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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
7.エルフの皇国
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156.エルフの国

 俺がやってきた国、アールヴ皇国はエルフが主権を握る国だ。

 国土の7割が森に囲まれており、住人は森の恵みを糧にして日々を過ごしている。

 皇都の中心部には一際大きな湖があり、その畔に皇族の住まう宮殿があるらしい。


 本で調べた限りではアールヴ皇国の住人はエルフが1番多く、続いて獣人、その他と続く。

 特に獣人は狼や犬系が多く、その嗅覚や身体能力を生かして森での狩りを生業にしている者がほとんどだったそうだ。

 しかし現在、アールヴ皇国の皇都ルナにはほとんど獣人の姿が見られない。

 その辺りは、今起こっている紛争に関係してくる。

 この紛争の原因については有名らしく、ここに来る前に魔物使いの国にいたエルフのNPCに聞いてみると簡単に教えてくれた。


 現在争っているのは、国の主権を握っているエルフとこの国でエルフに次いで多く住んでいる獣人達である。

 何故この2種族が争う事になってしまったかを語るには、この国の起こりについて知っておく必要がある。


 この国の皇都にある湖はエルフ誕生の地と言い伝えられており、かつてはその湖周りでエルフ生誕を祝う祭事が行われていたらしい。

 その祭事を取り仕切っていた一族の末裔が、現在の皇族であるそうだ。


 アールヴ皇国はその国土のほとんどが森で覆われているが、エルフ達が誕生した当初から湖の周りはそれなりに大きな森だったそうだ。

 大きな水源と木々の実りあるこの森は、当然他の種族やモンスターに狙われることとなる。


 当時のエルフ達は、このままでは自分たちが森から追い出されてしまう事を悟ると、他の種族たちとの共存の道を模索し始めた。

 そうして招き入れたのが、狼や犬の獣人達である。

 どういった経緯で協力関係になったかは分からないそうだが、その同盟がのちのアールヴ皇国の基礎となったそうだ。


 それから長い年月が過ぎ、数の増えたエルフと獣人が森全土を掌握したことで、アールヴ皇国が誕生することとなった。

 その中でエルフの祭事を取り仕切っていた者たちが皇族を名乗るようになり、国としての政務を担うようになる。

 当時の獣人達はそれに異を唱えることなく受け入れ、アールヴ皇国は森が広がっていくのに合わせて大きくなっていった。

 

 ここまでが国の起こりについて言い伝えられている範囲である。

 ところどころ不明瞭な点もあるので、機会があれば調べてみたいと思う。

 そして、問題はこの後である。


 長い年月が過ぎ、森の広がりが止まった辺りからエルフと獣人との間で小競り合いが起こる様になった。

 拡大が止まった森では、増え続ける住人達の衣食住を支えられなくなったことが原因であるとされる。


 ここで獣人達はエルフが国の主権を握っている事に危機感を覚えた。

 “いつか強権を用いて、自分達を排除するのではないか? ”と。

 そうした不安が獣人達の中に広がっていく中で、ある獣人が声を上げた。

 “そもそも一緒に国を興した獣人一族が皇族か、それに準ずる地位にいないのが問題である”と。

 

 ただ、この時点で最初に森を訪れた獣人の一族に連なる者達がどこにいるかわからなかった。

 このままでは「我こそは一族の末裔である」と偽るものが出てくるのは間違いないだろう。

 そういった混乱を避けるためエルフの皇族達は、その提案を却下した。


 提案が却下された獣人は、エルフが獣人を対等に扱う気はないと判断してクーデターを画策する。

 そのクーデター自体は未然に阻止されたそうだが、各地に散っていた獣人の同胞たちが決起し、現在の紛争状態に発展してしまったという。


 現在はアールヴ皇国が他の国と交流を持つようになり、以前よりは紛争地域も縮小傾向にあるようだが、いまだ激しく戦闘が繰り広げられているという。

 この皇都では治安の維持のため、ほとんどの獣人を締め出している状態らしい。

 そのことで、余計に獣人達は不満を募らせているらしいが……。


 俺は現在、従魔達を連れて皇都の中央を走る街道を歩いている

 この街道はかつて祭事を行うために作られた参道を利用したもので、皇族たちの住む宮殿へと続く。

 道の両端には木造建築の建物が並んでおり、その周りを大樹が取り囲むように自生しているようだ。

 建物は1階建ての物が多く、木々の成長を邪魔しないように配慮されている。

 皇都というほどだから、もう少し切り開かれていると思っていたが森の木々を極力残す方針のようだ。


 しかし、そんな穏やかな光景とは裏腹に紛争の為か、どことなく張り詰めた雰囲気が漂っている。

 道を歩いている住人の姿は少なく、人を見かけてもプレイヤーと思わしき集団であることが多い。

 そのプレイヤーたちも、どことなくイライラとした表情を浮かべていた。

 厩では新しい土地にソワソワしていたジェイミーも、そんな雰囲気を感じ取ったのか、周りをキョロキョロ見渡すだけに留めているようだ。


 ……ここで起こっている問題は、俺が想像した以上に深刻かもしれない。

 アールヴ皇国にプレイヤーが出入りするようになってからそれなりの時間が経っている。

 それにも関わらず、いまだワールドクエストクリアの一報が無かったことから、ここの紛争がかなり根深い問題である事は想像できた。

 しかし、先ほどから見かけるプレイヤー達の表情を見ると、俺の想像よりさらに深刻な状態の可能性が高い。


 俺は紛争には興味が無いので、巻き込まれないうちに目的を達成したいところだ。

 逸る気持ちを抑えつつ、図書館の位置を確認するべく総合ギルドへと向かった。


 ……………………。


 俺は今、全速力で来た道を戻っている。

 グリモ以外の従魔はマイエリアに預けており、今は身一つで全力疾走している状態だ。

 どうしてそんなに焦っているかというと、総合ギルドで聞いた話に起因する。


 図書館の場所を聞くために総合ギルドへやってきた俺は、カウンターが混んでいることを確認するとクエストボードに紙を張り付けていた職員に声をかけた。

 職員は多少不機嫌な表情を浮かべていたが、俺が図書館の場所を聞くと少し驚いた後、何故か残念なものを見るような表情を浮かべる。

 俺が職員の表情に困惑していると、近くで俺の話を聞いていたプレイヤーが職員の表情の理由を説明してくれた。


 俺はその説明を聞いて、自分の顔から血の気が引いていくのを感じた。

 図書館の場所を確認した俺は、先ほど声をかけてくれたプレイヤーに礼を言うと、早々に総合ギルドを後にした。

 そして現在、図書館へ続く道を走っている。


 先ほど通った道からわき道にそれて、木々のトンネルの中を駆ける。

 そうしてしばらく走っていると、進行方向から木々の匂いとは別の匂いが漂ってくることに気づく。

 周りを見渡せば木々や木造建築に交じって、黒ずんだ瓦礫の山が積まれているエリアを見かける。


 そうして教えてもらった場所までたどり着いた俺は、自分の目に飛び込んできた光景に絶句する。

 そこには、確かに大きな建物があっただろう痕跡はあるものの、地面まで真っ黒に焼け焦げている瓦礫の山が鎮座していた。


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