表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/56

+++第四十一話:激戦の中盤譜、王国軍終極位の決断

 「「――――はあ、はあ」」

 荒廃した地に立つ、二つの影。

 それらはどちらも肩を揺らし、まずは呼吸を整える。

 解放戦線トップ:シンバー・ベアードと、王国軍終極位:ダルウィン・エリクアッツェである。言うまでもなく、相手がお互いでなかったら・・・・こう苦戦することはなかっただろう。


 「ゼエ、ゼエ。

 お互い、火力では決着がつかねえな」

 「ああ。

 そのようだ、ハア、ハア・・・・」

 

 (やはり、俺が対峙してきたどんな敵よりも。あんたは《《強い》》)

 

 「・・・・」

 さっきの魔法に、魔力を裂きすぎた。多少休む必要があるが、それはシンバーとて同じこと。ただ息を整えるのもつまらん。

 

 「―――—実に、無意味だと思わないか。

 こんな戦い、もうやめたらどうだ。百年近く続けて、なにか変わったか?」

 

 (————!)

 なにを言い出すかと思えば、変わらんのう。

 「ああ、すぐにでもやめてやるさ。国王の方針が変われば、すぐにな」

 「それは不可能だ‼」

 

 王国軍終極位。ましてこれだけの実力を持った人物の、即答。これほど説得力のある回答は、得られないだろう。

 

 (こんなこと、考えるべきではないのだろうが――――)

 わしも、そう思う。

 ここ最近、王国の方針はますます強まるばかり。解放戦線についても、強硬派はかなりの勢いをつけている。分断は深まるが、埋まることはないのだ。

 しかし、だからこそ・・・・だ。

 

 「だから、こうして戦っていたんじゃなかったか?」

 「――――ッ‼

 ぐはははは‼‼

 その通りだ、シンバー。本当に、世の中ってのはよくできてるよなァ‼

 思い返せば、昔、俺はお前に殺されかけた――――だが今回はどうだ?互角に戦えているぞッ⁇」

 「ああ、そうだな」

 

 解放戦線の、あの兵どもが慕うほどの人物。彼もまた、人間。すくなくとも生物である。

 

 「それはお前が老いたからだ、シンバー。俺は今日、それを強く感じた。

 そろそろ楽になれ。お前が死ねば解放戦線は終わり、王国はまた一歩理想に近づく。だがそれでいいじゃないか」

 「老い、か・・・・そうだな。おおむね、お前の言う通りじゃ。わしはもはやかつてのように強くない。が、ふたつほど訂正しておくよ」

 「なに?」

 

 「わしが死ぬとしたら、それは諦めたからではない。期待しているからだ」

 「わからんな。お前のいない解放戦線に未来などあると思うか?」

 「ほほほ、そのうちわかるさ」

 老人は不気味に笑う。

 

 「それからもうひとつ」

 

 ――――。

 

 「おぬし、日光浴は好きかな?」

 

 (————は?)

 なんだこのジジイ。いきなりなにを?

 

 「ボケるのは死んでからにしてくれ。俺はこれでも、あんたの強さは尊敬してんだ」

 「ボケてなどいないさ。わしは正常だ。バードウォッチングは、ああ、座禅なんてどうだ?年老いるとどうも、これらの類が好ましくなってね」

 

 「・・・・・・・・。だったら家で寝てろよ」

 「いいや?そうもいかん。

 わしは年老いた。だが年老いたからこそ新たに気づき、手に入れたものもある」

 

 なんだなんだ?

 「いい加減にしろ。

 なにを言っているのかわからんぞ」

 「まあ見ておれ。

 これは、そのうちの《《ひとつ》》じゃ」

 

 老人は大きく深呼吸をして、目をつむった。

 「おいおい、戦闘中に!殺せと言っているのだな!?」

 振り下ろされた巨大な薙刀は、しかし。

 シンバーをとらえることなく地面に突き刺さった。

 

 (かわした?)

 それも、いとも簡単に。

 

 「おお、よしよし」

 めでるように老人が声を出すと、行き場のない小鳥が二羽、彼の頭上に止まった。

 

 「なにを遊んで――――‼⁉??」

 「ん?どうした」

 

 「シンバー、貴様。魔力はどうした」

 奴の体から魔力が感じられない。変化は一瞬のうちに起きた。

 

 「魔力ならほら、これじゃよ」

 「ふざけるな。お前の周りに濃い魔力があるのはわかる。が、それはさきほどまでのお前の魔力とは違う」

 

 「そう。じゃが、これがいまのわしの魔力じゃよ。違うと感じるのはそう、わしの魔力のほとんどが、自然魔力によって希釈されているからだろう」

 「自然魔力・・・・だと?」 

 

 自然魔力。自然が持つ本来のエネルギーを、人間の魔力に並置させてこう呼ぶ。シンバー・ベアードは本来人間に依拠すべき魔力を、自然魔力と混合したのだ。

 

 「馬鹿げた試みだな。それに、そうしたからといって、どうなる?」

 「さっきも言ったろう?これは、わしが老いることで手に入れた、新たな力、じゃよ」

 

 魔力が結合すること、それはすなわち、世界を直接変更するための道を得たということ。これよりシンバーベアードが行うのは、自然による直接の自己改変。人知を超えた、離れ業である。

 

 「自然魔法・・・・」

 シンバーがそう口にすると、終極位の足元から巨大な木がいくつもうねり出た。

 

 「う、うおおおおお????」

 (これは、森林魔法か?)

 しかし、この規模と強度、発動速度は、文献の比ではないぞ!?しきりに体に絡みつくそれをうっとおしく思いつつ、考えを進める。

 「雷魔法:ジエン雷‼‼‼」

 

 天空から降り注いだ凶大な雷は、巨木を裂き、真っ黒に焦がした。

 「ほほほ・・・・なにか、言いたげだな」

 「ハア、ハア。貴様、この力は!?」

 

 「無論、わしは森林魔法など使えん。これは自然の力《《そのもの》》じゃよ」

 「だから、あの規模も可能だと?」

 

 ジエン雷は、俺の雷魔法のなかでも最高の魔法。

 ジジイの説明は空想的だが、変に現実味を帯びるのは見ちまったからだ。

 

 (奴の魔法を――――)

 「自然魔法:ジロック=タイ」

 「~~~~ッゥ‼」

 

 地面が大規模にひび割れ、足元が揺れ動く。たまらず飛び上がったダルウィンに向かって、隆起した地面が四方から向かって来る。

 

 (これは、地殻魔法————!)

 これほどまでの大地の改変を、土魔法で成立させられるわけがない。まただ。奴はまた、これまでにない希少魔法を使いこなしている。

 

 <ズウン・・・・>

     <ガズン!>

         <ドッ・・・・ズガッ!!!!>

 

 数刻前までいた場所が、大地によって容赦なくつぶされていく。と、おもえば・・・・。

 

 「今度は下か!」

 巨大な地割れが、男を飲み込む。

 

 「なめるなよ、シンバアアアアア!!!!」

 

 (————!)

 とりわけ大きな振動音が響くと、シンバー・ベアードはそちらに集中した。

 ばらばらと破片が散るなか、巨大な魔力を身に付けた終極位が姿を現す。

 

 (まさか、地面ごと粉々にしてしまうとは)

 「ああ。ぶっ壊すだけなら都合がいい」

 

 しかし、背後にはもう一方の岩盤がある。

 いましかない。

 そう判断すると、シンバーは体内の魔法を一気に炎に変えた。その近くからは風・雷・光のエネルギーが、それぞれ高出力で放射される。

 

 「炎・自然合同魔法:ジエンブ!!!!」

 シンバー・ベアードの出力と、さらに同規模の3エネルギーが、容赦なく終極位に襲い掛かる。

 

 =========ゴオ

     ========オオ

           ========オオ

               =========オオ‼‼‼‼‼ 

 

 「・・・・。

 終わった、かのう?」

 あの業火のなかでは、生命を維持することは極めて困難だ。それに、生命反応も感知できない。

 

 「普通なら、そう判断する」

 

 「馬鹿言え。俺は王国軍終極位だぞ?」

 「・・・・」

 

 正直、想定を大きく超える強さ。老いによって強さを失ったとは思わない。つまり目の前のこの男が、以前よりずっと強くなったということだ。

 

 「————深淵魔法:クロニクル=ラーゼ」

 「それがおぬしの虎の子かい?」

 

 「まあな」

 

 男の周りを漂う黒い影。あれは、ただの闇じゃない。すべてを引き込む無限そのものか!

 

 「だから、感知できなかったのだな?」

 

 (まずいな。そろそろ戻って作戦を継続できるはずだったんだが・・・・)

 さすがは王国軍終極位なだけある。ダルウィン・エリクアッツェ、底が見えん。

 

 「そろそろ決着をつけよう。偉くなって、忙しいだろうからのう」

 「ああ、そのつもりだ。解放戦線“ベクラマ”:シンバー・ベアード‼」

 (深淵魔法:クロニクル=テーゼ‼‼‼)

 

 するとシンバーの周りに、漆黒の微粒子が湧いて出た。

 「これは・・・・?」

 「深淵はすべてを飲み込むだけじゃねえ。エネルギーの発散まで、自在なんだよ」

 

 (・・・・!)

 離れたほうがよさそうだ。

 

 「って、考えるよなあ?」

 「な――――ッ!」

 

 飛び上がったシンバーのすぐ横に、ダルウィンは見透かしたかのように移動した。

 「思えば、あの日。俺はあんたの手のひらの上だった。今度はぎゃくだ。

 なんの意図もなく俺が情報を渡すと思ったか?シンバー‼お前はもう、終わったんだ」

 「しまった!」

 

 「深淵魔法:クロニクル・エッジ‼‼‼」

 深淵をまとった拳は、空間を捻じ曲げる。シンバー・ベアードの顔面に届くころには、それはとてつもないエネルギーを含み、それを発散した。

 

 (~~~~~~~~ッ‼)

 空間はそれに耐え切れず、空中に黒くヒビが形成された。

 

 ああ。なんて、威力だ。意識が、保てない!

 まずいな、わしは、どうなった?落ちていくんだ、体が・・・・どこまでも。

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 視界が、暗い。

 でもやっとか、動きが止まった。

 

 「ここは?」

 薄れゆく意識のなかで、シンバー・ベアードは扉の前に立っていた。表札はもちろん、“死”である。

 

 

 *第四十一・一話につづく

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ