23.テイマーギルドにて
テイマーギルドに着いた俺はカウンターに向かう。
「おや~、お久しぶりですね~。いつ来るか~、今か今かと待っていたんですよ~。
登録してから一度もテイマー系のクエスト受けてないですよね~? ……はう~、またかわいい子を連れてきましたね~」
前回はハーメルがモーフラさんの洗礼を受けたが、今度はヌエがその洗礼を受けそうだ。
ハーメルはというと、さっきまでぐっすり寝ていたのにテイマーギルドに入った瞬間、俺のコートの中に潜り込んでプルプルと震えだした。
……よほど前回のことがトラウマになっていると見える、これで此処の預り所にでも預けようものなら真っ白なハツカネズミみたいになっているかもしれない。
ヌエはというと、意外にもモーフラさんのスキンシップがいやではないのか気にせず羽繕いを続けていた。 いくら羽繕いしたところでモーフラさんのスキンシップによりすぐに乱されるのでエンドレス状態になっているが、それを気にすることはない。
……ヌエはハーメルより大物かもしれない。
「そろそろいいですか?今モーフラさんが撫でまわしているヌエの従魔登録に来たのですが」
「この子はヌエというのですね~。そういうことなら~、私にお任せください~。きっちり登録して来ます~」
「種族とかは聞かなくていいんですか?」
モンスターエッグから孵ったこいつは俺が読んだことのある本には載っていなかったので、この辺に生息しているモンスターではないはずだ。
俺がそう聞くと。
「私をなめてもらったらこまりますよ~。これでもこのテイマーギルド、ファースト支部の支部長なんですから~、何の種族なのかはすぐにわかりました~」
なるほど、確かにテイマーギルドの支部長を任せられているくらいなのだからそれぐらいのことは判断できるということか。
ということは「ナイトクレイン」自体はそれほど珍しい種類のモンスターというわけではなく、単にこのあたりにいないという事なのだろう。
「ヌエちゃんの登録は終わりましたよ~。他に何か用事はありますか~」
そう聞かれたので、ナイトクレインの好物や注意点等を聞いたり、この辺のモンスターの分布や生態を確認したりした。
さすがモンスターの専門家だけあって本に書くときなどに省かれたり、簡単に書かれてしまったりすることなどの有益な情報をたくさん教えてもらった。しかし、モンスターを扱っている関係上出来上がった資料は随時、司書ギルドの管理する図書館などに寄贈ないし、管理の委託をしているようだ。
「そういえばハーメルちゃんは~何処に行ったのですか~?」
ビクッとハーメルがコートの中で飛び跳ねる。
「今はぐっすり眠っているので、寝かせておいてあげてください」
仕方ないので、誤魔化すことにした。
「そうですか~。残念です~。最近~、新しい登録者も少なくなってきて暇だったので~、かわいいハーメルちゃんと遊ぼ~と思っていたんですけどね~」
危なかったな、そんな状態でハーメルを預けたらどうなっていたことか。
とりあえず危機を脱したことで安心したのかハーメルは本当に寝始めたようだ。
……嘘から出た真という事でモーフラさんには申し訳ないが、ハーメルがハツカネズミにならない為にもこの辺で話を切り替えておこう。
「登録が完了したのでしたら、一度テイマーのクエストも見ておきたいので案内してもらえますか?」
「わかりました~。ただ~、ハーメルちゃんもヌエちゃんも~戦闘できるほど~ステータスが高くないので~、無理しないでくださいね~」
確かに2匹ともステータスは初期値のようなものだ。もっと言うならヌエに至ってはまだ「幼体」の状態から抜け出せていない。
ここは町中、町の周りでできるクエストを探すとしよう。
俺たちはモーフラさんの案内でクエストの張り出されている一角に向かう。
総合ギルドとは違い、大きい掲示板にはそれほどクエストは張り出されていない。
モーフラさんは俺たちを案内すると仕事があると言って名残惜しそうに離れていった。
自分のスキンシップを受け入れてくれるヌエも相当気に入ったようだ。
できれば、すぐにでも図書館に行きたいところだがモーフラさんにクエストを見に行きたいと言ってしまったので、一応物色してみる。
テイマーギルドにある依頼だけあり、夜の見張りや狭い所への探し物などモンスターの特性や体格が有利に働くクエストが多い。
簡単なところでは自分の従魔のステータスを報告するというのもあった。
その中で異彩を放つクエストを見つける。
孤児院での子守 依頼者 リエリア
孤児院で子供たちのお世話を手伝ってほしい。
報酬 200ラーン
貢献ポイント 総合 2P
テイマー 1P
総合ギルドのFランククエストでは貢献度が一律で1だったので表記はなかったが、それ以上のクエストとなると貢献ポイントも表示される。
この依頼は必ずしもテイマーが受ける必要性はなさそうだがテイマーギルドにある意味はなんだろうか?
また、来た時に残っていたら受けてみてもいいかもしれない。
俺はそう思ってギルドを出ようとしたら。
「ちょっと~、待ってください~。何もクエストを受けずに帰るつもりですか~?」
仕事に戻ったはずのモーフラさんが引き返してきて引き留める。
どうやらこの依頼を俺たちに受けてほしいそうだ。
「リエリアは私の幼馴染で~、いつも大変そうにしているのでギルドに依頼してみるのを勧めたんですが~、なかなか受けてくれる人がいないんです~」
少し職権乱用ではないかと思ったが、本当に大変らしいという事と、いつ向かってもいいとのことなので一応受けておくことにした。
少々予定外のこともあったがこれで読書に打ち込むことができそうだ。