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1話:砂漠都市アサイル

褐色男、都会へ……!

果てしなく広がる砂の大地。

その中で、アサイルはまるで蜃気楼のように輝いていた。


豊かなオアシスに囲まれたこの都市は、遠くから見ると、砂漠の厳しさとは正反対の“生命の溢れる場所”だった。

アサイルを象徴するのは、清らかな水を湛えた泉。

そして、その周りに立ち並ぶ白壁の建物群。

ヤシの木々が柔らかな日陰を作り、商人たちが忙しなく行き交う市場には、様々な商品が並べられていた。

スパイスの香りが漂い、色とりどりの絹が風に揺れる。


アサイルの人々は「オアシスの精霊伝説」を信じていた。

伝説によれば、この地の豊かさは精霊の恩寵によるものだという。

アサイルの発展は精霊が都市に水をもたらしたおかげであり、精霊たちが都市を見守り続けていると人々は信じていた。


そんなアサイルの大通りを、一人の青年が歩いていた。

彼の名はカリム。

旅人として長い道のりを経て、ここアサイルに辿り着いたのだ。

カリムは浅黒い褐色の肌を持ち、砂漠の旅に耐えるための服を身にまとっていた。

……といっても、粗末なものだが。

素材はいいのだが、年季が入りすぎている。

傍目には熟年の旅人を思わせるが、現在の実用性はいかばかりか。

反対に、彼の瞳は真新しい刃物のように鋭い。

その中には決意が宿り、心の奥底には一つの強い願いがあった。

それは、貧しい家族を救い、再び平和な暮らしを取り戻すこと。


「……目眩がするね、この活気には。

俺にも何かお恵みがあればいいんだが……」


カリムは独り言と共に息をひとつ落としてから、足を進めた。

彼は家族を残し、砂漠を越えてこの都市にやってきた。

奇跡を信じるしかない状況にあったからだ。


アサイルの市場を歩きはじめてすぐに、カリムは異国の品々に目を奪われた。

市場は賑やかで、さまざまな言語が飛び交っていた。

ここでは人々が次々と商品を売り買いし、時には交渉の声が上がる。

カリムはそんな市場の喧騒に身を浸しながらも、心の中で冷静に作戦を考える。


「まずは金だ。

金がなければ何も始まらない」


カリムは家族を養うために、何としても一攫千金を掴む必要があった。

彼は商人たちの取引をじっくりと観察し、どの商品が高く売れるかを探り始めた。

アサイルには宝石や香料や珍しい生き物、そして砂漠特有の工芸品が並んでいる。

それらの商品は、富裕層の手に渡れば莫大な利益を生むものばかりだ。


「この中で、一番価値のあるものは何だ……?」


生産者でもなんでもないカリムが手っ取り早く稼ぐには、安く仕入れて高く売り捌くこと――これしかない。

カリムはそのために己の頭脳と肉体を酷使する覚悟を決めていた。

全神経を集中させ、考え込む……そんなカリムの耳に、ふと人々の話し声が聞こえてきた。

盗賊に関する噂話だ。



「……最近、砂漠を旅する商隊が次々と盗賊に襲われているらしい」

「ああ。油断すると、奴らに全て奪われるって話だ」

「いやだねぇ、王様は何をしておいでなのか……」


カリムはその言葉に一瞬耳を澄ませたが、すぐに振り払った。

恐れるよりもまずは行動だ。

家族を救うためには、どうしても大金が必要なのだから。


【続く】

どうなる、カリム……!

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