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柄杓の星

作者: 海兎しより
掲載日:2026/02/23

この星では空前絶後の流行があった。柄杓である。


どのような柄杓かと言うと、ちょうど八分目まで入れるとお茶が一杯飲めるような分量の大きさであることを良しとした。

穴の空いた柄杓から流れる水流を見ることを風情とし、皆が皆、ただ一つとして同じ形のない柄杓から流れる水をこぞって発信し続けた。


柄杓は水を入れ続けることも流し続けることもできない。

バランスが大切であり、変えようのない本質でもあるが、

イミテーションの石やスパンコールで装飾したり、柄杓にこびりつく落ちないような色水を見ている人にかけるようなことも流行り出した。

これも時の流れなのだろうか。あまり良いようには思えないが。




何はともあれ柄杓が流行だということが伝われば幸いだ。

長々と話をしたが、要はこの柄杓について新たな発見があったのでこっそり教えたかったのだ。

君だって持っているだろう?



ほら、見てくれ。

柄杓の形としては平凡で面白みに欠けるし、歪んで大した形じゃないが、最近ではようやく納得というか、味があるんじゃないかと思えてきたんだ。

丸みがあるというか、柔らかみがあって、それにこの穴、手伝ってもらって試行錯誤で開けてみたけど、見方によっては土星に見えなくもないだろう?

それで流れる水が一層複雑さを増したんじゃないかって思うんだ、自分なりにというわけだけどね。



君の柄杓についても後で論じるとして、まずは発見についてだ。

この砂糖は水に入れても溶けないのだけれど、これを柄杓に入れるんだ。

そして肝心なのは夜まで待つこと。2時だか3時だか、月が出ているといいのだけれど……


それから、夜空に向けて柄杓に入れた水をぶちまける。

や、本当にあまり意味はないのかもしれないけど、本番はここからだ。

この空になった柄杓を掲げて見ると、まるで穴の空いた箇所から漏れる光が星のように見えやしないか。

きっとこの発見は、世が世なら何かしらの賞をもらえたに違いないとも思うんだ。どう思う?



まあ、さも世界のちゃぶ台をひっくり返したように話してはみたものの、大したことではないのは認めるよ。

でも、あまりに素敵だったから、笑われるのを承知で君に伝えたくて。



それだけ、ただそれだけの話さ。これはそういうお話なんだ。

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