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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
6.魔物使いの国
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134.猫の主と予定変更

 従魔達を全滅させられた俺は見覚えのある猫に連れられて、目的の街へとやってきていた。

 黒猫は後方に俺がいる事を確認しながら、街の中を進んでいく。

 俺が門番にギルドカードを提示していた時も俺の事を待っているようだった。


 どうやら俺をどこかへ案内したいらしい。

 従魔の様子も見に行きたいところだが、総合ギルドへ行こうとした時にこの猫が道を塞いだので諦めて猫の誘導に従っている。


 街の中ほどまで来た時に、ようやく目的の場所に着いたようで猫の足が止まった。

 猫の視線の先には一軒の家があったが、窓のところまで雪が積もっていて中をうかがい知ることができない。

 一応扉の前は雪かきしているらしく中へ入る事はできるらしい。


 黒猫は扉の前までやってくると俺の方を1度振り返ってから、扉についている猫用の窓から家の中へと入っていった。

 中まで付いてこいという事だろうか?

 さすがに人様の家に無断で入るわけにはいかないので、扉をノックして声をかけてみる。


「すいませーん! どなたかいませんか?」


 しばらくしてゆっくりと扉が開かれる。

 中から出てきたのは以前裁縫の国から魔物使いの国に向かう馬車の中で見かけた女性だった。

 背は160cmくらいで黒髪を腰の辺りまで伸ばしており、その顔には柔和な表情を浮かべている。

 その足元には俺をここまで案内した黒猫が寄り添っていた。


「あの……。何か……?」

「えっと、初めまして俺はウイングと言います。プレイヤーと言ってわかりますか?」

「はい……。それで………?」

「実はですね。この街に向かっていたところ俺のパーティーでは太刀打ちできないモンスターに襲われたのですが、そちらの猫に窮地を救われました」


 俺がそう言うと女性は足元で前足を舐めている黒猫に話しかける。


「本当……?」

「ニャーー!」


 黒猫はそうだとばかりに頷きながら鳴く。

 その様子を見た女性は再び視線をこちらに戻す。


「……お礼?」

「あっ! その、お礼では無いんです……。助けられた後にその猫が付いてこいとばかりに俺をこの家に案内しまして……」


 女性は要領を得ない説明に首を傾げる。

 確かに今の説明だけではお礼に来ただけと思われても仕方ない。

 俺は掻い摘んで事の経緯を説明する。

 

「そう……。中へどうぞ……」


 説明を終えたところで女性が俺を家の中へ招く。

 少し躊躇したが女性の足元にいた黒猫がにらんできていたので、おとなしく上がらせてもらう事にした。


 家の中は何というか俺のマイルームに年季が入ったような内装をしていた。

 決して古ぼけているなどではなく、趣のあるレトロな雰囲気を醸し出している。

 俺は案内されるままに近くのイスに腰かける。

 女性は「少し待ってて……」という言葉を残し、猫とともに別の部屋に引っ込む。

 

 しばらくして女性と猫が戻ってきた。

 女性は先ほどまで浮かべていた柔和な顔が消えており、真剣なまなざしで俺を見つめていた。

 猫は何か仕事をやり遂げたと言わんばかりの顔をしている。


「……少し確認したいことがある」


 話の内容は先ほど掻い摘んで説明した事のあらましを詳細に聞きたいという事だった。

 詳細と言ってもどこまで話せばいいかわからなかった俺は、ひとまず魔物使いの国に入ってからの事を順番に話していく。

 俺が話を終えたところで、静かに聞いていた女性が口を開く。


「……何故、強行突破しようとしたの?」

「俺があのモンスターと遭遇していた時、大雪が降っていたので野宿するのは危険と判断して少しでも生存確率の高い行動を選択しました」

「……強いモンスターに遭遇する可能性を考えなかったの?」

「一応この国に入ってすぐの街でこの辺りに生息しているモンスターは調べて、大丈夫だろうと思っていたので考えていませんでした」


 女性は俺の返答を聞いて少し考える顔をした後、俺に確認をしてきた。


「……お礼をする気はある?」

「助けていただいたのはこちらなので、できる限りの事はしたいと思っています。ですが、今日はもうあまり時間が在りません」


 街に入る前までにそれなりに時間を使っていたのでこのままログインできる時間はもう1時間を切っている。

 俺の返答に「……問題ない」と返した女性はそのまま続ける。


「……定期的にこの家に来ることはできる?」

「はい。それはある程度可能ですが……。かなり長期的な事なのですか?」

「……それはあなた次第。……あなたに提案があるの」


 女性はそこまで言い終えると、一呼吸おいてから俺にこういった。


「……あなたは私の弟子になる気はありませんか?」


≪特殊転職クエスト 先輩テイマーに弟子入り を受諾しますか? YES/NO≫


 一瞬何を言われたのかわからなかった。

 今の話の流れでどうなったら俺を弟子に取る流れになるのだろうか?

 真意を探るべく直球で聞いてみる事にした。


「それはあなたにどういったメリットがあるのですか?」

「……私の職業はテイマーの上位職の中でも転職するまでの修行が大変? らしくてなかなか同志を増やせていない。……時々、弟子を取るけど皆嫌になってやめてしまう。このままでは職業そのものが無くなりかねない」


 先ほどまで言葉少なめに話していた女性が饒舌になるくらいに、彼女の職業は存亡の危機らしい。


「それで俺にもその職業に転職してほしいと?」

「……そう」

「その職業に何かデメリットのようなものはありますか?」

「……少なくとも今の従魔達を手放すようなことにはならないかな?」


 それはデメリットが無いとは言い切れないという事だろうか?

 しかも上位職に転職すると、従魔を手放す可能性もあるようだ。

 これは何気に重要な情報ではないだろうか?

 安易に上位職になれるからといって飛びつくと、凄まじいデメリットを引き当てかねないわけだ。


「今の俺の従魔達には悪影響は無いという事でしょうか?」

「……そう」

「その職業に転職すると本が読めなくなったり、図書館を出禁になるようなことはありませんか?」

「……そういった事は無い。むしろ積極的に利用していくことになるかも?」


 なんとも俺に好都合な職業のようだ。

 少なくとも俺が転職してもデメリットらしいデメリットが無いらしい。

 助けてもらった恩というのもあるが、俺が強くなるためにもこの提案は受けてもよさそうだ。


「わかりました。その話受けたいと思います」

「……! わかった。時間ができた時に来てほしい」


≪特殊転職クエスト 先輩テイマーに弟子入り を受諾しました。 称号 シャーロットの弟子 を取得しました。≫


 ずいぶん久しぶりとなる称号を取得した。

 どうやら女性の名はシャーロットさんというらしい。

 3時間後にまた来ることを伝えた俺はシャーロットさんの家を後にしてマイエリアへと向かう。


 マイエリアに到着した俺の目に映ったのは意気消沈している従魔達だった。

 俺は草原で身動きが取れなくなっているグリモを拾い上げながら、従魔達に近づいていく。

 全員に労いの言葉と謝罪を述べつつ、おやつを出して気分転換してもらう事にした。


 おやつないし魔力を補給している面々に向けて、先輩テイマーに弟子入りしたこととしばらく首都行きは延期になることを伝えた。

 スクラムにはしばらくウィンターイベントに参加できなくなるかもしれないことをメールで報告する。

 粗方やることを終えて、新しい称号を確認しようとしたところでログイン時間が限界を迎えたので、ひとまずログアウトすることにした。


 クエストの条件は次くらいに書けたらと思います。

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― 新着の感想 ―
こういう展開好きだなぁー笑
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