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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
2.迷宮都市(初級ダンジョン編)
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38.武術スキルを覚える前に



「そうか、なら何の武術スキルを覚えるんだ?」


 そう言われて思案する。

 今、必要なのは相手にダメージを与える担当だ。

 俺の職業であるテイマーと司書の組み合わせはどちらかというと魔法のサポートがメインだろう。

 暫定的に物理攻撃を覚えてもいいが中途半端になるのは目に見えている。

 ただ、攻撃力のある従魔を得るのはなかなか大変だ。

 そこそこ攻撃力のある奴と戦うには今のメンツでは不安すぎる。

 やはり俺が一時的でも攻撃担当になるしかないか……。


 そこまで考えて思い出す。

 ここ迷宮都市のテイマーギルドでは従魔の販売を行っていたはずだ。

 そこでモンスターを見て回ってから方針を決めてもいいかもしれない。

 そう思い、ダナンディーさんに聞いてみる。


「初心者コースを受けるのは少し待ってもらえますか?」

「ああ、それは構わないがどうしてだい?」

「自分、一応テイマーなのでテイマーギルドに行ってから決めたいなと思います」

「ふむ、そういう事か。こちらは業務で忙しい時でなければいつでも構わないよ」


 俺はダナンディーさんに礼を言うと総合ギルドを出る。 

 テイマーギルドは総合ギルドのすぐ隣にある。

 総合ギルドほどではないがなかなか大きな建物だ。

 看板はファーストのようなファンシーなものではなく、ライオンとドラゴンが戦っているような絵が描いてあった。

 ……あれはモーフラさんの趣味か?

 また一つモーフラさんの職権乱用疑惑が浮上するが、今は関係ないな。

 俺はそう思い直しテイマーギルドの中に入る。


「どうぞ、いらっしゃい。何の用?」


 すごい不機嫌な感じの声が聞こえてくる。来るタイミングを間違えただろうか?

 不機嫌さを隠そうともしない短髪の女性がカウンターにいた。


「俺はプレイヤーのウイングといいます。テイマーギルドの所属で、ここはモンスターの販売をしていると聞いたので見に来ました」


 すると、相手は何か気に障ったのか。


「はいはい、いいですよ。どーーーーぞ、見に行ってください」

 

 と、こちらも観ずに不機嫌さ全開で答えてくる。

 ……どこにいけばいいか教えてもらっていないのだが。

 俺がいつまでたっても動かないのでいぶかしげに聞いてくる。


「なに? モンスターを見に来たんじゃないの? 冷やかしなら帰ってよ。それともあなたも従魔を売りに来たの?」

 ……さすがの俺も最後の一言にカチンと来てしまった。


「……何があったか知らないですがこちらも見ずに、ずいぶんな言いようですね。案内もせずに職務怠慢ですよ! それに俺がハーメルたちを売るわけないだろう。馬鹿にするのもいい加減にしろよ!」


 確かにハーメルやヌエは普段、寝てばかりだし、我関せずだったりすることも多いが、読書がメインの俺とはすごく相性がいい。

 読書している間、思い思いに時間を過ごしてくれるのはとても助かる。


俺が怒鳴るとようやくこちらを向いてくる。

そこで今まで認識していなかったハーメルたちを視認したようだ。

俺の従魔の様子を見て何かを感じ取ったのか、すごい驚いた顔をした後、ばつの悪い顔をした。


「悪かったわね。最近、簡単に従魔を手放す人が増えててね。買い取れみたいなことを言ってくるやつとか増えたからてっきりそういう奴かと思ったのよ」


 そう言ってカウンターの女性はしゃべりだした。

 どうも俺がファーストで読書を楽しんでいた頃の話のようだ。

プレイヤーたちはテイマーギルドの従魔販売をただの商売の類と思っていたようで、やれ買い取れとか強い従魔を寄越せとか散々言ってきたらしい。

 挙句の果てにはテイマーギルドどころか迷宮都市を追放されたプレイヤーまで出たとか。


 しかし怪我の功名か、追放者が出てからあまりそんな事を言ってくるやつはいなくなった。

 それでもプレイヤーが文句を言ってくることは多いという。

 それにプレイヤーが従魔を簡単に手放すのは治っていない。

 最終的にプレイヤーがモンスターを手放す場合は料金を取ることになったほどらしい。

 当然、野に放てば迷宮都市のルールに抵触するので逃がせない。

 そういう理由からか一時期、プレイヤーがテイマーをやめる事も増えていたという。

 俺が見たサイトにそんな内容は無かったから情報が古かったようだ。

 

このような経緯から、この女性はあまりプレイヤーのテイマーが好きではないそうだ。

それに加えて俺がいきなり従魔販売のことを聞いてきたのでまたかと思ったらしい。

そこまで聞いて気になったことがあったので聞いてみた。


「別に従魔を手放すやつばかりじゃないでしょう?」

「確かに従魔を大事にしてくれているやつもいたのよ。だけど滅多にここには来ないのよ。そういうやつは自分の従魔は自分で見つけるスタンスのやつばかりだからね。よほど欲しいやつがいないと興味を示さないのよ」


 なるほど、確かに従魔を愛でるタイプのプレイヤーはそういった事にこだわりがあるかもしれない。

 運命的な出会いとかこういうタイプの従魔以外いらないとかいろいろあるのだろう。


「そういうダメなやつらじゃないなっていうのは、あんたの従魔を見ればすぐにわかったことね。

ちゃんと見もせず失礼な態度とって本当にすまないと思っているわ」


 そう言って頭を下げてきた。


理由はどうあれあの態度はいただけない。しかし、俺も1プレイヤーとして考えさせられる問題だ。

ハーメルたちも気にしていないようだし、今回は不問にしよう。


「事情は分かりました。いろいろ言いたいことはあるが今回は水に流しましょう。それで従魔販売

の説明を聞きたいのですが?」


 そうして聞いた話はこうだ。


1.ダンジョン内でテイムしたモンスターで手放す場合はテイマーギルドに連絡する。

2.テイマーギルドの職員に手放す従魔を譲渡する。

3.販売時の値段は主に維持費である。

4.購入するときはギルド職員に所定の場所に案内してもらう。

5.テイマーギルドにいる従魔は仮契約状態のため、双方の合意があればその場でテイムを使用すれば契約できる。

6.勝手に契約した場合は罰金が発生する。

7.購入する従魔が決まったらギルド職員に伝えて、問題なければ契約できる。


 そして、ここにもう一つの追加ルールとして


8.プレイヤーが従魔を手放すときに正当な理由が無い限り販売時と同じ値段の料金が発生する。


が追加されたわけだ。

勝手なことしてたやつらはこれでほとんど来なくなったそうだ。

おそらくテイマーをやめたのだろう。


話を聞いた後テイマーギルドで販売しているモンスターたちのところに案内してもらう。

しばらく歩いていると眼前に大きな扉が現れる。

この先にモンスターはいるらしい。


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― 新着の感想 ―
[一言] ウイングは来て早々の発言が不味かったですね。恐らく普段であれば気にする発言でもなかったのでしょうが、来て早々に売買の話をし始めたことでまたその手の人間と思われてしまった。ようはタイミングが悪…
[気になる点] 初めて訪れるギルドから初めて適当な扱い受けただけでキレるのは沸点低すぎませんか。実際この話以前は語気を強めたことはなかったので急にキレるのはびっくりしました。せっかく読書好きな設定です…
[一言] なんか主人公があんまり読書家って感じしないなぁ。幼すぎる。
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