+++第三十六話:激戦の中盤譜、解放戦線トップ:シンバー・ベアードの決断
【セシルたちの戦いから時を遡り、王国軍、第一分隊がセントレーネ市街地に到着した頃】
「――――――――エリクアッツェ終極に、お伝えします‼だ、第三分隊に壊滅敵打撃!増援要請が出ています‼」
「なにィ‼⁉」
報告に、男は呆れかえって憤慨した。
「弱音を吐くなと伝えろ‼それでも王国の清き人間族か、とな‼‼」
一介の兵士には、男の前に立つことすら難しいと言われている。その理由が、サリバ少佐位にようやくわかった。
いままさに、彼もまたものすごい覇気で押しつぶされそうな気分だ。
「し、しかし。申し上げにくいですが、第三分隊隊長はすでに亡くなられているかと・・・・」
「゛あ゛あ゛あ‼
それを先に言わんか‼
もういい、俺がやるッ!その厄介者というのは、どいつだ⁉」
「うう。こ、ここからは視認できませんが、西の方で暴れているようです・・・・」
(西ィ・・・・?)
「カイナー‼
正確な位置を教えろ‼‼」
「了解です・・・・。
あ~~、ちょうど二十時の方向に。それから・・・・って、ああ。もう聞いてねえや」
カイナー・ホフナルク大将位は、いつものことだと諦める。報告を中断すると、耳をふさいだ。
《》《》《》《》《》《》《》《》《》《》《》《》
「おおおおおおお‼‼‼」
《》《》《》《》《》《》《》《》《》《》《》《》
(――――ッ!!)
ただの大声で地響きが起こる人物など、この世でアッツェ終極位以外にいるのだろうか?
練り上げられた魔力はそれだけで空気を振動させ、兵士のレベルによっては体調不良を起こしてしまう。
(まあ、いつものことだが)
無意識に味方にも損害を与えてんだよなあ、この人。
「『――――風炎雷魔法:ジバンジェ・エデンツァー‼‼‼』」
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||ド
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||ガ
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||ガッ!!!!!
凄まじい威力。エネルギーが放出される。
「まったく、立ってるのがやっとですよ」
(しかし)
終極位が前方にあるすべての障害物を破壊したおかげで、心眼魔法を使わずとも状況は把握ができる。
(あのオークは?ああ、死んだみたいだ)
大量の汚い液体とともに、巨体は砂の地面に倒れこんでいる。
「――――どれ、もう一撃‼
町にいるクズども、全部まとめて殲滅してくれる‼‼‼」
あ~、これ完全にスイッチは言っちゃってるやつだわ。町には味方もいるんだけど。まあ、なんとかするよな、たぶん。
「おおおおおおおお――――――ッッッッ‼」
(風炎雷魔法――――!!)
《カキーーーーン!!》
ふたたび鳴りだした轟音をかき消すように、甲高い冷めた金属音が、辺りに響いた。エリクアッツェ終極位が持っている、巨大な【薙刀:ノボック】。それと小さな剣が、不相応にも交錯する。
しかし、どちらも押しも押されもしない。
まるで力をくわえていないように動かないのである。
(〜〜〜〜!!!!!!)
「――――アッツェさんッ‼」
その姿に、カイナーは思わず叫んだ。
「わかってる。
元気だったか?チビな老犬よ」
「ああ、どれ。前みたいに遊んでやろう」
・
・
・
それは作戦外の行動である。
【数分前】まで、解放戦線"ベクラマ"の思惑通りだった。しかし、ほかならぬリーダー:シンバー・ベアードその人が、感情に流される。
「カルロス・・・・ッ!」
地面に倒れこんだ仲間を見ると、思わず言葉がこぼれたのだ。
「あ、あきまへんよ?シンバー・ベアード!
連絡があるまで待機って、さっき自分で仰ってましたやんか!」
「ああ・・・・」
そうだ、そうだな。
(いまに始まったことでは、ないじゃないか)
わしの前からは、いつだって仲間が消えていく。
謀反を起こした者を、殺したこともある。
シュルクのように出て行った者たち、そしてだからこそ、彼のように・・・・戦闘のなか名誉に死んで逝ってくれたほうが、ずっとありがたい。
あの光景は、いわば感じ慣れた積み重ねのひとつでしかないのだ。
――――。
そうして、わしはいつだって生きてきた。野望を、なにか大きなものを成し遂げるには、些細なことは切り捨てなくてはいけない。
(―――――――本当にそうか?)
このまま、作戦のために仲間が死んでいくのを黙って眺めているのか⁇
それでいいのか?
シンバー・ベアードよ‼
決心がつくと、自然に笑みがこぼれた。
(ふほほ)
結局、ジャレクソン・ピグレットとは決別できないな。
老人はそうして、数日前の会話を思い浮かべた。
そう――――あの質問。昔のわしなら、別の答えを出していただろうな。
「ブラッディ・シャークは、ここで待機じゃ」
そう言って、小さな体は町の方へと消えていく。
「――――え?
ちょ、ほんまあきませんて‼シンバー‼」
*第三十六・一話につづく




