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そんな私はヴァンパイア  作者: 松栄
第1章 勇者の航跡
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第7話 サダコお母様が教えてくれた秘密

 出発を数日後に控えたある日。

 今後の計画を練っている所にサダコお母様がやってきた。


 「ふむ、出立の準備は進んでおるのかの?」

 「はい、あとはどのルートでデミアン領まで行くか、を決めるだけです。」

 「あとはその後の事をどうするか、ですけれど……」

 「まぁ、そうじゃの。エイダムに稽古をつけてもらうにしても、マリュー様に扱かれるにしても、じゃ。」

 「稽古……」

 「扱かれる……」

 「あはは、そんな不安な顔をせんでも大丈夫じゃ。死にはせん。が、しかしの。」


 サダコお母様は、かつてのモンスターとの闘いで活躍したと聞いている。

 でも、直接戦闘という訳でなく、専ら補助に徹していたらしい。

 だからかな、戦闘の様子を俯瞰してみていたからモンスターの動きは良く見えていたらしい。


 「今一番注意せねばならんのはの、モンスターじゃ。今の二人ではやはりモンスターの相手は厳しかろうな。」

 「そう、ですね。その為の修行ですもの、ね。」

 「一つ、教えておこう。モンスターにはな、急所という物は無い。倒すには力を削ぎ動きを止め、最終的に焼き尽くすしかない。」

 「となると……」

 「うむ、今後おぬしたちが鍛えるべき所は、それを念頭において優先順位をつけておくことじゃな。」

 「攻撃力を上げて……」

 「焼き尽くす……」

 「おぬし達は主様とお母様達との子じゃ。潜在的な能力はの、両親よりも高いのじゃ。」

 「え?」

 「私達が、お母様やお父様よりも、強い?」

 「そうじゃ。ただの、普通に修行しているだけではその本来の力は出せんじゃろうな。」

 

 そこに、お母様達もやってきた。


 「あら、サダコさん、何のお話でしょう?」

 「サダコ、色々気遣ってくれてすまないな。」

 「ふむ、実はの、この二人に“月の欠片”の事を教えようと思っての。」

 「“月の欠片”か、そういえばこの世界にはまだ存在している、と言っていたな。」

 「しかし、私達はその実物は見た事ありませんわね。実物を知っているのはサダコさんやカスミさん達、あちらへ行った方だけですものね。」


 その“月の欠片”っていうのは、ちょっとだけ聞いた事があるけれど。

 実際それが何で、どういう物なのかは誰も本当の所はわからないらしい。

 月の欠片によってこの世界へ転生した、というルナ様でさえ、判別できない存在みたい。


 「ただの、この世界の“月の欠片”はの、何処にあるのかエルデにもはっきり掴めないそうじゃ。」

 「でも、サダコお母様、その“月の欠片”は私達にどんな力をもたらしてくれるの?」

 「あぁ、実はそれも未知数ではある。が、最終的にどうしようも無い場合の最終手段、といった所ではある、と思う。」

 「どうしようも無い?」

 「まぁ、おぬし達には必要ないとは思うがの。というか、もしかするとおぬし達に、ではなく、あのコアに対して有効なのかも知れぬがな。」


 つまりは、その“月の欠片”は、有って困るモノでもなく、むしろ有れば目的達成の助力になる、と?


 「とはいえ、だ。それに拘りすぎるのも問題だぞ?」

 「ルナ、おぬしいつの間に……」

 「今しがた帰ってきた所だ。で、サダコの言う通りどちらかと言うと、お前達の力を引き出す為よりは、コアの封印に使うべきだろうな。」

 「と、言いますと?」

 「アルチナ、ディーナとシャルルの力を引き出すには修行は必須だろう。でも、そこにあの珠を用いなくても大丈夫、という事だ。」

 「ん?どういう事だ?」

 「私にはその効力の一端が残っている。元々私は、“月の欠片”の力によってこの世界に顕現したのだから、な。」

 「なるほどのぅ。そういえば、エルデもそんな事も言っておったの。」

 「それに、な。」


 ルナ様はしれっと問題発言をした。


 「もはやこの世界の“月の欠片”は存在しない。」

 「なんと!」

 「あー、正確には確認できない、だけどな。エルデもシヴァも、ウリエルでも、だ。」

 「となると……」

 「うん、娘二人の修行はもとより、コアの封印も自力で何とかするしかない、という事だな。」

 「そうだ、シャヴィ。だから私とウリエルはこの二人に付いていく。サダコが言うモンスターの脅威くらいは、私とウリエルで当面は対処することになろう。」

 「でも、それでは二人の修行にならないのでは?」

 「そこは心配ない。私が直接手を下すわけではないからな。経験を積むのは二人じゃないと意味がないしな。」


 とはいえ、ルナ様やウリエル様が付いていてくれるというのはこの上なく心強い。

 正直、私もシャルルも戦闘なんて経験はない。

 必要なかったからだ。

 ただ、護衛術と称してお父様直々に格闘術なるものを手ほどきしていただいた事はある。


 「まぁの、主様もこの世界へ来た当初は同じだったからの。言ってみれば二人は、お父様と同じ道を歩む、という事やもしれぬな。」

 

 お父様が歩んできた道、か。

 そうよね、お父様だって元々そんな力を発揮していたわけじゃなかった、って言っていたものね。

 目的に向かって突き進む、それが力になったって言っていたもの。


 修行はちょっと怖いけど、挑む勇気は湧いてきた。


 「ねぇ、ディーナ、私、頑張る。だから、挫けそうな時は、その、お願いね。」

 「シャルル、私もだよ。できるだけ、自分達の力だけで行ける所まで行こう。」

 「うん。」


 そんな二人を優しく見守る母親達。


 「やはり、主様のお子じゃの。」

 「本当に、あの人と同じ姿勢ですのね。」

 「そうだな、前向きな所はタカと同じだな。」


 ルナ様も、心なしか優しく微笑んでいるようにも見えた。


 「ただ、やはり心配は拭えませんね。」

 「じゃがな、あの二人の真の力はあの時に実証済みじゃしなぁ。」

 「あの時、ですか……」

 「そう、だな。あの時は私も驚いたが。」


 あの時、というのは、主様があの子たちに護身術を教えている時の事じゃった。

 明らかに力の差がある主様に対し、徐々に肉迫したと思いきや、姿が変化し爆発的な力を発揮したんじゃ。

 それは主様と同等、あるいはそれを上回る程ではないかとも思えた。

 しかし、それはほんの一時の事で、すぐに元に戻りはしたがその時の主様の表情は嬉しいような少し悲しいような顔じゃった。

 きっと主様は、この子達にその力を使うような事がないようにと思ったのやも知れぬが。

 そう考えると、もしかすると。

 この子達は“月の欠片”など使わずともどうとでもできるんじゃなかろうか。


 ただ……


 「そうは言っても、あの子達は真の力に目覚める事ができるのでしょうか。」

 「現状、一番の問題はそこ、かもしれないな。まぁ、それ故の修行なんだけど。」

 「うーむ、少し心配ではあるがの、大丈夫な気はするの。なにせおぬし達と主様の血を引いておるのじゃ。根拠としては充分じゃろうて。」

 「そう、ですわね。」

 「そうだな。」



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