私と小松丸
ちょっと状況を整理しようと思う。
私がコンビニから帰ってきたらこの少年が私の家のドアに寄りかかっていた。うん。許容範囲。
そして起こそうとゆり動かしたら彼が怪我を負っていることを確認。まあ許容範囲。
彼の手当てをして約三日家に置いてやった。そこそこ許容範囲。
彼が目を覚ましたら姫と呼ばれる。・・・まあ呼び名は人それぞれだしってことでぎりぎり許容範囲。
彼の名前が小松丸。・・・可哀想な親を持ったんだな・・・と同情しながら許容範囲。
彼が実は忍者だった。ダメ、絶対。
いや別にダメというわけでもないけどさすがにそれはないだろう。
幼いころ見た特撮か何かで自分も忍者になれるよ!って思いこんでしまった可哀想な子なのか周囲が甘やかしすぎたか。甘やかすにしてもこの年齢までいくと痛々しさしか残らないぞ。
私はそこまで思考を発展させてふうと息をついた。ああ幸せが逃げてしまう。
頭を抱えたくなるのを抑えて小松丸――他に名前がないなら仕方ないだろう――に聞く。
「えーと・・・小松丸君?」
「敬称など。必要はありませんと前に言ったでしょう?」
「ああはいはい小松丸。親御さんは?」
迷子の子供にはまず保護者の確認が必要だ。たとえ子どもに虐待を働いている疑いがあろうとも。
そう思って聞いたのだが、小松丸は暗い光を瞳に閉ざした。え、ちょっと何この雰囲気。
「父上は・・・先の戦で。母上は幼いころからおりません。親戚に預けられ、忍の修行を受けたはいいものの私は未熟者で・・・」
うわあくらーい☆
くらーい☆じゃねえよどうすんだよ私この空気!
とりあえずこの子の身元はないというだけよしとしよう。いろいろダメな気がするけどそれに気づいたらダメだ私。
どこにも行くところがないなら部屋でも提供しようか。この家は外国にいった叔父叔母夫婦のもので私が格安な値段で借りているのだ。私一人には大きいと思っていたところだし、ちょうどいいだろう。
役所とかにも届け出を出した方がいいかな、と考えながら私は口を開いた。
「じゃあここを我が家だと思って暮らしていいよ。いろいろ不慣れだろうから私もサポートするし」
「さぽーと・・・?とにかく姫の御好意、有難く受け取らせてもらいます」
そういって布団の上で深深と頭を下げる小松丸。うん。礼儀を心得ているとは感心。
どうでもいいけど小松丸って言いにくいな。小松でもいいかなと私が考えていると小松丸がもじもじし始めた。
「姫にこんなことを聞くのは心苦しいのですが・・・」
「ん?何?」
「御不浄はどこでしょうか・・・」
「そこからか!」
こうして私と自称忍者の同居生活が始まったのである。
まあ・・・しょうがない・・・かな・・・