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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
1.彼がゲームをする動機
16/267

15.依頼の報酬とご褒美回(ハーメル的に)

旧29.30回です。

 ギルドに着いたのでカウンターに向かう。先ほどの男性職員がいたので声をかける。


「すいません。ちょっといいですか?」

「やあ、君は道具を借りに来たプレイヤーだね。どうしたんだい?」


 俺はゴミ袋を返しながらクエストの完了について質問した。


「ふむ、それは困ったことになったね。本当なら指輪の現物をここまで持ってくることで完了するんだが……。ちょっと確認してみるから待っていてくれないか?」

「それなら資料室で待っていてもいいですか?」

「ああ構わないよ。何かわかったら伝えに行くよ」


 俺は資料室で本を読みながら結果を待つことにした。

 テーブルにハーメルを寝かせてこの前の続きから読み始める。

 しばらくすると先ほどのギルド職員がやってきた。


「どうやら依頼者の親が事態に気づいてギルドにやってきたみたいですよ」


 どうやらナンカは母親に指輪を渡せたようだ。たぶん、その時に事の経緯を話したのだろう。

 慌てて総合ギルドに来たわけだ。


「わかりました。どちらに行けばいいですか?」

「談話室に待機してもらっているのでそちらに案内します」


 ギルド職員に案内されて部屋に入る。

 中にはしょぼくれているナンカとナンカを大人にしたような女性が座っていた。

 そして女性のほうが立ち上がり頭を下げる。


「この度は私の娘がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

「いえいえ。こうして来ていただけましたし、こちらとしてもクエストの達成が確認できればよかったので大丈夫ですよ」

「そういっていただけるとありがたいです。ただ報酬がエイコンの実というのはこちらとしても申し訳なく思い、ラーンで支払いをしたいと思うのですが」


 そう言ってきたので慌てて止める。


「報酬はそのままでいいんですよ。こいつのごはんになるので。こいつのおかげで見つけられたのにその好物が手に入らなかったらこいつに申し訳ないので」


 そう言って頭に乗っけていたハーメルをテーブルの上に置く。


「チュウ……zzz。チュウ……zzz」


 今日の仕事で疲れたのだろうまったく起きる気配がない。


「あらあら、かわいいネズミさんね。そういうことなら勝手に報酬を変更するわけにはいきませんね。では、その代わりこれをあなたに差し上げます」


 それと同時に折りたたまれた紙を差し出してくる。


「これは?」

「私の夫は迷宮都市の総合ギルドで働いております。これを彼に渡してもらえば何かしらの便宜を図ってくれるでしょう」

 ……総合ギルドで便宜を図るって?深く考えるのはやめよう。


「ありがとうございます。それとナンカはあなたのために頑張っていたので、あまり叱らないでやってください」

「わかっています。ですが、ほとんど善意で手伝ってもらっていたのにちゃんと報酬も払わずに帰ってきてしまったので、ギルド職員の娘としてはその辺はしっかりしてほしいと思うのです。ほらナンカ」


 ナンカは立ち上がり。


「お兄ちゃんごめんなさい」


 と頭を下げた。


「まぁ、誰にでも失敗はあるから、次に依頼を出すときは気をつけるんだよ」

「うん!」

「今回は指輪を見つけていただきありがとうございます」


≪町中クエスト 指輪を探して をクリアしました。報酬 エイコンの実がたくさん入った袋をお受け取りください。≫

≪貢献ポイントが1溜まりました。≫


 これでクエストクリアか。

 ナンカ母子に別れを告げてから資料室に戻る。

 ハーメルがまだまだ起きなさそうなのでご褒美はまた後でだな。

 俺は読書に戻った。


 ……………………。


 かなりの時間本を読んでいたと思う、不意にテーブルの上のハーメルが動き出す。


「チュウーーー。チュウーーー」


 何やら両手を突き出して要求してくる。


「待ってくれ、ここでは出せないから外に出よう。」


 俺はハーメルと一緒に総合ギルドを出る。そして前にハルと話をした噴水の縁に腰掛けた。


「じゃあ、約束通りご褒美をあげるとしよう」


 そういってナンカのクエストで手に入れた報酬であるエイコンの実が入った袋を取り出す。


「チュウーーー」


 俺が封を開けて縁に置いたかと思うと機敏な動きで袋の中に飛び込む。

 その時に飛び出してきた木の実を一つ取り出す。

 見た目はまんまドングリのような感じだ。たしか何かの雑誌でドングリ茶なるものが取り上げられていたが、こちらでも作れるだろうか?


 そんなことを考えながらハーメルの入った袋を眺める。いまだもぞもぞ動いているのでエイコンの実と格闘しているのだろう。

 しばらくすると、ごそごそと袋の口が開きハーメルが出てくる。

 ……おなかをぷっくり膨らませて。食いすぎだな。

 ハーメルはそのまま仰向けに倒れて寝始める。


「チュウZZZ。チュウZZZ。チュウZZZ」


 幸せそうな顔をしながら大きな寝息を立てている。

 俺は袋の中身を確認するが、まだまだたくさんあるようだ。

 ナンカが母親のために頑張ったのだろう。

 俺は袋をアイテムボックスにしまうとハーメルを起こさないようにそっと掬い上げ資料室に戻った。

 本当はひと段落したらまたクエストを受けるつもりだったが、俺の目論見の甘さでハーメルに頑張ってもらってしまったからな。ゆっくり本を読むことにしよう。


 ……………………。


 読書に没頭していると唐突にアナウンスが流れる。

 

≪ウイングの従魔 ハーメル は習得度が一定に達したため、スキル「睡眠」を習得しました。≫


 ……確かに俺の従魔になってから水路で頑張った時以外ずっと寝ていた気がするが、それでスキルとして発現してしまうとは哀れハーメル。

 ハーメルのステータスを確認してみる。



NAME「ハーメル」   ウイングの従魔

種族「マッドラット ♂」LV2 種族特性「泥」

 HP 30

 MP 10

筋力 3

耐久力 3

俊敏力 3

知力 6

魔法力 2

 スキル

「危険察知LV1」「泥術LV1」「隠者LV1」 NEW「睡眠LV1」


 状態 「満腹」「睡眠」



 スキル


「睡眠」LV1  パッシブスキル

・状態が睡眠時、HPとMPの自動回復に補正。補正値はスキルレベルに依存する。



 意外と使えるスキルだな。ハーメルは基本的に俺の肩か頭で寝ているので常に回復している状態と言えよう。

 あと状態の満腹はどうやら行動阻害付与と睡眠状態誘因があるらしい。

 まぁ、次から気を付けるとしよう。


 ……………………。


≪司書のレベルが上がりました。≫


 HP 100/100

 MP 200/200  

筋力 10

耐久力 10(+7)

俊敏力 15(+2)  5UP

知力 25    5UP

魔法力 10

戦闘職「テイマー」LV2  

生産職・特殊職「司書」LV3  1UP


 司書レベルが上がったので宣言通り俊敏力に振っておいた。

 俺はここで一度ログアウトして、春花とともに夕食を済ませることにした。

 少し気になっていたので、夕食中にあることを質問してみる。


「春花はテストの準備しているのか?」

「ぐふぅ、思い出させないでよ!鬼いちゃん」


 何かイントネーションがおかしかったが全然準備していないのはわかった。

 俺は妹に死刑宣告を告げる。


「食後のゲームは中止だな。ちょっとお前の部屋で勉強を見てやる」

「いやーーーー! お兄ちゃん。乙女の部屋に土足で踏み込んでくるなんて!」

「なにをいまさら、いつもテスト前や難しい宿題が出たときに引きずりこんでくるくせに」

「うっ、でもちょっと待って。パーティーの人に今日は続けられないことを伝えないと」


それは仕方ないな。さすがに唐突に不参加にして相手を待たせるわけにはいかない。

夕食を食べ終え妹が連絡を終えるまでに風呂と勉強の準備を済ませる。

ちょうど準備が終わったところで春花が声をかけてくる。


「実はさぁ…………」


妹の話によると、パーティーの人たちと合流してみたら他の人も親や兄弟からテスト勉強しろと言われてしまったらしい。前に話していた通り同じような条件の人たちだったので、同じようにテストという壁にぶつかったようだ。


「それでね。相談してテスト終了までゲームは封印して夏休みになったら思いっきり遊ぼうということになったんだよ」


 なるほど、健全にゲームを楽しんでいるようで大変よろしい。


「ならきっちり教えてやらないとな。」

「うっ、お手柔らかにお願いします。」


 仕方ないテストが終わるまで俺もゲームを封印だな。

 そうして、テスト終了まで妹の勉強を見ることにした。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ゲーム禁止して勉強するくらいなら ゲームの中で勉強すれば3倍勉強出来ない? なんなら1時間ゲームしてそのままログアウトせずに2時間勉強したら 時間的にはむしろプラスな気がするけどそう…
[一言] 指輪が見つかってよかったが。 それ以上に「総合ギルドに出した依頼が受注された結果解決されて」よかった。 勘繰り過ぎかもだけど。もし子供が「お父さんのお仕事なぁに?」って聞いたら、普通はそれな…
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