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+++第三十六・一話:解放戦線リーダーV.S.王国軍終極位

 ・

 ・

 ・

 

 (すまない、みんな・・・・!)

 

 王国軍は、その姿に驚愕する。

 周囲が静まり返るなか。感知兵が最終確認し、報告班が一報を出した。

 

 『―――――――――――ッ‼‼‼』

 

 |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||

 

 『【シンバー・ベアード】だ‼

 解放戦線“ベクラマ”トップが出てきたぞォォ‼‼』

 

 |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||

 

 剣身は、いまだに動かない。本物だ。

 「かははッ、やはり来たかシンバー。

 【この町】が戦場になれば、必ずお前は動いてくる。俺は正しかったよ・・・・‼」

 

 (・・・・・・‼‼‼)

 

 ふたつの強力な魔力がぶつかり、それはにらみ合っているだけで周囲が圧倒される。セントレーネは、ロワーヌ王国の西部に位置する多種族都市。

 比較的王都に近い場所にあるが、その経済規模が大きく、また深い歴史を持つことからいままで王国軍の手は及んでいなかった。

 

 そして、この場所は王国軍と解放戦線の協定範囲外である。ガラムバトで起こったことと同じように、王国軍が動けば解放戦線もまた動きを見せる。

 

 (――――とはいえ)

 まさか、シンバー・ベアードまで出てくるとは。

 エリクアッツェ終極位以外には、想像できなかったかもしれない。

 

 「・・・・・・・・・!」

 「・・・・・・・・」

 

 「・・・・・・」

 

 多くが固唾を呑んで、その一挙手一挙動を見つめることしかできない。

 

 「・・・・・・‼

 炎雷魔法:一式・帝王ォ‼‼」


 しばらく、お互いに出方をうかがっていた両者。性格が出たのか、さきに動いたのは終極位のほうだった。

 地面が突如として燃え上がり、炎の渦から全身を装飾品でまとった巨大な番人が出現する。番人が身に着けている太鼓をたたくと、雷が落ち・・・・また、持っている神具を振ると業火が舞起こった。

 

 「・・・・!」

 (まずは、そう来たか――――では――――――――)

 「――――風魔法:ローリング=ス・ライス‼」


 シンバーが唱えた魔法が、終極位の顔面に向かって風の剣を生み出す。

 

 (・・・・・・ここじゃ!)

 そしてエリクアッツェが後ろにのけぞった隙に、シンバーはさらなる魔法を唱える。

 

 「土水魔法:スワンプ・ホール!」

 

 「水魔法:レイン・スワン!」

 

 「森林魔法:避雷針・木木!」

 

 ~~~~~~~~~~~~~~

 ~~~~~~~~~~~~~~

 ~~~~~~~~~~~~~~

 

 「はあ――――まったく、器用なじじいだよ」

 出現した底なし沼にはまり、早くも使い物にならなくなった番人をしり目にする。終極位は呆れにそう言った。

 慎重な魔力管理が必要な魔法を、あまつさえみっつ同時に唱えるとは。そんなことが可能なのはおそらく、シンバーだけだろう。

 

 「これ以上、町を壊されたくないからのお」

 二者の頭上を飛ぶ白鳥は、大量の水を落とし周辺の火を消し止めると、今度は町中の火災を鎮火しに向かった。

 

 「ハハハハ、若ェなあ‼」

 

 シンバーが頭痛がしてきそうなほどの、大量の魔力を練っているのを意識せずとも感じとる。するとアッツェ終極位も同じように、強力な魔法を用意し始めた。

 

 「・・・・・・・・なんだ・・・・これ、は」

 

 そのとき、居合わせた兵士が目にしたのは、物理法則を無視して浮かび上がる石の数々。ひび割れる窓、竜巻すら発生している、など異常な光景だった。

 

 「まだ・・・・魔力を、解放、していないのに・・・・」

 「・・・・?」

 

 「いやいや、いや――――!!!!!!!!」

 

 『に、逃げろおおおおおお‼‼‼‼

 ここに居たら死ぬぞおおおお‼‼』

 

 危険を察知し、周囲はもはやパニック状態だ。押せよ押せよと、兵たちが走り出す。

 「バカ、おせえって」

 

 すでに遠くまで来ていたホフナルク大将位は、鳴り響く兵士の声々を、焦りながら聞いていた。天変地異が起こる、そう予感していたからである。


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―――――――――――――――――――――――――――――――


「闇魔法:アザイアガ・ゴッツァ‼‼‼」


「光魔法:シルク・トリンピア‼」


―――――――――――――――――――――――――――――――


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 「ッ~~~~~~~~~~~~~~~~⁉おいおい、嘘だろ⁉」


 あまりの爆風に、そばにあった建物につかまる。

 (あのクソ犬、町を壊さないとか言っておきながら!)

 

 見上げると、見えなくなるほどの高さまで黒く染まった灰色の雲が上っている。その雲の多くの場所で雷が起き、気流はもはやどうなっているのかわからない。

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 「うあああああ‼」

 「いったいなんなんだ!?!?火山でも噴火したのか!?報告、報告をしろ!!」

 

 「しかし少佐!この辺りに活火山があるという情報はありません‼」

 「ええい!そんなことわかっている‼」



 ・

 ・

 ・



 「おそらく終極位が動いたんだろうが、これほどの衝撃となると相手は・・・・」

 

 さすがのロドリゴ大将位も、注意を奪われる。しかし、彼には大切な役目があった。

 (そう、いまは自分の仕事に集中するんだ)

 私は勇者たちを護衛し、目の前の敵を駆逐すればいい。

 

 「そうだよな、敵さん方」

 「・・・・」

 

 そう言いつつ、様子をうかがう。しかし、彼らもまたこの状況に困惑し、呆気にとられているらしい。

 (異常なくらいだ。これは奴らにとって想定外の事態ということか?)

 

 そうならなおさら都合がいい。正直、三人を相手にするのは骨が折れると考えていたところだ。


 (増援を待ちつつ、撤退可能性も探れるな) 

 「弾性魔法――――!」

 


 ・

 ・

 ・

 


 (こんなに大きな魔力・・・・いったい誰が・・・・)

 「・・・・‼まさか、シンバー先生・・・・!」

 状況把握に優れた彼女は、すぐにその可能性にたどり着いた。

 

 「――――よそ見とは、感心しないぞ。ホワイト・ピア」

 「――――‼」

 振り出された剣。あとすこしずれれば、身体に届くという一撃であった。

 

 (明らかな隙ができたな)

 ミレイユ・エリクアッツェもまた、第六感的に局面の流動性と、それがこちらに傾きつつあるのを理解した。

 

 「おしゃべりは、もう終わりなのか?」

 「うん、そう、、、、だね。構ってあげられる暇は、もうないかな」

 

 「逃がすとでも?」

 「まさか。殺して通ればいいよ」

 「はは、言ってくれるな」

 (雷魔法――――!)

 

 「マゼル=ボール!」

 ミレイユが魔力を解放し、上空に雷球がいくつか現れる。

 と、同時に、ホワイト・ピアは町の中心方向へ駆け出した。

 

 (やはり、現状の確認を優先したか)

 よほど焦っているらしいな、"ベクラマ"よ。

 

 「土魔法:ドレン=ウォール」

 「――――!」

 素早く体をひねり、動き続けるホワイト・ピア。しかし行く先を防ぐようにして、ミレイユの魔法がつぎつぎに発動される。

 

 (この雷は、追尾式か)

 ついにはホワイト・ピアも魔力を解放し、近づく雷球を狙った。

 「炎魔法:ジランダ」

 

 《ドオン!》

 魔法同士がぶつかり、爆発を起こす。視界が限られるなか、白い影がいち早く民家に飛び込んだ。

 追いかけるようにした5ほどの雷球が、外壁と接触し爆散。瓦礫をうまく避けながら、彼女は家屋内を走る。

 

 「――――はあ、はあ。やっとつながった」

 自然に耳付近を押さえながら、意識を集中して語りかける。それは不自然ともとれるが、彼女にとっていま必要なことだった。証明するように、すこしして応答が届く。

 

 「今度は・・・・ホワイト・ピアか?」

 「うん、聞きたいんだけど」

 

 「待て待て。私もさっきから、信号を受けすぎてぐちゃぐちゃなんだ!」

 「・・・・」

 

 ホワイト・ピアの会話相手は、キャロット。同じ解放戦線に所属する、"通信魔法"の使い手である。こうして遠隔で交信できるのは、彼女の力だ。

 

 「で?状況を説明して」

 「ええ・・・・?お前、いまの話聞いてた?」

 「聞いてたよ。だからこそ――――」

 

 《ドドドド――――!!》

 ここで、大きな衝撃音が響いた。

 

 「は!?お前まさか、戦闘中に通信してきてるんじゃないだろうな!?」

 「してるんだよ。だからはやく情報を教えてくれるかな」

 「ふざけるな!お前が強いのは知ってるけど、通信魔法は安全な場所で使うのが決まりだろ?とにかく、いまは作戦に集中しろよ!

 切るぞ!」

 「待って!!」

 

 それは、大声とは言えない。しかし、めずらしく感情のこもった言葉だった。

 「な、なんだよ。そんな言い方したって、私は――――」

 「ここで、なにも情報が得られないのなら・・・・私はすぐにでもシンバーさんのところに向かう。どんな手段を使おうとね」

 (・・・・!)

 

 キャロットには、彼女の意図することを理解できる。しかし、それは完全に作戦を放棄するということだ。彼女には、その覚悟があるらしい。

 

 「はあ、おっけー。わかったよ。お前はもう気づいてるだろうけど、あの衝撃はシンバーさんの魔法だ。いまは、王国軍の終極位ってやつと戦ってる」

 「終極位――――!?そんな!」

 

 「大丈夫!無事だし、シンバーさんのほうが押してるよ」

 「でも、ひとりじゃ危ないでしょ。私も加勢に行くよ」

 「だから、待てって!」

 

 間髪入れず、彼女の言葉に被せる。そのままにすれば、その瞬間、ホワイト・ピアは行動に移しそうだったからだ。

 

 「冷静になれよ。シンバーさんのことだ、なにか考えがあるんだって」

 「それは、そうだけど・・・・」

 「王国軍のトップが動いたことは、もちろん想定外。それでも作戦が継続できるように、シンバーさんが抑えてくれてるんだろ?だったら私たちは、その意思を汲むべきじゃないのか?」

 

 「でも、、、、」

 「いつだって、シンバーさんは私たちの模範だった。相手が誰だろうと、絶対に勝ってくれるさ」

 (・・・・)

 

 キャロットの言葉には、微塵の疑いもない。絶対的な信頼。そして、私はまだ、それができていない。

 

 (いますぐにでも、あなたを助けに行きたい)

 

 長くそばにいたからわかる。あなたは世間で言われているような、冷酷な戦場のリーダーじゃない。

 

 本当は、ただ優しくて、すこし強い・・・・みんなと同じ人間なんだ。

 (シンバーさん、私は――――)

 

 作戦が始まるすこし前、あなたは不思議な表情をしていました。そして、私たちに言いましたね?

 

 "

 「わしはみんなを信頼しておる。だから、こうして不思議と、安心してしまうんじゃよ。まあ、戦闘前にする顔じゃないかもしれんがの」

 "

 

 そのとおりです。いままで、そんな顔をしたことなかったじゃないですか。

 シンバーさん。


 私も――――あなたを信頼していますよ。

 

 「・・・・。

 了解。ホワイト・ピアはこのまま、作戦を続行。キャロットから、つぎの指示を待つよ」

 「よっしゃ!任せたぞ、ホワイト・ピア!」

 「うん」

 

 こうして、二人の幹部が相談を終えた。ちょうどそのとき、巨大な業火が家屋をのみ込み、"ベクラマ"は外に飛び出した。

 

 「最初から、こうすれば良かったな」

 「はあ・・・・きみには、良心というものはないのかな」

 

 「良心?」

 「そう。一応、住人もいたんだけどね」

 「ふむ」

 しかし、ミレイユは微塵も揺らがず、自身の主張を口にした。

 

 「私はべつに、亜人族だろうが人間族であろうが、関係ないと思っているよ。しかし、此度の任務は、テロ組織とそれに協力する住民の抹殺だ」

 「だから、殺してもいいと?」

 「ああ。それが私の信念だからだ」

 

 見るにおそらく、彼女は心の底からそう言っているだろう。

 「はは、馬鹿げてるね。思考停止して、王国の駒で満足して。はたしてそれは、人間と言えるのかな?」

 「さあな。

 でもそれが、正しい生き方ってことさ」

 

 言うと同時に、ミレイユが炎の魔力を解放。しばらく続いた話が終わる。

 

 「水魔法:レルアント!」

 ホワイト・ピアの水魔法とぶつかり、激しく蒸気を上げた。

 

 「接近戦は得意だろう?」

 「まあね」

 魔力を溜める間、ミレイユの剣が宙を舞う。それをひらひらとかわしながら、ホワイト・ピアは隙をうかがった。剣技自体は完璧に近い。でもそれは、どうやら彼女の計り知れない身体能力に依存している。

 

 「う――――ッ!?」

 「だから、いつかこうなる」

 拳が腹部を叩き、ミレイユの動きが止まる。

 

 「風魔法:セルバ!」

 ホワイト・ピアは、すかさず追い打ちをかけた。

 (このまま腹部で真っぷたつ――――)

 

 とは、どうやらいかないらしい。

 ゴツゴツした岩とぶつかり、魔法が無力化される。

 

 「危なかったよ」

 「へえ!やるね。硬質化の土魔法かな?腹部を選んだのは勘?だよね」

 「ッ!今度は・・・・私の番だ!」

 (雷魔法:セ=ゴウジ!)

 

 セ=ゴウジは、空中からの雷連撃だ。そしてそれは、私以外の魔力を狙う。

 「逃げても無駄だ。威力も最大、今度は家ごと破壊してやる」

 「・・・・」

 (たしかに)

 

 「威力は認めるよ。それに、これだけの攻撃を絶え間なく続けられる魔力操作もね」

 破壊された地面、そして降り注ぐ雷を縫い、ホワイト・ピアはミレイユ・エリクアッツェとの距離を詰めた。

 

 「でもそれだけだ。こうなったら、きみはどうする?」

 「しま――――」

 すでに彼女は、ミレイユを射程にとらえていた。これまで洗練させていた魔力を、風に変換する。

 

 「風魔法:リレガンテス」

 風圧をまとった手が彼女を叩くと、そのままはるか後方へ吹き飛ばしてしまった。

 

 「どうかな。あの一瞬で全身を防御するなんて、できないよね」

 

 「・・・・・・!ぐッ・・・・アア」

 ミレイユの位置から、ホワイト・ピアの声が聞こえるとは思えない。しかし、反応するようにして、彼女は身を起こした。

 

 (体の骨は、何本か折れてしまっただろう)

 頭も強く打ったはずだが、こうして立ち上がるのは、彼女の不屈の精神力ゆえにと言うべきだろうか。

 

 「まだだ、まだ、戦えるッ!」

 自分を奮い立たせ、魔力を練り上げる。しかしそこに、もはや不気味なくらいに思え始めた、彼女の声色が聞こえてくる。

 

 「・・・・。

 へえ、そう」

 「な⁉」

 振り出された中段の蹴り技を、ミレイユは中途半端に受けるしかなかった。結果として、彼女は追加で橈骨および尺骨までを破壊された。

 

 「ああああああ‼」

 (なぜ・・・・!?

 あの状況で、気配もなく背後に回れるのか?)

 

 利き腕をやられた。これでは、もう――――ッ!

 いや、まだだろ。彼女はなお、瞳をとがらせた。

 

 「そう、にらまれてもね」

 圧倒的なスピードで、ホワイト・ピアはまたしても視界の外から、今度は上段を浴びせた。当然、彼女の身体は地面にたたきつけられ、周囲に土煙が舞う。

 

 「作戦は継続。もうすこし時間があるんだけど、こんなものか」

 「・・・・ぐうッ」

 

 ミレイユ・エリクアッツェとしては屈辱の極みだ。敵から時間つぶしととらえられ、状況はすでに、いつ殺されたもおかしくない。こぶしを握り締め、必死に地面を押すが、体は起き上がらない。

 (立てよ、このままじゃあ・・・・)

 

 「・・・・ふうん」

 しばらくの間、ホワイト・ピアは無関心にもそれを眺めていた。

 「そっか、まあ、残念だね」

 

 彼女はいつのまに拾ってきたのか、鉄の刃を振りかざす。

 「終わりだよ」

 「————ッ‼」

 

 その瞬間、ミレイユ・エリクアッツェは魔力を振り絞った。

 

 *

 そして・・・・時空がゆがむような感覚が、両者を取り巻いたのだ。

 *

 

 

 *第三十六・二話につづく

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