白い空間で
3-自分の色
やっと終わった。いつもなら、あっという間に終わるはずなのに、今日は先輩と喋りながら作業していたせいか部活が長く感じた。久々にこんなに喋った気がする。喉がカラカラだ。タブレットとペンをバッグにしまい、代わりに水筒を取り出す。
「もうこんな時間なんだ。片付け始めないとね」
先程まで画用紙と睨めっこしていた先輩がペンを置き、片付けを始める。私もほうきを取り出し床を掃く。
「赤音さん。まだやりたい作業があって僕は遅くなるから、先帰ってもらって大丈夫だよ」
「いえ、最後に掃除をするのが部活の決まりなので、それに、先輩だけにやらせるのも申し訳ないので」
「ありがとう」
そう言って先輩は片付けの続きをする。私も集めたゴミをゴミ箱に入れる。
「鍵はかけておくから、帰ってもらっていいよ」
「それじゃ、先に失礼します。お疲れ様でした」
「お疲れ様」
先輩の返事を聞いてから、すぐに廊下へ出ていく。今日は疲れたから、家でゆっくり休みたい。
外へ出て夕日に背を向けながら、家へ向かう。
「ただいま」
「おかえり。部活どうだった?」
母親だ。部活の日はいつも、この様な質問をしてくる。
「いつも通りだよ」
「そう」
少し残念そうな返事が、帰ってくる。母親は私が学校でいじめに遭っていることを知らない。高校に入って以来、日に日に暗くなっている私を、心配しているのだろう。申し訳ないと思っているが、いじめの件を伝えると、もっと心配を掛けてしまいそうで秘密にしている。
「今日は疲れたから、寝るね」
「夕食はいいの?」
「帰りに食べてきたから大丈夫」
「あらそう。ゆっくり休んでね。おやすみ」
「おやすみ」
母親とのやり取りを終え、2階に上がりベッドに寝そべる。瞼が重い。どうやら本当に疲れているらしい。ストレスなのかな。ふとそんな事を思った時には、意識は夢の中だった。
目を開けると、そこには白い空間が広がっていた。
「ここはどこだろう?」
しっかりとした意識があるせいか、素直な疑問が出る。する事も無いし、この空間を少し観察してみることにした。
だが、すぐに変化があった。私が思った事が全て白い空間にペンで描かれているような気がした。それも赤色で。
その後も何度も色々な事をしてみた。他の色を想像してみたり、自分の名前を書いてみようとしてみたり。そうしている内に分かった事がある。どうやら、自分の色は赤色一色らしい。そして個人情報になるようなものは決して空間に色がつかない。
「不思議だけど、素敵だな〜」
素直にそんな一言が溢れた。その一言で、空間全てに綺麗な赤が広がった。
赤色が私の色なんだ。何処か凄く嬉しくなった。この空間は眼鏡を外さなくても、本来の色がしっかり伝わって来た。




