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第16話 二つ名

翌朝。

日の出と共に起きると軽く準備運動をして早速ギルドへと足を運んでいく。

ギルドに入ると相変わらず掲示板には先に来たハンター達が群がっていた。その日の収入を得るために皆んな躍起になるのは解るが、タイムセールで群がるおばちゃん達の姿と重なるのは気のせいじゃないだろう。


そんなことを思いながら俺は近くの長椅子に腰を掛けて煙管を曇らせる。特に急ぎの用事がないからある程度人混みがなくなるまで待とうと思ってだ。

のんびりと時間が過ぎるのを楽しんでいると目の前にーーコトッとお茶の入ったカップを置かれそれを置いた人物を見るといつもの受付嬢さんが現れた。


「おはようございます、イガさん」

彼女は自然に正面の空いた席に座ると「どうぞ」と持ってきたカップを渡してくれた。俺は礼を言いながらもう一度彼女を見つめる。

というのも普段着ているギルドのユニフォームではなく白の服に袖を通し、その上からは袖のない皮のベストを着て豊満な胸の前には赤を基調としたリボンが可愛らしく結ばれている。下はベストと合わせたのか茶色っぽい皮のズボンをはいていて、旅人のような装いをしていた。


「珍しい格好ですね。今日はお休みなんですか?」

「えぇ。ちょっと実家から呼び出されて王都まで行かなくちゃいけないからしばらくお暇を頂いたの」

「それは……大変ですね。あまり遠いと途中獣や魔獣に遭遇するかもしれないのに」


村の周囲はハンターたちが危険な獣や魔獣を狩るから危険は少ないが、それでも交通整理がされてるわけではないし、柵があるわけでもない。馬車を使おうにもその費用は馬鹿にならないくらい高いから普通は徒歩移動が原則だ。

しかも王都まではここから歩いて二週間近くかかると聞いたことがある。そんな中をハンターでもない彼女が行くというのはあまり褒められたことじゃない。


それなのに彼女はニコリと笑みを浮かべると「大丈夫よ」と言って言葉を続ける。

「ドルトさん達が格安で行き帰りの護衛をしてくれるって言ってくれたからお願いしたの。代わりに王都での衣食住の面倒は私が見ることになったけど、それだけで危険が減るのなら安いものだわ」


なるほど、そういう事なら安心だなと納得すると俺は貰ったお茶を一口飲んで喉を潤す。

「じゃあ自分はドルトさん達がいない間危険な依頼があったらそれをこなしていけば良いわけですね?」

「ふふ。話が早くて助かるわ♪ 貴方のハンターレベルは皆が……そういえば、測定はしたの?」

突然受付嬢さんが思い出したように言葉を遮って聞いてきた。


「測定……?ってもしかしてハンターレベルを測定出来るんですか?」

「出来るんですかって……え?知らなかったの?」

俺は苦々しく「はい……」と答えると受付嬢さんは頭を抱えて盛大な溜息を吐くと立ち上がってカウンターの奥へと消えていった。


しばらくして受付嬢さんは一冊の大きな本を持ってくると先程と同じように正面の席へと座り直す。

「本当にごめんなさい。本来なら登録担当をした子が話すべき事なのに……ドルトさん達が来るまでにもう一度確認させてもらっていいかしら?」

「えぇ、構いませんよ。特に急いでるわけじゃないんで」

深々と頭を下げてくる受付嬢さんに「気にしないで」といって笑いかけると礼を言って説明を始めてくれた。


「まず、ハンターレベルを上げるには測定水晶で定期的に実力を測っていかないとダメなの。これは狩りを終えた後に私達に言ってくれればすぐに診断する事が出来るわ。

登録時は透明の光を発してレベル1では薄い赤色にレベル2では明るい色をした赤に変わるわ。

ちなみにレベル3(黒)では真紅でレベル4(銀)は赤黒、レベル5(金)は真っ黒といったように段々と色が濃くなってくの」

意外と解りやすいというか大雑把というか……水晶の色でハンターの力量が測定されるんだな。でも何を基準にしてるんだろ?


そんな心情を見抜いてか受付嬢さんは面白そうに微笑んで説明を続けてくれた。

「この色の変化はそのハンターがこれまでに培った狩りでの経験を元に水晶が反応して色を変えてくれるの。

最初にハンター登録した時に触れた水晶の事は覚えてる?アレは登録水晶といって、解りやすく言うと真っ白な羊皮紙に貴方の名前を書いて測定水晶がそれからどんな獣や魔獣を狩ったのかを記入していってくれてるの」

「あぁ、なるほど」と声に出して納得する。

まだいくらかツッコミたい部分はあるが、一先ず納得の意を表すと受付嬢さんは持ってきた分厚い本を広げてさらに詳しい説明をしてくれた。


「ただし水晶が銀相当の赤黒に変色してもすぐに銀レベルとして認められるわけではないんです。これを見てください」

そういって受付嬢さんが開いた本のページには二体の魔獣……モンスターの絵が描かれ側には成人男性らしい人と比較出来るように描かれていたが「これは……」と思わず息を呑んでしまった。

「魔獣のさらに上位種。モンスターです。こっちの人形の巨人モンスターは『ロックウォーリア』という全長10〜15mはある大型モンスターです。

次にこちらの四足獣のモンスターは『シック』という火と風の魔法を行使してくる危険なモンスターです。

これらは実力が銀相当になった方だけが受ける事の出来るモンスターであると同時に銀レベルとして認められる為には必要なモンスターです」


なるほど、実力と見合うかを確かめる為のクエストということか。逆に言えば実力が銀相当でもこれくらい狩れなければ銀レベルとしては認められないし、この先もやっていけないという第一関門といったところか。


「ちなみに金レベルに上がる時はどんなモンスターを狩らなければいけないんですか?」

「金ですとドラゴンを狩らなければなりません」

「ドラゴン?!」

素っ頓狂な声を上げて俺は目玉が飛び出さなん限りに目を見開いて聞き返す。

そりゃ魔法とか猫族とか魔獣やらがうようよいるのだからドラゴンくらい居てもなんら不思議ではない。だが、それらが解っていても驚かないわけがない。


余りにも驚いてる俺を他所に受付嬢さんはパラパラとページを捲ってどうやらお目当ての部分が見つかったのか「これが討伐対象のドラゴンですね」と見せてくれた。

俺は覗き込むように見ると足の膝の部分だけで比較対象の成人男性を軽く声て両翼の翼は広げると戦闘機並みの広さがある。

頭部の恐らく鼻先なんだろうが、サイのように角が生え体はトゲトゲしいまでの逆立った鱗が描かれていた。

生憎と色がついていないので白黒でしか解らないが、描かれている記述を読むとこのドラゴンの名前は『ファイヤードラゴン』というなんとも安直な名前で炎の息吹(ブレス)を吐き出すらしい。


厄介なのは吐き出される炎には二種類あるらしく一つは広範囲を全体的に焼き尽くし更に粘土が非常に高いらしく中々消えないようだ。

もう一つは魔法の《炎玉(ファイヤーボール)》に似た炎の玉を吐き出すようだが、こちらは魔法+aで撃ってくる為威力は通常の炎玉に比べると段違いに高く個体によっては成人男性と同じ大きさの炎玉が飛んでくるらしい。


そんな馬鹿と冗談が合わさったような存在を討伐しなければ金レベルとは認められないというのだから厳しいを通り越して最早無謀といえる気がするぞ。

ちなみに余談だがドラゴンは当然この一種類だけでなく他にも何種類かおり中には蛇のような長い身体に短い手足が生えた東洋龍。俗に言う神龍(シェンロン)さんのようなドラゴンがいたり、ゴッドのイーターさんに出てきそうな奴まで入る始末だった。


なんとなくこの世界のハンターの凄さを実感した俺は「とりあえず先に測定だけしちゃいましょうか」という受付嬢さんからの提案を呑んで一旦話は終わり、受付嬢さんはカウンターの下からボーリング大の水晶をカウンターに乗せてちょいちょいっと手招きしてきた。


「それじゃあ両手を水晶にかざして貰えますか?」

言われるがまま水晶に手をかざすとガラス玉みたいに透明だった水晶の中に赤いインクを零したように次第に色が染まり始めていく。

色は段々と濃くなりやがて変色が治ると俺たちは目を丸くして水晶に見入ってしまった。

水晶の色は赤黒とまでは行かないまでも真紅よりも深い赤に満たされ黒っぽさが出てきていた。


「えーと。これはつまり……」

「黒レベルの上級者といったところね……イガくんってまだハンターになって一ヶ月たってないよね?」

「そのはずですけど、こんなに早く黒レベルになれるものなんですか?」

「そんなことないに決まってるじゃない!ドルトさん達ですら十年近くかかったんですから!」


ですよねぇ〜……んじゃこれは一体?

うん、止めよう。深く考えない方が絶対に良いことだ。何よりハンターレベルが上がったんだから喜ばしい事じゃないか!今は素直に喜んでおこう!HAHAHAッ!!


突然の黒レベル誕生に伴いその後ギルド内は朝から騒々しく動いてギルドカードを提出すると銅のプレートから真っ黒な鉄のプレートに変わって返された。

途中からドルトさん達が顔を見せるといつもと違う雰囲気に首を傾げていたので理由を話すとドルトさん達は驚いてギルド内で再び一波乱が起きたのは言うまでもない。



本来なら黒レベルのハンターが現れるまでにいくつかの書類整理やらをしなければならないのだが、余りの突然の出来事に受付嬢さんは半べそかきながらも休日緊急出勤及び時間外労働を強いられ予定より半日遅く出発する事となってしまった。

その間俺はドルトさん達に捕まり尋問&事情聴取を強いられたが、話せる事は少なくありのままを話したからけっこー早く解放されるがエルフ族の子が昨日目を覚ました事を教えると今度はそっちの話に食いつかれて再び拘束という分かりきった結末を迎える羽目になったが、エルフ族の子に関しては少なからずドルトさん達も関係者であり、基本的には俺たちに任されていたが神官さんの話ではちょくちょくお見舞いに来てくれていたようだ。


ーー顔に似合わず本当面倒見がいいな。

(ご主人がそれを言いますか?)

ーーはっはっはっ違いねぇ!


最後に受付嬢さんとドルトさんを村の門まで見送ると俺は早々に教会へと足を運んでいった。

ーーとりあえずあの子を教会から宿屋に運ばないとな。

(あと服も買ってあげないといけませんね)

ーーあー、確かに。今までは神官さんが用意してくれてたけどこれからはそうも言ってらんねぇからな。

(私の方で必要な物をまとめておきましょうか?)

ーーん。よろしく頼むわ。どーもそういうことは苦手だからな助かるよ。

(ふふ。了解しました♪)


教会に着くと神官さんに挨拶を済ませて通い慣れた部屋へと足を運ぶとあの子は昨日と寸分違わぬ姿勢のまま窓の外を見続けていた。

「よっ!今日はここから宿屋に移動するぞ。世話になった神官さんにお礼言わんとな!」

「……。……」

頭をガシガシと撫でてやりながら話すと少年は濁った瞳で見つめてきた。その目は何かを言いたげな物というより、ただ見ているだけといった感じだった。

何を見て何を感じているのかは不明だが、それでも言葉に反応するくらいの生気はあるらしい。


俺は少年を背中に背負うと部屋の外へと出て行った。

神官さんからはあとで宿屋に荷物を届けると言われ礼を言って教会を後にした。

途中街道でレイミーがまとめてくれた必要になる物をいくつか買って宿屋で今使ってる1人部屋を引き払って二人部屋に変えて貰い新しく案内された部屋のベッドに少年を座らせる。


「さて……と。これからどうしたもんかね」

しばらくは何もしないでも暮らしに困らない程度の金はあるが、それだといつかは枯渇するに決まってるし何より動かないでいる俺自身が耐えられないからな。

(ご主人。一つ提案があるのですが、良いですか?)

「ん?何か良い案でもあるのか?」

(案という程のものじゃないですが、一度その子を吸ってみたらどうですか?)

「…………は?」


突拍子のない提案に一瞬思考が停止するがすぐに再起動させて理由を尋ねる。

(性格には吸うのとは逆になりますが、ご主人は私が死ぬ直前に吸われた事で私はご主人の中で生きています。ならばその逆に血を与えたのなら……もっというと私が彼の心の中に入り込むことが出来たら心を閉ざしている彼を内側から説得出来ると思うのです)


ふむ。血が……血液を通して『魂』と繋がり、更に精神体である『心』までも繋がっているとは考え辛いがレイミーの提案は非常に興味深いものだし面白い考えだと思う。

何よりこの吸血鬼の体は未だ謎の部分が多いから一つの実験としては悪くないか。


「良し。じゃあ試しにやってみるか!」


念のため開けっ放しだった窓を閉め、扉には鍵をかけて外部から誰も入ってこれないようにするとさっそく俺は少年の首筋に噛み付く。

「くぁ……」っと少年は小さく息を漏らし柔らかく張りのある肌に噛み付くと俺の中で突然「血を吸い尽くしたい!」という一種の吸血衝動に駆られるが、レイミーの時とは違い抑える事ができた。

その代わりに頭の中で「(レイミー)を送りたい」と思うと噛み付いている歯から何かが滲み出ている気がした。


1分もしない内に噛み付いた首筋から離れると少年は仰向けの状態のまま背中を仰け反りビクンッビクンッと体を痙攣させる。呼吸は荒々しく打ち上げられた魚のように口をパクパクとさせている。

ひょっとしたらこのまま死ぬんじゃないのかと思ったが、その考えをすぐに捨ててジッと見守り続けた。


「頑張れよ少年。あとはレイミーに任せるからよ」



どのくらい時間が経ったのだろうか。

外はすっかり暗くなり部屋の中は蝋燭の灯りを頼りに辛うじて物が見える程度には明るかった。

今までは一人でいてもレイミーが常に俺の中にいたからそれほど退屈はしなかったが、レイミーは今少年の中に居るせいで俺はただ少年が起きるのを待つしかなかった。


ーー久しぶりの一人を体験しているわけだが、なんと言うか寂しさとはまた違う感じがするな……そう。例えて言うなら何時も身につけていた物を無くしてしまったようなそんな喪失感だ。

その事に気づくと「以外と寂しがり屋だったんだなぁ……はは」と自嘲気味に笑ってしまう。


時間だけが刻々と過ぎていく中で、ただ何もしないでいるのは非常に退屈だった俺はバスガルドに言われた言葉を思い出して自分の中で未だ眠る『望む力』について考えていた。

まず最初に考えたのは『望む力とはどんな物なのか』だ。これはバスガルドに言われた通り、そして文字通り自分が望み欲した力を与えられるということだろう。

ならば俺はどんな力が欲しいのだろう?

現段階では吸血鬼特有の力があるお陰で魔法が一切使えなくても別段困った事はない。


というのもこの世界の住民からしたら不便なことこの上ないだろうが、俺はついこの間までは魔法という存在自体がない世界にいたので普段と全く変わらない生活を送れている。

吸血鬼になったせいか確かに昼に狩りをした時は以前より身体が少し重く怠く感じるようになっていて鬱陶しかったが、恐らく身体が馴染み始めたのだろう。睡眠もだいぶ浅くなってきた気がするしな。


だから今更『魔法が欲しい!使えるようになりたい!』なんて子供染みた想いなどなく寧ろ「魔法(そんなもの)を寄越すくらいなら別のものを寄越せ」という気分だ。

なら別のものとは何だ?って話になるが、俺の答えは間違いなく武器……特に現代兵器を代表とする銃火器類が欲しいところだ。理由は至極単純で銃さえあれば魔法が使えなくとも大抵の事には対象出来るからだ。

いくら動きが素早い獣や魔獣が出てこようと弾丸よりも素早いわけではいし、攻撃魔法を使われても届かなければ何の意味もない。

この辺りに出現する獣程度であれば今のマチェットだけでも十分だが、いつまでもこの地に足を止めるつもりはない。だがこの地を離れて別の地に赴いた時に今のままでは役不足になる可能性は十分にあるので現段階から対象方法考えておいても早くはないだろう。


けれど、それでも問題がるのは確かだ。


爺さんから与えられた力を使って銃を出現させることは決まっているが問題はどうやって、そしてどんな銃を出現させるかだ。

銃は大きく分けて四種類存在する。


携帯性・隠蔽性に優れた拳銃(ハンドガン)

携帯性・連射性・装弾数が多い短機関銃(サブマシンガン)

高火力で中距離からの射撃が得意な突撃銃(アサルトライフル)

遠距離からの射撃場が可能で制度の高い狙撃銃(スナイパーライフル)

中距離・遠距離から制圧射撃を目的とした軽機関銃(ライトマシンガン)


これらはそれぞれ違った用途に合わせて創られた武器で決してこの中の一丁でも持っていれば良いというわけではない。

例えばハンドガンだけを出現させた場合。

持ち運びは楽だが火力が弱く装弾数も少ないのでどうしても物足りなさが残ってしまう。


それなら持ち運び易くて装弾数も多いサブマシンガンならどうだろう?きっと悪くはないが、サブマシンガンの使用する弾丸の殆どは対人戦闘用に創られたもので俗に言う拳銃弾と同じなので人間を相手にするなら問題ないが、残念ながら俺は人狩り(マンハント)を主にするつもりは毛頭ない。確かに同じ狩人ではあるが、俺は獣や魔獣。そしてモンスターを狩る狩人だ。だからいざモンスターと対峙した時に対人戦闘用で創られた銃と弾丸では火力として乏しいものがある。


だったらアサルトライフルは?スナイパーライフルは?ライトマシンガンならどうだ。

この三つは確かに火力としては申し分ないが今度は逆に対人戦になった時に危険な可能性が出てくる。

それは銃を構えるよりも早く距離を詰められた場合と狭い屋内や室内での戦闘になった場合だ。

この場合。確かに火力としては申し分ない三つだが、長さが仇となり殺られてしまう可能性が出てくる。

まぁ殺られたとしても本当に死ぬかどうかなんて怪しいものだが……。


爺さんから貰ったのは『不死の生命』であってこれが『不死身』を指すのかそれとも『不老』を示すものなのか解らない。不老であれば死ぬ事も可能だろうが、レッドフォースの酸の雨を浴びてなお生きている自分を見ると不死身の線が濃厚なので後者ならば……うん、これ以上考えるのは止めておこう。下手するとマジで死にたくなるからな。


話を戻す。


とにかく銃を手にするならばメインで使う銃と予備として使う銃の二丁が必要になる。

更に銃が壊れた時の事を考えると同じ装備をもう2〜3組用意する必要になるし状況に合わせた武装が必要になるのであればもっと必要になるだろう。


ん?どうしてそんなに必要なのかって?説明しよう。

まず予備として同じ装備揃える必要は使っていた武器が壊れてしまった時の事考慮してだ。

例えばプロのカメラマンは撮影に行く時に必ず予備のカメラを用意する。理由は撮影中にカメラがなんらかの不具合によって壊れてしまい折角のシャッターチャンスを逃さない為だ。これと同じ理由で予備の武器が必要になる。

次に状況に合わせた武装についてだが、今度は料理人で例えてみよう。

魚を捌くときに専用の包丁ではなく肉切包丁で捌いたとしよう。恐らくその魚はミンチになる。

プロの料理人ならば出来なくはないだろうが、きっと客の前に出る事なくゴミ箱行きが確定なのは言うまでもない。

それと似た理由で500m先の的を狙撃しろと言われ狙撃銃……スナイパーライフルではなくハンドガンを渡されたら俺は間違いなく渡してきた奴を殴り飛ばすか撃ち殺すだろう。

ハンドガンの有効射程距離はせいぜい50mが限界なのにどうやってその10倍も離れた的に当てろと言うのだ。

ちなみに例え的が50mの近さであっても当てられる自信は無いに等しい。

理由は発砲時の反動や空気抵抗に風速。そして湿度やら気候と重力などの様々な理由によって弾丸がそれてしまうからだ。仮に渡されたハンドガンにストックとスコープが取り付けられていたら的に当たる確率は増えるが、百発百中とはまずならない。


話を戻すが……用は銃を使おうとすると必然的にキリがないのだ。


そして何より問題なのは銃本体よりも弾丸だ。

銃本体を出現させたといえども肝心の弾丸がなければただの重い鉄の塊でしかない。

こういった問題を考えていくともう頭が痛いという話ではない激痛だ。

「はぁ……どうしたもんかねぇ。思ったもんが勝手に出てくれれば助かるんだが」


そんな事を考えて一つ気が付いた。

『思った物を出現させられる力』で良いんじゃないのか?と。

爺さんはいった『望みの力』を与えると。

バスガルドは言った『俺様以上に理不尽が作り出せる』と。


ーーはぁ〜、ようやく理解したかよ。案外バカなんだなクソガキ。


突然脳内に聞きなれた声でないにしても聞き覚えのある声が聞こえた。

このムカつく声色の正体は最早言うまでもないだろう……バスガルド本人だ。


「悪かったな。お前ほど妄想豊かじゃねぇんだよ」

ーーハッ!相変わらず口だけはよく回るじゃねぇか。

「舌も回らなきゃ反応に困るのはお前だろ?良かったなぁ〜俺が饒舌でよ」

ーー……よく動く舌だ。引き抜いてやろうか?

明らかな苛立ちを込められた言葉を向けられるが……それだけだ。

「どうやってやるのか是非とも見てみたいが……そんな事に時間をかけられないんだろ?何しに来たんだ」

ーー本当によく動く。それに勘も悪くねぇ……本題に入ってやる。クソジジイからの最後の頼みだからな。


初めてバスガルドと接触したとき奴は自分から呼んでおいて急かすように話を進めていた。

今回も余裕たっぷりな感じではいるが、恐らく余り余裕がないのではと思って鎌をかけてみたが、どうやら図星だったらしい。

何をそんなに急ぐのかは解らないが、タイミングを見計らったかのように現れたのにはきっと意味があるのだろう。それにクソジジイからの頼みってことは少なくとも自分の意志ではなく好意からやってくれてるのだろう。

まぁ何にしても悪ぶってるのにとんでもないくらい善人な奴の為に話を合わせてやるか。

それに謎も一つ解けたことだしな。


ーー何ニヤけてんだ?気持ち悪い。

「あ?一体どうやって力が与えられるのか謎だったんだが、それが解けただけだよツンデレ殿」

ーーツン……?まぁいい。そんなことより、さっきの望みで良いんだな?

意味が解らなかったらしい。解ったら解ったで怖いが……俺は「問題ない」とだけ言うとバスガルドはそれを了承して指でも擦り合わせたのかパチンッと頭の中で音が響き渡ると足元に突如六角形の魔法陣のような物が浮かび上がり光り輝いた。


ーー貴様に与えるのはこの世界においても異能の力。名は『記憶の産物』

「記憶の産物?随分と安っぽい名前なんだな」

ーー貴様には丁度良かろう?

「ははっ違いねぇ!」

大層な名前を付けられちゃ厨二くさくて叶わねぇからな。


ーーこれは貴様の記憶の中にある物を実体化させる力。代償は貴様が喰らった命だ。


ほんの一瞬だけドクンっと心臓が跳ね上がった気がしたが、それでもすぐに冷静さを取り戻す。

大きな力を使うときにその代償となる物が必要なのは当然だからだ。


ーーどうした?使うのが嫌になったか?

「まさか。強大な力を使うならその代償が必要になるのは当然だ。そうじゃなければ世界の……いや、あらゆる摂理や理の均衡が崩れちまうからな。仕方ないさ」

ーー力を行使する度に他者の命を取り込んでもか?

「それで誰かを助けられるのに誰も助けず見捨てるほうが愚かだ」

ーーその結果。地獄に堕ちる事となってもか?

「ハッ!俺のいた世界じゃ『神に許しをこえばその者の罪は許される』とかいう頭の悪い宗教があったが……ふざけるな。俺の罪は俺だけの者だ。他の誰にも渡さねぇ!地獄に堕ちようが知ったことか!」


怒鳴り散らすように宣言するとバスガルドがいつの間にか目の前に現れていた。それも拍手をしながらとびきりの笑みを浮かべて。


「ならば貴様……いや、伊賀康介にこの力を名と共に送ろうーー今日からお前は『真祖・吸血鬼 グリード』と名乗れ!それがお前の新たな名だ」


……よく。ファンタジー小説や映画なんかで師匠が弟子に免許皆伝の証を贈ったり二つ名を与えたりするシーンを見ていつも思うが……ダサくないか?特に二つ名をとか……確かにこの世界では魔法の腕が立つ者や実力が上の者たちは自分の知名度。つまり名前を売る為に大言壮語な二つ名をつけることはある聞いた事がある。

故に有名な冒険者の中には地球だと明らかに「厨二病だろ?」と言われ叩かれてもおかしくない名前も多いのだが、まさか自分にもそんなものが贈られる日が来ようとは……一体誰が予想出来る?

冗談抜きで一瞬本気で「断る!」って言いそうになったが、流石にあんな波に乗ってるサファー並にノリノリな人の雰囲気をぶち壊す勇気は俺にはない……。もしこれがバラエティー番組でお馴染みの某毒舌キャラを突き通している有◯さんなら言えたのだろうが。それが出来ない自分を心底恨みたい気持ちで一杯だ。


「う、承った……」

こういう時になんと言えば解らないまま声を、喉から絞り出すように告げるとバスガルドは今まで見せた事がないくらいの笑みを浮かべてきた。

声にこそ出さなかったがこの時俺が思った事はたった一つだ。



(何なんだこの茶番?)



それだけだった。


そして足元の魔法陣は先ほどよりもより強く光り輝き、部屋の外にまで明かりが溢れたのではないかと思うほど強く光を放つとバスガルドの姿はまるでその光に溶け込むように姿を消していった。


バスガルドの姿が消え。再び静かな部屋に戻ると俺はいつの間にか立ち上がっていた事に気付いて今度は椅子ではなくベッドに座り込んだ。バスガルドとの会話はとても短いものの筈だったのに何故かドッと疲れが滲みでてきたからだ。

吸血鬼になってから日に日に睡眠欲がなくなってきた筈なのに今なら明日の昼頃までずっと寝られそうな気がして俺はそのまま身体を横たえると瞼を閉じて眠る事にした。


「グリード……強欲か。そんなに欲深いつもりはねぇんだが、まぁいっか。寝よねよ」




















今回投稿が遅れてしまい大変申し訳ありませんでした。

今作を書き始めてから始めてブックマークの数を見たら多くの方が見られていたので驚きと同時に歓喜に満ち溢れましたwww

ですのでこれからはもっと早く投稿していこうと思いますので今後ともよろしくお願いします!


あと誤字脱字及び質問・意見などがありましたら遠慮なく教えてください!

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