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+++第四十五話:規格外の魔法

 「ゲホッ・・・・ハアハア」

 とてつもない衝撃波にさらされ、シュルクの体は民家に突っ込んでいた。

 

 ほぼ互角の威力。しかしみっつはそれらを相殺し合わずに、巨大なエネルギーを放出した。俺だけじゃねェ、全員、これじゃあしばらく動けねェだろ。

 

 「ぐッ・・・・」

 すこし離れたところから声がする。どうやら近くにセシル・ハルガダナも転がっているようだが・・・・魔力どころかうまく体が動かない。

 

 (・・・・????あァ、なんだァ⁉)

 薄暗くなったと思えば、彼は上空になにやら異物を視認する。

 

 「なにィ?隕石だとォ!?」

 おいおい、ありゃ・・・・魔法なのか??

 驚いているのもつかの間、彼は脳内に聞き覚えのある声を感じた。昔の仲間・・・・・あんまり話は合わなかったが、こうして、嫌でもそうしなきゃいけないことはあったよなァ・・・・。

 

 「キャロットかァ??」

 「よかった、まだ通じるか!」

 

 彼女はそう肯定する。

 (やはり通信魔法――――)

 

 「俺は、二年も前に・・・・お前らとは縁を切ったはずだがなァ?」

 「どっちでもいいだろ、この際。まだチャンネルはつなげておいたんだよ」

 「・・・・・切れねェもんだ」

  

 短い再開の挨拶はここまで――――彼女はさっそく本題に入った。

 

 「きみ、あれをなんとかできないか⁇」

 「・・・・・・」

 

 抽象的な問いだが、状況を考えれば・・・・彼には容易にその真意が推察できた。

 

 「無理だなァ。俺の魔法でも。

 あれだけ規模がでけェと、軌道もそらせるかどうか・・・・」

 「・・・・そうか」

 

 キャロットはシュルクの返答に勢いを落とした。

 「・・・・」

 (あいつらが、規模の大きい魔法を扱う俺を頼るのはわかるが―――――――)

 

 普通なら、それを憎む相手に頼るべきじゃねえだろ。そもそもこうなったのは、俺たち”パータイス”が原因だ。

 

 (だから、さ)

 怒ってんだろ―――――――――⁇

 

 なあ―――――――――ジジイはどうした⁇

 ここで動かないのかよ、守るために来たんだろ?

 

 

 ・・・・・・・・・もしかして、死んだのか⁇

 

 ああ、そうか。

 ついに、くたばったのかよ・・・・老いた、歳をとった。そればかりでうんざりしてたんだ、いつ死ぬのかって。

 

 せいせい、するなァ・・・・・・・・。

 

 「・・・・・・。」

 「シュルク――――――ッ‼」

 

 彼女の怒ったような声で現実に帰される。

 「聞いてんのか⁉一刻を争うんだよッ」

 「あァ、わかってる・・・・で?なんなんだよ」

 

 「ったく、だからさ。もしかして、近くにセシル・ハルガダナ・・・・いや、いまはソシワターヌ・オヴレか。とにかく、仮面をかぶった変なやつはいないか⁇」

 (――――――‼)

 

 彼女から飛び出したのは、意外な問いであった。

 知り合いかァ?王国軍と・・・・いいご身分だなァ。シュルクはそう感じつつも、セシルの方へ視線を向ける。

 すると彼はなにかに気が付いたのか、振り絞るように起き上がり、こちらに視線を返した。

 

 「いることには、いるがァ・・・・」

 「――――‼だったら協力できるかそいつにも聞いてみてくれ!結構強いんだよ」

 

 (んなこと、もうわかってるよ・・・・)

 

 「―――――って、言ってるがァ⁇」

 シュルクは、そうセシルの方に語り掛けた。意識を戻したってことは、あいつも状況には気づいてる。

 住民を避難させてた・・・・かァ。

 さあ、どっちだ・・・・⁇本性を現すかァ⁇

 

 「言われなくても、止めるつもりだ・・・・俺が行くまでに用意しておいてほしいものがある―――—――そう伝えてくれ」

 

 (・・・・‼)

 嘘じゃねえな。少なくとも、あれを止めてェ・・・・その信念に疑義は付けれない。俺の魂がそう言ってやがるぜェ⁉

 

 (・・・・・・そうだったのかァ)

 

 「ちッ―――――だそうだ、あとは勝手にやれ。俺は、通訳じゃねェぞ‼」

 我慢していたのかそう言うと、乱暴に通信を遮断する。そして、シュルクはふらふらとに立ち上がった。

 

 (馬鹿みてえだなァ)

 俺も、あいつが人間族ってだけで―――――――どこか、心の声を無視してたのかもしれねェ。

 

 「おい、ハルガダナァ‼ここは俺が受け持つぞォ、お前はあれを止めろ‼」

 そう言ってシュルクは上空を指さした。

 

 「二言はねェよなァ⁇できなけりゃ今度こそ、殺すからなァ‼」

 「ああ、もちろんだ」

 

 セシル・ハルガダナはそう残すと、地面を駆けた。

 

 「―――――――――それを、僕が許すとでも⁇」

 併走するように新たな影が現れる。ノバシャード大将位であった。彼は速度を落とさないまま、スマートに剣を振りかぶった。

 それを考えれば、スピードという面では彼の方がひとつ抜けているのだろう。

 

 (だが――—―)

 

 「言ったよなァ、ここは俺が受け持つって・・・・俺もそれは突き通させてもらうぜェ⁇」

 

 彼はそう言うと、魔力を込めたこぶしで強く地面をたたいた。地面は大きくひび割れ・・・・速度をつけた両者をとらえるのに時間はかからなかった。

 

 (―――――‼)

 上方向への強い爆風‼

 大将位は思わず顔面を腕で覆った。合わせて飛び出した煙が、セシルと彼の間を分かつ。

 

 「逃がさない――――ッ‼」

 

 (風魔法:ピー=クラッシュ!)

 反対の手で剣を水平に振ると、煙は真っ二つに割れ、気流によってだんだんと晴れていく。

 

 「・・・・逃げられたか」

 「あァ、まあこれで一対一。ふたりで仲良くやろうやァ」

 

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 

 「あ!セシル・ハルガダナ、やっときたな‼」

 「はあ、はあ・・・・全力で走ってきたんだぞ」

 

 約束の場所は、結界を張り住民を集めていた聖堂。この場所で生意気な少女に会うのは、今日すでに二度目だ。もっとも彼女のほかにも数名が、そわそわと隕石を眺めているらひい。

 

 「キャロット、伝えたものは用意してくれたか?」

 「ああ、もちろん・・・・解放戦線で魔法が得意な人を集められるだけ集めたぞ!あっちに待機してもらってるが、でもどうするんだ⁇本当に止まるって、信じて良いんだよな⁇」

 「それを説明している時間はない。お前らでなんとかあの隕石を十秒、いや五秒でいい。止めてほしいんだ」

 

 (・・・・⁉) 

 「はあ、なに言ってんだ??ふざけんなよ!!」

 彼女は俺の提案に表情をゆがめた。おそらく、信じていないのか・・・・そもそもちょっと前に会ったばかりの関係。だが、やってもらわなければ困る。信用し合わなければ、そもそも俺がここに来た意味もないはずだ。

 

 「できるのか、できないのかで答えてくれ!」

 「―—――ッ‼できる‼解放戦線にできないことはない‼」

 

 「ふんす!」

 彼女は近くにいた魔獣の腕をがっしりと掴んで、自分の方に引き寄せるとそう言い放った。

 

 (あいつは・・・・マルコ=マルコ!)

 「だってさ、マルコ!なめられてるぞ!証明してやろうぜ!あ、ラリーも手伝えよ‼」

 

 別になめてはいないが。しかしながら彼女の視線の先にいるサイの獣人は、心細そうだ。

 

 「えー。僕にあんなの、止められっこないよぉ。それに、先生が・・・・いないんじゃもう僕は・・・・」

 「弱音を吐くなよ‼シンバーさんはいまも、私たちのことを見てるぞ‼絶対‼だから、いいところを見せろよ‼」

 「――――う、わかった、やってみるよ」

 

 なんだ――――どこかさみしそうな――――。

 なにかあったのか、解放戦線のメンバーは少し雰囲気が変わっているように見える。

 

 (それは、いまはいいか・・・・)

 やるべきことは別にある――――――――――。

 

 「よし、じゃあもう一度言う。俺が合図したら五秒間だけでいい、なにがなんでもあの隕石を止めてくれ」

 

 そう言い残すと、俺はその場を後にした。

 もはや隕石の衝突まで一分と時間はないだろう。

 

 ここまで来たら、やるしかない・・・・やるしかないんだ!

 「いくぞ――――!」

 

 

 

 ―――――俺の移動魔法には、大きな弱点が二つある。

 あの魔法を発動するためには、移動させたいものと、移動先のスペースの座標を互いに置換する必要がある。

 それには頭の中で膨大な計算が必要であり、また目視する範囲じゃないと座標を把握できないため魔法は発動できない。

 ―――――――それが、ひとつ目。


 ふたつ目は、計算が必要であるが故に・・・・大きくて複雑なものであるほど、魔力や身体的負担が大きいこと。たとえば、王都を三メートル右に移動すること。これは理論上は可能であるが、実際はとてもじゃないが不可能だ。

 それを踏まえて、今回のような隕石は巨大だが・・・・形が単調であるため、おそらく移動可能だろう。

 

 「森林魔法:トラヴェラーズ・エックス!」

 森林魔法を発動し、大木に乗って空中に移動する。移動先の座標は・・・・そこにある湖だな。吟味している時間もない。即断即決で、まずは湖上空の座標を割りだす。

 

 「・・・・・・よし、頼む‼」

 

 合図とともに、解放戦線の【マルコ・マルコ】と【ラリー・ファージ】は一斉に巨大化し、自らの体を隕石にぶつける。

 

 

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 「―――――――うおおおおおおおお‼‼」


 「―――――――はああああああああ‼‼」


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 」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 こうして、運命のカウントが開始した。住民・解放戦線・王国軍・そのほかすべての人間が、固唾をのんで結果を待つ。その運命は、たった数名に委ねられた。セシルは大きく深呼吸すると計算に取りかかる。

 チャンスは一度きり。全力で、頭を回すんだ‼‼‼

 

 (5)

 

 「かならず退けてやる」

 この巨大な異物は、ここにあってはいけないものだ。大丈夫、うまくいく。いつだってこういう修羅場は潜り抜けてきた。だからこうして生きているんだ、そうだろ?

 セシルは自分自身を落ち着かせるように、語りかけた。

 

 (4)

 

 「頼む、セシル・ハルガダナ。みんなの思い、シンバーさんの思いを無駄にはできない!隕石を止めてくれ!!」

 キャロットは自分の無力を痛感しながら、目を閉じた。それはその場の全員が同じ気持ちである。

 

 「頼む、誰だか知らないが・・・・お前ならできる!」

 「馬鹿!余計なこと言ってんじゃねえよ!あの人の気が散ったらどうする!!」

 「た、たとえお前がだめでも、俺らで最後に止めてやらあ!」

 「そうだ!解放戦線がついてるぞォ!」

 「魔法なら任せろ!ここは一緒に守るんだ!!」

 全員が声を上げる。刻一刻と死が近づくが、逃げる者・目を逸らす者さえいない。

 

 (3)

 

 「「―――――ああああああああァァァァァ‼‼」」


 常人に、このときの二人にかかっている負荷など、想像もつかない。

 ――――なぜ、よく知りもしない人物を信じて、命をとしているのだろう?なぜ、解放戦線に入って、この恐ろしい戦場で見ず知らずの人達のために戦おうと思ったんだろう?

 ラリー・ファージもまた、極限の状況で自問する。

 

 

 (2)

 

 「ぐ・・・・うあぁぁ」

 マルコ・マルコの右太もも辺りから、大量の流血が起こった。

 「まさか!傷があったのか⁉マルコ、ばか!!なんで私に言わなかったんだ‼!?」

 

 マルコ・マルコの体勢が崩れるが、隕石はいまだ動いていない。


 (1)

 

 あと一秒・・・・。マルコの分まで、今度は僕が‼解放戦線、ラリー・ファージが役に立たなきゃ!!絶対に止めてやる!!!!だって僕は・・・・いままでみんなに迷惑ばかりかけてきた。

 食いしん坊の僕が食料を食べ尽くして・・・・ひもじい思いをさせちゃったこともあった。作戦でミスをすれば、いつもみんながかばってくれた。

 

 解放戦線に入って、つらいこともあったけど・・・・間違いなく、幸せなことの方が多かったんだッ‼


 解放戦線は、僕の居場所だった。シンバー先生、あなたが・・・・道端でいじめられてた僕を助けてくれた、あの日から。

 僕は、僕に、【ラリー・ファージ】になったんだ‼‼‼

 

 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオォォォッ‼‼‼‼‼」

 

 「―――――――――ああああああ!!!!」

 「――――ッ!!!!!!!」

 

 (0)

 

 「――――転移魔法:エラザイスト・ダイブ‼‼」

 魔法が展開されると、周囲には異様な感覚が走る。

 

 それは、不気味な現象だった。町を覆っていた巨大な影は一瞬にして消え去り、再び曇り空が顔をのぞかせた。遠くから地鳴りのような轟音が響き、続いてきた衝撃で周辺の誰もが、障害物まで吹き飛ばされた。

 

 「ッ!!」

 追って水滴が町に降り注ぎ、大木に何とかしがみついていたセシルは、そこでようやく自分の役目を果たしたことを悟った。


 

 *第四十六話につづく

 

 

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