122.クラン脱退
次の日、学校が休みだったこともあり、いつもより遅い時間に起床した。
パンとコーヒーで朝食を済ませる。
俺以上に疲れた様子だった春花はいまだ起きてきていない。
ゲームのメンテナンスは終わっているようなのでログインしてみる事にした。
ログインした俺は運営からきていたメールを確認する。
今回はアイテムを総合ギルドに預けていないこともあり、ランキングの報酬についても一緒に受け取ることができるらしい。
俺はポイントとランキングについて確認する。
『
PN ウイング
個人ランキング
貢献ポイントランキング
52位 12087P
ランキング報酬 ランダムプレゼント ×1
アシストポイントランキング
11位 7361P
ランキング報酬 ランダムプレゼント ×2
クランランキング
総合ランキング
8位 BP 3000P
迎撃数ランキング
1位 BP 10000P
アイテム生産ランキング
18位 BP 500P
・
・
・
採取アイテム数ランキング
87位 BP 100P
アイテム交換使用可能ポイント総計
30037P
』
アイテムと交換できるポイントの総計を確認すると、貢献ポイントとクランランキングのBPとの合計のようだ。
貢献ポイントがそもそも個人の行動で稼いだポイントの総計らしく、他の個人ランキングのポイントを再び足すようなことは無い。
俺が最もポイントを稼いだアシストランキングであるが、他プレイヤーと協力してチェックポイントの課題をクリアしたり、味方の戦闘補助のためにアイテムを持って行ったりする行動に対するポイントらしい。
おそらく、ボスのパーティーに課題用の果実を渡したり、ハルとともに黒いピラミッドの攻略を行ったことでポイントが高くなったのだろう。
それ以外だと、洞窟エリアの課題クリアやオアシスエリアでの防衛にもポイントが与えられているようである。
……オアシスエリアは守り切れていないので少々複雑ではあるが、もらえる物はもらっておこう。
ランキング報酬については毎度同じくランダムプレゼントのようだ。
やはりトップ10に入るくらいでないといいアイテムはもらえないらしい。
それにランキング報酬でもらえるランダムプレゼントの数やBPは総合と個別で差は無いようである。
おかげでクランランキング1位の恩恵を多大に受けることができている。
メールの確認を終えた俺は文章の最後にある報酬の受け取りボタンをタップする。
すると、≪個人ランキング報酬を受け取りました。≫というメッセージが現れた。
その後再びウインドウが現れ、≪ポイントと交換するアイテムを選択してください。≫というメッセージと共に以前アイテム引き換え券で現れたようなアイテムの一覧が出てくる。
ただし、今回のアイテム群の選択肢には家具だけではない。
消費アイテムから武具、生産道具をはじめとした膨大な種類のアイテムが存在する。
この中からポイントを消費して手に入れるアイテムを選ぶのだ。
アイテム数に制限は無いようだが選べるのは1回だけであり、必要に応じて小分けにアイテムを受け取る事はできないようだ。
一度、受け取るアイテムを決定してしまうといくらポイントが残っていても全て破棄されてしまうらしい。
その代わり決定さえしなければ、現実世界で1か月間の猶予がある。
この膨大なアイテムの種類から選ぶのだ。下手すれば、1か月でも足りないプレイヤーが出てくるかもしれない。
ひとまず、俺もこの数多存在するアイテムの種類だけでも確認するとしよう。
俺はティーカップでお茶を飲みながらアイテム一覧とにらめっこするのだった。
……………………。
しばらくウインドウとにらめっこしていると、ハルから連絡が入る。
どうやら、クランルームでメンバーと話し合いをしているらしい。
クランのマスターと副マスターもそろっているので、クランを抜けるのに都合がいいそうだ。
このメールを受け取った時、ちょうど休憩を入れようかと思っていたところだったのでクランルームに向かう事にした。
一度マイルームを出た後、転移の扉でクランルームに向かう。
クランルームに入るとハルのパーティーメンバーを中心に話し合いをしているのが見えた。
俺はプレイヤーの集団の中にいるタイヨーに声をかける。
「タイヨーさん。すこしいいですか?」
「ウイングさん。少し待っていてください、こちらの方たちとの話が終わっていませんので……」
「わかりました」
しばらく、クランルームの壁際で待機しているとハルを連れたタイヨーさんがやってくる。
「お待たせしました。それとイベント中は声をかける事も出来ず、すみません」
「いえいえ、お気になさらず。俺の方も力及ばずエリアの1つを奪われてしまって申し訳ない」
「そんな! ウイングさんのおかげで地下通路と迎撃システムを手に入れる事ができたのですから、我々はウイングさんに感謝の念しかありませんよ」
「大袈裟ですよ」
「いえいえ、そんなことはありませんよ!」
俺達がそんな感じで話を続けていると、ハルが口をはさむ。
「お兄ちゃんもタイヨーもその調子じゃ、全然本題に入れないよ……」
「確かに……」
「そうだな」
気を取り直してクランの脱退手続きを行う。
タイヨーさんはもう一度俺に残る気はないかと言ってきたが、俺がクランを脱退するという姿勢を崩さないのを見て、あきらめてくれたようだ。
クランの脱退手続きも済んだところで、ハルのパーティーメンバーに声をかけ、クランルームを後にした。
まだポイントで受けとるアイテムの選定はおろか、どんなアイテムがあるかも把握しきれていないのだ。
あまり時間をかけていると、国を出るのが遅れてしまう。
急いでいないと言っても、準備がほとんど終わっているのに出立ができない状況が続くのは従魔達が退屈だろう。
俺は再びマイルームに戻り、アイテム一覧とのにらめっこに戻るのだった。




