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+++第二十話:第43部隊、接敵!強力水魔法

 「はあ・・・・情報が集まりそうな箇所をいくつか回りましたが、収穫はありませんでしたね」

 「そうですね、でもそれが自然に思えます。だいたい、人間族だけの小規模な町ですから。魔人族がいればもっと騒ぎになっているはずでしょう」

 

 あれから1時間近く聞き込みを続けているが、町はいたって自然体である。正直この場所にはなにもないのでは、と疑い始めている。

 

 「――――!」

 そこで、なにに気がついたのか、太極位は側道に逸れた。

 

 「こんにちは、どうしたのかな?」

 彼女が声をかけたのは、5歳ほどの男の子である。小キズから活発さをうかがわせるが、いまは違うらしい。母親の服をつかみ、どこか恐ろしそうに泣いている。

 

 「・・・・」

 「ゆっくりでいいですから、心配なことを私に言ってごらん」

 

 こうしている間にも、時間は刻々と過ぎていく。

 (意味、あるのか?)

 

 こうも怯えていては、会話になるかすら怪しい。そうであっても、子どもの情報をどこまで信用するか疑問であるからだ。

 

 「なにがあったのかな?」

 「ええと、あれ・・・・俺、どうしても怖くて」

 「あれ――――?」

 

 男の子が指差す方に視線を向けた。しかしそこには壮大な風景があるだけで、それ以外は特筆すべきではない。

 

 「ちょ、ほら、いい加減にしなさい。この人たちは王国軍の兵士さんなのよ?」

 「大丈夫です、それよりも、彼の話を詳しく聞きたいですね」

 

 「え、そう、なんですか?

 それがこの子、昨日からずっとこうで・・・・北のエーレ山で、大きな建物を見たらしいんですが、それが怖いらしくて」

 

 「エーレ――――山?」

 「ええ、彼はそれを伝えたかったようです。行ってみる価値はありそうですね」

 

 思わぬところから情報は得られるものだ。不審な建物を、ベルセベルデが隠れ蓑にしている可能性は十分にある。俺は急かすように彼女に声かけた。

 

 「まあ待ってください。きみ、名前はなんて言うのですか?」

 「ボーク・マルクス・・・・です。お姉さんは、女の人なのに大きいね」

 「あ――――あははは!」

 

 「こ、こら!」

 「いいんですよ、お母さん。人より背が高いのは事実ですから」

 失礼では、と叱ろうとした母親を太極位は制止した。

 

 「私は王国軍の兵士ですからね。きみたち王国民を守るために、強くなくちゃいけません」

 「お姉さんは俺たちを、守ってくれるの?」

 「はい。なのでなにも心配することはありませんよ?なにがあっても、大丈夫です」

 

 「・・・・!

 か、かっこいい!」

 すると少年はすっかり元気を取り戻し、目を輝かせた。

 

 「俺も!俺だって強くなりたいよ!どうすればいいの?」

 「ふふ、あらあら。そうですね・・・・ポイントは元気に、お母さんの手伝いをすることでしょうか?」

 太極位にとって、憧れの視線は想定外だったかもしれない。しかし彼女はしっかりとそう伝え、少年に別れを告げた。

 彼女のように、つねに民のことを考える兵士もいたものだ。セシルがすこしばかり感心していたところ、彼女はすでにモードを切り替えていた。

 

 「さて、つぎの目的がはっきりしましたね」

 「あ――――ええ。あの山を登るとなると、さらに一時間程でしょうか?」

 「そう・・・・というわけで、私はさきに行くことにします」

 「はい?」

 

 (・・・・!)

 つぎの瞬間、さきほどまで会話していた人物はすっかりその場から消えてしまう。

 

 「ま、じか。魔法だよな⁉」

 はじめて見るが、間違いないだろう。太極位ともなると、理解できないような希少魔法を使うこともある、か。つまり、俺は一人で登って来いってことらしい。

 「まあ、仕方ないよな。俺の実力不足だ」

 セシルは拗ねることなく、急ぎ足で現場に向かい始めた。

 

 

 *

 

 

 「――――で、はあはあ」

 (着いたはいいものの・・・・)

 気合を入れたのに、1時間以上かかってしまった。あの人はどこだ?ひょっとして、もうベルセベルデを見つけて、戦ってるんじゃないだろうな?

 しかし少年が見た建物というのは、これのことだろう。息を整えながら、山中に現れた木造二階建てに注目する。

 

 「なるほど」

 たしかに民家にしては大きく、旅館というような印象も受ける。とくに危険な感じもしないが、俺は一応警戒してなかに足を運んだ。

 

 「・・・・いらっしゃいませ」

 「え⁉・・・・びっくりした。横にいたんですか」

 

 「これは失礼。当施設では、受付がこちらにありまして。しかしそれも、縮んだ老婆の存在感を考えれば、不相応な配置になってしまいましたね」

 「あなたがここの管理を?」

 「左様でございます。今日は客人が多く、私もやっと務めを果たせる思いです」

 

 「務め、ですか?」

 受付部屋から出てきたのは、言うように小さな高齢女性であった。本来であれば、彼女に一言伝えて例の建物を探し続けたほうがいいのだろう。しかし話を聞くべきだと、俺はなぜかそう判断した。

 

 「私の家系は先祖代々、この王国軍宿泊施設を運営してきました。100年以上前の話ですが、昔はよく王国兵がこちらにいらしたそうで。彼らのために拠点を提供するのが、私たち一族の役目です」

 「なるほど。務めを果たせるというのは、俺が王国兵だからですか」

 「今日はあなたの前にも、ほぼ同じ時間に三人の兵士がここを訪ねてきました。お三方とも、遺跡の話をしたらそちらに向かわれましたが」

 

 遺跡・・・・。

 俺たちが目的としていたのは、おそらくそれだ。

 「それはどこにありますか?俺にも教えてください」

 「奥の細道を、まっすぐに行ってくだされ。ここからなら徒歩で10分もかかりませぬ」

 「ありがとうございます」

 

 ふたたび玄関を通り、緑の景色に包まれる。

 (奥・・・・あれか)

 けもの道のようだが、枝や葉をかき分ければ通れそうである。実際に動物も通って――――。

 

 「お気をつけて」

 「————え?あ、はい」

 

 あれ?

 しかしあの動物・・・・四足歩行で、肌が青くて、黄色く鋭い眼光。なにより頭に生えている一本の角。

 

 魔獣か!

 

 「下がってください!」

 俺はかばうようにして、老体を押しのける。肩口に、角が突き刺さって流血しているのがわかった。なぜ気づかなかった?普通は、視認した瞬間にそれと認識できるはず。

 

 「氷魔法————!」

 (速い!)

 魔法を発動する前に、魔獣はふたたび茂みに隠れた。ヒット・アンドアウェイの戦略を徹底しているらしい。

 「だが、不意打ちでなければ確実に仕留められる」

 「ゲギギギギギッ」

 「なんだよ?」

 俺が魔獣に集中していると、薄気味の悪い声を挙げる。なぜ笑っているのか?深く理由を考える暇もなく、背後から管理人女性の悲鳴が響く。

 

 「どうしたんで――――ッ‼」

 (しまった!)

 旅館の方から、新手の魔人族が彼女を狙っているらしい。

 俺のミスだ。魔獣の狙いもこの女性だったのだから、視野を広げておくべきだった。思考が乱される。なぜ俺は、魔獣の方ばかりに気を取られていた??

 俺は急いでサポートに向かうが、ここからでは間に合いそうもない。

 「くそッ」

 届いてくれ!

 

 

 *第二十一話に続く

 

 

 

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