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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
1.彼がゲームをする動機
7/265

7.今後の方針と情報

旧13.14です。

 ナビさんとのチュートリアルであったことの中で俺が現状を打破できる案が出せるとしたら、主に2つある。

 1つ目は「読書」スキルの特性、本を読むことでもそれに対応したスキルの熟練度を上げることができるようになる。

 この特性と職業、称号、スキルの組み合わせによる新たなスキルの獲得である。


 思い出してほしい、俺の戦闘職テイマーは使役・テイム関係のスキル習得に補正が入る。

 同じく特殊職である司書は知識スキルに補正が入る職業である。

 つまり、「モンスター・テイム」関係の「知識」スキルには重ね掛けで補正が入るということである。

 また、称号「才能を示す者」の効果で今一番覚えやすいスキルがわかるということも大きい。どんなスキルが発現するか名前だけでもわかっていれば次に読む本を選びやすい。

 これでモンスターの懐柔に補正ないし役に立つ情報を手に入れる。


 それともう1つとして町中でのクエストをこなしていく。

 先ほど総合ギルド前で話しているときに周りの会話をちらっと聞いたが、どうやら総合ギルドのランクがFだと家屋の修繕や溝掃除等の町中でできるクエストや無手で行けるような草原での薬草採取などがほとんどであるらしかった。


 ただし、総合ギルドのFランクについては救済処置として戦闘系もしくは生産系スキルの試験を合格すれば貢献度に関係なくEランクに上がれるようだ。つまりFランクはちゃんとクエストやる人物か見るためのお試しランクと言える。そのためFランクは報酬が安いが安全であるらしかった。

 安全にクエストをこなせるのも大きいが俺の狙いはそれではない。ここでチュートリアル中に読んだ本「ファースト付近の魔物の生態」が生きてくる。

 この町の周辺にいるということは当然町に侵入しようとする場合があるだろう。

 危険な魔物は衛兵や冒険者によって狩られてしまう。

 しかし、この本によると一般人に危害を加えない、一般人が素手で撃退できるモンスターは増えすぎない程度に間引くくらいしかしないため人があまり寄り付かない場所にはモンスターが住みついていることがあるという。


 つまり、Fランククエストでやる掃除や建物の修繕などは普段人が寄り付かない場所でモンスターを探しつつ、クエストによる報酬も稼げるというわけである。まさに一石二鳥なのだ。

 確かに一般人に撃退できる程度のモンスターに何ができると思うかもしれないが、町中で逃げ回る、ないし隠れて生きているということは索敵系か隠密系のスキルを所持している可能性が高い。

 まったく戦闘をする気がないモンスターを選ぶよりは危険を回避できるスキルを持っているモンスターのほうがいいだろうということだ。

 自分の考えをハルに伝えると納得した顔でうなずいて


「それなら時間はかかるけど何とかなりそうだね。そのプレイスタイルだと常に一緒は無理だよね。とりあえず、私は野良パーティーに混ざるとするかな」

「そうか。それじゃ、お互い何かあったら連絡する形でそれぞれプレイするとしよう」

「最初くらいは一緒にできるかと思ったけど想像以上にお兄ちゃんのステータスがぶっ飛んでたよ」

「ははは、すまない。それなりに戦えるようになったら一度連絡を入れるよ」

「わかった。絶対だからね!」


 そう言ってハルと別れることにした。


 …………………………


 ハルと別れた俺は総合ギルドに引き返し情報を集めることにした。

 まず、図書館の場所と利用方法をギルドの受付に聞くためギルドの中に入る。総合ギルドの中は真ん中に半円状の受付が存在し、壁のそこかしこに紙がびっしりと張り付けてあったが、別に乱雑というわけではなく、一応、ランク、種別ごとに区切られているようである。


 その紙を物色しながらまさに初心者と言える装備の人達が話し合いをしている光景がいたるところで見られた。

 おそらく、プレイヤーの冒険者だろう。俺はナビさんの愚痴を聞いてあげてたことで完全に乗り遅れてしまっているな。

 いや、そもそも、まともに戦闘できるようになるのに時間がかかるから関係なかったか。

 もっと言えば、目的が目的だから常に同じ人と組むのは難しい。

 そういえば、俺に付き合って遅れたであろうハルは大丈夫だろうか。まぁ、社交性の塊のような奴だからなんとかするかな?


 考えが脱線していたことがいけなかったんだろう、出入口付近で立ち止まっていたことで他のプレイヤーに奇異の視線を向けられてしまった。気づいたときには視線が迷惑そうなものに変わっていたので慌ててカウンターに向かう。

やはりこういうギルドでの定番なのか、男のプレイヤーたちは美人な女性受付嬢の前に列を作っていた。

俺にはそんなこと関係ないので空いているカウンターに向かう。

空いているカウンターは2つで1つにはいかにも冒険者風という感じで筋骨隆々の人が座っていてもう1つにはほっそりとした研究職のような白衣を身にまとった眼鏡の男が書類とにらめっこしていた。

 図書館に用があるので申し訳ないがいかにも知ってそうな、書類とにらめっこしている白衣の男に声をかけた。


「すいません」

「むっ。僕に声をかけているのか」

「そうです。少し質問したいことがありまして」

「そうか。すまないね。僕は錬金術ギルドから助っ人として来ているギトスという者だよ。なにしろ突然増えた総合ギルドの仕事に他のギルドへの協力要請が申請される人手不足でね。質問といったけど先ほども言った通り僕は厳密には総合ギルドの職員じゃないからあまり答えられないよ」


 なるほど、プレイヤーが突然大量に押し寄せれば当然、人手は足りなくなるか。さすがに混雑時用のNPCなんてものを作ったら世界観が崩れてしまうから苦肉の策かな?

 そうするともう1つのカウンターにいた男は戦闘系のギルドから出向しているに違いない。


「あ、俺はウイングといいます。総合ギルドについてではなく、この町にある図書館の場所を教えてほしいと思い来ました。それと利用するときのルール、条件などがあれば教えていただきたいです」

「なるほど、たしかにその質問なら僕のところに来ることも頷ける。いいよ、教えてあげよう」


 そうして場所を教えてもらうことに成功したが、そのあとに聞いた条件に絶望することになる。


「図書館は総合ギルドを出てすぐ右に進むと生産ギルド支部が立ち並ぶ通りに出る。その通りの突き当りに大きな建物がある。それが図書館だ。この町の図書館は生産系ギルドの支部が多く並んでいる影響でかなりの蔵書があるよ。ちなみに総合ギルドを出てすぐ左側に進むと戦闘系・職業ギルドの並ぶ通りに出るよ。

続いて利用条件だけど、一般の人は図書館の入り口で1万ラーン預けるんだ。それでなにも問題なければ入室できる。種族的には部屋に入ることすらできない場合があるからね。そして、退出するときに預けたお金は返ってくる。ただし図書館の本を傷つけていた場合は弁済金として持ってかれるから注意してね」


 俺は条件を聞いて愕然とした。なぜなら最初の所持金は0ラーンつまり文無しなのである、

 ちなみに総合ギルドFランクの報酬はこんな感じである。


 町中クエスト


溝掃除依頼者 総合ギルド

 居住区の周りの溝掃除

報酬 一定区画ごとに200ラーン


家の修繕依頼者 トン

 専門家に頼むほどじゃないんだが家の壁の一部を虫が食い荒らしちまったみたいなんだ。

 穴埋めでもいいからやってほしい。

報酬 300ラーン



 全然足りない、どうやら昔はもっと安い料金で利用できたようだが、始まりの町というだけあって様々な人々が来訪してきてトラブルが絶えなかった。

 そのうえ、今回のプレイヤーが大量に来たことでの処置らしかった。

 でもこの料金を稼げるぐらいになったらみんな次の町に行ってしまっていることだろう。……何か抜け道は無いだろうか。

 そんなことを考えていると、


「例外としては、司書・情報ギルドの所属者はギルドのほうで立て替えてくれるから、問題さえ起こさなければ実質無料で利用できるよ」

「自分、職業が司書なのですが、司書ギルドはどこに行ったら入れますか!」

「お、おう。そうなのかい。ちなみにレベルは?」

「い、1です」

「それでは無理だろうね。それに司書・情報ギルドに所属する条件の一つとして総合ギルドのランクがE以上であることが必要だったはずだよ。そもそもFはお試し期間みたいなものだからね」

「そうですか……」


 これは想像以上に時間がかかりそうだ。なぜなら、まず総合ギルドランクのランク上げは救済処置を使えないうえ、司書レベルを上げるには本を読む必要があるが、図書館が使えない以上自分で買うしかない。どこで売っているか知らないがFランクの報酬で払えるだろうか?

俺がそう考えながら意気消沈していると


「司書のレベルを上げたいなら総合ギルドの資料室が使えるはずだよ」

「そんなところがあるんですか?」

「ああ、総合ギルドでは広く浅くクエストを発行してるから入門編や最低限の知識にまつわる本なら資料室から持ち出さないことを条件に資料を読めるはずだよ。資料室はカウンターの裏手にあるから総合ギルドに所属していれば入室可能だよ」

「ありがとうございます。さっそく向かってみます」

「あぁ、頑張ってくるといい」


 俺はお礼を言うと足早に資料室に向かう。


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