼っていては、先はありませんよ。」
エイル先生の正論により、アザゼルとクラスメイト達は項垂れてしまう。
一悶着あったが、何とか班を決めることが出来たSクラス。
学校のカリキュラムとしては、座学が少しで実技がメインとなっている。
また、クラス対抗試合や学年対抗試合、学校対抗試合などのイベントもあるそうだ。
その他に、近場の森や山に行って、モンスターを討伐してレベル上げも行う。
卒業する頃の平均レベルは20くらいらしい。
卒業してからは、冒険者となる者、兵士となる者、商人になる者、貴族として領地を治める者など、多種多様である。
「それじゃあ、班分けも済んだごとだし、午前中は各職業ごとの授業になるから、指定の場所に移動してね。」
効率良く授業を行う為に、専門職の授業も設けられている。
マルスは、同じクラスの上級白魔道士である二人とエイル先生と共に、実技場(白の間)へと向かった。
「白の賢者である、エイル先生が担当なんですね。」
「ええ。マルス君に教えることがあるのか不安だけどね。」
「勉強させてもらいます。」
マルスとエイル先生の後ろで、二人が何やら騒いでいるが気にせずに目的地に辿り着く。
実技場には、他のクラスにいる上級白魔道士も集まっているので、マルスを含めて生徒は52人いる。
「皆さんの職業である、白魔法を担当するエイルです。よろしくね。」
その後、順番に自己紹介をすることになった。
「白魔道士のマルスです。よろしくお願います。」
マルスは、みんなに倣って挨拶をしたのだが、場が静まり返る。
(あっれぇーー? 何で静まり返ったんだ?)
「アイツ白魔道士って言ったのか?」
「聞き間違いじゃなければ。」
「白魔道士で入学出来る奴っていたんだな。」
マルスの前に自己紹介していた者達は、全員が上級白魔道士だった。
と言うよりも、マルスの代で入学した白魔道士は、マルスを除いて全員が上級白魔道士だったのだ。
「みんなマルス様の実力を知らないから、あんなことが言えるのよ。」
「そうね。残念な人達ね。」
リンとパティは、自分の目でマルスとアザゼルの試合を見ているので、皆の様にマルスを馬鹿にすることは無かった。
微妙な空気が流れているが、自己紹介を終えたマルスは、リンとパティの側へと戻る。
「俺、変なこと言ったかな?」
「気にすることありませんよ。」
「マルス様が絶対です。」
二人に詰め寄られたマルスは、身を後ろに反らせる。
(てか、パティは何で様付け?)
「先ずは、みんなに白魔道士として一番大事な回復魔法を覚えてもらいますね。」
「エイル先生ーー。俺らは、上級白魔道士ですから、回復魔法なら使えますよーー!」
エイル先生の言葉に、男子生徒が発言する。
「みんなは、どれくらい回復魔法が使えるのかな?」
「ふっ! 中級魔法の大回復が使えますよ。」
男子生徒の発言に、他の人達も頷いて同意する。
「成る程。皆さん優秀ですね。リンさんとパティさんはどうですか?」
「私達も中級の大回復です。後、範囲回復ですね」
エイル先生の質問に、リンとパティが答えた。
二人が答えた範囲回復とは、上級回復の劣化版で、一定の範囲内にいる人の怪我を回復させるというものだ。
取得難易度は、大回復の上である。
二人が範囲回復が使えると知り、周りの者達は尊敬の眼差しを向けている。
入学時点で範囲回復を使用出来た為、二人は上級白魔道士ながらSクラスに入れたのだ。
「回復魔法を覚えなきゃいけないのは、そこの下級だけですよ。」
その言葉に、大多数の者達が笑い出す。
彼らも普段は、白魔道士よりマシな程度という扱いしか受けておらず、鬱憤が溜まっていた。
そこに、自分よりも下の存在が現れた為、舞い上がってしまっての行動なのだ。
「それでは、マルス君はどうですか?」
「俺は、大天使の癒しまでです。」
マルスが口にしたのは、回復魔法の最上級に位置する魔法である。
「「は?」」
いきなり最上級魔法を口にされ、全員が呆然としてしまう。
「う、嘘付いてんじゃねぇぞ!?」
最初に文句を言っていた、男子生徒が声を張り上げる。
「なら、実演してもらいましょう。マルス君。この人形に魔法を掛けてくれる。」
エイル先生に言われたマルスは立ち上がる。
「分かりました。【回復魔法:大天使の癒し】!」
強力な光が人形を優しく包み込む。
「ふ、不正に決まってる!? どうせ発動したのは、回復かなんかだろう! お、俺は騙されないぞ!」
男子生徒が見せられた光景に納得出来ずに、喚き出すが、他の生徒は今の魔法が本物だと分かってしまった。
明らかに自分達の使える大回復を凌ぐ、魔力を感じたからだ。
「いい加減にしなさい! 白魔道士だからと下に見ることは許しません! 」
おっとりしているエイル先生からの厳しい言葉に、男子生徒は渋々大人しくなった。
「さて、皆さん中級まで使えるようなので、先ずは回復量を伸ばす練習をしましょう。」
大回復という魔法も、使う人が違えば回復量も変わってくる。
回復量の増加は、白魔道士の能力を見定める一つの指標となる。
「皆さんは、普段回復魔法を放つ時はどの様にしていますか?」
エイル先生の質問に、誰も答えようとしない。
普通に発動しているだけだよね。などという小声がチラホラ聞こえてくる。
「マルス君はどうかしら?」
「魔力を多く込める感じでやってます。」
「そうね。今、マルス君が言った様に、魔力を多く込めるとより回復量は上がるわ。」
その事を知らなかったようで、上級白魔道士達は、かなり動揺している。
ただ単に、魔法を発動するだけでは、最低限の魔力しか使用していないのだ。
ステータスで表示されているのは、その者の最大の数値であるため、意識しないとその最大の数値の結果を得ることは出来ない。
(これって常識じゃないの? 俺は子供の頃から、ヘラさんとゼウスさんにそう教わって来たので、当たり前だと思っていた。)
「さぁ、皆んなも魔力を多く込めて魔法を使う練習をやりましょう。」
エイル先生の号令で、全員が回復魔法の練習に取り掛かる。
(まさか、最上級の回復魔法まで使えるなんて。マルス君なら、いつかその上も。)
リンとパティに教えながら練習しているマルスを見て、エイルは自分を越えるかも知れない白魔道士に期待していたのだった。
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