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+++第三十二話:〖王国軍〗対〖解放戦線〗セントレーネでの大衝突

 「――――終極位、エリクアッツェ終極位からの使者が到着しております」

 

 (・・・・)

 報告に、【ジコラ・ミルカビン】終極位は呆れつつも、その人物をこちらに通すように指示を出した。

 ことの発端は、【ダルウィン・エリクアッツェ】終極位の発言から。彼は、来たるセントレーネ攻略作戦への参加を表明したのである。

 

 (そこまでならいつもの気分屋、気性・・・・)

 しかし今回、元老院は彼の意見をすんなりと受け入れた。

 

 (まあ、おそらくは王からの圧力だ)

 そうでなければ考えられない。その町では王国兵が多く失踪しており、比較的規模の大きな事態になっているとはいえ・・・・それでも、終極位が出る幕ではない。

 なぜなら――――その地位は王国軍の中でも最上位。明確な数の定義はないが、現在その椅子に座っているのはたったの四人だけなのである。

 

 「それに、俺は反対だって言ったよな?どういう考えなのかは知らないが、俺の管轄で好き勝手するんじゃない」

 

 「―――ッ゙ゥ゙!!」

 ビリビリとした魔力・・・圧倒的存在感。

 男に威嚇をするような意図はなかったが、無意識なプレッシャーが【レノック・ビダ】群青位を襲う。

 

 (こんな階級をよこしやがって。心底癪に障る)

 

 「そこのところは?」

 「は、はい・・・・そ、そのう、大変申し上げにくいのですが。【勘】だそうで・・・・」

 

 彼は冷や汗を大量にかきながら、懸命に説明を試みる。明らかな体の異常。まさかこんなに嫌われているなんて、終極位は一言も言っていなかった。

 

 (限界だ、なんで私がこんな目に)

 しかしこれに関して、思いの外ミルカビン終極位からの返答は穏やかなものであった。

 

 「変わらないな。まあ奴がそう考えたのなら、そうなんだろうが・・・・俺が言っているのは、なぜ前もってこちらに問い合わせなかったのか、ということだ。それが礼儀ってもんだろう?」

 「・・・・・・その、通りです」

 我が上官ながら、本当に適当だと思い知らされる。いや、その表現は良くないだろう。

 エリクアッツェ終極位は、とても頼りになる人物で、強く、賢くもある。仲間思いで芯が強く、しかし一般という枠からはかなり逸脱した人物なのである。

 

 (・・・・) 

 だからこそ、今回の件はジコラ・ミルカビン終極位が全面的に正しい。問題は、それに対応するのが私であるということですッ!

 たしかにこの二人が諍いを起こせば、国家間紛争レベルのなにかになる。 

 それはわかりますが・・・・。

 

 (ああ!恨みますよッ、エリクアッツェ終極位ッ゙!)

 

 事実は事実。彼には伝えろと言われたことを、素直に言うことしかできない。

 

 「――――――終極位の小言が嫌で、黙っていた・・・・そうです」

 「・・・・!」

 

 ―――――あれ、なんの音だ⁇

 

 そのとき、ビダは小さな破裂音を耳にした。見れば、ミルカビン終極の手元で、ペンが真っ二つになっているようだった。

 

 「・・・・・・・・・・・・・・奴に伝えろ。年が明けるまでに、そっちで一番上等な酒をよこせ、とな。できなければ殺す、とも言っておけ」

 

 

 *

 

 

 そんななか――――準備は着々と進んでいた。

 そこはセントレーネより西に、20キロ。物流都市:エンジタウンで、住民は異様な光景を目撃した。 王国軍の支部では慌ただしく人が行き来し、さらには町の東境に巨大な野営地が設けられた。

 住人たちと笑顔で話す千人規模の兵たちも、みなどこか真剣な感じを崩さない。

 子どもたちはもちろん、大人であっても初めての経験であろう。その場所は、これから起こることを予感させるように・・・・どんよりと重苦しい雰囲気に包まれていた。

 

 

 ・

 ・

 ・

 *

 

 

 【――――聖王歴:1877年12月21日】

 

 「助かりました」

 「いいって、こっちもお金もらってる以上商売だし、道中いろいろ手伝ってくれて助かったよ。でも本当にいいのかい?こんな町の端っこで降ろしちゃって。僕はこれからセントレーネの中心街まで行くけど?」

 

 「いえ、ここで大丈夫です」

 「そうか、じゃあ・・・・気を付けてね」


 そう言って、三日ほどの旅路を共にした若い行商人は、建物が立ち並ぶ方へと荷馬車を走らせた。

 セントレーネ。

 この町で王国軍がなにかするつもりなのであれば、もうすでにその一部が町の中にいてもおかしくはない。

 俺は町のはずれの森の中に、町を見渡せそうな高台を見つけると、そこに続く階段を上り始めた。

 (いまのうちに、町の地理を完璧にインプットしておかなくては)

 

 午後五時。

 だいぶ日が傾いてきたが、まだ間に合うだろう。

 俺が少し駆け足で登り切ると、先客が二人だけ・・・・静かに町の方を見ている様子だった。先人に倣え、と・・・・俺は彼らからすこし離れた場所で同じ方角を眺めた。

 

 「・・・・」

 やはり、そこにはある”町”が映された。その様子はいたって平和である。

 一生懸命客に働きかける虎の獣人族、駆け足で友達のもとに向かってゆく女の子の背には大きな翼が映えている。

 おっと、この時間から酔っ払いまでいるようだ。お疲れ様です、帰りは気をつけてくださいね?

 

 「・・・・・・・・」

 

 まさかこの町が、戦場になるなんて・・・・とても考えられない。

 

 「―――――ちょいとそこの若者」

 「・・・・?」

 俺にそう声をかけたのは、先ほどの先客の一人だ。白い眉毛と髭を自由に長く伸ばし、まるで仙人のような風貌の・・・・老いたブルドッグの獣人族・・・・だろうか?


 「返事くらいせいや、無礼なやつやなぁ」

 隣にいる男が、そう言った。彼のしゃべり方はかなり特徴的なもので、どこの訛りなのか・・・・俺がいままでに聞いたことがないものである。

 

 (サメの・・・・魚人⁇)

 「・・・・はは、だったらよかったんだがな」

 俺の視線から、見透かしたように老人がそう噴き出した。

 

 「――――っちょ、シンバーさ〜ん」

 「冗談じゃ。少年よ、魚人族は遠い昔に姿を消したんじゃよ」


 (・・・・?)

 それから彼は落ち着いた声で、【人】の歴史について語りだした。


 哺乳類の獣人族、人間族。

 魔族の血が混ざった魔人族。

 エルフや天人・・・・ミヌートなど、ごく少数の種族をまとめた、イルシマ族。

 もともとは、すべてが人であった。そしていつからか・・・・人間族と亜人族として大きく括られるようになってしまったのだ。彼はそう感慨深そうに語る。

 

 「――――そうや。せやからこれは普段着で、俺は人間族。わかったか?魚人族がいまおったら、そりゃもう偉い騒ぎになっとんで」

 

 彼は動きをつけて服装を誇張した。

 たしかに人に近いシルエット。全身をウェットスーツのような膜で覆っており、サメの頭を模した被り物をかぶっている。

 いつでも泳げるという感じだが、なんというか、変態感を隠さずに前面に出している。

 

 (なるほどな・・・・)

 理由はあとにして、原理は理解はできた。

 どこか気押される俺――――それを感じたか、老人は男の肩をたたいた。

 

 「ビクターよ、あまり失礼な言動は慎みなさい。いきなり話しかけたのは、こちらだよ」

 「・・・・す、すみません」

 

 会話から二人の関係性を察するに・・・・ブルドッグの獣人の方が、サメの魚人にかなり慕われているように思える。

 それに関しては―――――たしかに、初対面の俺でも、なんとなくオーラが感じて取れる気がする。

 

 「遅れたのう。わしの名前は【ジャレッグソン・ピグレッド】。まあ警戒しないでくれ。話好きな、ただの《《おいぼれ》》じゃから」

 「はあ、こちらこそ失礼しました・・・・セシル・ハルガダナです」

 

 サメ姿の彼は、【ビクター・ノセルソン】と名乗った。彼は俺に警戒の意識を向けつつも、あからさまな敵意はなくなったようだ。

 ジャレクソン・ピグレッドは、しばらく下を眺めてからおもむろに口を開く。

 

 「――――良い町じゃろう?」

 「そうですね。みんなが生き生きとして見えます」

 

 返答に驚いたようにしながら、少しして彼は口を開いた。

 

 「やはりきみは、私と同じような考え方をしているようだ」

 

 そのとき爺さんは俺を褒めた・・・・のかは定かではないが、すると魚人の男は「ケッ」っと喉を鳴らす。

 

 「この町はわしのお気に入りでね。いずれは王国のどこであっても、このような風景が見られることを願っている。人間族も、魔人族も、獣人族もだ。あらゆる民族が平等に暮らせる世の中になるのが、わしの夢じゃからな」

 「へえ、そう・・・・ですか」

 

 俺はその言葉を聞くと、爺さんの言っていることに軽いデジャブを覚えた。解放戦線“ベクラマ”のやつらが言っていた言葉と似ている、そう感じたからだろう。

 

 たぶん、そのせいだ。

 もともとは別にこちらから会話を広げるつもりはなかったが、つい俺は爺さんに疑問を投げかけていた。

 

 「あなたは、そのためならどんな手段も許されると思いますか?たとえば、そのためなら民間人が多少犠牲になろうと、構わないでしょうか?」

 「ふむ・・・・難しい質問じゃな。わしも、もう二百年近く生きてきたが、いまだに胸を張ってそれに答える勇気はない」

 

 「・・・・二百年?」

 「よく見てみいや。ピグレットさんの尖った耳、それはエルフの血が入ってる証拠や」

 

 「たしかに、すこし価値が特殊な気もします」

 「ああ、わしはエルフと獣人の混血。だからきみたちより長く生きれる・・・・といっても、半分は獣人の血。もはや現役とは言い難いがのぉ」


 (エルフと獣人)

 珍しいが、なにもおかしな話ではない。そしてエルフ族は、数百年と寿命があると聞く。であれば、二百年という話も嘘ではないだろう。

 

 「ああ、まだ質問に答えてないが・・・・その前に私もきみに一つ、聞いてもいいかな」

 「・・・・どうぞ」

 

 そう促すと、ピグレッドは少し間を置いた。他愛のない世間話の中で、すこしばかり不自然である。それはまるで、その長い人生の中での葛藤を表すように。

 

 「――――わしは人か?」

 「・・・・」

 

 その問いに正解なんてないだろう。俺の数倍長生きをしている彼には、とっくにわかっていることであるはずだ。あえて未熟者の俺にそれを問う、そこに意味はあるのだろうか?

 ふと浮かぶ根本的な疑問。だとしても、俺の考えはひとつ・・・・深く考える必要なんてないはずだ。

 

 「人でしょう」

 「――――!はは、即答か。これは、なかなか嬉しいもんだ」

 爺さんはそう言って笑うと、立っているのが疲れたのか、近くのベンチに腰かけた。

 

 「【人】の定義は実にあいまいで、解釈によってどうとでも広がる。人間族と、交配可能であれば人なのか?最近はハーフオークが増えてきているが、では純粋なオークも人なのか?」


 「・・・・・・」

 実に深い議論―――――。オークの中には人の言葉を学んで、実際に人と交流するものさえいる。それは、一部の獣や魔族にも同じこと。

 そうなればもはや、”人”と括ってもいいのかもしれない。

 

 「――――すまない、話が長くなったな。今度は、きみの質問に答えようか。わしが過ごした、いままでの・・・・まあ、人に誇れるような人生ではなかったかもしれないが、それでも懸命に答えを探してきたつもりじゃ。そのうえで聞いてほしい、わしの考えは――――」

 

 「――――イエス、じゃ」


 **

 **

 

 【3日後】

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 |||||||||||||||||||||||||||


 「ちゅう、もぉぉぉく‼」


 |||||||||||||||||||||||||||

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 兵士たちが眼前。数十個の太鼓が奏でるけたたましい轟音とともに登場したのは、白髪を伸ばした強面の男である。

 いつの日からか「面倒だから」そう言って切らなくなった髭は、その長さだけ彼の戦場での栄光を表していると言ってもいい。

 左目も戦場で失い、隻眼となってもなお戦い続ける。

 肩書は、王国軍終極位。

 名を、ダルウィン・エリクアッツェ‼

 戦場で彼を目にした相手は、逃げるしかない。

 

 「―――――――【人】とは、我々のことを言う‼‼‼」


 ダルウィンは最初の太鼓に引けを取らないくらいの大声で、集まった兵士たちに語り掛ける。

 

 「肌があり得ない色をしている――――全身から獣のような体毛を生やしている――――さらにはえらで呼吸をすることができる者、数百年の時を生きることができる者がいる。

 奴らは人間のように見えるが、人間ではない。これらの劣等種は、いつの時代であっても・・・・我々人間に寄生し、繫栄してきたッ‼

 さらにはいま、まさに奴らは我々が築き上げてきた文明を破壊し、人間に取って代わろうとしている――――ッ‼‼‼‼」

 

 兵士たちはみな、ごくりと生唾を飲み、真剣に指揮官の訓示を胸に刻み込む。

 

 「我々は‼

 断固とした意志で、これに立ち向かわなくてはならない‼‼」

 

 ダルウィンが剣抜き、天高く掲げると、兵士たちから大きな歓声が沸き上がった。

 

 「今日、このとき、この場所で‼!!我々人類は、理想の世界へとまた一歩を踏み出す‼

 人間への冒涜の最たる例を破壊し、寄生虫に協力する悪魔どもを根絶やしにするのだ‼‼‼

 兵士たちよ、剣を取れ‼

 人類のために、いま、その精神をささげよ‼‼」


NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN

 NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN

 NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN

 

 

 「「「「「うおおおおおおお―――――――――――ッ‼‼‼」」」」」


 「「「「「進めえええええええ――――――――――ッ‼‼‼」」」」」



 NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN

 NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN

 NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN

 

 ・

 ・

 ・

 

 「――――始まってしまったか」

 老人は、先日と同じ場所から。しかしまったく違う景色を目にしていた。

 

 「こうなってしまっては、もはや後戻りなどできまい」

 「ッ!シ、シンバー!それよりも、あれを見てくださいよ‼あのおっさん・・・・まさかッ⁉⁉」

 

 ノセルソンは、部隊の先頭を走る屈強な兵士を指さした。異質な魔力を前面に、町の方へと鋭い視線を送っている。

 

 (・・・・・・・・)

 

 「ああ、おそらく王国軍終極位。ダルウィン・エリクアッツェ」

 「んなあほなッ――――!?なんでや、まさか俺たちの作戦が漏れてるんか⁇」

 

 「いや――――」

 もともと今回の発端は、解放戦線やベクラマとは関係ない。向こうの力の入れ具合は正直、想定外だ。おそらくは、あの小僧――――。

 

 (だいぶ出世したように見えるがのぉ)

 

 直感で動く・・・・野性的な性格は変わってないらしい。ベクラマがこの町の死守に動くと、読んできたか。

 

 「シ、シンバー・・・・⁇」

 「うろたえることはない。作戦はなにも変えない・・・・わしらはここで待機。ホワイト・ピアたちからの連絡を待つんじゃ」


 

 ・

 ・

 ・

 

 

 「―――――――――――――う、うわあああああ⁉

 な、なんだ⁇⁇あれ⁉⁉」


 町のはずれに住んでいる、ピンク色の肌をした魔人族の少年。彼が目にしたのは、粉塵をあげながら騎馬突撃してくる、無数の王国軍兵士たちの姿だった。

 

 (~~~~~~~ッ‼‼‼‼‼)

 そんな――――――――⁇⁇⁇

 

 「逃げろォ‼早くみんな、逃げるんだ‼

 ・・・・国王軍が、来るぞおおお‼‼」

 

 ―――――――――そして―――――すでに早朝の町はパニックに陥っている。 

 逃げ惑う市民たちがいたるところを走り回り、悲鳴や鳴き声・・・・誰かを呼ぶ大声で自分が発した声すら聞き取りずらい。

 北東の町の出口には、市民が殺到する。商人の荷馬車は、出発すらできないほどに人で埋め尽くされた。

 

 「――――助けて!殺さないで‼」

 「落ち着け、王国軍はまだ来てない!早く逃げるんだ!」

 

 民家の陰で頭を抱えて座っていた少女を担ぐと、獣人族の男性は北の町はずれまで移動した。しかしそこには――――――――。


 「――――はあ、はあ。うそだろ?」

 

 そう、北の山道にはすでに王国軍の姿があった。

 考えてみれば当然か、本体とは別の部隊がすでにこの町に入っていたのだろう。彼らの近くに血の跡と、数人の死体が転がっているのが目に入る。

  

 「そんな・・・・!こんなの、どこに逃げろって言うんだ」

 「バカ、逃げ場なんてあるわけないだろ⁇ああ、

まあ仕方ないか。野蛮な獣ごときに、俺らの考えが理解できるはずもない」

 

 「うわああああ――――⁉」

 

 すぐ近くにもう一人兵士がいたらしい。そして彼は、驚いて声をあげる男がうっとうしいとでも言わんばかりに剣を抜いた。

 男はせめて抱えている女の子だけでも、とかばうような体制で剣が下ろされるのを待つしかなかった。しかし、彼が考えていたような最悪の結果にはならなかったのである。

 辺りにひんやりとした冷気が漂いだすと、一瞬でその兵士は氷の人形へと変貌した。

 「・・・・‼」


 空中から降りてきたその人物は、異変を感じ寄ってきた三人の兵士もあっという間に固めてしまう。辺りの惨状を確認した後、残念そうに表情を作った。

 

 「くそッ、こっちももう、こんなに人が死んでいるのか!?」

 「あ、あんたは・・・・⁇」

 

 ヒーローのように登場した彼は、なぜか王国軍に似た制服をまとい――――顔面には伝説の魔神”ヘンガル”を模した仮面をかぶる。

 

 「俺は、セシル――――」

 

 ”

 

 「――――これを?俺にくれるのか?」

 

 別れ際、ビクター・ノセルソンは俺に精巧な”仮面”を差し出した。

 「ああ。言っとくけど、俺からちゃうで?ジャレクソン・ピグレットからや」

 

 彼の言葉を聞き、俺が老人に視線を移すと・・・・彼は<ふーっ>と息を吐き出した。

 

 「なに、こんな老人と話をしてくれたお礼じゃよ。魔神”ヘンガル”は、その容貌を自在に変えたと伝えられておる。ぬしもそれをつければたちまち、ヘンガルになれるだろう・・・・ほほほっ!」

 

 ”

 

 (・・・・・・・)

 あのなにもかも見透かしたような感じ――――あの笑いと、そして彼が何者だったのか、考える必要はない。

 男は右手に少女を優しく抱えると、左手を倒れている男性に差し出した。

 

 (顔はわからない――――だがなんだ?)

 この、強力でありながら優しい魔法は?氷に、冷たさを感じないほどに⁇

 

 ||||||||||||||||||||

 

 「私の名前は、【ソシワターヌ=オヴレ】ッ‼どうやらこの場所で無事なのは、きみたちだけのようだ。話は後、あっちに安全な場所があるから、ついてきてくれたまえ‼」

 

 ||||||||||||||||||||

 

 

 *第十六・一話に続く

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