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エピローグ

時が経ち、砂漠の風景は変わり続けた。

かつて王国が栄え、そして滅びた地には、新たなオアシスが生まれ、生命が息づいていた。

人々はその地を「双子のオアシス」と呼び、砂漠の中でも特別な場所として大切にしていた。


****


村の広場では、年老いた語り部が子どもたちを集め、夕暮れの火を囲んで物語を語っていた。


「昔々、この砂漠には双子の精霊がいたんだよ。

カリムとナディール……砂漠に、水と恵みをもたらしてくれたんだ」


子どもたちは瞳を輝かせ、耳を傾けた。


「かつて悪しき王は精霊の力を奪い、砂漠に災いをもたらした。

だけどカリムとナディールは力を合わせて王を倒し、新たなオアシスを作ってくれたんだ。

そのおかげで、わしらは今もこうして生きていられるのさ」


一人の少年が手を挙げて尋ねた。


「でも、おじいちゃん。

双子の精霊は今どこにいるの?」


語り部は微笑み、星空を指さした。


「彼らは風と共に砂漠を巡り、人々を見守っているんだよ。

誰かが本当に困っているとき、彼らは必ず現れて助けてくれる。

だから、困難に直面しても希望を捨ててはいけないんだ」


子どもたちは星空を見上げ、遠くの砂丘に思いを馳せた。

砂漠の夜風が心地よく頬を撫で、どこかから優しい囁きが聞こえてくるような気がした。


****


砂漠の彼方では、ふたつの光が淡く美しく輝いていた。

光は揺れ、漂い、囁きあう。


「ナディール、次はどこへ行こう?」


カリムが微笑んで言うと、ナディールも頷いた。


「君が望むならどこでも。

僕が望むならどこでも。

そして、誰かが願えば……」


その時、遠くの村から小さな光が天に昇った。

それは村人たちが焚いた祈りの火だった。


「……誰かが僕たちを必要としてるみたい」


ナディールがそう言うと、カリムは頷いた。


「よし!

次はそこへ行ってみよう」


二人は風に乗り、音もなく村へと向かう。

そこでは井戸が枯れ、人々が困窮していた。

子どもたちの悲しげな顔、大人たちの諦めたような顔。

涙で大地は潤わない。


「祈ろう、ナディール」


「うん。祈ろう、カリム」


カリムとナディールは見えない姿で村の中心に立ち、静かに手をかざした。

すると、干上がっていた井戸から清らかな水が湧き出し始めた。

人々は驚きと喜びに満ちた声を上げ、井戸の周りに集まった。


「これは奇跡だ!

精霊様が私たちを救ってくれたに違いない!」


村人たちは感謝の祈りを捧げ、再び希望を取り戻した。

カリムとナディールはその光景を見つめ、満足そうに微笑む。


「これでまた、人々は前に進めるね」


「そうだな、ナディール。

俺たちの使命はまだまだ続く。

終わりなんてない」


「……うん。

ずっと……ずっとね」


****


砂漠の夜空に、二つの流れ星が横切る。

人々はそれを見て、「双子の精霊が見守ってくれている」と口々に言った。

星々はまるで彼らの存在を証明するかのように、輝きを増していた。


時折、砂漠には激しい嵐が訪れることもあったが、人々は決して諦めなかった。

彼らは伝説を信じ、困難な状況でも希望を持ち続けた。


ある若い旅人が砂漠を横断していたとき、道に迷い、命の危険に晒された。

彼は最後の力を振り絞り、空に向かって祈った。


「双子の精霊よ、どうか私をお救いください……」


その瞬間、彼の前に小さなオアシスが現れた。

澄んだ水と木陰が彼を迎え、彼は命を救われた。


「これが、伝説の力……ありがとう、双子の精霊よ……」


旅人は感謝の念を抱きながら、再び旅を続けた。

彼の物語は各地で語り継がれ、伝説はさらに広がっていった。


****


年月が過ぎ、砂漠の風景も人々の暮らしも変化を遂げていった。

しかし「双子の精霊」の伝説は消えることなく、むしろ時を経るごとに深みを増していった。


ある村の長老が若者たちに語った。


「困難に直面したとき、心を純粋に保ち、

他者を思いやる心を忘れなければ、必ず双子の精霊が助けてくれる。

彼らは我々の心の中に生きているのだ」


若者たちはその言葉を胸に刻み、未来への希望を抱いて砂漠を見つめた。


****


カリムとナディールは、今日もどこかで人々を見守っている。

彼らは精霊として永遠の存在となり、砂漠の自然と人々の心を繋ぐ架け橋であり続けた。


「ナディール。

俺たちの存在は、誰かの力になっているだろうか?」


「きっとそうだよ、カリム。

これからもずっと一緒に、人々と砂漠を見守っていこう」


「……ああ」


二人は風と共に砂丘を越え、遠くの地平線へと消えていった。

その背中には、無限の可能性と優しさが宿っていた。


****


砂漠には今も尚、未知の困難が待ち受けている。

しかし人々は「双子の精霊」の伝説を信じ、希望を持ち続けている。

彼らが去った後も、真に必要とする時には必ず水が蘇り、生命が息づく場所となるだろう。


そして、砂漠の夜空に二つの星が輝くとき、人々は思う。

彼らは今も私たちを見守ってくれているのだ……と。


【完】

ご愛読、ありがとうございました……!

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