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復活

目が醒めるとそこは何もない暗闇がどこまでも続く世界にいた。

どこだ此処?これが死後の世界ってヤツなのか?

自分の姿形はハッキリと解るし意識もしっかりしているが、何もないこの暗闇がいつまでも続くのだと思うと気が滅入るどころか不思議な安堵感に包まれた。

「はぁー……守れなかったなぁ、畜生め。何でブルっちまったんだよ」

最後の瞬間の結末を思い出し、腹の底から煮えたぎるような怒りとやるせない気持ちが混ざり合ってはぶつかり合う。

もう遅い、もう手遅れだと解っていてもこのどうしようもない葛藤だけは止める事が出来い。

「何を悩んでいる少年?」

俺以外誰もこの世界にいないと思っていたのに、突然掛けられた声に驚き慌てて振り返る。

そこには顔が見えないほどスッポリと被った外套にボロボロのマントを纏う老人?が自分の身長よりも長い杖を片手に立っていた。

誰だ?いつの間にってか何処から現れたんだ?

「わしは何処にでもおるし何処にもおらんあやふやな存在じゃ」

聞く前に答えられ、しかもちゃんとした答えは教えてくれないときた。警戒しながらも「俺の思考を読んでんのか?」と尋ねるが「読むまでもない」と言われた。そんなに解りやすい顔してんのか俺……。

「それで、どうしたのじゃ?」

老人はその場に座り込むと袖の奥から煙管のような細長いパイプを取り出すと口に持っていった瞬間パイプから煙が出て火がついた。どうなってんのか是非聞きたいところだが、どうせ有耶無耶にされるのが落ちだと思い、先ほどからの質問に答える事にした。

「……そうか、寝ている友を守れず失ったか。不憫な話じゃが少年よ、もしもまた同じ状況になったらどうする?」

「決まってる。絶対に守り通してやる」

「例えそれが理不尽な世界であってもか?」

「理不尽じゃない世界なんて存在しない。例え億の敵に囲まれても俺は守り通す」

最後の言葉に老人は少し間を空けると突然「ほっほっほっほぉっ!」と笑いだした。

「永らく生きておるが、それが解っていながらも守るなどと言う人間は久しぶりじゃ。

ほっほっほ、面白い。ならば主に不死の生命と希の力それに言葉の三つを授けよう。

言ったからには成し遂げてみせよ!そしてその世界で平穏を手にしてみせよ!」

老人のその言葉を最後に俺の意識は再びブラックアウトした。


なんか、古いRPGのセリフみたいな事いわれたが……この意識飛ばすのは勘弁してくれよ。



「……!……!」

何だ?耳元で何か叫ばれている気がする。

薄っすらと目を空けるとボヤけた視界の先に二人の人間が俺の顔を覗き込んできていた。

「……スケ!コウスケ!」

「……うお?!」

ボヤけた視界が鮮明になると顔を覗き込んできていたのが幸人と彩女だと気づき俺は飛び起きて二人を両腕で力一杯抱きしめた。

「ちょっ!やめろバカ!」

「ぎゃーっ?!苦しいよイガ兄!!」

「はははっ!生きてた!お前ら生きてたんだな!!」

ガンガンと幸人に頭を殴られて興奮から覚めるとようやく落ち着きを取り戻せたと同時に二人の違和感に気がついた。

「お前ら……その格好は?」

幸人に目をやると、顔は確かに俺の知る篠原幸人本人で間違いがないのだが、背中に真っ黒な翼が生え、瞳の色も以前はカラコンでも入れてるのかと疑うほど綺麗なブラウンだったのに今は黒真珠のようなブラックになっている。

彩女に関してはまず何からツッコンでいいのか解らないが、とりあえず容姿は俺のよく知る彩女本人で間違いないが、セミロングの髪の色が灰色?っぽいグレーになっている。でもこれだけなら大した問題じゃない。いや、十分気になる点ではあるがそれよりも!

頭部に着いた三角形の犬耳とさっきからふさふさぶんぶんとしてる尻尾の方が気になってしょうがない!

何だお前ら?!死んだと思って目が覚めて喜んでたら兄妹揃ってアニマル化ってどういう事だよ?!展開が斬新とかアバウトとかシュールとかじゃなくて全く新しすぎて着いてけねぇよ!

「俺たちにも解らん。昨日寝てたら急に激痛が走って、目が覚めたら彩女と一緒にいて変な外套被った老人から不死と力と言葉……だっけ?まぁそれをやるって言われたと思ったらまた目が覚めて、横でお前が倒れてたんだよ」

「それってマー○ンみたいな声した老人か?」

「マー……あー!確かそんな感じだ!」

彩女も横でうんうんと頷いている。

どうやら、俺が会った人物と同じらしい。俺だけじゃなくて幸人と彩女にもって本当に何者なんだ?

ん?いや、それよりもあの暗闇の世界から目を覚ましたら二人は既にこうなってたんだよな?ひょっとして俺もそんな風になってんのか?!

慌てて自分の体を触って確認するが、どこにも耳やら翼やら尻尾は生えていない。念のため二人に確認してみるが瞳の色が赤色になっているだけだと言ってきた。

……なんだろ、嬉しいようなそうでないような。一人だけ置いてけぼりにされたようなこの感じ。


何はともあれ、俺たちが一度死んだ事に間違いはない。

そしてこんな体になっちまったんじゃ、とてもじゃないが山籠もりなど出来ないということで一度山を降りる事となった。

幸い荷物は無事だったが、テントだけは何故か見当たらず周囲を散策してもどこにもなかったが、代わりに彩女が別の物を発見してしまった。


「イガ兄ー!ちょっと来てー!」

彩女に呼ばれて駆け寄ると「これなにか解る?」といって見せてきたのは一輪の花だった。

山の中なんだから咲いててもなんら不思議じゃないんだが、なんだこの花?茎どころか花びらや花粉の部分まで全部緑一色だぞ……。

しかもそれが一輪だけでなくよく周りを見ると至る所に咲いている上見た事ない植物も生えている。

「なぁコウスケ。ちょっといいか?」

「ん?お、うおぉおっ?!」

後ろから幸人に呼ばれて振り返るとバッサバッサと背中の羽を羽ばたかせて宙に浮いて……いや飛んでいた。

これには彩女も驚き「兄ちゃん凄いっ!!」といってキャーキャー騒いでいるが、良いのか?お前の兄ちゃん人間離れし過ぎた行動しちゃってるけどそれでいいのか?

そんな彩女に幸人は一瞬だけだが、物凄いドヤ顔を浮かべやがるし、今更ながら本当変な兄妹だよなぁ。


「今上空から森の全体像を見てきたんだが……見てくれ」

そう言ってポケットからスマホを取り出すと空から撮影してきたのだろう動画を見せてきた。

動画は地上から15メートルほど離れた高さから撮影したようで一般流通仕様の無人偵察機で撮影したような臨場感がある。

面白がって食いつくように画面を見ているとおかしな事に気がついた。

画面上では辺りは広い山々に囲まれた場所だったが、俺たちは5日かけて地元から数十キロも離れた場所まで歩いてきた筈なのに、下山しようとした方角に画面が向くとここから半日も歩かない場所で山は終わり、後はひたすら草原が続いているように見える。

「彩女。ちょっと地図貸してくれ」

そういって彩女はすぐに腰のポーチから折りたたまれた地図を差し出してきた。

渡された地図と撮影された動画を見比べると、あきらかにそれが別の場所を指している物だという事が解る。

「なぁ、あんまし言いたくはないんだがよ?これってさ……」

気まずそうな表情を浮かべて幸人がこちらを見てくる。

やめろ、そんな目で俺を見るな。お前の言いたい事は物凄くわかるから!

俺は溜息混じりに「あぁ、そうだな」と言葉を繋げると


「「「異世界で間違いねぇな(ないね)!」」」


三人揃って同じセリフを吐いてしまう。

まぁ、羽やら耳やら尻尾やらで解ってたんだけどね!




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