雨の公園with忘却男
ある雨の日の放課後。学校帰りの公園にて____
「あ、あの〜…大丈夫ですか…?」
倒れている人を見つけました。
「……」
声を掛けても反応無し。
どうしようかな…僕まだ小学生だし……。
僕の名前は如月 雪菜。ちょっと不幸なだけの極々普通の中学1年生だ。そう…ほんとにちょっと……ちょっとだけ不幸なのだ…。
自分の自転車のサドルに鳥の糞が着いていたり、登校中植木鉢の土が上から降ってきたり、家出た瞬間小雨だった雨が大雨になったりするだけなのだ。
そんな僕の今日の不幸は目を覚まさない男の人を何とかしないといけないというもの。
いやね、普通は放置しますよ??放置するですけども……雨だからね!!!風邪引かないかな?餓死しないかな?とか心配になるじゃん!!心配になる…よね…?
まぁそんなことはともかく、まずはどうするか決めないと…!!
「う…ん……?」
あ、もたもたしてたら目覚めた。
「だ、大丈夫ですか?」
恐る恐る聞くと、男の人は笑顔で言った。
「うん。大丈夫っちゃ大丈夫。ただ……」
「ただ…?」
「俺…誰だと思う?」
………は??
◇◇◇◇◇◇
「だ、誰かって言われましても……」
僕も初対面だし!!
「わかんないよねぇ…俺もわからん☆」
そこカッコつけて言うところか?
「てかてか、まず此処は何処?西暦何年?そして君は誰?」
おぉ…質問多いな。
「えっと…順番に説明しますね。僕の名前は如月雪菜で、中学1年生です。此処は僕が通っている学校の近くにある普通の公園です。後西暦は、2050年です。」
「2050年!?!?」
えぇ…めっちゃ驚くじゃん…。
もしかしてこの人…日本人じゃないのかな…。
男の人は黒髪に赤色のメッシュが横髪に入っており、染めたのかと思っていたが目も左は赤、右は黒という、所謂オッドアイだった。
あ、でも違う国の人でも西暦は分かるか。
「取り敢えず…貴方が今覚えてることを教えてください」
「えっと…名前は千寿、魔法学者兼魔術師として過ごしている…くらいかな」
魔法学者兼魔術師か…。
「魔法学者って何するんですか?」
「…さぁ?」
そうだった…記憶喪失だった……。
「えっと、千寿さんはこれからどうするんですか?」
「これから?」
「はい。だって、記憶喪失なんですよね?だからこれから何するのかなとか何処行くのかなとか気になったので……」
「あ〜…どうしよ」
………え
「ねぇ、どうすればいいと思う!?俺自分が何で此処にいるのかわかんないんだけど!目的とかあったのかな!?どう思う!?」
いや知らんがな!!
「俺に言われても知りませんよぉ…あ、なら1回家来ます?」
うちの家族自他ともに認める厨二病だから何とかなるかも…
「ほんと!?行く行く!」
千寿さんは食い付いて目を輝かせている。
「分かりました。それじゃあ行きましょう」
「あ、ちょっと待って」
「…?」
千寿さんは困惑している俺の手をいきなり握って言った。
「今日からお友達ってことで!よろしく!あ、敬語は外してね、後呼び捨てで」
「え…あ、はい……じゃなくてうん。よろしく…!」
「やったぁ!それじゃ行こ!!案内お願いします!」
「り、了解、それじゃ着いてきて」
そうして僕らは家に向かった。
◇◇◇◇◇◇
「―――という訳で…千寿を此処に居候させて欲しいです…!!!!」
「いいよ!!!!」
「…そっかぁダメか……って…ん??」
「だからいいよって」
・・・
「いいの!?!?!?」
確かにうちは未だに厨二病から卒業出来ず毎晩家族会議で魔法を考えている40代の両親と、家の中がファンタジーコレクションだらけのオタク大学生の兄さん(帰省中)の4人家族だけども…!!
「ええ!大歓迎だわ!!あ、そうだ!千寿君って魔術師なのよね!?何か魔法を見せて欲しいわ!」
「え、あ、えっ…と……」
僕がツッこんでる間に母さんが千寿に詰め寄ってる…!?
「待って待って!さっき事情説明したよね!?千寿今記憶喪失らしいからそんな詰め寄ると……」
「は、ははっ…おれはまじゅつしで……まほうがくしゃで……へへへっ…」
「あ、壊れた」
「壊れた、じゃないよ兄さんんんんん!!!!!!」
どどど、どうしよう!?
「取り敢えず、ご飯でも食べよっ!!もう6時だしさ!」
「え?ご飯は出来てるけどいつも7時に食べてるじゃない―――」
「ほらほら!早く準備して食べよ!話はその後か食べてる時に、ね!」
困惑している母さんをキッチンに押し込みテーブルを片付けた。このままだと千寿がもっと壊れちゃう!!
♢♢♢♢♢♢
「ご飯できたわよ〜」
キッチンからの母さんの声を聞き、みんなが食卓に集まる。
「それじゃあ千寿は僕の隣で食べて」
「了解〜」
「それでは、せーのっ!」
「「「いただきまーす」」」
◇◇◇◇◇◇
食事中なのだが……
「……」
みんな静か過ぎて気まづい…!!いつもならワイワイ話してるのに!なんでこういう時だけ静かなの!?
頭の中で叫んでいると、母さんがやっと口を開いた。
「千寿君、さっきはごめんね。つい本物の魔法が見れると思って浮かれていたわ」
「あ、いえ、大丈夫ですよ」
「いや、本当に申し訳なかった。我々もふざけてしまった」
「ごめんな」
そう言い父さん、母さん、そして兄さんが千寿に頭を下げた。
「本当に大丈夫ですって!それに俺、記憶喪失?でこれからどうすれば良いのかわかんなかったので、歓迎されて嬉しいです」
千寿はニカッと笑って答えた。
「そういえば、後魔法をみてみたいって言ってましたよね。小規模でしたら今出来るのでやってみましょうか?」
「本当!?是非お願いします!!」
千寿の言葉に兄さんだけでなく母さんと父さんも目を輝かせている。やっぱりうちの厨二病は治らないな、一生……
「それでは…!小隕石」
すると、千寿の手の上に小さい土の塊が現れた。
「えっと、どうでしょう?」
「す、凄い…!!」
みんなが呆然としている中、声を発したのは僕だった。
「ほんと!?」
「うん…まさか手の上に隕石が出来るなんて…」
「えへへ、因みに大きいバージョンとして隕石っていうのもできるよ」
「おぉ…凄いなぁ〜…」
こんな強そうな人連れてきてたんだ…まぁでも記憶喪失だし、本当に強いかは分からないけどね…
そう思っていると、母さんがやっと声を発した
「千寿君!私たち如月家へようこそ!魔法が出せる方なんてうちで匿うしかないわ!これからよろしくね!」
「っ!はい!!よろしくお願いします!!」
◆◆◆◆◆◆
『如月千寿が仲間になった!』
《キャラクター紹介》
・如月雪菜
きさらぎせつな。男。どこにでも居る普通の中学1年生だが、他より不幸な苦労人。成績も平凡。
・千寿
ちとせ。男。魔法学者兼魔術師。記憶喪失中。元気で明るい。年齢不詳。