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読書好きが始めるVRMMO(仮)  作者: 天 トオル
1.彼がゲームをする動機
1/268

1.プロローグ

旧1.2です。

「今まで以上に本を読めるじゃないか!」


 その報道を見たとき、俺は思わず声が出てしまった。


 少し時間を巻き戻して、俺は登校前に趣味の読書をしながらTVのニュースを聞き流していた。


「ヤバイ、遅刻する――」


 妹の春花が叫びながら階段を駆け下りてきた。


「お兄ちゃん、いつも私が起きた時にはご飯食べ終わってるんだから起こしに来てくれてもいいのにーー!」

「自己管理の問題なんだから自分でなんとかするべきだし、本当に危なくなったら起こしに行くよ」


 いつもの会話をしながら妹がパンを片手にイスに座る。

 両親が共働きでほとんど家に帰ってこないので家事は兄妹で役割分担している。

 妹の春花は朝に弱いので自然と朝食は俺の担当になった。 


「優雅に本読んでるんだから暇でしょ?」

「何を言う! この朝の読書のために早起きして支度を整えているというのに」


 妹と話をしているとき、ふとTVに目を向けるとあるニュースがやっていた。


「あっ、これ最近話題になってるVRゲームだ。私も友達と一緒に始めるつもりなんだ」


 妹がそう言って一緒になってニュースを見始める

 そのゲーム「abundant feasibility online」はVRMMOが一般に普及して数十年、世界有数の財団が資金を湯水のように使い開発したもので、βテスターからはまるで異世界に行った様だと評判だ。

 ニュースではリリースがいよいよ一週間後に迫ったことを報道していた。


「このゲームかなり話題になっていて予約も難しいって聞いたけど手に入るのか?」


 開発時から注目を集めており購入が困難となっている、と別のニュースで聞いていた俺は妹の発言に疑問をぶつけた。


「友達がβテスターで特典として何人か招待できるらしいんだけど、私も招待されることになったんだ!」

「ほう」


 妹とそんな会話をしているとき


「このゲームでは今まで数々のゲーム会社が挑戦し失敗に終わった体感時間の延長に世界で初めて成功しました」


 TVでアナウンサーがそんな事を話していた。

――!!

 その報道を聞いた俺は雷に打たれたような衝撃を受け


「今まで以上に本を読めるじゃないか!」


そう口から出たのだった。


「ん? どうしたの、お兄ちゃん」


 春花が話しかけてきたのに合わせてゆっくり顔を向ける。


「このゲーム、体感時間の延長に成功したってニュースで……」

「うん、少し前に発表されてすごい話題になってたよ。お兄ちゃん興味ないことはほんと知らないよね」


 それを聞いて俺は愕然とした。


「どうにかして、手に入れることはできないか」

「急にどうしたの。お兄ちゃん?」


 そう聞いてくる春花に俺はゆっくり話し始める。


「体感時間の延長がどれくらいのものか知らないが、つまり体感的には『ゲーム内で2時間いたとして現実では1時間とか30分くらいしか経過しない』ってことだろ」

「そういうことになるね。ちなみにβテスターの友達の話だとゲーム内で3時間の経過で現実だと1時間の経過だって」

/

「つまり、ゲーム内でなら現実で読書するより多くの本を読めるじゃないか!」

「あはは、お兄ちゃんらしい考え方だね」


 だが、どうやって手に入れる? ついさっき入手は困難だと話をしていたばかりだ。

 普通に予約していてはどれだけ先になるか分からない、この事実に気づいてしまった今そんなに待っていられない。

 俺が考えを廻らしていると。


「なら、私の友達に頼んでみようか?」


 俺は、はっと顔を上げた。


「そんなことができるのか?」

「確かβテスターが招待できるのは最大3人だったはずだから聞いてみないとわからないけど、まだ招待できるかもしれないよ」


俺は春花に向けて頭を下げた。


「よろしく頼む」

「まぁ、期待しないでね。頼んでみるけどとりあえずこの話は学校から帰ってからね」


 確かにそろそろ家を出る時間だ。


「わかった。後は放課後に話をするとしよう」


 学校の授業を無難に過ごした俺は、普段なら図書室に入り浸って本を物色しているところだが今日に限ってはすぐに帰宅して妹の帰りを待っていた。


…………


 なかなか妹が帰ってこないので件のゲームについて調べてみることにした。

 このゲーム「abundant feasibility online」はよくあるファンタジーもので、あまりの作りこみにより決まった攻略法なんてないと言われるくらい自由度の高いゲームだ。

 存在する種族、スキル、モンスターなど種類が多すぎて情報の1割も集められなかったとβテスターの感想が出るほどに沢山あるらしい。そしてNPCの受け答えが本物さながらで、雑魚モンスターといわれる初期モブでさえ感情AI、個体差が存在する徹底ぶりである。


 基本的な設定としてプレイヤーは最初に種族、戦闘職と生産職・特殊職を1つずつ、スキルを5つ選択して開始される。

 プレイヤーのステータスはHP、MP、筋力、耐久力、俊敏力、知力、魔法力で構成されている。

 ゲームをやっている人にはお馴染み、HPは体力で0になったら死亡して、最後に立ち寄った町の教会か自分の拠点にリスポーンする。


 MPは魔力で魔法スキルや一部のスキルを発動するために必要で、0になると死亡はしないが数分の間、行動制限がかかる。

 筋力は物理攻撃力及び装備重量上限に影響し、耐久力は相手からの攻撃に対する物理耐性、魔力耐性両方に影響する。

 俊敏力は移動速度、反射神経に補正が入り、装備重量に影響を受ける。

ゲームによっては知力と魔法力は同一視されるが、このゲームでは分けて設定されている。

 どうやら、スキルの補正やレベルアップの時に差異が出るようだ。

知力は知識・生産系スキルの習得・レベルアップに補正及び物理耐性に影響し、魔法力は魔法・使役系スキルの取得・レベルアップに補正及び魔法耐性に影響する。


 何故、知識・魔法系スキルの習得・レベルアップに補正が入るかというと、体を使うだけで覚えられるものは現実と同じようにすればある程度覚えられるが、知識や魔法に分類されるスキルは現実で体験できないため感覚をつかむのが難しく、βテストの時に苦情が多数寄せられたことが原因のようだ。


 ちなみに、ステータスでよく目にする器用さが無いのはプレイヤーの動作そのものに影響してしまうため体の動きに違和感が出てしまうということで廃止された。

 プレイヤーの初期ステータスは選択された種族で決定される。

 種族にレベルは無く、職業レベルが上がるごとに職種による固定値の上昇と任意に指定できるポイントが与えられてステータスを上げられる。


 次に職業レベルについてである。

 戦闘職はモンスターとの戦闘で得られる経験値及び職業に沿ったスキルの使用で、生産職・特殊職はそれに対応した行動・スキルの使用で経験値が得られるのでそれが一定に達するとレベルアップする。

 スキルは基本プレイヤーの行動に応じて習得するか対応したスキルクエストの報酬で手に入れることができる。

 スキルにもレベルが存在しプレイヤーの行動やスキルの使用で熟練度を上げ一定に達するとレベルが上がり、アーツを覚える。

 スキル習得に上限は無いが、行動による熟練度はその行動にもっとも関係するスキルに割り振られるので管理が難しくなる。

 救済処置として使用しないスキルは「不使用スキル」に設定できる。

 「不使用スキル」に設定されたスキルは効果、アーツが使用できず熟練度も上がらない。


 アーツはスキルに付属した技のことでレベルアップにより順番に覚えていくもののほかにクエスト、

NPCの伝授でアーツが増える場合がある。

スキル、アーツによっては他のスキル、アーツとの組み合わせで派生スキル、アーツが発現する場合がある。

イベントや限定クエスト等では上記以外の特殊なスキル・アーツ、果ては種族・職業まで手に入る可能性がある。

これ以外にも、称号という要素があり、一定の条件による入手、イベント・クエストによる授与で手に入る。

称号にはステータス上昇、スキル・アーツ付属するものも存在する。

まだまだ要素はありそうだが調べたらきりが無さそうだ。

そろそろ調べるのもやめようというところで、春花から連絡が来た。


「お兄ちゃんゲームもらえる事になったから受け取りに来て!」



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 一話目から説明が凄い。
[気になる点] いくら時間多くとれてもゲームの会社が数十人から数百人の本の作者と出版社とかに契約取れてないと読めるのはゲーム内のテキスト位になると思うんだが
[一言] 第一話読んで 〝あ、これのβテスター絶対人権に関わる何かにサインさせられてるよ… ついでに正式始動版もゲームの皮を被ってるけどデータ採りの為の牧場だよ…〟 っとなった私はきっと捻くれてるん…
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