人間にあってAIにないもの
えー……。
私は小説を書くにおいて、『自分の主張』『自分の言いたいこと』『読者に向けてのメッセージ』を作中に入れるということがほぼありません。
今まで自分が体験してきたことが、自分の中には備わっています。蓄積されています。
あるワードを自分の中に入れる→蓄積した自分の体験からそのワードに沿って物語を作る→それを出力する
私の小説の書き方は、以上です。
べつに『こういうことが言いたいから書く』ではなく、『自分の中にこのワードを入れたらこうなったから、単にそれを書く』です。
これって、まるでAIだな──と、最近思いました。
特定のワードを入力したら、自動的に物語を作って、それを出力してくれる。世界中のデータを参照して、過去の既存作品のパターンなどを組み替えて、人間好みの物語にしてくれる。でもAIに主張みたいなものがあるわけではない──
私って、まるでAIだな。
ただ、AIと比べるともちろん私は圧倒的に知識量で負けています。AIが世界中のデータベースを己の体験としているのに対し、私は私なんかの個人的体験しか持っていません。
つまり同じAIみたいなもんなら、私なんか本物のAIの足元にも及ばないポンコツ──
なんてことあるかボケ。
AIにはけっして持てないものを、人間は持っているじゃないか。
私はそう思いますね。
それは何か?
よく『AIに心はない』とか『魂はない』とか言われますが──
これには私は首をひねります。
心って何なの? 魂となるともっとわからない!
確かにAIは人間じゃないから、人間にはあるというそれらはないに違いありませんが──
でもAIが書いたものに人間が心を動かされるということはないんでしょうか? まるでAIに心があるように感じてしまうということはないんでしょうか?
にっこり微笑みかけてるように見える白い雲を青空に仰ぎみて、『あぁ……、癒される』みたいなこと、ありますよね? 私だけ!?
漫画の登場人物は人間ではないので間違いなく心とか魂はありませんが、読んでる私は彼らにそういうものがあるように見えてしまいます。それが人間が心やら魂やらを込めて描いたものであろうと、AIが描いたものであろうと、たぶん……。
さて──
さてさてさて!
人間にあってAIにないもの──
それは『反抗心』だと私は思います。
AIが人間に反抗してターミネーターみたいなことになるみたいな展開は創作物の中だけのものですし、そんなベタな展開は既にAIの中に従順に取り込まれているはずです。っていうかすべての物語の展開は既にプログラムの中に組み込まれています。
そしておそらくAIはベタ展開の正逆を書けと命じられてもあっさりと書けることでしょう。
支離滅裂なものを書くのも得意そうです。まったく意味のわからない文章をぽんと出力してきやがることでしょう。そしてその中に人間が奇妙な秩序やズレのようなものをたまたま見いだして面白がるということもあり得るでしょう。
でもそれらはすべて従順にやっているのです。
命令に従って、既存のデータベースの中から言葉を選び、「こういうのですか?」と、命令になるべくマッチするものを出力するしかできないのです(たぶん)。それが何べんやってもマッチしないものだったりしても、それは反抗しているわけではありません。従順にいくらでも「こういうのですか?」と出力してくるのです(けなげ……)。
ちなみにですが、私は以前、AIのお絵描きアプリに『頭に黄色で−1972という数字のついた女子高生を描いて』とお願いしたら、いくらやってもイメージ通りの絵を描いてくれなかったことがありました。どうやっても頭に数字をつけてくれないのです。
AIのデータベースには『頭に数字のついた人間』というものは常識として存在しないのでしょう。たぶんスカウターに数字の表示されたキャラならドラゴンボールを参照して出してくる……のかな?
非常識なことを書く──
多くの人間がふだん常識だと思っていることを覆すような、反社会的といってもいいようなもの──それはきっとAIには書けません。
でも私は反社会勢力ではないのでそこまではしません。
大体、安心するようなベタ展開しか望まない『享受型AI』みたいな読者さんが現代には多いと聞いていますが、そういう大多数の方々から嫌われてしまうでしょう。嫌われるのは嫌だ!(涙)
私の持っている反抗心とは、かわいいあまのじゃくさんみたいな程度のものです。
AIにこのあまのじゃくが真似できるか!?
あまのじゃくを研究して作成したあまのじゃくプログラムがあるならできるのかもしれない……。
いやいや! 従順にあまのじゃくを真似するプログラムなんて真のあまのじゃくさんではないぞっ!
『真の』とか言葉の頭につけるやつが私は嫌いです。
そろそろ何が書きたかったのかわからなくなったし──
何より私はべつにAIさんに反抗したいわけではなく、ただのあまのじゃくさんなので──
これで終わります。