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+++第三十三話:ソシワターヌ・オヴレ

 「――――――あー!やっぱりきみか‼こんなところに結界なんて張ってえ!いったいどういうつもりだ!?」

 「!?

 お、お前は――――!」

 

 ここは、臨時の避難施設として使っている礼拝堂。外に出た瞬間、いつかのベレー帽の少女が俺に近づいてきたのだ。

 名前は確か、キャロット・・・・。

 

 「・・・・見ての通りだ。市民をここに逃がしている・・・・・・・・⁇って、おいおい・・・・私はきみと会ったことがないはずだ。

 そうッ‼私の名前は、ソシワターヌ―――――――――」

 「――――――はあ?

 だっさい仮面付けてっけど、魔力でバレバレだかんな⁇まあ、その程度で通用すんのはその辺の・・・・馬鹿までだろうな、セシル・ハルガダナ」

 

 「・・・・・・・・。」

 

 「しかしまあ・・・・ふうん、そうか。まあ勝手にするといいけど・・・・こんな結界、私みたいな優秀な感知魔法を使えるやつになら一瞬でばれちまうな?」

 

 (・・・・・・ッ!)

 言いたい放題に言いやがって!

 「それでも、破るのには時間がかかるはずだろうッ。その間に俺が戻ってくれば問題ないからな――――――」

 

 そう、そこまでが俺の計画だ。住民を連れてくるたび、ここに戻るのだから問題ない。

 

 「ずいぶん自分の力に自信があるみたいだ」

 「まあな・・・・それよりも、お前たちの動きを教えてくれないか?」

 俺がそう言うと・・・・それまでの不満そうな表情は一層増し、彼女は吐き捨てるようにこう言った。

 

 「ふんッ!きみに教える筋合いはないね――――‼」



 ・

 ・

 ・


 

 「・・・・やあ。きみは強そうだ」

 そう言い放った人物のそばでは、数十人の兵が倒れている。ミレイユ・エリクアッツェ大将位は、いま一度気を引き締めた。

 

 「――――解放戦線“ベクラマ”、ホワイト・ピアだな?」

 「へえ・・・・私のこと、知ってるんだ?」

 

 両者の思惑が重なり、少しの間だけ会話が続く。しかし、その間にも練り上げられた魔力は蓄積し――――周囲の民家の壁がミシミシとなり始めた。

 

 「当たり前だ。王国では有名だよ、異常思想のサディストお姫様ってな」

 

 ミレイユがホワイト・ピアの評価をそう吐き捨てると、しかし、《《お姫様》》は不気味な表情を浮かべる。

 

 「はは、うん。あってるかも―――――――」



 ・

 ・

 ・

 

 

 そのころ町の外側では、王国軍の本隊がセントレーネまであと少しのところまで迫っていた。

 

 「よおし、もうすぐ町に着くぞ!みな、気を引き締めて作戦にかかれ‼」

 「しかし分隊長‼上空から、なにか来ます‼‼」

 

 (・・・・?)

 

 水を差すようなその報告の直後、第三分隊隊長:【ムスカ・トーマス】はたしかに――――地面にできたなにかの”影”が、だんだんと広がってゆくのを目撃した。

 

 「オ、オークだァ‼空中から、オークが降ってくるぞ‼」

 「なんだと⁉⁉」

 感知兵の報告が、分隊に電撃を走らせた。

 (なぜ、空から―――――――――ッ‼)

 

 「間に合いません!!」

 「回避を!!!!」

 

 「よ、よけろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ‼‼‼」

 

 『』『』『』『』『』『』『』『』『』

 ドガ――――――――ッ!!!!

 『』『』『』『』『』『』『』『』『』

 

 地面と緑色の巨体が接触した瞬間。辺りにはものすごい衝撃が起き、粉塵が巻き上がった。

 

 「「「「~~~~~~~~~~アアアアアアアアアア⁉⁉⁉」」」」

 

 あるものは突然の出来事に困惑し、そしてあるものは痛みに悶えながら・・・・第三分隊の兵士たちは大きな声を上げた。

 

 「落ち着け、いまはこのオークの対処に集中しろ‼」

 

 (俺は第三分隊隊長―――――ここは、我々で対処するッ!)

 トーマスは剣を両手にし、鋭い視線を巨体に向けた。

 

 「・・・・・・おれのなまえは、【かるろす=ほーなー】、だぞ!」

 「は、はあ?」

 

 (こいつ、なにを言ってる――――――⁇)

 

 「・・・・・・・・・・・ッ‼

 かるろす=ほーなー、だぞおッ‼‼‼」

 「――――ッ‼みな、避けろッ‼」

 

 そのオークは、地面との接触によるダメージなどまるで感じさせない。持っている巨大な木製の棒を振り回しながら、叫び続ける。

 

 「クソ、こうなれば第四分隊に応援を要請し・・・・ッアァ⁉⁇」

 そう考えていた矢先、巨大な地響きが周囲にとどろいた。

 

 「ぐううう・・・!なんなんだ、これは・・・‼」

 地面からの上昇圧―――――――そして次の瞬間には―――――。

 

 〈――――――――‼‼‼―――――グバアン‼‼‼〉

 

 破裂音が鳴り響き、第四分隊は空中に舞った。つづけて地面から、黒い円柱形の物体が現れる。

 それは、倒れている兵士たちをつぶし再起不能にすると・・・・これまた大きく吠えて回る。

 

 (ほ、ほぼ――――全滅―――――した!!!???)

 

 「――――ッそォ、そんなァ・・・た、助けてくれえ‼

 第一・第二分隊に次ぐ―――――‼

 ―――――こちらはッ、第三分隊隊長:ムスカ・トーマス‼第三・第四分隊は壊滅状態!お、応援を要請するぅぅぅぅ‼」

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 「―――――助けに行かなくてよかったのですか?」

 なんともむごい光景を思い出す。勇者シバウラは、第二分隊隊長:【ハーヴェスター・ロドリゴ】大将位に問うた。

 

 (・・・・・・・。)

 

 「ああ、それは我々の仕事ではない。私に従え」

 敵の迎撃もまた、予想以上の規模――――しかし、ここで我々の部隊までもが動揺するわけにはいかない。

 

 「は、はい」

 (――――ロロカは無事なんだろうか)

 

 勇者シバウラは、作戦に後方部隊として召集された同級生の姿を浮かべた。よりによって実践で彼女を登用するなんて・・・・グラディアーニェ太極位はいったいなにを考えているのか。

 

 「・・・・・」

 空に宝物を思い浮かべているような彼の状況を見て――――あるいはそれが不満だったのかもしれない。同じ勇者でも、クミシマは冷静だった。

 

 「芝浦君、気持ちはわかるけど・・・・今回ばかりは気を抜いていると死ぬわ」

 「・・・・すまない」

 

 これまで施設で大切に訓練されてきた、勇者たち。初めての実戦は、とてつもない緊張感をともなう。くわえて、今回のような規模の作戦であればなおさらだ。

 

 ・

  ・

   ・

 

 ‼‼‼‼‼‼

 そんな会話の最中、彼らから右手側の民家のドアがゆっくりと開いた。

 

 「―――――うおおおお‼」


 そしてその家主であろう豚の亜人族――――――彼は叫びながら勇者シバウラに包丁を向け、襲い掛かった。

 (ゲリラ――――――‼‼‼)

 

 それはそうだ、むしろ民間人の妨害がないなんてありえない。

 

 「――――ッ‼‼‼危ない―――――ッ‼」

 

 意表を突かれた勇者クミシマもさすがに反応できず、目を見開き状況をただ凝視する。そんななかで、勇者キリヤはただ一人動き出していたのだ。

 

 彼は燃え盛る炎の剣で、亜人の体を勢い良く叩き切ってみせた。

 

 「まったく、言ってるそばから”ぼーっ”としやがって。どうしたってんだ⁉」

 「・・・・すまない」


 「らしくねえぞ!まあでも、これでこの前の借りは返したからな」


 「――――この前?」

 「おいおい、ガラムバトのときだよ!あいつにやられて、あんときは正直もうだめかと思ったがな」

 

 (・・・・・・・!)

 「ああ・・・そう、だったな」

 

 なんだかんだ言いながら―――――。

 

 (俺は・・・・多分まだ、現実だと思っていないのかもしれない)

 このことを、異世界のこと。

 

 <ドオーーーーンッ!!>

 「ぐああ――――――――‼」

 「助けてえ!!!!」

 

 (・・・・)

 彼らにとっては、ひさびさに聞くことになっただろう。

 誰かの悲痛な叫び・そして容赦ない爆発や戦闘音が耳に届く。鳴りやまない――――いったい、どうして俺たちは、この戦いの連鎖に巻き込まれてしまったのか――――。

 

 「止まれ!」

 隊長の指示に、一同は身を強張らせる。

 〈どさっ〉という乾いた衝撃音とともに、兵士の体が前に放られた。おそらく先に奥へと進んでいった、一班から五班の隊員のうちの誰かだろう。

 

 「・・・・構えろ」

 それでもロドリゴは、いつも通りの落ち着いた調子の声だ。

 (部下を導くのが、当面、俺に与えられた役目だ)

 するとおもむろに現れた影たちは、なにかを言い出した。

 

 「・・・・・・・・・ああ、残念だ。やはり、お前らは・・・・極悪非道の外道だったらしい・・・・ゲホッ・・・しかし残念だったな・・・・そこら中にある市民の死体は、俺の心を熱く燃え上がらせる・・・・ゲホッゲホッ」

 

 「リアル・ジョーの言うとおりだ、お前ら、必ず神様の裁きが下るぜ‼

 ―――――――覚悟しておけよ!!!!ってあれ、なあ、そういえば俺ってどんな神様を信じてたんだっけ⁇」

 

 「バリッ・・バリッ‼ああ、幸せ・・・僕の神様は、ポテトスライスを作った人かなあ」

 

 

 ||||||||||||||||

 

 「・・・・・‼」

 

 ||||||||||||||||

 

 

 長髪強面の竜人。

 背が高く特徴的な目をした魔人で、全身にアクセサリーを身に着けている男。

 それに、太った象の獣人族。


 間違いない、解放戦線“ベクラマ”幹部の【リアル・ジョー】、【エステベス・ポーカー】、【ラリー・ファージ】だ。

 参戦するのであれば少数精鋭で来るとは思っていたが、ここまで粒ぞろいとは。

 エリクアッツェさんの言う通り、これは本当に今回の作戦で、解放戦線を一網打尽にできるかもしれない。

 と・・・・ロドリゴが敵の出方を見ていると、勇者クミシマがとんでもないスピードで切り込んだ。

 (うーん)

 一応作戦も伝えてあるし、指示を待つようにとも言ってあるのだが。


 「よそ見をしすぎね――――ふざけているの?」

 標的は先ほどから大きな紙袋から、ポテトスライスを食べ続けているラリー・ファージ。駆けだしてから、一秒もたっていないのではないだろうか?

 彼女の剣が腹部に到達した。

 

 「はは、元気だねえ。きみ」

 しかし、ラリーは特に防御することもない。そして――――血しぶきが上がることもなかった。

 

 「――――ッ⁉」

 「――――無駄だよ、僕の脂肪に斬撃は通らないからね」


 押し返された剣、体勢を立て直そうとする勇者クミシマだが・・・・その前にエステベス・ポーカーが頭上に現れる。

 

 「まずは、一匹。許してよ?これも神の思し召しなんだから」


 

 振り出される拳――――洗練された魔力。まったく、クミシマ。その積極性は親譲りか⁇もっとも俺は異世界のことなんてわからんが。

 敵も敵だ、神だなんだとごちゃごちゃ言い訳を並べやがって――――。

 

 (まったく・・・・)

 「・・・・まあそう焦るなよ」


 飛び出したロドリゴ大将位は、魔力を解放する。そしてそれは、勇者クミシマの周りを白い弾性質の物体で覆った。

 

 「――――――――弾性魔法:ゴム・チャンバー」

 「――――‼⁉ぐああ⁉」

 

 勢いよくその物体を殴りつけたエステベスは、ぎゃくに空中へとはじき返された。

 

 「そうだ、お前らに一応言っておく。ちょっと勘違いしてるかもしれないんだが、王国にとって大切な人材を任せられている。そんな俺はそこそこ優秀だ」

 

 

 *

 

 

 

 

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