異世界と戦闘と魔術
戦闘といいても超短いです
やがて光が止み、ゆっくりと周りの景色が見えてきた。
初めに見えたのは緑、そう自然な色だ。そして、広大な青空。辺りを見回していると木々が生い茂っていた。ちょっと遠いところにだけど。
どうやら、俺は森の中にポツンと位置する、なんか草原みたいなところにいるみたいだ。そんでもて、周りに木々がないし、森までちょっと距離があるから、草原って言い方をした。
まあ、こういうとき森の中?なのは定番だな。それより、これからどうしようか。やっぱり最初は情報収集だよな。それじゃあ、誰か人に合わないと。
これからのことを考えている途中で突如として気になった。なんか視線が低いのだ。俺の背丈は170㎝ぐらいはあるはずだが、どう見ても、今見える景色はそんな高くない。高く見積もっても、120㎝ぐらいしかないのだ。俺は改めて、自分の体を見てみる。
「な、なんだ……これっ!?」
俺は絶句した。なんせ、身体が小さくなっていたのだから。俺の身長は小学生入りたての六、七歳の身長しかない。
「若返っている?」
そうとしか考えられない。だって、着ている服はこの世界に来る前に来ていた服のままだし、その服もすごくダボダボになっている。髪は襟足がちょっと長い程度になっているのはそのままだ。これでもボーイッシュな女の子にしか見えないのはちょっとおかしいと思っている。
「この服のままじゃ動きにくいな……ちょっと変えるか」
そう思ったが早いか俺は魔術を発動した。
俺が地球で持っていたのは異常な筋力だけではない。あまり使わなかったが、魔術という通常とは異なる力も持っていたのだ。
魔術は【火】【水】【風】【土】【氷】【雷】【光】【闇】【無】の九属性ありそれぞれにランクが決められている。五階級から始まり一階級となり、その上に特級、天災級、神話級となっている。これは俺が魔術を使えるようになった時に頭の中に流れ込んできた情報だ。俺はすべての属性、階級を使える。
九属性の中でも【無属性】は特別で、ほかにはない。特性がある。今から使う魔法は無属性のなかで特級に位置する魔法だ。
「【カンビオ・マテリア】」
この魔術は物質を分解して思い通りの形に再構築する魔術だ。物質の構成を変えることはかなりの魔術コントロールを要する。だけど、俺は難なくこなした。
俺のダボダボだった服が一瞬光り分解されて、再構築された。色は元のままの黒だがちゃんと今の体に合うようにしてある。因みに、今着ているのは黒いジーパンに、黒いティーシャツ。それに黒に白いラインが入っている、上着だ。
服を変えた俺は、次の魔術を発動した。それは、魔力探知と地形探知だ。どちらも無属性の二階級に位置する魔術で、魔力を持つものを探知できる魔術と魔力を放ちそれで地形を知る魔術だ。生き物にはどんなに小さくても魔力があるから、魔力探知に引っかかる。
俺を中心に魔術を放ち、探知範囲を広げていく。なぜ、俺がこの二つの魔術を使ったかというと、この森にすむ生物の魔力量を計りたいのと、この森の広さを知りたいからだ。
お、いるいる。いたるところに大きな魔力を持った生物が。しかし、この世界の生き物はすごい魔力を持っている。どれも、地球の生物の数百倍の魔力量を有している。まあ、どれも俺の魔力量には遠く及ばないが。
ここまでは、問題がなかったが、ここで問題が起こった。地形探知で測ったら、この森俺の居るところを中心に半径五十キロは森なのだ。しかも、そのあと五十キロ単位で人がいないようなのだ。
しかし、困った。百キロ単位で人がいないとなると、かなり遠くまで行かないと、人に会えないということだ。
「うーん。これは、ここを拠点とするしかないか」
この草原は数キロあるので、拠点を作るのには申し分ない。
「そうと決まったら、まずは家だな」
俺は家に使う材木を集めるため、森へと向かった。いくら森まで数キロあるからって、俺の脚力なら、本気で十秒もかからない。
森の入口へと着いた俺は、【風属性】の【四階級魔術】、【ビエント・フィロ】を発動した。この魔術は風の刃を起こして、物を切り裂いたりできる。本当は魔術の発動には詠唱が必要なんだが、慣れてしまえば無詠唱で発動もできる。さすがに特級以上は魔法名を言わなければ発動できない。まあ、特級以上は詠唱をしなければ発動できないはずなんだが、なぜか、俺は魔法名だけで、発動できてしまう。まあ、神話級の魔術は言霊で枷を外さなければ使えないが。
ビエント・フィロで大木を倒して、それをさらに適当な長さへと加工する。
気を百本ぐらい倒したところだろうか、大きな魔力を持つ、生き物が近づいてくるのが分かった。どうやら、木々が倒れる音につられてやってきたようだ。
やってきたのは巨大な赤いサーベルタイガーだった。体調は四メートル弱はありそうだ。巨大な牙をもっており、目も血走っている。どうやら、友好的な感じではないようだ。思いっきり俺を食べたそうにしている。
「今日の夕飯が見つかったな」
俺は若干腹が空いていたので、ちょうどよかった。俺はとりあえず拳を握って、相手の出方を見ることにした。異世界で初めての戦闘だ。ここは慎重すぎな方がいいだろう。
サーベルタイガーの前の空間が少しゆがんだと思ったら、結構な魔力を感じた。俺は一様【風属性・五階級】の防御魔術【ビエント・エクスド】を張っておく。まあ、俗にいう空気の壁ってやつみたいなものだ。
サーベルタイガーが吠えると、歪みが俺に向かっていくつも、放たれた。しかし、俺に届くやつは一つもなかった。それも、一つ一つがなんか軽いのだ。まるで、攻撃の重みを感じない。これなら、魔術を使わなくても勝てそうだ。
奴は自身の魔術?が弾かれて、こちらの技量の高さがみえたのか、様子をうかがっている。それなら、こちらは好都合。俺は魔術を解除して、一気に地面を蹴った。その時、地面が砕けた音がしたが、気にしない。一瞬で奴の懐に飛び込むと、拳を奴のどてっぱらに叩きこんだ。それも、結構な力を籠めて。
すると、サーベルタイガーは吹っ飛んだ。結構なスピードで。しかも、大木をなぎ倒しながらなのに、全然スピードが落ちない。二百メートルぐらい言ったところでようやく止まった。
「あれ? やりすぎた?」
俺は急いで、近寄ると、サーベルタイガーは血を吐いて死んでいた。どうやら、俺が殴った時に即死したようだ。
しかし、この世界の生き物は丈夫なんだな。結構な力で殴ったのに爆砕しないなんて。これなら、本気で殴ってもいいだろう。
俺は魔力の紐を出して、サーベルタイガー縛って、もとの場所まで引っ張っていった。ついでに折れた木や切った木も魔力の紐で引っ張っていく。
草原の真ん中辺りまで来た俺は家を建てることにした。どうやって建てるかというと、そこは先ほど使った魔術【カンビオ・マテリア】を使用する。
【カンビオ・マテリア】は物質さえあればどんなものにも形を変えられる。今回は木を使っているから、ログハウス風の家を建てる予定だ。
「【カンビオ・マテリア】」
俺が魔術を発動すると、切った材木が光って、形を変えていく。光が消えて、できた家は結構大きな家だった。一人で住むには十分すぎる。
これで、住む場所はできた。あとは畑なんか欲しいな。川も作ろうか。俺はこれからのことを考えながら、この異世界で過ごし始めた。
◇◇◇◇◇
そうして、二月ぐらいたったころだった、この森の主と出会ったのは。
主人公の名前がなかなか出せません。どうしましょう