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ボマー・ゲーム1

謎の連続爆破事件。解き明かすためのヒントはデート!?


鋏屋シザー解体よりしばらくして、蠍會大幹部、通称・劇毒アドベノムが招集。蠍會最強の5人がついに姿を現す!動くのは゛致死毒゛のデッドライン。



時を同じくして、巾離高校はもうすぐ夏休み到来でどこか浮かれた空気。そんな中不審な原因不明の爆発事件が発生。謎の記者も現れ、ついに蠍會との本格的な戦いが始まる。


そんな中、異能研究部に予想外の人物が現れる‥。

致死毒が、その牙を剥く。

ボマー・ゲーム1


?章 ××た×なま××




運命を信じているかと言われると、実は信じている。世の中、偶然では片付けられないことがたくさんあるから。偶然以外の事象(こと)が逆に言うと運命なのかもしれない。だからこれもきっと運命っていうものなんだ。そう私は信じている。


別に出会いはなんてことない。ただ私がその子の近くでたまたま欠伸(あくび)をしたら、つられてその子も欠伸をした。あまりにもシンクロしていたからそれが可笑しくて笑った。その子のリアクションはちょっと薄かったけど、たぶん恥ずかしかったのかな。キミにとっては取るに足らない一日だっただろうけれど、私にとってはずっと心の中に鍵をかけてしまっておきたいくらい宝物だったんだ。




なぜかその日からその子のことが気になった。ついつい今何をしているかを目で追ってしまう。そっちからは目を合わせてくれたことはあまりないけれど。自虐的で無愛想だけど、本当はすごく優しい人。実際人の良さというものは関わってから分かってくるものであって、人となぜか壁を作りたがる性格だからすごく勿体ないなぁとも思った。


自分のことをあまり話さないけど、人の悪口も絶対に言わない人だ。





なんでだろう。目立つ容姿や性格をしているわけではないのにその子のことが頭から離れなくなった。もっと知りたい。もっと考えていたい。もっとその子の近くに行きたい。


でも…そう思うたびに自分が自分でなくなるような、胸の奥が甘く痺れる感じ。この感情に名前を付けていいのなら。それは…。






その二人はそれ以来、一度も会っていない。






はずだった。





序章 世界バカへつける薬はない。




仄暗い、が陰湿な雰囲気のしない上品さと荘厳さが立ち込める。俯瞰して見ると、その一室だけが世界から切り離されたようなそんな得体の知れなさがあった。6人が座るには大きすぎるすべてが大理石のテーブル。そして部屋の奥には、大きな蠍がデザインされた巨大の垂れ幕があり、その大理石のテーブルを見つめているように見える。


この地下の一室で行われるのは、蠍會・大幹部のみが一堂に会する極めて重要な会議。それが間もなく始まろうとしていた。





それを、一つ上の階で眺めているのは、左半分は茶色、右半分は白黒が混じった柄が縦で真っ二つになった尻尾付きのもこもこパーカーを着ている一人の女。その手には右手がレッサーパンダ、左手がジャイアントパンダのパペットがはめられている。




「さて…無事に全員集合といくんですかねぇ。」


ガラスに両手を付けてまじまじと見てはいるが中の様子などもちろん見えない。が、女の目的はそこではない。目的は滅多に見られない蠍會の大幹部5人、通称劇毒(アドベノム)の姿を見ることだ。





「ん?ズーティア殿。何をしているでござるか。」


黄色のヘルメットを被った赤と黒のスカジャン男が不審に思い、近づいてきた。彼が持っている大容量のポテトチップの袋が小さく見えるほどの巨漢だった。


「おや!グルメット。いいところに来ましたねぇ。実は私、聞いちゃったんですよ!」


「何でござるか藪から棒に…。」


「今日も何かネタがないかウロウロと俳諧していたんですが、なんと埋葬傷奈様とアンセム様が今日ここに現れるという情報をしかとこの耳で聞きました!


今私達がいるフロアのまさにこの窓から!劇毒(アドベノム)の方々のお姿が見られるのですよ!千載一遇のチャーンスッ!」


蠍會一の情報通(自称)を名乗るズーティアが高らかに右手のレッサーパンダを掲げる。




「拙者には、お主、よっぽど暇と見た。」


「なんで俳句風なんですか!失礼ですね!私だって仕事の一つや二つくらいはしてますよ!」





そんなやり取りをしていると、紫と黒に、赤い刺繍があしらわれた軍服と帽子を着た貴族のような男がその部屋に入ろうとしている。




「あー!あれはっ…劇毒(アドベノム)・¨渇望毒¨のリミッター様!相変わらず見目麗しい…。」


「ふむ。拙者は初めて拝見したでござるな。立ち振る舞いだけで強者の風格を感じさせるでござる。」


グルメットもこれには同意する。というより実際のところ劇毒(アドベノム)に羨望の眼差しを全く向けない人間の方が少数派である。相対しただけで自分よりも格上だと思わせるようなプレッシャーも、それでも良しとさせるカリスマ性も兼ね備えているのが劇毒。これまでも異能(ミステル)を手に入れて天狗になった人間の鼻っ柱を幾度となく折ってきた。世の中には上には上がいるということを示し続けているので、彼らが世に出てきてから異能(ミステル)での暴走事故が減ったとも言われている。




「あ、もう一人来たでござるよ。あれは…¨凋落毒¨のギリュウ様!なんでも、一対一では蠍會の誰もギリュウ様に勝ったことがないとか。」


な黒と灰色の龍が背中に入っている仰々しい服装の老人。その鍛え上げられた肉体と険しい眼光は凄まじく、目を合わせただけで相手を射殺しそうなほど。


「うーん…やはりギリュウ様はイケおじ枠ですね…。特に訳なんてなくても私を守ってくれそうな溢れるワイルドさがたまりませんっ!バリボリ…。」


「先ほどから本当に楽しそうですなズーティア殿…。ってそれは拙者のポテトチップですぞ!ご自分で買いなされ行儀が悪いっ!」




パンダ二頭の手には絶対に食べなさそうなポテトチップが一枚ずつ握られている。


「分かっておりませんねグルメット、経験も食事も感動も共に味わえる仲間がいてこそ相乗効果を生み出すのです。そうそれはポテトチップも同義!」


「ただ口寂しくなっただけって素直に言えぬでござるか…。」


「ん、これ美味しいですね。ゆず胡椒明太子味とはなかなかセンスのある…。ってああっ!」


「今度は何でござるか!」




忙しいリアクション娘、ズーティアはある一点に釘付けになっている。


「¨妄執毒¨アンセム様と私の最推し、¨慕情毒¨埋葬傷奈様ぁぁぁぁ!しかも二人並んでのご降臨!ちょっとグルメット、写真撮ってください写真!私が映るように!」




「いつからここは観光地になったでござるか…。」


とは言いつつ写真を撮ってあげるグルメット。意外と彼は人がいい。




「ありがとうございます。グルメット。これであと一人、デッドライン様だけですね!」


「おっ、今、埋葬傷奈様に話しかけたのがそうじゃないでござるか?」


チャラそうな薄いオレンジ色の髪が目立つ。埋葬傷奈はスタスタと先に行ってしまって少し凹んでいるのがこちらからも見えた。




「適当にあしらわれるデッドライン様も素敵…。」


「全く、貴殿の美化フィルターは相変わらずでござるな…。少し羨ましくも思えたでござるよ。」




するとデッドラインは持っていたスマホを耳に当てた。


「ん?誰かと通話しようとしているでござるな。さて、ズーティア殿もそろそろお暇するでござ」





着信音が鳴っていたのは自分のスマホからだった。




「えっちょっと!それって十中八九デッドライン様からですよね!早く出てくださいグルメット!」


「ちょ!?というかなんで今このタイミングで拙者にかかってくるでござるか??拙者はズーティア殿と違って何もしていないでござるよっ!」




といいつつ仕事なのでグルメットは意を決して、通話ボタンを押した。ズーティアにも聞こえるようにスピーカーに設定済み。




[もしもし…。私、グルメットと申します。]


[アハハッ。そりゃ電話かけたんやから、知っとるがな。実は今マックスに大きなイベントのオープニングスタッフ募集中でな。ちょっと人手が欲しいねん。お前ら二人、やってみいひん?]




[えっ!よろしいのですかっ?]


[もちろんや。俺が誘ってんのやからな。もちろん特別給金あるで。まぁこれからやる会議が終わったら、委細説明するわ。ほな。]


デッドラインは電話を切った。






そして劇毒(アドベノム)五人が、中で出揃う。


「おぉ♪しっかし久しぶりやなぁ!ギリュウの爺さんももうぽっくりいっちまったと思ったで~。」


「相変わらず態度も口も軽い男よ。鋏屋(シザー)の始末にも失敗して、よく顔を出せたものよな。」


「」


「いやそれは言わんといてやぁ。クノちゃんの異能(ミステル)なんて完全に所見殺しなんやから。あんなん逃走に使われたらほぼどうしようもないやろ!後出しジャンケンや!」


ギリュウの指摘に、デッドラインはばつの悪そうな顔をした。




「でもほぼ、ということはキミも何かしらの対応策は見出せている、あるいは手掛かりがある。そうでしょ?デッドライン?」


「せやでぇ!埋葬ちゃん!やっぱアンタは他の人とちゃうわぁ。俺の本質を分かっとる!」


「キミも食えないね。本当に私がキミの本質から向き合えていると思うのかな?」





埋葬傷奈からそう言われたデッドラインが、目の奥が笑っていない笑みだけで答えた。




「埋葬傷奈さん。デッドラインを少し甘やかせすぎですよ。小生の異能(ミステル)で折角、鋏屋を乗せられる車を手配したのに結局、跡形もなく爆破するなんて…」


「えー!そんなことしてたのぉ?デッド(にい)ひどーい!リミ(にい)のかつお節な活躍を無下にするなんてっ。」


「アンセムちゃんは、いぶし銀って言いたかったんか…?まぁまぁ。助かったでリミッター。今度も頼むわー」


「これだけ心のこもらない感謝の言葉があるとは…。あぁ。見返り欲しさという紳士の欠片もない感情の渦に吞まれそうだ…。」





暫く雑談などをしていると、地下三階へ直接繋がる階段から足音がゆっくりと聞こえてきた。乾いた小気味いい音が、彼ら5人の視線を釘付けにした。




その視線の先にいたのは、一際目を引くその髪色。暗めの紫色の髪を巻いて前に持ってきたその毛先は紅く鋭い。中世的な見た目で若々しいが年齢は不明。そんな美しく線の細い男がやってきた。


「やぁ。劇毒の皆。僕だ。スコーピオンだ。全員集まってくれるなんて嬉しいよ。アンセムは任務達成お疲れ様。デッドラインは…まぁ残念だったけど難しい任務だったから。上司として汚れ仕事をお願いしてしまってすまなかったね。」


「わぁい!ありがとうございますっ!」


「あーいえいえ俺の方はすんませんした…。でも今度はそうはいかないで。鋏屋を倒した奴らにこれからマックスにやりたいことがあるんですわ。そこらへん、俺の独断に任せてもらってええですか?」




「痴れ者が。我が主、スコーピオン様にまでこれ以上恥をかかせるでないわ。代わりに儂が行こう。」


ギリュウがデッドラインを制して席を立とうとする。




「ありがとうギリュウ。でも僕はデッドラインに白羽の矢を立てることにするよ。理由は、今日集まってもらった経緯にも関係することでね。」




スコーピオン、蠍會の首領が話し始める。不思議なカリスマ性がある理由の一つ、彼の声質は人を穏やかで晴れやかな気持ちにさせる。まるで遅効性の毒が少しずつ回るように…。




「皆も知っている通りだ。鋏屋がある異能(ミステル)持ちの集団に敗れ、そして解散した。だが鋏屋のうち3名はまだ生存し、我々に牙を剥く可能性がある。いやほぼ確定だろう。鋏屋に土を付けた異能(ミステル)持ち集団も気になる。まだ正体は不明だがね。」




「ですがスコーピオン様。小生が思うに、その異能(ミステル)持ち集団が今まで我々と何の接触もせずに力を蓄え、潜伏し続けていたとは考えづらいのです。それほど強力な異能(ミステル)を持っていたならば我々の方からスカウトするか、少なくとも接触しているはず。」


「確かにリミ(にい)の言う通りかも。ギリュウおじちゃんくらいとまではいかないけれど、そこそこ見込みがあったら私達の耳に入らないわけないしね。強い人だったらお友達になりたいな。」




「そうだね。僕もそこは気になっていたところなんだ。十中八九僕たちのことを知っているとみていい。予想では元蠍會の人間が混じっていると僕は思っている。そこでだデッドライン。」


「なんですかいな。」


「君の異能(ミステル)を使い、鋏屋と彼らを見つけ出してほしい。手段は問わない。その後の彼らの処遇についても君の裁量に任せよう。」


「マジですか!いやー俺、大抜擢やん!わっかりましたぁ!」




ギリュウとリミッターは、流石に蠍會の首領直々の指名を無下にすることもできず、黙って聞いていた。




「あとそれとだ。埋葬、キミは前に一度ウチの構成員二人、ウォルフとイレーザの報告を聞きに出向いたことがあったね?」


「そうだね。」


「その時、妙なことは起きなかったかい?」


「…。いや、構成員二人がノびてたから、それをやった犯人を始末したことかな。いきなり異能(ミステル)に目覚めた人によくある、ハイ状態だったよ。あれじゃ周りの人間に危害を加えかねなかった。でもそれだけ。妙なことや気になることは特になかったよ。」


「そうか。わかった。ご苦労だったね。」




スコーピオンには珍しく妙なこと、などと少し遠回しな言い方をしたのが、埋葬傷奈には気になった。


「(…?今、傷姉ちょっと噓ついた…?しかもちょっとだけ嬉しそうに口角が上がってたようにも見えた。ただの事後報告ならあんな表情にはならないし、もしかして廊下で傷姉が電話してたのってそのこと絡みだったりするのかな。)」




アンセムの疑問を他所に、会議は瞬く間に過ぎていき2時間ほど話した後、スコーピオンは髪を指先で巻くような動作をしてから、劇毒の全員に最後に伝えた。




「我々はこのどうしようもない世の中を、毒を以て毒を制し、新たな世界の処方箋となる存在だ。絶対的な正義か悪かなんて便利で明確な線引きは存在しない。強いて言うなら、道理が通っていると考える人間が多い方のシーソーが傾くようにできている。これを倫理感だなんて言うのだから狂気の沙汰でしかない。


異能(ミステル)という人知を超えた超常の力はそれを廃絶するために存在していると僕は考えている。だからこれからも皆の力を貸してほしい。異能(ミステル)で管理された世界の実現に向けて、ね。蠍會は来るものも拒まないし、去る者も追ったりしない。だが立ちふさがる障害は」




スコーピオンはそう言うと、テーブルに飲み物と一緒に用意されていた塩ナッツを5.6粒手に取りバラバラに握りつぶした。


「蹂躙する。さて、今日はこの辺でお開きにしようか。、」





スコーピオンと劇毒たちは別々に別れ会議はそこで終了した。その後、埋葬傷奈はアンセムに食事に誘われたが、いったん断ってデッドラインの元に行った。




「ねぇ。デッドライン。」


「どしたん。埋葬ちゃん。やっぱいつ見てもマックスにべっぴんさんやなぁ。腰につけてる゛(マガ)゛やったっけ?その刀もかっこええし。」


「デッドラインが会議で言ってたやりたいことって、何なのかな?」


「当然のごとくスルーやんな…。ま、何が起こるかお楽しみってやつや。ヒントは俺史上最大の致死毒を流し込むってことやな。」


「ふーん…。そうなんだ♡」




埋葬傷奈は蠱惑的な笑みを浮かべ、嬉しそうにしていた。何を企んでいるのかは読み取れないが、デッドラインもそれを見てニヤリと笑い、そして言った。




「ほな。前回の尻ぬぐいといこか」

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