マルス生誕
令和になってからの初作品となります( ^ω^ )!
600,000PV突破しました!
皆様から、【支援魔法:ポイント付与】していただけるよう、頑張りたいと思います( ̄^ ̄)ゞ
2019.6.20 感想にて、一人称と三人称の視点が分かりにくいといただき、全ての修正が完了しました!
山々に囲まれた小さな村、その一軒で新たな生命が生まれた。
「おぎゃーー、おぎゃーー。」
「おおーー!! 遂に生まれたか!?」
「ふぅーー、やっと会えた。私の赤ちゃん。」
綻びのある古い衣服を身に纏う若い男女の村人が、生まれたばかりの我が子を愛おしそうに見つめる。
「立派な男の子だ!」
「そうね。男の子だからマルスね。」
赤ちゃんの両親は、男の子の時と女の子の時の2パターンの名前を考えていた。
生まれたのが男の子だったので、子供の名前はマルスと決まった。
この物語の主人公、マルスが誕生した瞬間である。
【ステータス】
名前:マルス、年齢:0才、職業:白魔道士、レベル:1、HP19、MP14、攻撃力9、防御力9、速力14、魔力18、命中力9、運力7
▽
「ほらほら、こっちだぞーー。」
「頑張ってマルスちゃん!」
父親と母親は、両手を広げてマルスへ呼び掛ける。
マルスは、四つん這いでハイハイしながら母親の下へと辿り着く。
「マルスちゃん、良い子ねぇーー!」
「く!? な、何故俺の所へ来ないんだ!?」
母親のマライカは顔をニヤけさせ、父親のサウスは両膝を床に落とし、拳で床を打ち付ける。
余程、自分の所に来てくれなかったのが悔しかったのだろう。
(パパが元気なさそう、次はパパの方に行こう)
子供ながらにマルスは、両親の表情から感情を理解し、そのようなことを考えていた。
▽
「「おっ、おっ、おっ、おっ、おーー!」」
両親の目の前では、生後10ヶ月になったマルスが足をプルプルさせながら、ゆっくりと立ち上がろうとしていた。
今のマルスは、銀髪に赤ちゃんらしさのある少し丸みのある顔立ちをしている。
「頑張れマルス! お父さんが応援してるぞ! 【支援魔法:力強化】!」
そう言う、サウスの手から放たれた光がマルスの身体を包み込む。
「立った! マルスが立ったぞ!」
「ちょっとあなた!? 今、支援魔法使ったでしょ! 全くもーー。頑張ったわねマルスちゃん!」
サウスが放ったのは、支援魔法の力強化だ。
サウスの支援魔法が有ったとは言え、息子の立ち上がる姿を目にした、両親は興奮気味に大喜びする。
「おぉーー。」
マルスがハイタッチを求めると、両親もそれに応じてハイタッチで返す。
「今日はご馳走にしよう!」
「そうねあなた!」
両親の愛情たっぷりに、マルスは日々成長して行く。
▽
更に、2年と少しの月日が流れ、マルスは3歳となった。
「行ってくーーね。」
「あんまり遠くへ行っちゃダメよ。」
「あーーい。」
舌足らずなマルスは、扉を開けて外へと駆け出す。
「マーくんおはよう!」
「おはようクーちゃん! 駆けっこしよう!」
マルスと同い年の友達クーは、村の中を駆け回る。
その様子を村の人達は、微笑ましく見守っていた。
「あっちに行ってみようよ!」
マルスとクーの二人は、村の外れまで来ていた。
ここまで来ると、人は滅多に来ることはない。
人が来ることがない場所なのに、剣や斧を手に持つ、如何にも悪そうな人相の男達が数名、輪になっていた。
マルスとクーは、子供ながらに危険を感じ取り、その男達の様子を物陰から眺めていた。
「マーくん。あの人達怖いね。」
「クーちゃん。しー!」
マルスは、男達の会話を聞き取ろうと、耳を澄ませた。
『手筈通りに、この村の四方に火を放ち、退路を絶ってから略奪と行こうや!』
男達のリーダーと思わしき男が、部下達に指示を出す。
(大変だ! 村のみんなに知らせないと!)
マルスは、クーと手を繋ぐと直ぐに村の方へと駆け出した。
▽
「な、なんだって!?」
マルスが最初に見つけた村人に、先程見た光景と、話していた内容を伝えたのだ。
「で、でも、本当なのかい?」
「本当だよぉ!! 早く何とかしないと!」
村人は子供の話なので、嘘かも知れないと思い、行動を起こせずにいた。
(なんで信じてくれないの? ど、どうしたらいいの?)
マルスが必死に訴え続けるが、時間だけが経過して行く。
マルスがもうダメかも知れないと諦めかけた時である。
「その話は本当か坊主?」
鎧姿に剣を携えた十数名の男達がマルスへと近付き、声を掛けた。
たまたま通りかかった際に、マルスの口から不穏な言葉が聞こえた為、真偽を確かめに来たのである。
「うん。本当なんだよ! このままじゃ村が!」
男達は、マルスの顔や目から、本当のことを言っていると判断した。
「分かった。後は俺らに任せとけ。」
「あんたら、冒険者か? こ、こんな子供の言うことですよ?」
「この子が嘘を言っているようには見えません。違ったら違ったでいいじゃないですか。」
村人は、子供の戯言ではと言うが、鎧姿の男はそれでも構わないと答える。
「俺は、オケアノス王国で冒険者をしているセトだ。良く知らせてくれたね。後は、俺達に任せてくれ。」
「うん。」
セトと名乗ったのは、20歳くらいの美青年で、青髪に中肉中背の男性だ。
「冒険者のセト!? ブルーバードってパーティーで活躍してる有名人じゃないか!?」
村人は、セトの名前に聞き覚えがあったようだ。
「各員、四方に配置。敵を見つけ次第排除しろ!」
「「了解!!」」
セトの指示で、鎧姿の男達が村の四方へと駆け出した。
その後、セトに男達を見つけた場所を案内するように頼まれたマルスは、セトを連れて行く。
「この先だよ。」
マルスは、小声でセトに角の先を指差す。
セトが家の角からマルスの指差す先を覗くと、先程男達に指示を出していたリーダーが残っていた。
(奴は、指名手配されていた盗賊ギルだな。)
セトは、盗賊ギルの前に姿を晒す。
「なっ!? 何故こんなところに人が来やがる!?」
「俺はブルーバード、魔法剣士セトだ。貴様、盗賊のギルだな。大人しく捕まるか? それとも……。」
喋っているセトへと、盗賊ギルが斧を片手に迫る。
「死ねや!」
盗賊ギルの振り下ろす斧が、セトへと振り下ろされる。
「あ、危ない!?」
マルスは、セトに危険が迫っていると物陰から飛び出したのだが。
「【風魔法:風刃】!」
セトは、バックステップで距離を取ると、盗賊ギルへと手を翳し、掌からいくつもの風の刃を放ち、盗賊ギルの身体を切り刻む。
「があぁあ!?」
身体を切り刻まれた盗賊ギルは、辛うじて生きているが、そのまま気を失って地面に倒れた。
「か、カッコイイ!!」
マルスは、セトのその姿に憧れを抱いたのだった。
四方に散っていた盗賊の一味も、ブルーバードのメンバー達の活躍により直ぐに捕縛された。
「君が知らせてくれたお陰だね。えっと。」
「マルスです。」
「マルス君か。君は村のヒーローだね。」
「セト兄ちゃんみたいに、強くて格好良くなれますか?」
「ん? 俺みたいに? ……そうだなぁ。」
セトは、子供であるマルスに何て答えを返そうか真剣に悩む。
「毎日素振り1000本だな。」
「いやいや、毎日10キロの走り込みだろ?」
「筋肉が全てだ。腕立て、腹筋、背筋、スクワットだ!」
「魔法だろ?」
「ガキには早いって。そもそも職業も分かんねぇだろ。」
「違えねぇ。」
「モンスターを倒して、レベル上げんのが一番だろ?」
「だから、ガキには早えって!」
セトの後ろに控えていた、他のメンバーが好き勝手に発言する。
この世界では、モンスターを倒すと経験値が得られ、それによりレベルが上昇するのだ。
レベルが上昇すると各ステータスが上昇する。
勿論、ステータスの上昇値に個人差があるが、レアな職業程、伸び率が高いのが世の中の常識となっている。
トレーニングでもステータス値は上昇するが、レベルが上がった際の数値と比べると微々たるもの。
しかし、トレーニングを怠ると、ステータスは少しずつ減少してしまうのだ。
「マルスは、何で盗賊が何かしようとしていると大人に話そうと思ったんだい?」
「え? 村のみんなを守りたくて。」
「それだよ。その心があれば十分、強くて格好よくなれるさ。」
そう言って、セト達は村を後にしたのだった。
2019.5.14
誤字があるとの報告で、訂正していますが、見落としがあると思います(>人<;)
誤字報告して下さると、非常に助かります_| ̄|○