家
章子は家を三つほど持っていた。勿論隠れ家である。その一つの家に章子は真実を連れていった。
章子は考えていた。今までは手を出してこなかった連中のことを。私の居場所は気づかれているとは思っていた。だが、表立っては手を出してこなかった。フレディと真実が日本に来たからだろうか。だとしたら……フレディと真実を帰した方がいいかもしれない。
章子の思考を遮るように真実が聞いてきた。
「フレディは……」
「大丈夫よ。後から来るわ」
「……章子、本当のことを聞きたいんだ」
「『お母さん』でしょ。本当のことって?」
「フレディが俺の父親なのか?」
「ぶっ、あははははは!」
「何がおかしいんだよ!?」
真実は憮然としている。章子は涙を拭いながら答えた。
「違うわよ。まさかフレディにも聞いたの?」
「……俺ってハーフだろ?純粋な日本人じゃない」
「うーん、まあ長い話になるから、ゆっくりしてから話すわね」
「本当に話してくれるのか?」
「もちろんよ。そのためにあなたが成人するのを待ってたのよ。とりあえずはその辺に座ってて。夕食を作るわ。フレディも来るだろうし」
章子はまずは着替えてから夕食の支度に取りかかった。久しぶりに息子と親友が来てくれたのだ。章子は腕を振るった。夕食が出来る頃、フレディがやって来た。再会を祝して乾杯して、食事会が始まった。
「相変わらず章子の料理は旨いな」
「ありがとう、フレディ。今日はたくさん作ったからいっぱい食べてね」
「真実、どうした?」
普段と違って静かな真実に向かって、フレディが聞いた。
「いや、別に……料理、美味しいよ、章子」
「『お母さん』でしょ。でも、ありがとう」