嘱託殺人罪
「あのさ、殺人罪を嘱託殺人罪に変えるにはどうしたらいいかな?」
掃除の時間、マサヤくんの知恵を借りようと、単刀直入だが、こんなことを聞いてみた。
「んー、それは本当は殺人罪だけど、犯人を庇うために嘱託殺人罪にしたいのか、元々は嘱託殺人罪なのに、警察の捜査不足で殺人罪になっているのか、どっちなの?」
「圧倒的、後者だね」
「それじゃあ、証拠を見せないと」
「証拠かぁ。例えば、どんなのが証拠になるの?」
僕は箒を滑らしているだけで、ゴミを集めているかと言われれば、否定できないような掃除をしていた。
「例えば、そういったメッセージのやりとりがスマホに残ってたり……」
「ない!」
「あとは、被害者の病み垢なんかが見つかれば……」
「うわ、作っとけば良かったあ」
「何?もしかして……」
あっ、僕が赤裸々なリアクションをしてしまったから、マサヤくんに僕が死にたがりで、アサトに嘱託殺人してもらったことがバレてしまった、のか?
「いや、これは違くて……」
「君も推理小説を書いているのか!?」
と意気揚々とちりとりを手放したマサヤくんが僕の手を両手で掴む。吃驚した僕は、箒から手を離してしまって、カタンッと音が鳴った。
「う、うん……そうだよ……」
何で、推理は得意なのに、これは鈍いんだろう。まあ、その鈍さに助かった。そこから、口頭でしか約束してない設定からどう覆せばいいか、悩んでるんだと相談した。
「随分と、楽しそうだね!俺も交ぜてよ」
「ルイくん……」
「これは俺達の秘密だ。お前にはまだ言えない」
とマサヤくんがナイスプレーをしてくれた。たぶん、展開がわかってしまったら、小説として面白みがなくなってしまうから、こんなことを言い出したんだろう。
「えーっ、マサヤ冷たいよ!何で俺には教えてくれないの?」
とルイくんがマサヤくんに何とか聞き出そうと、彼の手を握ってぶんぶん振りながら媚びている。それを僕は凝視して、ああ、嫉妬の感情がふつふつとしてる。
「教えたら、つまらないからな」
「何が?何がつまらないの??」
「ルイくん、掃除しよ」
僕は箒を拾って、無愛想にそう言って、適当に足元を掃いた。そしたら、ルイくんが僕に壁ドン、肘ドンして追い詰めてきて、顔をめっちゃ近づけてこう言った。
「ホダカ、嫉妬したよ。秘密って、何?」
僕が黙り込んでると、ルイくんが僕の唇に親指を添えて……キス、してるように見えて、してない!??
「ルイ、くん……」
めっちゃ焦らされたっ!!!!うううっ、キスされたかと思った……何か楽しそうにしてるし。
「ルイ!教室でそうゆうのやめろよな!!」
「あははっ、キスしてないけど??」
僕の彼氏はどうしてああオープンに話すんだろう。最近、あの人達って付き合ってるの?と、他のクラスの人からも噂されている。やぐっちゃんからも心配と注意を受けているが、別に悪いことをしている自覚はない。恥ずかしいという自覚はあるけど。




