+++第四十四話:決戦!三すくみ
戦況が佳境を迎え――――王国軍、解放戦線がそれぞれ大きな動きを見せたとき。セシル・ハルガダナもまた、再び強敵と相まみえていた。
(――—―敵、になるのか⁇)
目の前にいるのは、獣人族。間違いなく強いが・・・・しかし当然ながら王国軍ではない。
「俺は住民の避難を手伝っているだけだ!」
「信用できねェなァ。少々変わってるが、これは王国軍兵士のワッペンだろォ⁇」
バッド=ガット・シュルクは、右腕を前に突き出す。彼の手には43部隊の証が握られている。
(な!落としたのか!)
セシル・ハルガダナはポケットを探すが、たしかにそこにあるはずのものがなくなっていた。
「そうか・・・・ああ、まあその通りなんだが・・・・・・」
そう答えると・・・・いや、最後まで答えきる前に、彼の魔力はいっそうにとげとげしさを増し、いまにも爆発しそうな雰囲気さえを感じさせる。
「おいおい!!王国軍がこの町になにをしに来たのか・・・・知らねェわけじゃねえよなァ⁇だったら、大人しく死んどけやァ‼‼‼」
(―――――――ッ‼‼)
男は地を蹴り加速すると、俺の顔面をめがけて腕を振った。
(当たるだけで致命傷になりうるとさえ感じる――――)
この、”爪”・・・・‼‼‼
「・・・・だけ、じゃねえぜェ」
(・・・・‼‼‼)
「―――—爆発魔法」
俺の肩に手を付くと、彼はそう呟いた。
」 「
@@@@@@@@@@@@@@
「オ=ドリジンッ―――‼‼‼」
@@@@@@@@@@@@@@
」 「
セシルの体を中心に、エネルギーの巨大放散が起こる。
衝撃波が屋根を揺らし、砂埃が舞った。
・・・・と、ほぼ同時に。
セシルの拳が、シュルクの顎骨を叩く。
「こいつッ⁉」
(―――――――なんだ、どこから現れた⁉)
すぐに立ち上がると、彼は口にたまった血液を吐き出した。
さっきのをかわした・・・・となると魔法の類であることは間違いねェ。対して俺の魔法もまた、初見じゃ対応しずれェだろ?
(なるほど・・・・こりゃお互いに、面倒な相手と当たった)
―――――――お前も、そう思ってるはずだァ。
(さて、この探り合い・・・・どこで仕掛けるか・・・・・・・・・ッ‼‼⁉)
シュルクは異様な光景に、思わず目を疑った。
かりにも、強力な魔力のぶつかりが怒っている現場。そこをまるで、休日午後、町中を歩いているように・・・・平然と歩み進めるひとりの若者。
「僕も混ざります・・・・どうせ、二人とも殺すのが仕事ですので」
無表情・・・・漆黒の瞳をのぞかせると、男はそのまま剣を抜いた。
はっきり言って――――。
「―――――異常だなァ。おもしれェ」
「待て、俺は本当に―――――――」
シュルクの言う通り、異常な状態。セシルはいったん落ち着かせることを試みるが、それはかなわない。二者は強力に魔力を洗練させ、遅れるように彼も魔力を練った。
そして――――――ほぼ同等の魔力がぶつかり合い、周囲はとてつもない圧力にさらされた。
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「爆発魔法:ヴァヌード‼‼‼」
「風雷魔法:イシレンガ‼‼‼」
「氷魔法:ト=レント‼‼‼」
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変わって、【セントレーネ東部地区】―――――。
「――――おい、おいおいおい・・・・なんだよあれ・・・・‼」
王国軍が撤退し、解放戦線もホワイト・ピアの合流を待っているときのことである。おもむろに空を見上げたカーペンター・スリーは、空中に炎をあげながら落下する巨大な岩を見つけた。
「・・・・か、みさま」
「嘘やろ⁉どうするんやッ⁉
これって、状況的に・・・・どう考えてもここに落ちるやんけッ⁇」
同じように空を見上げたエステベス・ポーカー、ブラッディ・シャーク両名もまた、驚愕する。ぎゃくに言ってしまえば、解放戦線の幹部クラスがそれくらいしかできない。
それほどまでに想定をを超えた攻撃。
「つまり、王国軍はまだ切り札を持ってたんだろう!くそッ――――――‼シンバーさんならなんとかできただろうが――――ッ!!」
なにより頭脳派のリーダー、カーペンター・スリーが舌を巻く。なにを考えても、不可能。
ついには彼の頭に《《解放戦線の撤退》》がよぎる。
(あれが落ちれば、この町のほとんどががれきと化すだろう)
すこしでも被害を減らすには、逃げれるものだけ逃げるしかない――――か?
しかし、住民を見捨てることはそれすなわち、解放戦線側の完全敗北を意味する。”王国軍の撤退”から、”セントレーネ壊滅”と、”解放戦線の敗走”に代わるのだ。
(――――――クソ、大逆転の一手だ)
誰だ?王国軍にはまだ、前線には姿を現さなかった”クイーン”の駒が居やがったのかッ‼
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
悔しさでおかしくなりそうだ。でも、考えている暇はない・・・・このままでは自分たちの身まで危なくなる。カーペンター・スリーがまさに口を開こうとしたとき・・・・エステベス・ポーカーは両手で大きく音を立てた。
(――――ッ⁉)
「――――行くしかねえだろ⁉もう、こうなればこの魔法を使ったやつを殺して、あとはあれが消えることを神様に祈るしかねえ‼」
「・・・・‼」
その言葉に、はっと目を見開く。
そうだ・・・・俺たちの命がなんだっていうんだよ。
おい、なにを捨てようとした??正気か⁉カーペンター・スリー‼‼‼
それはあのシンバーさんが、命がけでつないだものだろうが!!!!!!!!ふざけるな!!!!!!!!
「・・・・ああ。その通りだ、ポーカー‼」
そう、指揮官の目に光が戻ったのである。
「マルコ、ジョーを起こせ‼まずは俺とジョー、ポーカー、シャークで、あの外道たちのところに突っ込むぞ‼
マルコとラリーはひとまず待機だ‼こっちに向かってくる敵がいたら、全員殺せ!
キャロットは通信役!報告を逐一、一言たりともたがわず伝えろ‼」
『「「「おうッ!!!!!!!!」」」』
仲間たちもまた、眼に光を取り戻し、大きく声を出し頷いた。指示を出し終え、カーペンター・スリーは先頭に立って建物の屋根から飛び降りる。
「行くぞォ!!!!!!」
*
「—————おおおおおおおおおお!!!!!!!!」
「・・・・。早いですね、もう来ましたか」
騎馬突撃を仕掛けてくる四名の影が確認されたとの報告を受け、グラディアーニェ太極位は前線へと向かった。
「――――――うおおおお‼術者はどいつだァァァァァァァァ⁉⁇
こんな罰当たりなことしやがって、必ず裁きが下るからなァァァァァァ‼」
戦略などはない・・・・エステベス・ポーカーは誰彼構わず殴って進む。彼の奇怪な能力に、兵たちは困惑しつつ戦うのだった。
「うああああ‼なんだこいつ⁉」
「落ち着け、たった三名だ‼冷静に対処しろ‼」
上官はそう指示を出すが、現場の混乱は収まらない。
「こいつら・・・・・・乗ってきた動物も、馬ではなく凶暴な魔獣です‼ご注意をッ・・・・・・・・・・・あああああああああ‼‼」
これではまるで狩場だ。粉塵舞う中、解放戦線の四人が王国兵を追いかけまわす。もともとの混沌とした撤退状況も相まって、もはやミクロの指示系統は完全に機能していない。
「――――まったく、王国軍の質はこんなに低かったでしょうか?」
グラディアーニェ太極位は錯乱を極める戦場に悠然と歩みを進めると、自軍の兵士が次々となぎ倒される光景に嫌気がさしたようにため息をつく。
「・・・・」
<スーッ>と・・・・驚くほど自然に現れた女性と目が合う。
「先ほど、あなたは魔法の術者は誰だと聞かれました。
はい・・・・それは私です」
「あ、゛あ?」
太極位の自白に反応したポーカーであったが、口からあふれ出る血液のせいでうまくしゃべれない。
「あで?なんで⁉」
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「―――――――――「ポーカーッ‼‼」ゲホッ・・・・!!」
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腹部に刺さっている短剣は、的確に急所を射抜いている。音もなく、気配もなく・・・・どうやって?
「――――さようなら」
*第四十五話につづく




