救世の物語
武技世界アルテミス。
いつしかそうよばれるようになったこの世界には、多くの人々が暮らしている。
だが、この世界には人間だけでなく人間に害なす存在『魔物』も繁栄している。
魔物の力は強力で、生身のままの人間では勝ち目などなかった。
しかし、人々は『魔導書』と呼ばれる書物の形をした媒体に触れることで、『武技』と呼ばれる力を会得した。
武技は魔物に対して有効で、魔物に対抗するための手段を身に着けた人々は魔物との均衡を保ちながら繁栄を繰り返してきた。
だがその均衡は、脆くも崩れ去った。
突如として、他の魔物とは一線を画する魔物が出現したのだ。
『ソラナキオロチ』
後にそう名付けられるようになった魔物は、武技を持った人々など意に介することなくただ人々を蹂躙した。
阿鼻叫喚、死屍累々。
かつては繁栄を極めた大国でさえソラナキオロチによって呆気なく滅ぼされ、人類は着実にその数を減らしていった。
恐怖、不安、絶望。
残された人類は負の感情に支配されていき、ソラナキオロチに喰われるその時を待つことしかできなかった。
だが、ソラナキオロチ出現から五年後、人々の絶望は打ち消されることとなった。
突如現れた五人の英傑が、ソラナキオロチを撃退したのだ。
人々は希望を胸に、五人の英傑たちとともにソラナキオロチと戦うことを決めた。
そして、ソラナキオロチ撃退から三年後。
五人の英傑たちに率いられた人々は激闘の末、遂にソラナキオロチを滅ぼすことに成功したのだった。
五人の英傑たちは『救世の英雄』と呼ばれ、ソラナキオロチ討伐後は役目を果たしたかのように姿を消した。
それから五十年という長い月日が経った。
ソラナキオロチとの大戦によって負った傷を癒しながら、人々はかつての暮らしを取り戻し、現在は四つの大国によって管理がされている。
深緑の国、イルフォール。
花の国、エレガイト。
科学の国、マシネイル。
闘争の国、ウォーランド。
世界は今、四つの大国によってその均衡を保っていた。
そして、今物語は始まる。
後に影法師と呼ばれる少年と、月影の魔導書が出会うその時、救世の物語は今一度始まりを迎えるのだった。