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そんな私はヴァンパイア  作者: 松栄
第12章 番外編 華麗なる新文化
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華麗なる新文化-6 お試し

 ここ数日、食事処金剛の厨房はディーナとシャルルが料理長みたいな感じで回っている。

 実質の料理長であるタカとヒロは、といえば。


 あのカレールゥをある程度量産しているのだ。

 今現在で500食分が完成したと言っていたが、どうやらそれを使って関係者に試食してもらおうとしているらしい。

 単に食べてもらいたいというのもあるのだが、その実は実食して意見を聞き、ブラッシュアップする為だという。


 この探求心は流石だと思う。

 どことなくギニーやアキナに通ずる所があるな、とウリエルに言うと、少し嫌な顔をしつつも同意した。

 こいつはこいつで、何だかんだ言ってもあれ以来頻繁にアキナと会っている様で、ホントは仲が良いんだろうな。


 と言う事で、完成したルゥは一個およそ10皿分程ずつに小分けして油紙に包み木箱へと仕舞う。

 保存は冷蔵庫内で、と言う事らしいが、実際それでどの程度保存できるのかはまだ解らないと言っていたな。


 「ってことで、今月は俺とディーナで回ってくるよ。」

 「んじゃ、オレとシャルルは来月だな。」

 「悪いけど、不在の間は頼んだよ。」

 「まかせとけ、な、シャルル。」

 「うふふ、もちろん。」


 その試食、なんと全世界を回るつもりらしい。

 穿った見方をすればプロモーション、つまり宣伝効果も付加されるんだろうが、この子達にそんな思惑は微塵もない。

 この点は後に、マコーミックやマスミのダンナのエルウッドも、その兄のジェイクも驚いていたらしい。


 翌日。

 タカとディーナは試食品を携えて出発した。

 それには私も同行する事になった訳だが、なぜ私が?


 それは良いとして、まず最初に向かったのはモンテニアル王国だった。

 プラムもそうだが、姫のリコとペルシアが、食事処金剛のカレーをいたく気に入っているらしい。

 ラディアンスのワブレアは既に金剛に来店して新作カレーを試食していたので、まずはプラムの所へ、となったそうだ。


 「お久しぶりです、プラム女王。」

 「こんにちはプラム女王。」

 「おおお!お前達、会いたかったぞ!」


 飛び付かれ、ギュッとハグされる二人。

 ちなみに、プラムはタカとヒロの事も物凄く気に入っているんだとか。


 そんなこんなで事情を話し、新作のカレーを試食してもらう運びとなった。

 試食のカレーはシンプルに、ルゥとニンジンと玉ねぎ、牛肉だけのプレーンなものだ。

 先日のまかないの、言葉を失うほどのあの味にはならないが、それもルゥの完成度を推し量る事が目的だからだ。


 城の厨房で作るのだが、すでにそこには仕事をほったらかしにして城内の殆どの者が詰めかけていた。

 皆、興味津々なのだろう。

 ご飯を炊く時間もあって50分ほどして完成したカレーライス、一応20人前を作ったのだが、全員に行き渡らないのでプラムと二人の姫以外は抽選となったのだ。

 そうして始まった試食。

 固唾をのんで皆が食べる所をみているタカとディーナ。

 何というか、ちょっと不思議な光景ではあるな。


 「お前達、何というモノを作ってくれたのだ……」

 「私、コレ……」

 「ディーナ姉さん、どうしてくれるのよ!」


 プラムもリコもペルシアも、一口食べた途端に無言で食べまくった。

 食べ終えて水を飲んで出た一言がそれだったのだ。


 「え、えーと、辛さは大丈夫だった?」

 「一応これが中辛なんだけどさ……」


 「そんな事はどうでもいいのだ!なんだこの美味しさは!?」

 「お店のカレーとは違う美味しさだねー……」

 「もうこれ以外のカレー食べられなくなっちゃうじゃないの!良いんだけどさ!」


 かなり、というか、これ以上ない評価だったらしいな、うん。

 プレーンでこれなのだ、アレンジしたらもう大変な事になるのではないのかコレ?


 実は先日、カスミにも試食してもらったんだが、その時の反応も凄かった。


 「コレよコレ!これがカレーよ!しかもすげー美味しい!!」


 との事だった。

 カスミの太鼓判だ、間違いは…たぶん無いのだろう。


 こうして、タカとディーナはエスト、デミアン、ロプロス、アインフリアンと回り、それぞれの国で市民も巻き込んでの試食行脚したのだ。

 それによって得られた改善点というか反省点は何点か上がった。

 しかし、それ以外は概ね受け入れられるレベルというか、大好評だった。


 「んじゃ、今度はオレらが行ってくるよ。」

 「行ってきます!」


 その後、ヒロとシャルルも出発した。

 二人にはウリエルが帯同する事になった。


 ヒロとシャルルはネリス、ロマリア連邦の各国、南米の各国、アポリジニを回って帰って来た。

 反応や評判はタカ達と全く同じだったようだが、ロマリア連邦の西へ行けば良く程、甘口が好まれる事も判った。

 以前にナムル近くで訪れたあの飲食店にも伺って試食してもらったところ


 「これ、甘口が絶妙な辛さだからこっちの人達はこれが合うんじゃないかな?」


 との事だった。

 ちなみにこの店主は、あの後私達がイワセ王国の者、さらにはディアマンテス、つまり勇者だったと知って驚いたという。

 再会した時には感激のあまり卒倒しそうだったそうだ。


 南米では逆に辛口が好まれたようで、結果として3種類にした事が功を奏した形にはなった。

 ヒロ達はかなり有用なデータを得られて帰って来た。

 ちなみに、アリシア王国へはまだ行っていない、というか、行く必要がなかったのだ。

 それは先日、私達が帰国した頃の事。


 アリシアのエッセンス女王とその側近10数名が、お忍びで金剛まで来て試食したからだ。

 もちろん、そこにはティアマトの手引きがあったのは言うまでもないのだが、お忍びと言う事でエッセンスは変装していたのだ。

 ただ、どう考えても派手な色合いの服に色眼鏡、目深に被った鍔広でバラをあしらえた帽子、そして白いマスク、厳つい側近ども、と。

 その変装が逆に目立ってしまって即バレしていた事は、後に話題になったのは言うまでもない。


 「おほん、わら…私は普通の客である…ます。新作のカレーとやらをご所望します。」

 「……エッセンスさん……」

 「し!しぃー!! わ!わらわはエッセンスではありませぬ!というかディーナそれは内密に!」

 「あ、あはは、わかりました!試作のカレーですね、お待ちください!」


 そうして試作のカレーを食したエッセンスは、やはりその味に魅了されたのだった。

 そもそもアリシア王国はネリスに近い事からカリーの文化はある程度あったのだ。

 しかし、それとも違うカレーライスは革命的な食べ物だと思ったらしい。


 結局、それもあってスパイスの取引や栽培契約云々の話はあっという間に締結したようだ。

 ただ、締結の条件がかなりえげつないモノだと、締まりのない笑顔でティアマトはのたくった。

 要するにティアマトはアリシア王国の入り婿になる、つまりアリシアの王になると言う事らしいのだが、何だかそれも既定路線のような気がして条件でも何でもないような気がするのだが。

 

 そして、最後にタカとヒロはルシファーと共にジパングへと向かった。

 料理の全てを伝授してくれた師匠と、共に厨房に立っていた仲間たちに試食してもらう為だ。

 そこでは、何の具材も入れずにルゥを溶かしたものをご飯にかけた、本当に素のカレーライスだったそうだ。


 「こ、これをお前達が……」

 「し、師匠、どうかな?」

 「売りモノにできる、かな?」

 「うーん……あ、いや、そのルゥってのはまだ有るのか?」

 「う、うん、あと1食分は持ってきてるけど。」

 「それを出せ。」


 そう言ってルゥを受け取った師匠は、何やら作り始めた。


 「タカ、ヒロ、このカレールゥってのは最高の食材になる。俺が保証する。」

 「師匠!」

 「マジか!」

 「ただな、最高ってのは味だけじゃねぇ。ここからさらに世界が広がる可能性を秘めてるって事だ。

 少しまってろよ、俺流の“かれーらいす”ってのを喰わしてやる。」

 「「 へぇー…… 」」


 師匠はイカやエビ、それにホタテなどを具材に、ルゥに少しアレンジをして新たにカレーを作った。

 大地の幸に海の幸を合わせた、いわゆるシーフードカレーと言う奴だったと言う。

 それを食べたタカとヒロは、涙を流して感動したらしい。

 ちなみに、ルシファーはその様子をみつつ、師匠謹製のシーフードにカレールゥをまぶして炒めたモノを肴に日本酒を飲んでいたそうだ。

 その肴も、カレールゥの可能性の一つだと、師匠は説明した。


 「こりゃぁよ、アレンジとアイデア次第でいろんなタイプのカレー料理が作れるぜ。

 しかもだ、国を問わず料理の腕を問わず誰でも、だ。すげぇモン作ったなお前達。」

 「師匠にそう言ってもらえて、安心したよ。」

 「オレら、これで迷いなく進んで行けるよ、ありがとう師匠……」


 帰って来たタカとヒロは、このカレールゥ開発が成功した事を確信したと言う。

 ともあれ、これでカレールゥは完成したわけなのだが……

 


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