再会
佐藤 章子は会社にいた。いつも通りの仕事。そんなとき内線電話が鳴る。
「はい、経理課の佐藤です」
『佐藤さんに面会です。お約束はないようですが……。真実様と仰っていますが、どうなさいます?』
「受付に降りていきます」
『わかりました。そのように伝えます』
受付の女性は明らかにほっとした声で答えた。
とうとうこの時がきた。章子はエレベーターで一階にある受付へと降りていった。
受付前のソファには、外国人男性と若い男性が二人で座っていた。章子は躊躇いもなく二人に近づく。
「まーくん、久しぶり」
章子の口から出たのは、こんな軽口だった。その言葉に怒りを露にしたのが若い男性である。
「章子、変な呼び方はやめろよ」
「そっちこそ親を名前で呼ぶのはやめてよね」
「まあまあ、二人とも、こんなところで喧嘩はやめろよ」
「フレディ、ありがとう。真実のこと……」
「いや、お前の頼みだからな」
二人の男たちは目立つ。容姿が整っていることもあるが、存在感があるのだ。ロビーにいる人たちは二人の男性の存在に圧倒されていた。そんなところに、地味な眼鏡をかけた女性がやって来て、こんな会話を繰り広げているのである。人目を引かない訳がない。
「とりあえず退職届を出してくるから、少し待ってて」
いきなりとんでもないことを口にする章子。これには真実が慌てた。
「退職って?俺のせい?」
「違うわ。この時を待ってたのよ」
章子はそう言うと、エレベーターに乗り込んで行ってしまった。
「フレディ、俺、来て良かったのか?」
先程までの威勢の良さはなく、子犬のような青年に向かって、外国人男性はなだめるように言った。
「お前の母親を信じろ」
「……うん」
真実はフレディを父親のように慕っていた。育ててくれたということもあるが、時には友人のようにも接してくれる人だった。そして、そんな彼の口癖は、「章子を信じろ」だった。




