80.新装備
部屋を出た俺は先ほど紹介状を見せた職員に声をかけた。
「すいません。質問したいことがあるのですが」
「はい。何でしょうか?」
俺は先ほどの本と栞について聞いてみた。
「あの本ですか……。あの本は初めて読む人に栞が現れて、その人以外持つことができません。なのでその栞は持っていってもらってかまいません。本の続きですが、おそらく別の国にある中心都市の図書館にあると思います」
「1か所に集めないんですか?」
「ここのような部屋は各国の中心都市に必ずと言っていいほどあります。説明を受けたかと思いますが、ここには問題のある本が納められています。あまり、外に持ち出すのは良くないので移動することはほとんどありません」
つまり、ここのような部屋がある図書館を探して回る必要があるという事か。
「どこの図書館に収められているかはわからないんですか?」
「司書ギルドの本部なら把握しているでしょう。しかし、1支部でしかないここでは難しいでしょう」
「そうですか……。なら、こういう危険な本が納められた部屋のある図書館はわかりますか?」
「そうですね……。絶対ではありませんが、ここの地図や地域に関わる本で国の規模や風土を調べれば、大まかな目星はつけられるかもしれません」
俺は職員に礼を言ってその場から離れる。
1階に降りて空いているイスに腰かけた。
さて、今の状況を確認しつつ、今後の予定を考えよう。
まず、大前提として、読書がメインだ。
今までのレベル上げもイトスたちに頼んでいる装備も全てはまだ見ぬ本を探すためだ。
そのうえで、他にやること等をまとめていかなければならない。
まず、1つは知識の国に行くために何が必要か調べる事だ。
カーナさんの話では戦闘ギルドないし、ダンジョンランクがBランククラスの戦闘能力が必要と言っていたが、ルートによってはもしかしたら、そこまでの戦闘力がいらないルートがあるかもしれない。
まぁ、そういうルートがあったらカーナさんもそう言っていたと思うので、期待しない程度に考えておこう。
次に、シークレットクエストで手に入れた禁書庫の鍵についてだ。
今回の2階の奥の部屋のように危ない本が納められているのか、また別の何かなのかはわからないが、おそらく知識の国に禁書庫があるんじゃないかと思っている。
しかし、どこにあるか明記していないので、知識の国に着いた後、また探しに行かなければならなくなる恐れがある。
そして、今回のチェーンクエストである。
この本はおそらく各国に点在している図書館の危険図書の部屋にあると思われる。
先ほどの職員との話だと、風土や地理を調べていけば、ある程度絞れるのではないかと言っていた。
ここの図書館にはそういった本も沢山あったので、少しずつ調べていこう。
これらの事を踏まえてこれからの行動方針は。
1.知識の国と選択の栞のチェーンクエストの本を所蔵している図書館の情報を集める。
2.知識の国に行くために戦闘能力を上げる。従魔を増やし、フルパーティーにする。
3.情報によっては早い段階で旅に出る可能性もある。
大体、これで決まりだろう。向かう経路によってはDランクくらいから旅に出て、Cランクくらいの強さになってから迷宮都市に戻るというのも手だろう。
ここまで考えたところで時間になってしまったので、ここでログアウトすることにした。
……………………。
昼食後ログインした俺は従魔たちを連れて総合ギルドでイトスたちを待つ。
ようやく俺の従魔たちも装備を身に付けることができる。
これでDランクのダンジョンで問題なく戦闘することができるだろう。
さすがに中ボス、ボスに挑戦するときにはもう1,2体、従魔を増やさないと厳しいだろうが。
しばらく待っていると総合ギルドの出入り口の方からイトスとミーシャが入ってくるのが見えた。
俺が手を振り、位置を示すと2人は足早に駆け寄ってきた。
「すいません! お待たせしましたっス!」
「お久しぶりでーす!」
「ああ。久しぶり、現実では数日でもゲーム内だと1週間以上になるんだよな」
挨拶もそこそこに早速、イトスたちが作ってくれた装備を受けとる。
俺は受け取った装備を確認し、メニューから装備を変更していく。
今回、イトスたちに作ってもらった装備は以下の通りだ。
まずは俺の装備だ。
甲殻類のタワーシールド 甲殻類の甲羅や背負っていた貝殻を鉄でつなぎ合わせたタワーシールド。つなぎ合わせの為、若干、耐久値が低い。
耐久値 400
耐久力 +22
重量 8
魔法攻撃耐性(微)を付与する。
貝殻の鉄杖 鉄の杖の先端に魔法適性のある貝殻を取り付けたもの。
耐久値 250
ダメージ量 15
魔法力 +15
重量 6
水魔法使用時に魔法力をさらに+5する。
俺の装備はこの二つだ。本当は鎧の類も作ってもらいたかったのだが、時間が無いのと素材が偏りすぎていて良いものを作れないという事だった。
イトスの話だと。今回のタワーシールドは盾系の装備の中では耐久値が低いそうだ。
普通に作っても最低500ぐらいは耐久値があるらしい。
しかし、素材の大きさの関係でどうしてもつなぎ合わせる必要があり、このような状態になった。
ちなみに鉄については、俺が渡した素材を換金してもらい、準備してもらった。
もう一つの杖については、イベント中に戦ったシー・ハウスの貝殻を使用することにより、面白い効果をつけられると、事前に連絡があった。
水魔法は頻繁に使うので、ありがたい効果が付いたと思う。
続いてハーメルの装備だ。
犬皮の寝間着(ネズミ用) コボルトの皮を使い作られたパジャマ。内も外もモフモフの毛皮が使われている。
耐久値 120
耐久力 +10
重量 2
睡魔(微)を付与する。
犬皮の三角帽子(ネズミ用) コボルトの皮を使い作られた三角帽子。内も外もモフモフの毛皮が使われている。
耐久値 100
耐久力 +4
重量 1
貝殻の杖(ネズミ用) 魔法適性のある貝殻を削り出して作られた杖。
耐久値 70
ダメージ量 1
魔法力 +5
重量 1
ハーメルの装備はこれで全部だ。ハーメルが寝るのが好きであるとミーシャに伝えたら、寝間着を作りたいと強く押されたので許可した。
寝間着に付いた睡魔は状態異常である睡眠を起こしやすくなる効果だ。
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これが吉と出るか凶と出るかはダンジョンに行ってみないとわからない。
杖については俺が前に使用していた木の杖のハーメル版といったところか。
最後にヌエの装備だ。
黒のスカーフ 何の変哲もない黒いスカーフ。
耐久値 80
耐久力 +2
重量 1
貝殻のペンダント 魔法適性のある貝殻を使用したペンダント。
耐久値 70
魔法力 +5
重量 1
ヌエの装備はひとまずこのような感じになった。やはり、鳥に着ける装備は難しいようで、2人もこれが限界だと言っていた。
また次回、装備を作るときにリベンジさせてほしいそうだ。
俺は装備の代金を払い、残った素材を返してもらう。
また、装備を依頼したいときには連絡すると伝え、2人とは別れた。
この後、ドンハールさんの所でレベル上げらしい。
俺も今後の予定を決めるために調べものをするとしよう。
俺はハーメルたちをマイルームに置いていき、図書館に向かう。




