120.イベント終了後と司書ギルドの裏の顔?
少し内容を修正しました。
イベントの終了がアナウンスされると同時にクランルームに強制転送される。
どうやらこれで今回のイベントは終了のようだ。
辺りを見渡すとメンバーがそれぞれのグループに固まって、イベントの話で盛り上がっている。俺はその中からハルを探す。
中央部でハルたちのパーティーが話し合っているのが見えたので声をかける事にした。
「ハル! 今少しいいか?」
「なーに? お兄ちゃん?」
俺は今後の予定について簡単に話し合う。
イベントの結果が出る前にクランから抜けてしまうと報酬を受け取れなくなるらしいので、今ここでクランを脱退するわけにはいかない。
なので、イベント結果が出てから連絡してほしいといわれた。
後は話し合う事は無いそうなので、そのままクランルームを出てもいいそうだ。
俺はハルから言質を取ったので、そのままクランルームを出た。
今回はイベントが2日間だったので、いまだログイン時間に余裕がある。
ゲーム内時間で大体1時間半くらいか。
俺は一度マイルームに戻り、アイテムボックスの整理をする。
どうやら今回のイベント内で手に入れたアイテムは持って帰ることができないようで、元々持っていたアイテム以外入ってはいない。
かなり空きができたアイテムボックスに消費アイテムなどを補充していく。
俺が保管庫からアイテムを補充している後ろではグリモを中心に従魔達が輪になって話し合いをしている。
どうもラピスさん達に手も足も出ずにコテンパンにやられたのが悔しいようで、あーでもないこーでもないと話し合っているようだ。
俺としてはあの時、対峙した時点で勝ち目がないのはわかりきっていた。
むしろボスのパーティーが乱入してくれたおかげで、俺たちのパーティーは全滅せずに撤退できたのだ。
攻略メインにしている人たち相手ではこんなものではないだろうか?
「クーー!」
いつの間にか俺の後ろまで来ていたヌエが鳴きながら俺の頭を突く。
何となく俺の考えを察して喝を入れに来たらしい。
俺はヌエの頭をなでながらヌエに顔を向ける。すると、ヌエの後ろに他の従魔達も来ておりこちらをじっと見ていた。
俺は体を従魔達の方に向けて話し出す。
「別に弱いままでいいとは思っていないよ。俺の目的のためにも強さは必要だ。今後は各国にある図書館を回りながら旅をするつもりだから、その道中で皆強くなっていこう」
「チュウーー!」
「クーー!」
「……」
「\(^o^)/」
「ガーー!」
全員、俺の宣言にそれぞれ返事をしてくる。
……しかし一つ言わせてくれ。
「グリモ……。その顔文字は違うぞ」
「Σ(・ω・ノ)ノ!」
……………………。
ある程度補充した後、ハーメルたちを置いてマイルームを出た。
前にファーストの町でやったように挨拶回りに行く。
前回と違いハーメルたちが関わった人が少なかったので、今回は俺一人だ。
お婆さんの古本屋や司書ギルドを回った後、最後に訪れたのは考古学者のお爺さんがいる小屋だ。
俺がここに来るのは、言語スキルによる資料の解析に付き合わされて以来になる。
そう考えるとかなり久しぶりな気がする。
俺は小屋の扉をノックする。
しばらくしてもお爺さんは出てこなかった。どうやらまた地下に潜っているらしい。
……またゴミの海になっている可能性もあるな。
「お邪魔します」
結局返事が返ってこなかったので、仕方なく扉を開けてみる事にした。
開けた先の部屋は多少食べ物が置いてある以外はそこまで散らかっている様子はないようだ。
しっかり、掃除した後の状態を維持してくれているようである。
その部屋の中央のテーブルで難しい顔をしながら紙の束をにらんでいるお爺さんを見つけた。
俺は首を傾げながらお爺さんに声をかける。
「お爺さん。お久しぶりです」
「……」
お爺さんは相変わらず難しい顔をしてこちらに気づいた様子は無い。
俺は仕方なく部屋の中に入り、お爺さんの肩を叩いてみる。
そこでようやくお爺さんは気づいてくれたようで、こちらに顔を向けてくれた。
しかし、俺の顔を視界にとらえると驚くとともに何か考えを巡らせ始める。
お爺さんの表情を見た俺は声をかける事も出来ず、ただただお爺さんの反応を待つ。
本当はそんなに時間がかかっていないはずだが、体感的にはとても長く感じた。
そうしてようやくお爺さんは口を開いた。
「……小僧、あの後の顛末は知っておるか?」
お爺さんは神妙な顔をしてそんなことを聞いてきた。
どういう事だろうか? あの後というのはお爺さんが本を提供した後の事だろう。
お爺さんが提供した手記の写本が図書館に置かれているのは知っているが……。
先ほど挨拶してきたときも特に何も言われなかったので、何を指しているかわからない。
「なら、その本は読んでみたか?」
俺は首を横に振る。あくまで読んでいるプレイヤーがいるのを見ただけだ。
お爺さんは俺の返答に合点がいったという顔になった。
そして、質問の真意を話し出した。
「あの後、写本を終えた手記を受け取りにいったのだ。その時言われたのだが、この手記に書いてある最後の文字は無かったものとして写本を作成したと言ってきおったのだ」
「それではその手記をレービスさんが書いた真意が伝わらなくなるのでは?」
「うむ、確かにそうだ。儂もまたこちらの気持ちを踏みにじるのかと思わず怒鳴り散らそうとしたのだが、相手の顔を見てやめたのじゃ。なにやら相手も深刻そうな顔をしていてのう」
「何か問題が発生したと……」
どうやら、あの手記の写本が司書ギルドの本部に送られたらしい。
共通語以外の言語が記されていることを確認した司書ギルド本部はイニシリー王国 王都支部長にある指示をしたそうだ。
お爺さんの手記を手に入れるか、表舞台に出さないようにしてもらうように約束させる事。
そして、手記の写本の内容から共通語以外の言語に関する部分の削除だ。
支部長の態度から大変なことになると察したお爺さんは渋々了承したらしい。
「……その話を俺にしてよかったのですか?」
「何を言っておる! お主もこの手記を読んでおるのじゃ。無関係ではないのじゃぞ!」
お爺さんは俺の事を心配してくれているようだ。
俺はお爺さんも丸くなったと場違いな感想を抱きながら、先ほどの話で気になったことを聞いてみる。
「他の図書館で司書ギルドの職員に他の言語について質問したのですが、存在すら信じていないようでしたが?」
「どうやら、各支部の支部長にのみ、その話が伝わっているようで、それ以下の職員には知らされてすらいないようじゃ。儂に説明してきたのも支部長じゃった」
どうやら司書ギルドの上層部が共通語以外の言語が表に出ないようにしているらしい。
しかし、すんなりお爺さんに手記を返したことから、他の言語を抹消まではしていないようだ。
お爺さんも支部長の様子と手記が返却された時の言動で、本当に危険があると悟り広める事はあきらめたらしい。
それでも、本当に信頼できる人物を集めてひっそりと研究は続けるらしい。
俺も誘われたが丁重に断った。言語スキルを持つ上、すでに手記の事を知っている俺はとてもほしい存在だろう。
だが、俺の目的は読書なので研究の手伝い位は良いが本腰を入れるつもりは無い。
残念そうな顔をしたお爺さんに見送られながら、小屋を後にした。
お爺さんとかなりの時間話し込んでしまったので、ログイン時間の限界が近い。
俺は挨拶回りも終わったので、マイルームに引き返してログアウトするのだった。




