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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
2.迷宮都市(初級ダンジョン編)
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36.迷宮都市への道中と委員長の豹変

 俺は今、迷宮都市への道中にいる。

 とても心休まらない状況が続いている。

 何故そんなことになっているのか。

 話は少し前に遡る。

 

 再びログインした俺たちは早速、迷宮都市へ向かうことにする。

 俺も初めての外出だ。……10日以上ゲームをしていたというのに。

 門のところに行く前にパーティー登録をしておく。

 パーティー登録するとパーティー内の経験値が貢献度に応じて振り分けられるようになる。

 もし、パーティーになっていない者たちで共闘すると経験値は貢献度の一番高かった人が総取りすることになる。

 他にもパーティー内チャット等様々な恩恵があるがここでは割愛する。

 パーティー登録した俺たちは迷宮都市方面の門へ向かう。


「なにようかね?」

「迷宮都市に行きたいです」

「ならギルドカードを見せなさい、戦闘ギルド所属でないものは護衛を付けるか、乗り合い馬車に乗らせる決まりなんだ」


 俺とリーンはそれぞれギルドカードを差し出す。

 それを確認した衛兵は


「問題ないようだ。ここを通ることを許可しよう」


 そういって門を開けてくれたので礼を言いながら通過した。


 ……すごいな。

 それしか言葉は出なかった。

 本当にゲームの中なのかと思うくらいリアルな草原と町中から観たときとはだいぶ印象が違う青く澄み渡った空。

 草原をはしる1本の道。おそらくこれが迷宮都市に続く道だろう。


「チュウー?」

「クー?」


 そんな声にハッとして歩き出す俺たち。

 大体1回のログイン丸々使って歩けば迷宮都市に着けるはずだ。


「ウォーン」


 しばらく歩いていると遠吠えのようなものが聞こえてくる。

 おそらくウルフ系のモンスターだろう。

 テイマーにおすすめの1種として載っていた。

 そうして3匹ほど俺たちの前に姿を現す。

 このゲーム初めての戦闘だ。


「よし、俺たちで足止めをするからリーンは……」


 俺がリーンに声をかけようとすると俺の視界からリーンが消える。

 すると

「フフフフフ……」

「ギャイン!」


 なにやら前方で声がする。

 そーっと前を向くとすでに2匹目に止めを刺しているリーンの姿があった。

 おい!

 心の中で突っ込みを入れるが声が出ない。

 リーンの顔が獲物を見つけて舌なめずりをするハンターそのままだったからだ。


「フフフ」


 そんな笑い声が聞こえてくる。

 そして最後の1匹が無残に切り刻まれる。


「クーーン」


 最後の1匹はもはや抗うこともできず悲しそうに声を上げ消えていった。 

 このゲームではモンスターを倒すとポリゴンとなって消える。

 そして剥ぎ取らずとも戦利品がアイテムボックスに送られるという寸法だ。

 俺のほうにはアイテムは無い。

 当然と言えば当然なのだが貢献度がないからだろう。


 俺は恐る恐るリーンに声をかける。


「お、おい。大丈夫か」

「ん? どうしたの?」


 いつもの調子のリーンが返答する。

 気のせいだったのだろうか?

 俺は自分に言い聞かせるようにしながら先に進むことを提案するのだった。


 ……どうやら見間違いの類ではないらしい。

 リーンは敵を見つけると嬉々として突撃していく戦闘狂だった。

 日頃のストレスを発散するかのように剣を振り回して敵を殲滅していく。

 しかも何気に体の使い方が良く、囲まれないようにうまく立ち回っていた。

 その戦闘センスと俺の勧めた脳筋ビルドがかみ合い、このあたりで止められるものはいない。

 あの試験官が青ざめていた原因はこれだろう。


 このまま親戚の子供に引き合わせてはまずいな。

 しかもリセマラできない影響で他のビルドに変更できない。

 そのためリーンは近接特化をひた走るしかない状態なのだ。

 他の戦闘スタイルに変更できるビルドならそっちの方向を勧めることができるので、落ち着けることもできたかもしれないがもう不可能だ。

 仕方ないのでこのまま直してもらうしかない。


 リーンが戦闘に集中しきっているのを確認して1人と2匹は円陣を組む。


「いいか。何とか迷宮都市に着くまでにリーンの1人で突っ走る悪癖を治すぞ」

「チ、チュウ!」

「ク、クー!」


 俺たちは主従の関係になって以来、初めて心を一つにしてことにあたることになった。

 ……最初の理由がこれというのも悲しいことであるが。


 ……………………


そして今に戻る。

 俺たちはリーンが飛び出しそうになったら二手に分かれて足止めする。

 片方はもちろん相手モンスターだがもう一組はリーンだ。

 このまま戦闘スタイルを確立してしまうと親戚の子供と合流した時に一緒にプレイできないだろう。

 ひとまず足止めして全体を見る癖をつけさせようと思う。

 リーンは最初、俺たちが邪魔するのを不思議に思っていたようだが、目的を思い出させる。

 親戚の子供のためにプレイしているのに敵を独り占めするような戦い方でどうするのかと。

 そこでようやく自分の現状を把握し、しまったという顔をする。

 そこからリーンの悪癖修正ミッションが開始されるのだった。


「つ、着いた~!」


 俺たちは今迷宮都市入口の門前にたどり着いていた。

 ここに来るまでにどうにかモンスターを見つけるといきなり飛び出す悪癖は治せたと思う。

 それ以外が不安ではあるが。

 本当はこの道すがら、前衛になれるモンスターをテイムしようと画策していたがリーンがすべて倒してしまった。

 ほとんど貢献度がないであろう俺のテイマーがレベルアップするぐらいに。


「今回は本当に助かったわ。ゲームで力になれるかわからないけど何かあったら手伝うわ」


 そういってリーンは迷宮都市へ入っていった。


「お前らもお疲れ様。ゆっくり休んでいてくれ」

「チュ、チュウ……」

「く、クー……」

 2匹を休ませた俺はそのまま門前でログアウトすることにしたのだった。


主人公はいまだにまともに戦えていませんね。

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― 新着の感想 ―
近い未来にでっけぇ斧とか振り回してそうやな
別のゲームものだと“狂戦士バーサク”特性を持っていたりするよねぇ、鬼人。
[一言] 最初は「やっぱりwww 娯楽耐性ない優等生はこうなることあるよねwww」とか思ってたんだが。 ガチすぎる特攻系「ゲーム」初心者ムーブにすぐに笑いが引っ込んだ。 翼兄、ハーメル、ヌエ、お疲れ様…
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