Ii Borgo Abbandonata (邦題:ゴーストタウン) 【シナリオ形式】
>>ご紹介
1980年代に自主製作の8ミリ映画用に書いたけれど作れなかった物語を、漫画用にアレンジした西部劇です。停滞期(1970年代)の西部劇風の、静かに暴力的なムードを目指した内容です。
このジャンルにはこだわりがあるので、たまにある安易なSF化やFT化の提案はご遠慮くだされたく(汗)。もっとも平安時代の日本にだけは変更可能で、その場合は内容を一部修整しま~す。
>>あらすじ
ゴーストタウンと化した鉱山町にやってきた男。町を去る最後の一人だった女の、育ての親の知り合い……かもしれない? ひと気の無い町をうろついてしばし追憶に浸っていた彼だが、翌日、逃亡中の強盗三人組がやって来た。傍若無人に町を破壊する三人組に耐えかねた男は銃を抜く。 / 漫画脚本の形式です。
>>登場人物
(雰囲気を出すために物語中では全員無名とし、すべて便宜的な仮称です)
ジョニー:風来坊風の旅人。ボロの帽子をかぶり砂よけの毛布をまとっている、うす汚い姿。
エレン:生意気な感じの酒場女。
ランドル:三人組の一人。禿頭で長身、日焼けした筋骨たくましい男。裸にじかに
革のベスト、下はアラビア風のズボン、そこにじかに拳銃をぶち込むという異様な
服装。混血の男で、ボス風。
サンチョ:三人組の一人。もじゃもじゃ髭で小太りの男。服装はメキシコ人風で、
ソンブレロを背にしている。
ジェイク:三人組の一人。上下ともに黒づくめの服装で、無口なガンマン。
[1]
□ 砂漠。
キャプション「♪もう歌声は聞こえない」
□
砂漠の中に、蜃気楼のような小さな影。(騎乗した男)
キャブション「♪酒場の喧燥も過去のもの」
□
影、しだいに近づいてくる。
キャブション「♪ピアノの音は思い出の中にだけ響き」
[2&3]
□ (大コマ)
T「ゴースト・タウン」
キャプション「♪踊るのはただ 床の埃だけ……」
手前に馬の足が見えている向こう、砂漠の窪地に現れたゴーストタウン。
すべての建物がぼろぼろで、埃っぽい風がふいているだけ。
壊れかけた道しるべに色の落ちかけた「Silver Springs」の文字。
□ (小コマ)
キィ…
汚れて、鎖が外れ、壊れかけた看板。
□ (小コマ)
キィ…
壊れかけた揺り椅子がポーチに。
□
ジョニー、ひと気のない町の中に馬を進める。足元を風が抜けていく。
キャプション
「♪昔 そこには笑いがあった
昔 そこには歌が聞こえた
昔 そこには金や銀があった…」
[4]
□ 裏辻。
幌馬車が止められている。
馬車にトランクを載せようとしている女。(エレン)
□
エレン、後ろの気配に気づいて振り向く。
□
ジョニーが馬から見下ろしている。
エレンはトランクを抱きながらそれを見上げる格好。
□
ジョニー、馬から下りて、
[5]
□
トランクを奪うように馬車へ載せる。
エレンは呆然。
□ 酒場。
掃除中のように椅子がテーブルに載せられ、ピアノには布が掛けられるなど、完全
に閉店状態。
ただし、柱や壁に何箇所か、弾痕や刃物で切りつけた痕などがある。
(かつて荒くれたちが出入りしていたという痕跡)
テーブル用の椅子がカウンターぎわに置かれ、ジョニーが座っている。
カウンター内で、ショットグラスにバーボンを注いでいるエレン。
エレン「この町に来る人が、まだいたなんてね。」
□
ショットグラスを傾けて
ジョニー「あんたは?」
□
また注ぎながら
エレン「父さんが寝込んでて、旅は無理だったから」「一昨日まではね。」
[6]
□
ジョニー「病気か?」
エレン「流れ弾に当たったのよ」「半年ほど前だったわ」
□
ジョニー、手が止まる。
ジョニー「……」
エレンの声「その後で鉱脈が枯れて、誰もいなくなっちゃったってワケ。」
□
エレン、樽からボトルへとバーボンを移しながら
エレン「もう客もいないし、あたしも今日、町を出……」
ジョニー「客ならいる」
□
エレン、きょとん。
□
ジョニー、後ろ手にコインを投げて、ボトルを手にスィングドアを押し出て行き
ながら、
ジョニー「また明日、来る。」「酒場は開けといてくれ。」
エレン、バーカウンターの中からきょとんとしたまま見送っている
[7]
□
エレン、不愉快そうに
エレン「なによ? あの男」
□ 墓地、夕方。
粗末な丸太の十字架の前に立つジョニー。(エレンの父親の墓)
□
ジョニー「……」
風が吹き抜ける。
□ 裏通り。
たらいを抱えて裏口から出てきたエレン、
エレン「ったく。こっちの都合ってもんも……」
が、何かに気がつく。
[8]
□
ジョニー、十字架にボトルのバーボンを注いでいる。
エレン、だまってそれを見ている。
□ 夜。
灯りもないアーケードの揺り椅子で、ジョニーが葉巻をくわえている。
そばの壊れかけたテーブルには空のボトルとショットグラスが。
□
ジョニー、悲しげな目。
□
トン。
そのテーブルに、別のボトルが置かれる。
□
エレン「あんた……父さんの知り合い?」「墓参りなんかして」
探るような目。
□
ジョニー、葉巻を指に挟んで、バーボンをグラスに注ぎながら
ジョニー「あんたこそ、あいつの娘か?」「見憶えないけど……」
[9]
□
エレン「拾われっ子、ってとこね」
ジョニー「たしかに捨て子はときどきいた。」「銀鉱町は欲に目の
くらんだ奴ばかりで、親も子もないからな。」
□
エレン、抗議するように
エレン「父さんはそんな人じゃなかったわ。」
□
ジョニー「……」「いい父親だったのか?」
エレン「ええ。」
□
ジョニー「そうか……」
ジョニー、遠くを見て考える表情で葉巻を咥える。
□ ゴーストタウンの壊れかけた家しかない辻。
□ (回想)壊れる前のその辻で、輪になってダンスに昂じる人々。
□
ジョニー、帽子で目を隠してため息をつく。
[10]
□
ジョニー、立ち上がり
ジョニー「……しばらく一人にしといてくれ。」
□ 夜明けの砂漠。
人相の悪い三人組、ランドル/サンチョ/ジェイクが馬でやってくる。
鞍には大きな革のカバン(札束が入っている)が下げられている。
サンチョは水筒を手にしている。
声「畜生、せっかく金が手に入ったのに」「もう手配が回ってるとはな!」「強盗も
楽じゃねえってこった」
□
サンチョ、空の水筒を舐めまわしながら
サンチョ「だからってよぉ、砂漠で逃げまわってても俺たちゃ渇き死にだぜ?」
□
ジェイク「……」
ジェイク、黙って見ている。
ランドル「この近くにシルバースプリングって町がある。」
[11]
□
サンチョ、唾を吐きながら
サンチョ「おいおい、「保安官とご対面」はごめんだぜ」
ランドル「いねえよ。最近、ゴーストタウンになったって聞いてる。」「銀
は枯れたが、水くらいはまだあるはずだ」
□ 薄暗い、汚れた部屋。
塵でよごれた窓から光が差し込む。
ジョニー「……」
ジョニー、ベッドに寝転んで葉巻を咥え、窓を眺めている。
□
窓の外に、壊れた看板や崩壊しかけている家。
□
綺麗な看板やできたての家。(回想)
□
ジョニー、ふと壁に手をやる。
[12]
□
壁に、落書きのような傷跡が。
□
ジョニー「……」
懐かしそうな顔。
□
いきなり、ドカン、バリバリと破壊音、そして銃声。
ジョニー、驚いて振り向く。
[13]
□ 酒場
サンチョ、拳銃を手に窓をぶち破って酒場から飛び出す。
サンチョ「ひゃっほ~う!」
□
ランドル、樽に直接口をつけて浴びるように呑みながら、
ランドル「ウィスキーまで残ってるとはツイてたな。」
ジェイク「……」
ジェイクはジョッキで呑んでいる。
□
サンチョ、椅子を叩きつけてテーブルを壊す。
ランドル「壊してもいいが、使う分は残しとけよ」「何日か、この町で休んでくん
だから。」
[14]
□ 二階の小部屋。
扉の隙間から、嫌そうな顔でエレンが見ている。
エレン「……」
□
下を向いて、耐えるような顔をするが、
□
顔を上げて驚きの表情。
□ 酒場。
スィングドアから、ジョニーが入って来て立っていた。
おどろく三人。
[15]
□
ランドル「……」「なんだ、てめえ?」
□
ジョニー「……」
□
戸惑う3人。
□
ジョニー「……」
無表情で見ているだけ。
□
戸惑う3人。
□
サンチョの手が、そっと拳銃に触れる。
[16]
□
ドン!
ジョニーがコルトでサンチョの額を撃ち抜いていた。
驚くランドルとジェイク。
[17]
□
ランドル「SHIT!!」
ランドル、横っ飛びしながら射撃。テーブルが倒れる
□
ジョニー、撃ちながら、壊れた窓越しに背中から外へ跳ね出る。
ガラスが飛び散る。
□
倒したテーブルに隠れながら拳銃を手に
ランドル「畜生、人がいたとは」「賞金稼ぎか!?」
ジェイク「……」
□
額から血を流して倒れているサンチョ。(死骸)
[18]
□ メインストリート
汚れて壊れかけた建物の間を、空っ風が吹きぬけていく。
銃を手に左右を警戒しながら歩いているランドルとジェイク。
ランドル「どこへ隠れやがった?」
□
ジェイク「……」
ランドル「並んで歩ってたってマトになるだけだ」「手分けして探そうぜ」
□
ジェイク「……」
感情の分からない表情。
□ どこかの二階。
ジョニーが窓から見おろろしている。
□ 建物の中
ドッ。
ジェイク、扉を蹴り破る。
[19]
□
埃っぽいダイニングルーム。
□
ジェイク、立ててある皿にふっと息を吹きかける。
埃が舞う。
□
ジェイク、ふと気がつく。
□
床の埃にブーツの足跡。梯子段へと続いている。
□
ジェイク、天井を見上げ、
[20]
□
ドッ、ドッ、ドッ!
ジェイク、天井に向かって連射。
□
ガタッ……、と上から音がする。
ジェイク、手ごたえを感じた顔。
□
ジェイクの手が梯子段にかかる。
□
上の昇り口から拳銃が現れ、梯子段の途中のジェイクの頭に突きつけられるる。
ジェイク「!」
[21]
□ 馬つなぎ場。
ランドルがカバンを馬に載せようとしていたところで銃声が響き、エコーした。
振り向くランドル。
ランドル「!」
□ メインストリート
馬でやってくるランドルの前に、ジョニーが立ちはだかっている。
ジョニー「仲間を囮にして金は独り占め、か?」
□
ランドル、探るような表情で。
ランドル「……わかった、ふたりで山分けしよう。おまえの取り分は、400ドルはあるぞ」
□
ジョニー、咳でもするかのように口を抑えながら
ジョニー「400ドル」「あいかわらず安いんだな、命の値段ってものは。」
□
と、ジョニーの足元に血が一滴。(さっきジェイクに撃たれ怪我をしている)
[22+23]
□ (見開き)
その瞬間、同時に射撃。どちらも派手に血を吹く。
□ (時間経過)墓地。
廃材で作った十字架が、父親の墓の横に立っている。
エレン「…………」「そういえば父さんが言ってたわ。実の息子が一人いたって。」
[24]
□
エレン「……父親と一緒に、眠りなさい。」
□
エレンの幌馬車がゴーストタウンから去っていく。
「♪昔 そこには笑いがあった
昔 そこには歌も聞こえた
昔 そこには金や銀があった」
「♪昔 ・・・・。」
~ 終