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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
1.彼がゲームをする動機
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21.チャラエルフ再び

 ログアウトしリビングに向かうと春花がお菓子を食べていた。


「あっ、お兄ちゃんもゲーム終わったんだね」

「ああ、今終わったところだ。ところでゲーム内で気になることを聞いたんだが…………」


 俺はコロから聞いたことについて聞いてみた。


「ウーン、私たちの仲間にもデメリットがきつい子がいてなかなか思うように進めていないけど、その対策を一緒に考えるのも楽しいよ」


 妹はどうやら本当にいい仲間に巡り合うことができたようだ。


「実はそのデメリットを軽減させるヒントが最初の町にあったぞ」

「なにそれ! 詳しく教えてよ」


 俺は総合ギルドの資料室にある本のことを簡単に説明する。


「くぅ、そんなことが書いてあるなんて…………。お兄ちゃんそのこと誰かに話してないよね?」

「どうした急に? たまたま知り合ったやつに聞かれたから普通に答えたけど。」


 そう言うと春花はため息を吐きながら話し出す。


「多分、今は始まりの町に人がごった返していると思うよ。ダンジョン攻略が進んでいないのもプレイヤーたちがギスギスし始めているのも聞いたんだよね? その理由である種族特性のデメリット対策ができるとわかれば今まで見下されてきた種族の人たちがごった返すと思うよ」


「そうか? 一応聞いてきたやつには荒らさないように他のプレイヤーにも伝えてくれって言っておいたぞ」

「甘い! 今私が食べているメイプルシロップがけシュガーシュークリームより甘いよ! ゲーマーの本気をなめ切ってるよ!」


 ……なんだ、その甘ったるい名前のお菓子は、しかしそうか俺よりゲームに詳しい春花が言うんだ。かなりまずい状況らしい。

 自分が蒔いた種だ。一度、総合ギルドに顔を出すべきだろう。


「お兄ちゃん責任感じてるんだ……。でもそういうことする人はいつかはやらかす人だろうから遅いか早いかの違いしかないから気にすることないよ」


 かなわないな。妹には俺の考えてることが筒抜けらしい。


「まぁ、起きてしまったことは仕方ない。何かあったときに考えればいいか」

「うん! ゲームは楽しまないとね」


 そう言って互いに自室に戻った。


……………………


 再びログインすると総合ギルドの噴水のそばに出てくる。

 ログアウトした時には聞こえてこなかった喧噪が聞こえてくる。

 どうやら妹の危惧していたことが起こっているようだ。

 ちなみに最初の町と迷宮都市の間には馬車による送迎があり、最短で2時間半で戻ってこれる。プレイヤーは一度自分の足で迷宮都市に行かないと利用できないようだが。

 おそらくそれを使ってきた連中だろう。

 俺は足早に総合ギルドに向かう。


「俺たちが先に使うって言ってんだろう!」

「何よ! 次は順番的に私たちでしょ。横入りしないでよ!」


 俺の耳にそんな男女の言い争いが聞こえてきた。

 資料室前に向かうと男性だけで組まれたパーティーと女性だけで組まれたパーティーが口論している最中だった。その間で仲裁しているのはレーナさんだ。


「他の人の迷惑になるので喧嘩は外でやってください!」


 声にいつもの優しい感じは無く本当に迷惑していそうだ。


「どうしたんですか? レーナさん」

「あっ。ウイングさんそれが………………」

「ああっ、お前は!」


 レーナさんが言い終わる前に口論していた男性パーティーの1人がそんな声を上げる。

 俺とレーナさんが声のした方向に目をやるとチャラチャラしたエルフがいた。

 ……はて? どこかであったであろうか。

 俺が首を傾げるとチャラエルフは癇に障ったのか。


「てめぇ、俺のこと忘れてやがんな! 今回もレーナちゃんとイチャイチャしやがって」


 そのセリフで何となく思い出した。前にカウンターで俺とレーナさんが話し込んでいた時にいちゃもんつけてきたチャラエルフだ。


「お前のせいで他のやつから白い目で見られるわ、レーナちゃんに嫌われるわさんざんだったんだぞ!」


 男は言うが早いか腰に差していた剣を抜き放つ。

 先ほどまでいがみ合っていた2つのパーティーもただならない雰囲気を察したのだろう、慌てて止めに入る。


「おい、お前何やってるんだ!」

「そ、そうよ! そこの人は関係ないでしょ」

「うるせぇ!!」


 チャラエルフは止めに入ったやつらを振り払うと俺に向けて剣を振るおうとする。


「んなっ!」


 しかし、チャラエルフの剣は見えない壁に阻まれるのだった。


「何しやがった、てめぇ!」

「特に何かしたわけじゃない。しいて言うならPKに関わらないように設定していただけだ」


 最初の設定を決めるときにPKに関わるか選択できるので、本を読むことが目的の俺は迷わずNOを押していただけだ。


「だ、大丈夫ですか!」


 レーナさんが心配して駆け寄ってくる。

 するとギルド入り口のほうから槍を持った衛兵が複数走ってきた。


「ギルド内で騒いでいるのはお前たちか!」


 さすがのチャラエルフ達も衛兵の登場に全員が押し黙る。


「私が説明します」


 レーナさんが衛兵に事情を説明する。


「そうか、わかった。そこのテイマー以外のプレイヤー! 詰め所に来て事情を説明してもらう。来てもらうぞ!」

「なっ、なんで私たちもいかないといけないのよ! 連れていくならそっちのパーティーだけでいいじゃない!」

「君たち自分の頭の称号が見えないのか?」


 するとどうやら以前チャラエルフについていた「チンピラ」の称号が男性・女性両パーティーメンバー全員についていた。


「なっ!」

「事情は聴いているから確認が取れればその称号は消える。しかしここで出頭を拒めば更生プログラムを受けないと消えなくなってしまうぞ」

「ぐっ。」


 その女性は悔しそうな顔をしてチャラエルフ達とともに連行されていった。

 遠巻きに事態を見守っていたプレイヤーであろうやつらは静かに資料室前に並びだした。

 …………意図せず問題が解決した。

 チャラエルフ、いやな奴だったが最後にいい仕事をしてくれたようだ。


  ちなみに、この騒動のさなかハーメルはいつも通り俺の肩で寝ていて、ヌエは羽繕いしていた。

 自由な奴らだ。


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