私と少年
少々軽い風邪を引いてしまっけど、まあ私のことはどうでもいい。
問題は私の布団を占領している少年。
彼は拾った日を入れて二日も眠っている。
今日も授業があったがまあ今まで休んでないし一日休んでも問題はないと思うたぶん。
・・・あとで友達にノートを見せてもらわないと・・・
今日目が覚めなかったらさすがに救急車を呼んだ方かいいか迷っていると少年の布団からうめき声が聞こえた。
粥の火を止めて様子を見に彼が寝ている居間へ行ってみる。
一応弟が泊まりに来るため客用の布団はあるにはあるが、怪我人を動かすのは疲れる・・・げふんげふん少年の体によくないと判断したため、ここ数日は私が客用の布団で寝ているという本末転倒な事態になっている。
布団の傍に行って覗き込むと少年は苦しそうに呻いている。何か悪い夢をみているのだろうか。
そう思ってゆり起してやろうとした瞬間、ぱっと少年が目を覚まし、かばり、とうつ伏せの状態から両腕を突っ張って起きあがっては布団の上で体制を立て直した。
その目は鋭く、緊張感にあふれていて、私はただパチクリと瞬きをするしかなかった。
あたりを鋭く観察していた少年の目が私をとらえた。
と同時に少年の顔がぱあっとほころぶ。まわりに花の幻影が見えた。
あれ?私たち初対面だよね?と戸惑う私など気にもかけないで、少年は私の両手を包んでは感極まったように言った。
「姫!よくぞご無事で!」
「ちょとまって姫って誰のことだ。少なくとも私ではあるまいな」
「ああその言葉・・・!まさに姫!よかった・・・私はどうにか城につけたのですね!木の洞で休んでときはもうだめかと思いましたが、こうしてここにいられ、私は・・・私は・・・!」
「ねえ聞いてる?一人で盛り上げられても困るんだけど」
安心のあまり涙が出てきてしまったのだろう、少年はごしごしと腕で目をこする。
さっきから姫姫連発されている私はというと何がなんだかわけがわからない。
一応言っておくと彼とはこれが初対面だし、そもそも私の名前は佐藤 由香だ。姫という単語はミジンコ一匹分も入っていない。
私が変な顔をしていたからなのか、少年はハッとしてつかんでいた手を離すと布団の上にひざまつき、顔を伏せた。
何が何だか分からずにいる私にまるで忠誠を誓う騎士のように言う。
「ご報告遅れました。 不肖ながら忍・小松丸、任務を終えて今ここに参上仕りました」
どうやら騎士ではなく忍者だったようだ。
・・・・・・ちょっとだれか119番押してくれませんか
12/11 主人公の名前変えました