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第10話 詐欺

猫族の集落を出てから数日が過ぎ、俺たちは最初の村で食料や衣服それからアニとコロナに剥ぎ取り用のナイフを二本買ってやると1日だけ休息を取って南西にあるサウステンという村を目指して歩いていた。

サウステンは別名【旅立ちの村】と呼ばれ新米ハンター達が集まりハンターとしての何たるかを学ぶ事が出来る上に村の周囲には野犬のような比較的狩りやすい獣が多いと言われている。


俺たちにある程度のハンターレベルがあったら行く事はなかったが、まだハンターになって日が浅い上にアニとコロナもいるから受付のお姉さんの提案で向かう事になった。

ただ歩いて3日は必要な距離で道中には極稀にバロの出現が確認される事もあってここしばらく向かう者はいなかったようだが、ハンター登録前から四頭ものバロを狩ったという実力を買われて今回の経緯に至ったわけだ。


そして今日がそこへ到着するはずの3日目の昼下がりなんだが、未だ村らしき集落は見えない。

だが時折すれ違うハンターたちは若くてまだ少年のような年の子も居たりと驚かされたのでが、それだけ村が近いということなんだろう。

試しに挨拶がてらあとどれくらいかかるかを尋ねると半日もすれば見えてくるだろうと言われた。


ちなみに俺たちは全員それまで着ていた迷彩服やらボロボロになった布服を辞めて茶色く燻んだ皮の上下を着ている。流石にあの服装だとこの世界では目立ち過ぎる。

いくら気にならないと言っても極端な話この世界じゃ全身タイツで町中を歩いているようなものだ。それを考えたら途端に恥ずかしくなって急遽人数分取り揃えたのだ。


お金の方は貴族が溜め込いた財産の半分を貰い残り半分を村へと寄付していった。とはいっても没落貴族が集めたロクデナシ集団。全部集めても金貨が2枚と銀貨が6枚しかなかった。

確かこの世界の通貨だと銅貨1枚が約100円で大銅貨は500円。銀貨は1,000円で金貨は100,000円だったはずだから俺らの討伐報酬は103,000円ってことになる。

何で金貨だけ銀貨100枚分の価値があるのかは謎だが、今はそういうものだと認識だけしておこう。

まぁお陰で懐はかなり暖かくなってくれたから人数分の衣服や数日分の食料やアニとコロナには武器ではないが、剥ぎ取り用のナイフを買ってあげることが出来たから良しとしよう。それにこの世界の物価はそれほど高いものではないからまだ余裕がある。


そんな事を考えながら食後の一服を楽しんでいると突然周囲が暗くなって何かと思いながら空を見上げるとそこには二羽の馬鹿でかい鳥が上空を旋回して飛んでいた。

先ほどまではいなかった筈なのに突如として現れた鳥に呆気に取られ一瞬ポカンとアホみたいに口を開けていると横にいた幸人がおもむろにコンパウンドボウを取り出し狙いを澄ませるとシャッと鋭く矢が放った。

矢は真っ直ぐに鳥が旋回する上空に飛んでいくと、一羽の鳥に命中し鳥は穴の空いたパラシュートのようにクルクルと回転しながら俺たちから数十メートル離れた地面に叩きつけられた。

もう一羽は驚いてどんどん逃げるように上昇してあっという間に太陽を背にして見えなくなっていった。

なるほど、だから雲ひとつない青空から突然現れたのか。

落ちてきた鳥を見に彩女がアニとコロナを引き連れて行くと「なにこれーーっ?!」と声を上げて驚いている。俺と幸人は顔を見合わせると首を傾げてとりあえず見に行くことにした。


「……わぉ」

落ちた鳥を確認した第一声にしては何ともマヌケに感じられるが、俺にはそれ以外の言葉が見つからなかった。

赤い綺麗な体毛をした鳥は両翼を合わせるとどう見ても5〜6メートルはある巨大な怪鳥で首はフラミンゴのように長く、(くちばし)はワニのようにギザギザで目玉が右に2個左に2個の合計4つもある。

地球では絶対に見ることがない怪鳥は幸人が射った弓よりも数十メートルの高さから落下した衝撃により致命傷となって死んだらしい。それでもピクピクと手足が動いてるのは恐らく脊髄反射(せきずいはんしゃ)のせいだろう。


(凄い……たった一矢でレッドフォースを仕留めるなんて、信じられません)

ーー知ってるのかレイミー?

驚愕の声を上げるレイミーに聞くと「知らない人なんていません」と返された。

(レッドフォースは普通の獣と違って魔獣と呼ばれる怪鳥です。突然空から現れると弓も魔法も届かない距離で旋回し空から強力な胃酸を雨のように降らしてくるんです。そして獲物が弱り動かなくなるとようやく降りて捕食をする極めて危険な魔獣なんです。

この怪鳥のせいで毎年多くのハンターが命を落としますからギルドは最低でも黒の上位レベルか銀レベルのハンターしかクエストの受領を認めません)

ーーそりゃまた……穏やかじゃねぇな。ところでこいつは金になるのか?

(はい。食用としての価値はありませんが、心臓部に魔石と呼ばれる結晶があります。これはギルドが換金してくれます。

そして次に体毛が防具の素材として使われたり貴族の装飾品などに使われますから高値で取引されます。一応ギルドでも買取をしますが、定価で引き取りますから場合によっては直接防具専門の工房に行くか装飾店に行った方が高値で買い取って頂けると思います)

ーーなるほどね。サウステンにそれらしい店があったら立ち寄るとしよう、ありがとなレイミー。


礼を言って俺は腰からナイフを取り出すと早速レッドフォースをひっくり返して腹部に刺さっていた矢を抜くと心臓部を切り開き中からレイミーの言っていた魔石を取り出す。

結晶というだけあって大きさや形はそこらへんにある石ころと変わらないが、ルビーよりも真紅で微かに結晶体の中がキラキラと輝いていた。

それを彩女が物欲しそうに見ていたので投げ渡してやると彩女は嬉しそうに受け取りアニとコロナに見せびらかしている。


「なんだあれ?」

「魔石っていう魔獣にだけある核みたいなもんだ。ギルドに行けば換金してくれるらしい」

「へぇ、よく知ってるな」

あ、しまった……。

あんまりにも自然に聞かれたもんだから普通に答えちまった。

実をいうとまだ幸人にも彩女にもレイミーの事を話していなかったのだ。別に隠していた訳じゃないんだが、何て説明したら良いのか解らずそのままなーなーになっていたのだ。

でもここまで言っておいて有耶無耶にするのは今後の為にならないから話すしか選択は残っていない……まぁいつかは話さないといけない訳だしな。

「実は……」


自分が吸血鬼であり、討伐の夜に鎖で繋がれ魔法陣を背中に刻まれた猫族の女性を吸ったことにより彼女の魂が自分の中で生き続けていることなど、それら全てを洗いざらい幸人を含めた四人に話し終えると代表して幸人が「お前が一番ファンタジーだな!」と宣言された。

俺は若干泣きながら「言うと思ったよ!」と言い返してやるが、彩女からは苦笑いを浮かべられ伝説の話を知ってるアニとコロナからは怯えられるような表情を浮かべられた。

……クソぅ!だから言いたくなかったんだよ!

幸人と彩女は良いとしてもアニ達みたいな小さな子にこんな怯えられた顔をされるのが嫌だったんだ!

と、心の底で泣き続けるが誰も救ってはくれない。無論レイミーもこれに関しては沈黙を貫かれた。

あぁ、世界は残酷だ……ここであの名台詞を言えるとは思わなかったよ。


「それでどうやって運ぶんだ?一応内臓とか血抜きも済ませたけど、それでもけっこう重いぞ」

そう言って幸人が近くの立木に吊るしたレッドフォースを指差しながら尋ねてきた。

レッドフォースには食用の価値はないから皮だけ剥いで持っていけば良いのだが、レイミー曰くそれだと価値が下がってしまう為止めた方が良いと止められたのだ。

だから本体ごと運ばねばならない状況になり少しでも軽くしようと内臓と血抜きをしてもらったのだが、根本的な解消には至っていないので路頭に迷っていた。


「ねぇねぇ、これで簡単なソリ作って引っ張ってけば良いんじゃない?」

そう言って提案をしてきたのは彩女だった。

彩女は吊るしてある立木の少し太めの幹を二本切り取ってそれにレッドフォースを持っているロープで縛り付けて運ぼうと言ってきたのだ。

多少運び辛いものがあるが、幸いにも辺りは平地な道が続いてるだけなので俺たちは他に良い案も出なかったのでそれで運ぶことにした。



半日以上かけてようやくサウステンに到着すると流石【旅立ちの村】と言われるだけあってそれなりに活気に溢れているように見えた。

先を尖らせた木製の塀は村全体を囲むように建てられ出入り口を兼ねているであろう門のそばには2〜3メートル程の高さがある(やぐら)が設けられ中には歩哨が一人立っている。

その下の門の前には槍を持った歩哨が二人。近づいていく俺たちをジッと睨みつけている。


「止まれ!お前達ハンターか?ギルドカードを見せてもらおう」

歩哨の一人が告げると俺たちはそれぞれが持つギルドカードを二人の歩哨に見せる。

「ふむ。どうやら本物のようだな、最近ハンターを襲ってギルドカードを偽造しようとする輩がいてな……すまなかったな」

「いえ、そういうことでしたらお気になさらず。ところでギルドの場所と防具専門の工房か装飾店があったら教えて頂けませんか?」

「ギルドはこの先の道を真っ直ぐ行くと石造りの建物があるから直ぐに解るはずだ。装飾店はないが、工房ならギルドの隣にある。盾と鎧の看板が出てるから解るが……一体何の用があるんだ?」


「ここに来る途中にこいつを狩ったので買い取ってもらおうと思ったんです」

そう言ってそれまで引きずってきたレッドフォースを二人の歩哨に見せると目玉を飛び出すほど驚愕の表情を浮かべてきた。

「れ、レッドフォースじゃないか!?」

「はい。空を飛んでたんで撃ち落としました」

「撃ち落としましたって……お前たち本当に無印か?」

「なんなら一緒にギルドまで同行しますか?」

「いや、そこまで言うのなら本当なんだろう……まぁ有望なハンターは大歓迎だ。ゆっくりして行くといい」

「ありがとうございます」

そう言って別れを告げると俺たちは教えられた道を歩いて行き最初にギルドへと向かった。


道行く人から引きずるレッドフォースを見てくるが、そんなに珍しいものなのだろうか?

しかもギルドに入ったら入ったで俺たちを見てハンター達が驚愕の声をあげて受付嬢さんまで見つめてくる始末だ。

「こんにちは。北東にある村から来ました。到着の報告とコレの換金をお願いします」

「は、はいっ!お預かりしま……えぇ?!」

ギルドカードと魔石を渡すと受付嬢のお姉さんはその両方を見て本当に目玉が飛び出しそうな勢いで驚いている。むしろ俺たちの方がその声に驚いて一瞬ビクッと体を強張らせてしまった。


何だなんだ?この世界は魔獣を狩るだけでこんなオーバーリアクションを取るのが常なのか?

そんなことを思っているとお姉さんは声を震わせて尋ねてきた。

「あ、あなた達本当に無印……それもレベル1なの?」

「そうですけど……あの、どうかしました?」

「どうもこうもないわ!レベル1。いえ無印クラスのハンターがレッドフォースから逃げ切れた人は今まで皆無に等しいのよ?!

それに黒の上位ハンター数人で挑んでも運が良ければ半数が生き残れるくらいで仮に銀クラスのハンターがいたとしても負傷者が出るのは確実といっていいのに、それを誰一人死傷者を出すことなく狩れるなんて聞いたこともないわ!」

と、そこまで聞いてようやく事の重大さを理解できた。

銀クラスといえばハンターの中では最上の一つ下のクラスでつまりは超凄腕揃いの大ベテラン様だ。

そんな人たちでもレッドフォースを狩るときはそれなりの覚悟が必要なのに俺たちは……いや、幸人は食料調達感覚で一撃で仕留めてしまったのだからこれは慌てざる終えないというものだ。


あんまし目立ちたくなかったんだが、早速目立つことしちゃったなぁ〜っと悔やんでも仕方がないので、とりあえず暫く滞在する事を告げ宿を紹介してもらって俺たちは一旦ギルドを後にする。

ギルドを出ながらもやはりレッドフォースは誰もが知ってる危険な魔獣で人目を惹いてしまうので俺たちは足早に隣の鎧と盾が描かれた看板のある工房へと入って行く。


工房の中は鉄を打ち付ける音と熱気で賑わい男達の汗だくになった姿が目立つ。俺と幸人は割りかし平気だったが女子連中はベースが獣なだけあって鼻がよく効くから店に入って2秒以内に外へと出て行った。

ーーまぁ、気持ちは解らんでもないがそんなあからさまに鼻をつまんで逃げるなよ……工房の人達もなんか気にしちゃってんじゃんか。

(……同じ女性から言わせて頂きますと初めて入る方には些か刺激的ですから逃げるのも無理はないと言うか、しょうがないと思います……)

ーーひょっとしてレイミーも早く出て欲しいと思ってる?

(……申し訳ありませんご主人)

素直だなぁ、五感の全てを共有してるわけじゃないんだろうけど、女性には視覚からの情報だけでも堪えるものがあるようだ。

ーー解った、これだけ渡したらすぐに出るから我慢してくれ。

(ありがとうございます!)

最後にそう礼を告げられると俺は改めて工房内を見渡す。

大きな炉の中は赤々と炎が燃え続け、その手前では真っ赤になった鉄の棒を打ち付けるやたら背の低い親父さんがいたり真っ黒な石炭をひたすら運び続ける背の低いおじさんがいたりと忙しそうに動き回ってるが……なんでみんな背が低いんだ?


不思議に思ってもう一度全体を見渡すとやっぱり見た目がかなり年輩になった背の低いおじさんだらけだった。

「なんじゃ若いの!ドワーフを見るのは初めてなのか?!」

突然背後から大声で怒鳴られて驚き、慌てて振り返るとそこにはススだらけになった髭をたっぷりと蓄えた小学生くらいの背丈をしたおじさんが俺の太腿よりも太い両腕を組んで仁王立ちしていた。

そのあまりの気迫にビビったが、すぐに立ち直して向き直る。

「すみません、余り多種族の方との交流がありませんでしたから……失礼しました」

「ガハハハッ!気にするない!最初は誰でもそうじゃ!それよりもまだまだ若いようだがこんな所に何の用だ?!」


声デカイなぁ〜、真横で拡声器を使って怒鳴られてるみてぇだ。

「実はこちらでコレを引き取って頂けると聞いたので立ち寄らせてもらいました」

そう言って幸人に引きずってきてもらっていたレッドフォースをドワーフのおじさんに見せる。

「ほぉ……これをお前さんが仕留めたのか?

中々に良い腕をしておるの。

うむ、内臓も綺麗に取られ血抜きも完璧なようじゃな。何より綺麗に切開されとるから無駄に羽も傷つけておらん。

良いじゃろう!銀貨10枚でどうだ?!」

ーーレイミー。こいつの定価はいくらくらいなんだ?

(場所や地域にもよりますが、この辺りには銀クラスは愚か黒の上位ハンターも居りませんから定価は恐らく銀貨13〜15だと思います)

つまり足元を見られたということか。ならここにいる必要はないな。

「悪くないですが、残念ながらギルドで買取って頂いた方が良さそうですね。失礼します」


そう言って俺たちは早々に立ち去ろうとするとおじさんは慌てて引き止めてきた。

「ま、待て待てまて!そう急ぐな。冗談の通じん若もんだな。なら定価の15枚でどうだ?」

よし。食いついてきた。しかも自ら定価の値段を告げるという墓穴を掘ってくれるとは有難い話だ。

「ふむ……そういえば、話は変わるんですが僕らの仲間の猫族二人はまだ武器を持っていません。

それなのにこいつを偶然とはいえ狩ってしまいギルドでもこの村の中でも有名人になってしまいました。

……すみません、無駄話が過ぎましたね。それで、銀貨15枚でしたっけ?」

俺はとびきりの笑顔をみせながら聞き返すとおじさんは苦虫でも噛み潰したかのような渋い顔を見せている。

そりゃそうだ。今のを解りやすく言い直すと

『有名人の俺たちが「この工房は苦労して手に入れた獲物を新人だと足元を見て格安で引き取ろうとするボッタクリの店だ」と宣伝して周ろうか?それが嫌なら定価で売ってやる代わりに仲間の武器をタダで提供しろ』

ということだ。これで笑顔でいられるならよっぽどの自信のある大物か単なる頭の弱いバカのどちらかだ。


俺はニコニコ笑顔のまま返答を待っているとやがておじさんの方が折れて盛大な溜息を吐くと共に提案を飲んでくれた。

「はぁ〜……全くとんでもない小僧が来たもんだ。

ほれ、銀貨15枚だ。武器はワシらの専門外じゃがそこに裏の武器専用の工房から流れてきた数打ち用の剣が樽に入っとるから好きなのを持って行け」

「ありがとうございます♪」

おじさんから銀貨の入った小袋を受け取ると枚数を数え銀貨が入っていることを確認し、次に一つの樽に数十本の剣が入った樽を見るとそれが全部で六樽あった。

形はどれも似通ったものばかりだが一本一本手に取り重さやバランス。そして刃の状態などを見極めていくのだが、量がハンパなく多いから幸人と二人で手分けしながら品定めすることとなった。


二十分以上かけてようやく選び抜いた二本の剣は一本が片刃の直刀で刀身が柄まで入れると40cm程ある片手剣だ。

ぱっと見だと忍者刀のようにもみえなくもないが、鍔がT字になっているせいでやっぱり西洋風だなと思ってしまう。ちなみに俺が選んだ品だ。

もう一本の幸人が選んだ剣も同じく片刃の直刀だが、こちらは背の部分がソードブレイカー仕様になっておりギザギザになっている。長さは俺が選んだのと同じくらいだ。

「親父さん。この二本貰ってくね!」

声をかけると先ほどのおじさんがパイプを吹かして「ようやくかぁ?」と言ってこっちまで来ると何故か目を見開いてきた。そして


「お前さんら本当に素人か?」

信じられないといった様子で見てくるおじさんに俺は笑顔だけを向ける。

「全く……本当に恐ろしい小僧だ。ほら、この鞘はおまけだ持って行け。

それとワシの名はロブロ。何か欲しい物があったらワシを訪ねろ、今度は値引きなしで応えよう!」

先ほどまで苦虫を噛み潰して沈んでいた表情をしていたのにロブロさんは笑顔で見送ってくれた。


店から出ると外には彩女たちが日陰で俺たちが出てくるのを待ってくれていた。

三人のとこまで歩いて行くと早速アニとコロナが持っていた剣に気づいて荷物だと思ったのかそれを受け取ろうとする。

「これはお前たちの武器だ。形も違うし所詮数打ちの剣だが、最初の武器としては十分だろう。喧嘩せずに好きな方を取るんだ」

そう言って二人に片手剣を渡すが、まだ背丈が小さい二人が持つと片手剣が両手剣に見えるからちょっと面白い。

ただ、剣はまだ町のど真ん中で人通りも多いから鞘からは出さず宿に着くまで我慢してもらった。

横から彩女が興味深々といった感じで二人の持つ剣をジロジロそわそわしながら見ているがそれだと完全に不審者だぞ。


ギルドのお姉さんに紹介された宿に着くと三人部屋と二人部屋をそれぞれ一つずつ頼み、一週間滞在することを告げると前金で銀貨5枚を要求されるが日本円で約5000円で7泊も出来るんだからこれはかなり安い方だと思う。

案内された部屋に着くと俺たちは旅の疲れを癒したくて即効ベッドへダイブ!

……は流石にしなかったが、それでもバタンっと倒れこんだ。


どのくらい眠ったのか解らないが、外は完全に夜になっていた。

時計を見ると夜中の0時を過ぎたくらいになっている。

「……はぁ、変な時間に起きちまったな」

(おはようございます、ご主人)

「ん?起きてたのか?」

(はい。というより、ご主人の目覚めは私の目覚めでもあるようです)

解っていたこととはいえ、本当に俺たちは一心同体の存在となったんだなと今更ながら実感してしまう。

俺は窓辺にたつと懐から煙管を出して吸い始める。幸人は……気持ちよさそうに寝ているな。なら起こさないようにするか。

ーーなぁ、レイミー。魔法ってのはどんなのがあるんだ?


魔法があるのは知ってる。そして魔法適正ランクによってその後の人生がほぼ決まってしまうことも理解してるつもりだ。

だが、俺たちはまだ魔法が存在するということだけで、実際にその魔法を見たわけでもないし、そもそもどんな魔法があるのかすら解らない。

目が覚めて寝付けそうにもないしちょうど良いからこれらの事をレイミーに聞いておくのも良いだろう。

(そうですね……魔法には大きくわけて4つの種類があります。

一つは属性魔法。

これは火・水・土・風・雷の5つの自然の力を利用して発動する攻撃魔法です。

二つ目は無属性魔法ですね。

属性魔法とは違い。魔力そのものを使った魔法のことを言いますがこちらは需要がないので使う人は殆どいませんね。唯一使うことがあるとすれば光の球体を作り野営するときの灯にするくらいですかね。

三つ目は回復魔法です。

初級の回復魔法ではかすり傷を治す程度しかありませんが、上級の回復魔法ともなると例え腕が千切れていようとその場でくっ付けることが出来ます。

そして最後の4つ目は補助魔法になります。

これは防御するための障壁を形成したり、移動速度を上げたりする事ができます。初級では自身の身体能力を上げる事しか出来ませんが、中級になると最大で5人。上級ですと20人単位で身体能力が上げられます)


予想してた通りといえば、その通りなんだがやっぱり魔法ってのはかなり便利だな。特に回復魔法なんてぶっちゃけチートに近いんじゃねぇか?

戦場で負傷し命を落とす兵は少なくない。でもこの回復魔法さえあれば例え腕が千切れようと一瞬でくっ付いちまうってんだから……うん、やっぱチートだな。

RPG系のゲームとかだと当たり前のように使ってたんで気づかなかったが、こうして改めて考えるととんでもない代物だ。

まぁ、俺たちは殆ど不死身に近い存在だから必要ないと言えば必要ないんだろうなぁ。


それよりも気になったのは無属性魔法についてだ。

レイミーの説明ではまるで『役立たずなダメ魔法。使うだけ魔力の損だ』とでも言うような口調だったがそれは違うような気がした。

属性魔法はあくまでも自然が生み出す力を利用して魔法を発動させるのに対して無属性魔法は魔力だけを使って光の球体を出現させるというのだ。

魔法にもある一定の条件というか基準のようなものが存在すると思っていたが、これはその基準をぶち壊しかねない事態だぞ。


と、まぁそんな事を考えていても解るわけがないので夜が明ければこの村には教会があるらしいからそこに行って色々と聞いてみよう。

ついでに魔法適正も測りたいしな。













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