50.初級ダンジョン ボス戦開始
まじめに戦闘シーン書いたら長くなったので
2話に分けます。
ご了承ください。
次の日、午後に春花や瑠璃さんと合流するので午前中に初心者ダンジョンを攻略したい。
本当はもう1匹、従魔を仲間にした方が確実なのだがあまりその気になれなかった。
ダンジョンのモンスターはテイムするまで感情AIが積まれないのもそうだが、攻略のためだけにテイムするのも違う気がする。
ネットで調べた初級ダンジョンをテイマーが攻略する手順だが、とりあえず6匹そろえてから弱いやつを順次契約解除して強いやつに乗り換える戦法だった。
テイマーギルドで聞いた、プレイヤーのテイマーが従魔をよく捨てると言われていたのはこの攻略法が広まっていたからだろう。
確かにお金的にも楽だし効率もいいかもしれないが、俺はやりたくない。
他人に強要するつもりは無いが、今の従魔たちに愛着があるため捨てるという感覚がわからないのだ。
話が長くなったが、要するにダンジョンの魔物は必要に迫られなければテイムするつもりはない。
少なくとも今のメンツでクリアできそうなので1度、挑戦してみてから考えよう。
初級ダンジョンのボスはそれほど難しくない。
そこにたどり着くまで大変なだけで、前情報さえあればそれほどでもないのだ。
初心者ダンジョンはいろいろな状況を経験できるダンジョンと言えよう。
それに俺たちには秘策がある、他のプレイヤーより楽なはずだ。
俺の場合はシークレットクエストの報酬で手に入れた文豪のローブがあることも大きく、急いで装備変更することもない。
さすがに、Dランクのダンジョンに挑戦するころには装備の変更を迫られるだろうが。
何はともあれ今は目の前のことに集中だ。
俺は中ボスが落とした6階層から挑戦できるアイテムを掲げ、初級ダンジョン攻略に挑む。
砂漠エリアと雪山エリアに当たってしまいそれなりにアイテムを消費したが問題ない程度だ。
そして10階層の階層に降りる階段を確認したのでHPとMPを全快にしておく。
初級ダンジョンには時間的制限は無いのでハーメルは睡眠スキルを駆使して回復してもらう。
準備が終わり、いよいよボス戦に挑む。
10階層に入ると草原が広がっていた。
俺から少し離れた場所に緑色の集団がいた。
そう10階層のボスはゴブリンの集団だ。
ただし、ただのゴブリンの集団じゃない。
ゴブリンキング率いる様々な種類のゴブリンが10体いる。
種類は大体こんな感じだ。
ゴブリンナイト 職業 騎士
ゴブリンメイジ 職業 魔法使い
ゴブリンモンク 職業 僧侶
ゴブリンアーチャー 職業 弓兵
ゴブリンキング
この種類のゴブリンがキング以外はランダムに出てくるようだ。
今回は ナイト×3 メイジ×2 モンク×1 アーチャー×4 の内訳だ。
少しやりにくいが問題ないだろう。
ゴブリンキングは俺たちを認識するとゴブリンたちに号令をかける。
ナイトが此方に駆けてくる。メイジは魔法を準備しアーチャーは弓を構える。
俺たちも戦闘の準備を始める。
俺が盾を構え先頭に立ち、縦一列になって進んでいく。
矢が此方に飛んでくるが盾ではじく。
その間にナイトが接近してくるが、メイジの方は縦一列の俺たちに魔法を打てない。
射線上にナイトが入ってしまうからだ。
いよいよナイトたちと接敵しようというときに俺は魔法を使用する。
「ウォーターウォール!」
すると、俺とナイトの間に水の壁が現れる。
「グ、グギャ!」
ナイトたちは驚きはしたもののダメージが入らなかったため特に気にせず戦おうとする。
「チュウーーー」
俺とナイトの間に入ってきたハーメルが泥固めを発動する。
そう、先ほどのウォーターウォールは驚かせるためでも、ましてや攻撃の為でもない。
足元にある草原の土を泥に変えるために使ったのだ。
最初に砂漠エリアでハーメルにやらせたことの応用だ。
ちなみにウォーターウォールの本来の効果はこれだ。
アーツ
LV2 ウォーターウォール 消費MP10 ・・・ 水の壁を生成する。縦横の大きさは魔法力÷10m。持続時間は5秒。任意で解除可能。
俺の魔法力は10なので1m四方の水の壁ができる。
この範囲ならギリギリ前方の敵の足元ぐらいは泥に変えられる。
縦一列の陣形にしたのも相手の陣形をできるだけ広げさせないためでもあった。
他にも魔法や矢での攻撃をできるだけ減らす狙いがある。
その場から動けなくなったナイトをエラゼムの斧で確実に止めを刺してもらう。
その間に俺が盾で魔法や矢を防ぎながら前進していく。
少ししたら後方でエラゼムがナイトたちを全てポリゴンに変えたようだ。
メイジの魔法が初級の魔法であるボール系しかないうえ、アーチャーの矢も特にエンチャントなどで強化してあるわけではない。
俺の盾で十分対応できるというわけだ。
じりじりと近づいていき次のターゲットになったのはアーチャーたちだ。
弓が粗末なためかメイジよりも俺たちに近づく必要があったようだ。
「ファイヤーボール!」
次にファイヤーボールで飛んでくる矢を焼き払う。
アーチャーを制圧するために図書館の教本で覚えた。
効果はウォーターボールの火魔法版だ。
「グギャーーーー!」
アーチャーたちが放った矢を一方的に焼き払い、そのままアーチャーの集団に直撃する。
アーチャーはバラバラに逃げようとしていたが
「グガーーーーーー!」
ゴブリンキングの一喝で浮き足立っていたゴブリンが落ち着き、アーチャーたちは他のゴブリンと間隔を開ける陣形をとる。
.
これがゴブリンキングの種族特性「統率」の効果だろう。
種族特性「統率」は自らと同じ系統のモンスターを支配し命令を下せるスキルだ。
軍隊を作りたいテイマーやサモナーにはほしい逸材だろう。
テイムしなくてもたくさんの数は揃えられるはずだ。
アーチャーたちはこちらに弓を構えてくるが、そこに1つの影が差す。
「クーーー!」
魔法を連発していた俺に気を取られて、空から奇襲を仕掛けるヌエへの反応が遅れる。
4匹のうちの1匹を嘴で貫く。
先ほどのファイヤーボールのダメージがあったからか、その一撃で1匹はポリゴンになって消える。
その間に俺は隠密のアーツ、気殺を発動してアーチャーに近づく。
そして杖術のアーツであるスマッシュを発動する。
「グギャーー!」
突然の攻撃に反応できず吹っ飛ばされるが、杖自体が物理攻撃用ではないのでそこまでのダメージにならない。
しかし吹っ飛ばした先にようやく追いついてきたエラゼムがおり、斧による止めを刺す。
ゴブリンたちは空中と正面からの同時攻撃に再び混乱する。
ゴブリンは感情AIを積んでいるわけではないが思考パターンを持っており、ある程度戦術的な動きはできる。
しかし、度重なるイレギュラーな戦法についてこれないようだ。
メイジからの魔法を俺が受け止めつつ、ハーメルたちにアーチャーを倒してもらう。
問題はここからだ。
メイジとモンクは基本的にキングのそばを離れないので、どうしても5対4にならざるをえない。
近接がいないので、エラゼムの攻撃が通れば1撃で沈むだろう。
ここは少し強引な方法をとろう。
ヌエに空中で牽制してもらい、メイジの狙いを分散してもらう。
エラゼムの移動速度に合わせながらゆっくりゴブリンの集団に近づいていく。
ゴブリンキングは迎え撃つかのごとく腰の剣を抜く。
俺たちとゴブリンの集団がギリギリまで近づく。
「グガー!」
ゴブリンキングが剣を振り下ろしてきたので俺は横に避けて躱す。
「ウォーターボール」
ゴブリンキングの足元に水魔法をぶつける。
「チュウーー!」
ハーメルが泥固めを決めるがそれほど持たないだろう。
しかしその少しの時間が重要だ。
「……」
エラゼムがゴブリンキングと他のゴブリンの間に入る。
目的はモンクの撃破だ。
こいつを放置していると長期戦を強いられてこちらが不利になる。
強引にでも先に倒しておきたい。
いよいよクライマックスだ。