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神様の剣と懲りない悪党(旧作)  作者: すたりむ
二日目:悪党、宝探しをする
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二日目(10):悪党、剣の由来を知る

「まったく……最近の若造は乱暴でいかん」

「いやあ、びっくりしたもんで、つい」

「びっくりしただけで絞め殺されてはたまらんわ馬鹿者っ!」

 俺もそう思う。

 グリート777とかいうちびっこいのは恐縮しながら、

「ば、バルメイスさま、この恐い旦那はどなたさまなのでございますか?」

「だから妖精、貴様もなぜこんなちんちくりんをバルメイス神と誤認する!? どうみても人間だろうが、馬鹿者!」

「え? そんなはずありませんよ旦那。人間にバルメイスさまの剣が抜けるわけないじゃございませんか」

 グリート777は断言した。

 俺はなんとなく剣を見ながら、

「この剣の持ち主、バルメイスって言ったのか」

「貴様もその程度の感想で片をつけるな! バルメイス神だぞ!? 十三闘神(ウルスラグナ)のおひとりだぞ!?」

「有名なのか?」

「――もういい小僧。貴様が神話の常識に疎いということはよくわかった」

 頭をかかえながら、サフィート。

「んなこと言われたってなー……」

「ねえねえ、グリートくんはバルメイスの使い魔なの?」

「いえ、おいらの主人はベルフェンリーゴーさまです。ただ、バルメイスさまとは何度かご縁がございまして」

「あ、その名前は知ってる」

 たしか、冬の守り神だったはず。

 故郷の街でも、ベルフェンリーゴーの神殿は冬になるとぴかぴかに飾り付けされるので、けっこう有名だった。

「そうか、それで『北の王』か」

「あの石版の文句か?」

「うむ。彼は北の方位と、安らかなる死を司る神だからな。彼の祭殿だったのか、ここは?」

「ちがいますよ旦那。ここは祭殿じゃなくて、要塞です」

 ぴくり、と、サフィートの眉が動いた。

「要塞?」

「はい。要塞です」

 なぜか胸を張って、グリート777は言った。

「あ、今、ちょっとだけびっくりしましたね?」

「要塞と言うと、大巨人の軍勢と戦うための施設か?」

「へえ、そーです。この草原、竜を恐れていろんな生物が穴を掘ってまして、それを改造して作ったんです。

 んで、このおいらが、このシジン要塞の管理人、グリート777なんでございますよ」

 えっへんと、さらに胸を張る。

「けど、要塞にしちゃ、ずいぶんと簡素だな」

 俺が言うと、グリート777はいきなりしょげた顔をした。

「それが、そのう……全戦力、使い果たしちゃったんですよ。あの、崖の下の奴らと戦って」

「崖の下?」

「あれ、ご存じでなかったんですか? あの崖の下、大巨人の攻撃拠点があるんですよ」

 げ。

「もっとも、全戦力をぶつけて連絡通路を破壊したから、もうあそこには未起動の戦闘人形くらいしか残ってないですけどね。

 おかげで、こっちまですっからかんで、困ってたところなんですよ。もうおいらしかこの要塞にはいませんし」

「そうすると、もはやこの要塞を守る者はだれもいないのか?」

 俺がたずねると、グリート777は待ってましたとばかりに顔を輝かせた。

「いえいえ、それがそうでもないんでございますよ!」

「ほう? だれかいるのか?」

「へえ。じつはしばらく前に、侵入者を勝手に撃退してくださる、ありがたいお骨を拾いまして。

 そいで、それを大広間に配置して以来、要塞荒らしがぴたっと止まりましたのです。ああ、ありがたやありがたや――」

「馬鹿者ぉーっ!」

「わーっ!?」

 サフィートの大声に、思わずグリート777は飛びずさった。

「貴様、神に仕える者でありながら、魔物を戦闘用に使うとは何事かっ!」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!?」

「謝って済むことかーっ!」

「……べつにいいじゃん。便利だし」

「よくないわっ! だいたい、貴様だってあの骨には迷惑しただろうが!」

「ええっ!? あの骨、バルメイスさまに襲いかかったんでございますか!?」

 いや、驚かれても。

「まあ、弱かったから普通に撃退したけどな」

「そ、そんな……も、もうしわけございませんっ」

「いや、まあ、べつに謝らんでも……過ぎたことだし」

 言うと、グリート777は尊敬のまなざしで俺を見た。

「な、なんだよ」

「バルメイスさま、一段とお人が大きくなられましたねぇ……昔は、よく失敗をなじられたりしたものですが」

「そ、そうだったのか?」

「ええ。一度、30回くらい殺しては直し、殺しては直し――を繰り返されたときは、さすがに気が狂うかと思いましたよぉ」

「……わーお」

 神ならではの、スペシャルないじめ方だった。

「ライ兄ちゃん、陰険だったんだね」

「いや、やったの俺じゃないし」

「しっ」

 言って、サフィートは俺の口の前に手を当てた。

「?」

「グリート777、耳をふさげ」

「へ? 耳……ですか?」

「そうだ。これからバルメイス神と私は極秘の相談に入る。なにがあっても聞くな。聞いたらその場で斬首だ。よいな?」

「は、はいっ!」

 がくがく震えながら、グリート777は耳に手を当てて後ろを向いた。

 そのまま、ぶつぶつと呪文のように、

「何も聞いてない何も聞いてない何も聞いてない何も聞いてない何も……」

「なあ、ちょっとかわいそうじゃないか、あれ?」

「かまわん。聞かれては不都合だからな」

 言って、サフィートはずずいと身を乗り出してきた。

「いいか小僧。今から貴様はバルメイス神になりすませ」

「は?」

「神の時代の要塞だぞ? それこそ宝物が隠されていてもなんの不思議もない場所だ。そう思わんかね?

 貴様がバルメイス神である限り、この妖精は絶対に言うことを聞くはずだ。こいつに宝物庫まで案内してもらおう」

「サフィート、あったまいいっ」

「ふふん、当然だ」

 鼻高々で、サフィートは得意がる。

 ……なぜか、それを見て微妙に不安になったが、

「まあいいか。じゃ、それでいこう」

 言って、俺はグリート777の肩をぽん、とたたいた。

「ぎゃああああああああああああああああああああっ!?」

「おい、もういいぞ」

「――って、お、おいらはなんにも聞いてないですよ!?」

「いや、だから……」

「な、なにかお気に召さないことでも!?」

「…………」

 ぺちっ。

「あいたっ」

 でこぴんをして、俺はグリート777に言った。

「気が晴れた」

「へ?」

「もういい。リラックスしていいぞ」

 きょとん、とした目で、グリート777は俺を見つめている。

 俺は、こほんと咳ばらいをしてから、

「グリート、宝物庫に案内してくれないか?」

 と、言った。



 で。

「ここが宝物庫でございますっ」

 やたらはきはきした調子で、グリート777は言った。

「おお、これは……」

「ぴっかぴか~! いやほーいっ」

 たしかに、部屋のなかはみごとな金ぴかだった。

 部屋一面に散乱した杯やら王冠やら石ころやら、それらすべてが黄金色の光を放っている。

 なんとも豪奢な光景だった。

「いや、見事見事! あっぱれだぞ、グリート777!」

「すっごーいっ。これだけあれば、何年でも暮らしていけるよっ」

 はしゃぐサフィートとマイマイ。

 が、しかし。俺はため息をついた。

「なあ、グリート」

「はい?」

「これ、ぜんぶおまえがメッキしたのか?」

 ぴたり。

 歓声がやんだ。

「あ、わかりました? そうです、これがおいらの自慢のコレクションでして」

「昔、メッキした細工で一儲けをたくらんだことがあってな。なんとなく、それでわかった」

「多彩な経験をお持ちですねぇ、バルメイスさま」

「もとになった金は、どこに?」

「この洞窟の先に、地底を流れる川があるんですよ。そこの砂金を採ってきて、伸ばして、上手く加工してやるんです。

 まあ、何千年もヒマでしたからねぇ。これがおいらの、最近1000年間の趣味なんですよ。見事なもんでしょ?」

「って、そんなばかなことがあるかぁーっ!」

「わーっ!?」

 サフィートの怒声に、グリート777は思わずしりもちをついた。

「妖精、私を侮辱しているつもりか!? ふざけるなよ、貴様!」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!?」

「謝って済むかぁーっ!」

「まあ、たしかに期待したものとはちがったけど、そんな怒らなくても……」

「貴様、悔しくはないのか!? こ、この、宝の山が、た、ただの金、金メッキ……!」

「あー、落ち着け落ち着けおっさん。声がうわずってるぞ」

 なだめながら、俺はびくびくおびえているグリート777のほうに視線を移した。

「ほかに宝物は?」

「そ、それが、ずいぶん昔に神さまの使いを名乗るひとたちが持っていっちゃって……それ以来、すっからかんなんですぅ」

「ああ、なるほどね……」

 つまり、俺たちみたいな連中が前にもいたわけだ。

「そ、そんな、バカな話が……!」

「儲け話があるところには人間が集まり、結果として儲からなくなる。世の摂理だねぇ」

「ライ兄ちゃん、あきらめがいいね」

「まあな。大悪党は引き際が肝心だって、誰かが言ってたし」

「大悪党……かっこいい……」

「ええい、なにを楽しげに歓談しているのだ貴様らは! これは最悪の事態だぞ!?」

「まあまあ、しょうがないじゃん。運が悪かったと思ってあきらめなよ、おっさん」

 俺はそう言ってサフィートをなだめ――

 その瞬間、すごい音が、洞窟内に響きわたった。

「こ、これは!?」

「どうした?」

「し、襲撃の警報です! 下の連中が動き始めたんです!」

「へ?」

 下の連中――というと、大巨人の施設から、敵が襲いかかってきた、ということだろうか。

「ああっ、もうだめだぁ! おしまいだぁ!」

「まてまてまて、事情が飲み込めんぞ」

「敵の戦闘人形がうちの施設に侵入しはじめたんです! た、たぶん、バルメイスさまの神力に反応して、動き始めたんじゃ……!」

 げげっ。

「お、俺のせいなのか?」

「責任とってちゃんと撃退してやれ小僧。我々は逃げるがな」

「がんばってね、ライ兄ちゃん」

「……コラ」

 まあ、どっちにしろ戦力が俺ひとりなのは事実なのだが。

 が、

「い、いけません、バルメイスさま! あれと戦ってはなりません!」

「え?」

「いかにバルメイスさまといえども、あの戦闘人形たちとひとりで戦うのは無茶です! お逃げください!」

「そ、そんなに強いのか?」

「う、うわさでは、その腕の一振りは山河の形を変え、城砦をも吹き飛ばし、森を荒野へと変える力を持つ、と――」

「……おいおい」

 さすがにそこまで行くとうさんくさい感じがしたが、ともかくヤバイ相手であることだけは理解できた。

「裏の出口にご案内いたします! そこからお逃げくださいっ!」

「そうか。じゃあとっとと逃げ――おい、おっさん?」

 サフィートは、金ぴかの山のなかに手を突っ込んでいろいろと物色しながら、

「ひとつぐらい本物があってもバチは当たらぬとは思わんかね、小僧?」

「もういい。おまえはそこで一生暮らしてろ」

「じょ、冗談だっ! 真に受けるな馬鹿者!」

 あわてて金ぴかの塊を放り捨ててこっちに向かってくるサフィートを見ながら、俺はため息をついた。

(なんで、こんなビタ一文儲からないバカな探索に加わってしまったんだろうか、俺は?)

「だっしゅつげき、だっしゅつげき! わくわく、わくわく♪」

「…………」

 ぽかっ。

「あいたっ」

スキル紹介:

『メッキ技術/金』

難易度:D 有用度:C

ライナー・クラックフィールドの持つ、金メッキの技術全般に関する知識。

メッキの仕方からメッキされた物の特徴まで、一通りの広範な知識を表している。

逆説的に言えば、金ぴかな物が出てきたときにそれが「メッキでない」かどうかを判定できるので、ある程度の鑑定術を含んでいる。が、もちろん、メッキされてないことしかわからないので、価値を算定するなどはできない。

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