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243.エピローグクエストに向けて④

 新入り2匹の育成が一区切りついた俺は、再びノーレッジで司書ギルドのクエストをこなしていた。

 トーザさんのレポートに記載されているオススメのクエストを優先してこなしながら、ノーレッジ周辺で従魔達の育成を進めていく。

 もちろん休憩がてら読書を楽しむのも忘れない。

 今日もまた、レポートで勧められているクエストを受ける事にする。


 …………。


 やってきたのは図書館ダンジョン。

 クエスト内容は図書館ダンジョンの点検である。

 ダンジョン内の備品はいくら傷つけても時間経過で修復していく。

 では何を点検するのかといえば、経過観察である。


 今は安定しているとはいえ、偶発的に発生した図書館ダンジョン。

 ある程度解析が進んでいるが、何がきっかけで変異するかわからない。

 なんなら俺が進めているチェーンクエストで起こるバグのような現象も、ノーレッジでは最近発覚した事だ。

 未だ新発見がある以上、定期的に確認するのは必須だろう。


 今回図書館ダンジョンに連れてきたメンバーは、ハーメル、グリモ、エラゼム、ベルジュ、フローラ、マリアの6匹である

 新入り2匹はレベル上げもそうだが、図書館内を自由に飛び回れるサイズと「運搬」スキルのおかげでほとんどの本を運べるので、十分に戦力だ。


 今回は固定メンバーだったジェイミーを外したパーティーのテストも兼ねている。

 待機組はヌエ、カレル、ジェイミー、シラノがいるので、昔みたいにジェイミーが寂しがる事もないだろう。

 レイド戦までに様々な編成を試していこうと思っている。


 図書館ダンジョンへ足を踏み入れた俺は、さっそく館長の“鍵束”を取り出す。

 基本的には裏口の扉を開けてノーレッジへ向かうために使用されるアイテムであるが、鍵束なので当然他の鍵もまとめられている。

 カウンター裏の職員扉やテーブルの引き出し。備品倉庫や長旅で疲労した人たちのための休憩室。

 そのような部屋はこのクエストを受けている人物以外が入る事は稀だ。


 まず、図書館ダンジョンを攻略中のパーティーは鍵束を持っていないので入れない。

 逆にいえば、図書館ダンジョンを攻略するのに、これらの部屋に入る必要が無いのだ。


 またこのダンジョンは素材集めやレベル上げに向いていない。

 俺でさえ純粋な戦闘目的で潜るのをあきらめたダンジョンだ。

 数々の面白いギミックはあるが、進んで調査する人物はほとんどいない。

 だからこそ、このクエスト受ければ司書ギルドからの評価は大きく上がるのだ。


 早速入り口側のカウンターに入る。

 鍵束から「カウンター裏」と書かれた鍵を取り出し、目当ての扉にある鍵穴に差し込んで回す。

 鍵を引き抜き、扉を押すと抵抗なく向こう側へ開いていく。

 

 中はやや薄暗い個室という印象だ。

 いくつか本棚があり、それぞれ2~3冊の本が入っている。

 本棚にはそれぞれ要点検や要修復など書かれており、そのまま表に戻せない状態の本が納められているようだ。


 この辺りは事前に説明を受けている。

 こういう部屋にある本たちは図書館ダンジョンができる時に、本であると認識されなかったらしくギミックに組み込まれなかったそうだ。

 何度も調査が行われたが、現在まで変化があったという報告はないという。


 あくまで今のところという話なので、当然今回のようなクエストでは調査対象である。

 俺はマリア達に周囲を警戒してもらいながら、部屋に入った。

 ダンジョンなので埃などは積もってはいないのだが、何となく不気味な雰囲気を纏った空気を感じる。

 気分の問題かもしれないが……。


 奥まで入った俺は要点検と書かれている本棚から1冊を取り出して確認してみる。

 流し読みしていくが特に問題があるように見えず、特にギミックが発動することもない。


「……あっ」


 なんで要点検に入っているのかと思ったら、急に話が飛んだ。

 どうやら製本された時点で落丁している本らしい。

 次のページに抜けたページの所在を確認して、再提出するべしと書かれた付箋が張られている。


 残念ながら、この本が正しい状態になる事はない。

 こういう個室にある本は特殊なギミックを持たないが、その本があった部屋から取り出す事ができないそうだ。

 また、自己修復機能は働くらしく、足りないページを差し込んでもいつの間にかなくなっているらしい。

 取り出せずとも直す試みが行われているところに、司書ギルドの矜持を感じる。

 とりあえず、カウンター裏およびカウンターテーブルの引き出しには異常はなかったので他の部屋へ向かう。


 次に向かった個室は、横倒しの机とその周りに散乱している文具が当時のパニックを伝えてくるようだった。

 この状態が正常らしく、いくら片付けてもこの状態に戻ってしまうそうだ。

 点検用の資料と照らし合わせながら、机や文具を確認していく。

 ここも変化は無いようで、特に報告するような事象は発生していなかった。


 そのほかの個室や備品保管庫も確認していくが、特段変化している部分は無いようだ。

 とりあえず、クエストで指定されている項目の点検は終わったので、このまま報告に行けばクエストはクリアだろう。


 ただ、このクエストは点検以外の項目を調査すれば、追加報酬をもらえる仕組みがある。

 ダンジョン攻略の時のように本棚を調べても良いが、もう一つ追加報酬がもらえる項目があるのでそちらに挑戦したい。


 俺は図書館ダンジョンの隅にある少し開けたスペースへ向かう。

 やや不自然に設けられた開けた場所の床には、跳ね上げ扉があった。

 俺は鍵束の中から「危険」とだけ書かれた鍵を取り出して、跳ね上げ扉についている南京錠を開錠する。


 中は薄暗いものの、地下へと下る階段があるのは確認できた。

 俺はベルジュに光の精霊術で光源を確保してもらいつつ、先頭を進むように指示する。

 一応何かあった時にサポートできるように、ベルジュの背中にハーメルを乗せておく。


 周囲を確認しながら進むこと数分。

 地下室に到着したようで、目の前に鉄の扉がある。

 鍵穴や南京錠のようなものはなく、蝶番の向きから手前に引けばそのまま開くようだ。


「準備はいいな? じゃあ、入るぞ」


 改めて従魔達に声をかけた後、俺はゆっくり扉を引いた。


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