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第14話 旅立ち

次の日。

夜明けと共に目を覚ますと体の傷(というより火傷)は殆ど完治していてそれを見たドルトさんとフォルスは驚いていたが、たまに俺のように傷の治りが異常に早い人を見たことがあるらしくそれ以上何かを問い詰められることはなかったが、念のために村に着いたら教会へ行って治癒してもらう事を勧められた。


それから俺たちは再び半日かけて村に戻るが、早めに行動したお陰で村には昼前には到着できた。

俺はギルドで簡単に報告を済ませると一旦宿に戻ってから教会へ行こうと街道を歩いていると反対の方から幸人と女子三人組が歩いてきた事に気がついた。

片手を上げて挨拶すると向こうも大手を振って、アニとコロナが駆け寄ってきたので両腕で二人を抱えて抱っこする。


「「おかえりなさい!イガ兄さん」」

「おー、ただいま。ただいま」

と、笑顔で答えてやる。そんなひと時がやたら嬉しく感じていると遅れてやってきた二人にこれから教会へ向かう事を告げると四人も付いてきた。


彩女を先頭に歩いて行くと、とんがり屋根のいかにも教会みたいな場所につき扉の前で神官らしき黒の修道服に身を包んだ初老の男性が箒で掃除をしていた。

「こんにちは!」

と彩女と嬢ちゃんずが元気よく挨拶すると神官さんは掃除の手を止めて挨拶してきた。

「こんにちは。アヤメさんにユキトさん、それにアニちゃんとコロナちゃんも一緒ですか。それに……貴方がイガさんでよろしいですかな?」

「はい。コウスケ・イガと言います。挨拶が遅れて申し訳ありません。昨日はあの子を助けて頂き有難うございます」

「いえいえ。私は大した事はしておりませんよ。それよりユキトさんの話によるとイガさんもレッドフォースの胃酸を浴びたとか……治癒魔法をかけますのでどうぞ中へお入り下さい」

「ありがとうございます」


どうやら一通りの話は済んでいるようで説明の手間が省けた。

俺達は中に入ると礼拝堂の奥の部屋へ行き、保健室のような部屋へと案内された。ベッドが三つ並んだ一つには昨日助けた子が未だ眠っているが、規則正しい寝息を立てているから心配はいらないだろう。


俺は上着を脱いで神官さんに背中を見せると早速治癒魔法をかけてもらい、ズキズキとした痛みが消えていくのが解った。

しばらくして完全に痛みがなくなると俺は服を着直して礼を告げると、彩女たちから話を持ち出された。

それは昨日のうちに四人は魔法適正ランクを神官さんに調べてもらったらしく幸人と彩女は魔法適正ランクA級という一握りの天才しか持つ事のない魔力値を叩き出し、アニとコロナもB級という中々に高位の魔力値を出したらしい。

そして神官さんの勧めによって魔法教会学園へ行こうと思っているのだとか。学園に関しては以前から知っていたし、機会があれば行こうとも思っていたからこの話は渡りに船というものだ。


「良いんじゃねぇか?どのみち魔法に関する知識は重要だからな。神官さんの提案は有難く受けよう」

その答えにアニとコロナは大喜びではしゃぎ出すが、その前に俺も魔法適正ランクを調べてもらおうと神官さんにお願いすると快く引き受けてくれた。


「聞けばイガさんもユキトさんたちと同じ出自だとか。ひょっとしたらイガさんもA級かもしれませんが、もしかしたらその逆ということもありますからそれだけは覚悟して置いてください」

そう言って先に神官さんから注意を受けると「もちろんです」と言って俺はボーリング大の水晶球に手を翳すと……。


「………」

「………」

「「「………」」」


水晶球は一切光ることも輝く事もなかった。



「えーっと……神官さんこれって?」

「……魔法適正ランクDということでしょう」

呆然としている俺に神官さんは額に酷い脂汗を流しながらそう答えたが、魔法適正ランクD?そんなのは聞いたことがないぞ。

アニとコロナから当初聞いたときはCランクまでしかなかったはずだ。それなのにそれ以下のDってのはどういう事だ?

「……実は、本当に極稀で私も初めて見るのですが水晶球が一切反応する事のない者がいるという伝説があるのです。

ですが長い歴史の中でそんな者がいたという記録は一切なくある種S級と同じかそれ以上の存在だと言われているのです」


「「「「「……。……はあぁああぁぁ?!?!」」」」


マジかよ!

S級はS級でもそんな下の意味でのS級ってあるのか?!

もう驚きとかそんなチンケな言葉じゃ表せらんねぇくらいビックリだわっ!


「イガ兄……」

「コウスケ……」

「イガ兄さん……げ、元気出して下さい……ね?」

「……ぐす」


背後から心底会われそうな声を出す三人の声が聞こえ、コロナに至っては啜り泣く声すら聞こえるぞ。

神官さんなんて目を伏せて顔を背けやがるし……あーっクッソ!なんか葬式よりも酷い空気じゃねぇかコノヤロー!


「ありがとうございました……神官さん。

この空気で言うのも何ですが、彼奴らに魔法教会学園への推薦状を出してやってくれませんか?」

「そっ!それは、大丈夫ですが……貴方はこれからどうなさるおつもりですか?仮にも彼らのリーダーなのですよね?」

「えぇ、そうです。リーダーだからこそ彼奴らをお願いします」

精一杯の笑顔を向けて神官に頭を下げると、神官さんは苦虫を一万匹噛み潰したような苦渋の表情を浮かべて「承りました」と答えてくれた。

俺はその返答に満足するとクルッと振り返って幸人達に向き直る。


「傾聴!本日一(ひと)(ひと)(さん)(ごう)を持って幸人・彩女・アニ・コロナ以上四名は魔法教会学園で魔法について徹底的に調べ上げ己が物にして来い!

猶予は今日から五年後だ!集合場所は追って知らせる。以上!解散!」

「「「「Hoo-ah!」」」」

突然の号令に驚きの表情を浮かべる。

そしてここが礼拝堂ということもあってか声がやたらと響き渡るが、指示を聞き終えると四人の視線や背筋はビシッと伸びていつもと同じ返答を聞くと四人はすぐ様教会を出て行った。


残された俺と神官さんは彼らのそんな背中を押し見送っていたが、神官さんは余りにも突然のこと過ぎてポカンとしている。

「失礼しました。ここが教会だというのに突然大声を上げてしまい申し訳ありません」

「……い、いえ。そんなことより、よろしいのですか?」

「えぇ、もちろんです。リーダーとは常に部下に不安を与えてはいけませんし、ポンコツだと思われてもいけません。

それは士気の低下にも繋がりますしそんなリーダーには誰も付いていきませんから」

「貴方はまだお若いというのに一体どのような……いえ、失礼。忘れて下さい。細かな手続きの書類がございますからそちらの話を進めますか?」

「えぇ、是非お願いします」

気を使ってくれたのか神官さんはそれ以降なにも言うことなく推薦状を書くにあたっての細かな注意事項と書類の用意をしてくれた。


(ご主人……)

応接間を借りて書類を記入していると先ほどまで静かだったレイミーが話しかけてきた。

ーーどうした?

(本当に……本当によかったのですか?ご主人は五年間とはいえその間ずっと一人きりで……その寂しくありませんか?)

俺は手を止めずに少し間を空けてから答えた。

ーー寂しくないといえば嘘になる。だが、せっかく高位の魔法適正ランクを叩き出したのにいつまでも魔法に関しては無知でいるのは良くないし、俺だけの為に残ってグズグズしているなんて時間の無駄以外ありゃしねぇからな。

……何より俺にはお前がいる。だから寂しくなんかねぇよ。

(ご主人……私は!ずっと一緒にいますから安心して下さいね!)

ーーははっ。一緒にいるも何も俺から離れらんねぇだろ。でも、ありがとよレイミー。


それ以上俺たちが話す事はなかったが、なんとなく胸の奥で固まっていた重い物がスッと軽くなった気がした。



それから半月。

幸人たちを迎えにきた魔法教会学園の送迎馬車が到着すると門の前ではドルトさん一行とそれまでに仲良くなったハンターの人や門番さんまでもが見送りに来てくれた。

魔法適正ランクがA級の二人を一目見ようと集まった村人すらいたからけっこうな大所帯だ。


馬車の前で荷物を積み込み終わると横に並んだ四人を前に俺は一人ずつ声をかけていった。


「幸人。こっからはお前がしばらくリーダーだから何か問題があったらお前が全て対処しろよ」

「解ってるよ。お前こそくたばんじゃねぇぞ」


「彩女。嬢ちゃん達の面倒はお前がしっかり見ろよ。あと出来るだけ問題は起こすな。幸人がハゲちまうからな」

「酷いなぁ、人を問題児みたいに……ん。でも了解!アニちゃんとコロナちゃんは任せてね!」


「アニ。辛い事があると思うが、お前は優しい子だ。あの子はまだ目を覚まさないが帰って来る頃にはきっと眼をしますからその時はアニが守ってやるんだぞ」

「はいっ!頑張ってきますからその間はイガ兄さんが守ってあげて下さい」


「コロナ。アニは優し過ぎる所があるからお前がしっかり面倒を見ててやれよ。それにアニもコロナも美人だから悪い虫が付かないように常に気をつけるんだぞ」

「コクッ……皆んなやっつけます!あと、手紙書きますから……返事下さいね」


俺は一人ひとり握手をしたり抱き合ったりしながら言葉を送っていく。ちなみにアニに言った『あの子』とはエルフ族の男の子のことだ。

レッドフォースに襲われてから半月以上たった彼は未だに意識を戻さず眠り続けている。食事などは噛むことが出来ないので林檎に似た果実をすり潰してその汁を飲ませているが、流石にそろそろ限界に近いはずだかり眼を覚ますと思うが……心配には変わりない。


気を取り直して改めて全員に向き直ると俺は背筋を正して両手を後ろで組むと幸人達も同じように背筋を正す。

その光景は軍隊でも余り見られないらしく周囲のハンターや村人は興味深々といった様子で見ている。


「半月前っ!お前達に下した任務は未だ変わらん!五年間、魔法教会学園でそこにある全ての知識を蓄えて来い!

特に魔法適正Aランクの篠原幸人及び篠原彩女はそこにいる誰よりも強くなれ!そしてそこにいる全ての者を守り通せ!

貴様らにはそれだけの力がある事を皆が知ってる!

そしてアニ、コロナ!

人間……いや、生きる者には三種類の者がいる。

弱者を虐げようとする狼。そして虐げらる羊がいる。

だが、貴様らはそのどちらも許されない事を知れ!

貴様らは狼に食われようとする羊を守る番犬だ!

理由なき暴力を許すな!己より強いからといって逃げ出すな!

暴力に屈服することなく生き続けろ!!

ーーー以上だ、解ったか?!」


「「「「Hooah!!」」」」


言い終えると四人は一斉に馬車に乗り込んみ、それを気に馬車は魔法教会学園へと出発していった。



「あいつらの旅立ちに乾杯っ!」

『かんぱーーいっ!!』


夕方。幸人・彩女・アニ・コロナの旅立ちの祝福を祈って俺はギルドの兼ねている酒場で集まったハンター達と乾杯の音頭をとっていた。

「よぉ!しばらく寂しくなるなぁ〜」

そういって酒の入った木作りのジョッキを片手にドルトが隣で肩を組んできた。

この世界の酒はビールみたいな気の利いたもの残念ながらなく、葡萄酒のような味のする透明の飲み物だ。

え?俺の?もちろん葡萄酒ですけど何か?


「はい。でもあいつらなら心配いりませんから案外平気ですよ」

「はははっ!それにしてもお前はこれからどうするんだ?」

「そうですね、とりあえずエルフ族のあの子が目を覚ますまではまだこの村にいるつもりですよ。まだハンターの何たるかを全て学んだわけではありませんから」

「そうだとしてもお前は……」


そこで言葉を濁したのは彼なりの気遣いなんだろうが、俺としては全く気にしていないから平気なのに。

「はい。確かに自分はDランクで魔法は一切使えませんが、それでもバロを狩るだけの実力があるつもりですからこの辺りの獣を狩る程度には問題ないと思っています」

「まぁ、お前の実力は認めているが……これだけは覚えておけ。俺たちはハンターだし初級の魔法程度なら誰でも使える。

だが、魔法教会学園を出た者は皆んなある特技を身につけて戻ってくることが多いんだ」

「特技?」

「魔法を使う使わないに関わらず魔法を使える者を探知出来るって特技だよ」

「それって……」

「上級魔法師にもなると魔法を発動するとその発動した奴の居場所を的確に判断出来るんだ。もちろん魔法を発動する前にも何故か奴らは流れる魔力をなんとなく感じ取って何となく誰がどこにいるのかを判別出来るらしい」

「どうしてもっと早くその事を教えてくれなかったんですか?!」


なんてこった……魔法が全く使えない俺は恐らく上級魔法師といえど気配を感じ取ることは出来ないからかなり優位だが、幸人達にとってはある意味致命傷になるかもしれんぞ。

突然声を荒げる俺に周囲にいた奴らが注目を浴びドルトさんはビックリしたように目を丸くしている。

「ど、どうしたんだよ突然」

動揺して声を震わせるドルトさんに俺は向き直ると一から説明を始めた。


「良いですか?確かに自分は魔法師から居場所を感知されず、同時に魔法師を感知することができません。

ですが、自分には魔法が使えなくとも誰がどこにいるのかを探し当てる技術があります。でも幸人たちは違います。

考えて見てくださいもしも自分以外に同じDランクの人間がいてそして自分と同じように人を探し当てる技術があったら……あいつらは殺られてしまいます」

「ま、まさか。それにDランクっていったらS級が出現するほどレアなケースだぞ?!そんな事がそうそうあるはずが……」

「そうです。そうそうあるはずがありません。でもそんな事を言ったら僕の存在はどうなりますか?

世の中には魔法適正ランクを調べずに生活する人がごまんといます。 その中に絶対にいないと言い切れますか?」

「それは……」


そこまで言われるとドルトさんは言葉に詰まったようにそれ以上何も言えなくなり黙り込んでしまう。


「……自分の言っている事は広大な砂漠に小さな落とし穴にはまってしまうような、そんな奇跡に等しい可能性の話です。

でも僕たちはそんな奇跡のような可能性を一つずつ潰して生きてきました。

だから今回のその話はもっと早く聴きたかったんです。そしたら彼らに一言だけ『魔法の探知能力に頼りすぎるな』と言うだけでその小さな可能性の潰すことが出来たんです」


そこまで言い終えると何人かが訝しんだ顔をするが、どこか納得したような表情になる。きっと魔法のまの時も知らない連中が、それもDランクの俺がどうして今まで生きてこれたのかずっと不思議だったんだろうな。


「すみません……教えてもらったのに怒鳴ったりして、でもドルトさん。いえ、ドルトさんだけじゃない。

ここにいる皆さんに覚えておいて欲しい。

『魔法』だけがこの世界の全てじゃないということを。それだけは知っておいて欲しい」


俺はそれだけ言うと席を立って呆然と立ち尽くしていた受付嬢に声をかけると紙とペンを用意してもらい早速ドルトさんに教えて貰った事を手紙で書いて魔法教会学園宛に送るように告げる。


書き終えてひと段落すると五人の男達が周りを取り囲んできた。

「よぉ、Dランク。さっきは随分と大層な口を利いてたたじゃねぇか」

やたらと装飾品の多い武具に身を包んだ男が喧嘩腰で話しかけてきた。周りの取り巻き達も同様で本来なら観賞用として作られたはずの鎧すら着込んでいる。


確か、数日前にこの村に馬車でやってきた貴族のハンターとその取り巻きだったか……。なるほど、貴族や上流階級の人間は基本的に魔法が全てで高い魔法適正ランクをキープする為に同じ高ランクで同じ身分がそれ以上の奴しか受け入つけないと聞いていたが、どうやら俺のさっきの話でクソもくだらんプライドを傷つけられたようだ。


「事実その通りの事を言ったまでです。その証拠を見せても良いですが、生憎とここは酒の席……被害を出すのは得策ではないと思いますよ」

「ハッ!デカイ口叩いといてさっそく逃げ腰とはな!

流石はDランク。場の切り抜け方を知ってらっしゃる!」


男はまるで劇でも開幕したように大袈裟に声を上げ身振り手振りで演説を始める。はぁ、これだから貴族は嫌いなんだよ。自分が全てだと勘違いしてるからな。

俺は囲んでいる男達の間を縫うように通り抜けるとテーブル席に置かれていた肉料理のナイフを一本手に取る。


「はぁ……そこまで言うなら相手になりましょう。ただ自分はこれ一つで貴方達はその自慢の武器や魔法をじゃんじゃん使って下さい」

「テメェ……後悔すんなよ!やっちまえ!」

「「「おぉ!!」」」

うわっ、さぶっ!?まさか『やっちまえ!』なんてことをリアルに言う奴なんていると思ってなかったから鳥肌立っちまったじゃねぇか。


そんな事を思っていると取り巻きの一人が背中に背負っていた大剣に……炎?を纏わせて斬りかかってきた。

初めて見る武器と攻撃に驚いたが、動作がかなり遅い。

それに大手を上段に振り上げているから斬りかかるコースも容易に想像出来る。

俺は振り下ろされるのと同時に右に一本移動して攻撃を回避すると剣はそのまま床に深々と突き刺さった。


普通の大剣なら余程の業物でない限りこうはならないだろうが、魔法によって斬れ味と破壊力を上げているのかな?

どちらにしてもここでこんな攻撃をされ続けたらギルドがなくなるな。


男が突き刺さった剣を引き抜いて再度攻撃を仕掛けてくる前に俺は男の胴体に回し蹴りを食らわし後方へと蹴り飛ばしてやるが、男は数歩後ずさった程度ですぐに体勢を立て直そうーー意外と頑丈だなーーとするが、俺はそんなスキも与える暇なく連続して後方に後ずさるよう蹴り続けてギルドの外へと追い出していく。

最初の攻撃をしてきたのが大男で助かった。じゃないと一度に全員を外に出すことは難しかったからな。


外までもう少しというところで渾身のドロップキックを食らわすとメキィっと嫌な感触がして男は衝撃に耐え切れず尻餅をついてギルドの外へと転び出るが、どうやら骨と内臓が逝ったせいで男はそこからビクッビクッと痙攣したまま動かなくなった。


それを見た他の取り巻き達は仲間がやられたことに怒り二人が片手剣ーーこれもやたら装飾に凝ったものーーを抜いて斬りかかってきた。

貴族の坊ちゃんは両手を翳すと魔法を発動するようで何かブツブツと呟いているがそれよりも早く取り巻きの攻撃が早かった。

一人の斬りかかってきた攻撃を左に避けるとケツを蹴っ飛ばしてもう一人は突き刺して来るが、身を屈めて回避すると同時に剣を握っていた手にナイフを突き刺して素早く抜くと男は痛みで剣を落としその場に疼くまろうとするが幸いにも……いや、不幸にも男は鎧を着ておらず、俺と同じ皮袋だったので右手にナイフを持ち変えて左手で男の首根っこを掴むと何度も腹部を刺してやる。


そうしている間にもケツを蹴飛ばした男が今度は背後から斬りかかってきたが、ギルドからの明かりのお陰で男の影が見えそれまで刺していた男を捨てると振り向く事もせず一歩後ろに下がる。

ドンッと背後の男に当たのと同じくらいに剣が振り下ろされてきたが、間合いが近すぎるため肩に落ちてきたのは県ではなく男の腕だった。

俺はそのまま流れる動作で降りてきた腕を掴むと正面にいた貴族の坊ちゃんが魔法の詠唱を終えてそこからソフトボールサイズの火球が飛んで来るも、俺は掴んだ男の手で一本背負いをして投げられた男の背中に火球がぶち当たった。


火球は意外と高温だったらしく真っ赤に焼けた炭くらいの温度がしているようだ。それを背中に直で当たった男は鎧を着ていたとはいえ、熱くて身悶えしている。

そんな最後の取り巻きすら自身の魔法で失った貴族の坊ちゃんの顔は何があったのか理解できず呆然として目をパチパチとしている。


俺は一本背負いをした時に落としたナイフを拾い上げるとそれを持ってゆっくりと貴族の坊ちゃんに近づいていく。

「ひぃっ……わ、悪かった!俺が悪かったよ!金ならいくらでも払うからゆ、許してくれ!」

半べそかいてようやく理解できたのか坊ちゃんは腰を抜かして後ずさっていく。あーぁ、綺麗に磨かれた鎧がやら剣やらが土で汚れちゃってんじゃん。こりゃ価値が下がったな。俺は坊ちゃんの前にしゃがみこむと股の間にナイフを突き刺して告げる。


「そうだな……俺が酒を一杯飲み終わるまでは待ってやる。その間に村を出て行け。もし、万が一逃げ切れたら許してやるよ。さぁ、行け」

「ひ、ひぃぃ!!」


男は腰を抜かしながらも村の外へと通じる街道を走り抜けていく。その背中を見送ると俺はギルドの中へと戻っていった。

「おい、良いのか?あのまま逃がして」


何事もなかったかのように席に着いて酒を飲む俺にリグルさんが話しかけてきた。

「えぇ。昔やったゲームをしようと思いまして。僕がこれを飲み終わるまでに彼には逃げてもらいます」

「だが魔法師でもないお前さんがどうやって……」

「さっきも言ったでしょう?追いかける技術があると」


そういってゆっくり時間をかけて酒を飲み終わると大体10分くらいはたったはずだから村を出てそろそろ近くの森に入るはずだ。

「一時間で戻りますけど、その前に聞いても良いですか?」

「なんだ?」

「彼を殺してしまっても僕に罪はあるのでしょうか?」

「……ギルド(ここ)で剣を先に抜いたのは奴だ。だからお前に罪はない。仮にあったとしても俺たちは貴族が嫌いだ」

「ははっ。ありがとうございます、ドルトさん」


そう言い残して俺はギルドを出て行った。





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